著者
石野 信一郎 白石 祐之 堤 真吾 西巻 正
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.111-117, 2015-02-01 (Released:2015-02-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

右房内進展を伴う肝細胞癌の切除は人工心肺下での開心術を要し,肝切除のみに比べ侵襲が高い.我々は右房内へ進展した肝細胞癌に対し肝切除先行total hepatic vascular exclusion(全肝血行遮断;以下,THVEと略記)を達成,開心術をせず原発巣と右房内腫瘍栓を摘出しえた症例を経験した.本術式は心房内進展を伴う進行肝細胞癌に対し,開心術併用と比較し低侵襲術式になると思われた.症例は69歳男性で,検診で異常を指摘された.CT で肝右葉に右房内に進展する腫瘍を認め当院紹介となり,肝細胞癌の診断で手術を行った.術式は肝脱転,肝静脈根部剥離,右グリソン処理の後肝切離を行い,肝右葉が右肝静脈のみで繋がる状態とした.肝右葉の牽引により腫瘍栓が右房外に出ることをエコーで確認し,THVEの後に右肝静脈根部を切開,腫瘍栓と肝右葉を一括で摘出した.術後74日目に退院した.術後2年間,無再発生存中である.
著者
古賀 成昌
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.1849-1855, 1986 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

外科治療ができない癌に対し, 体外循環を応用した血液加温による全身温熱療法と癌化学療法を併用した全身温熱化学療法の成績と, 本法の問題点について述べた.全国集計例132例の成績ではCR, PRがそれぞれ2例, 30例にみられたが, 症例の背景を考えた場合, この成績は評価できるものと考える.全身温熱療法の宿主免疫能をはじめとした生体への影響は大きくはなく, 今後適応症例を選び, 操作の簡便化, 制癌剤の投与タイミング, 温熱感受性などの問題点を解決することにより, 本法の治療効果はさらに向上できるものと考える.
著者
大川 淳 亀頭 正樹 赤松 大樹 吉龍 資雄
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1085-1089, 1993
被引用文献数
3

症例は71歳の女性.嘔吐を主訴に入院.入院時検査にて白血球19,300/mm3, 血清総ビリルビン値は15.2mg/dlと上昇し, 胆管炎および閉塞性黄疸を認めた.血清CA19-9値は89,305U/mlと著増を示し, 膵胆道系の悪性疾患が疑われた.腹部超音波と腹部computed tomography (CT), およびpercutaneous transhepatic cholangiography (PTC) 上総胆管結石を認めたが, 悪性所見は認めなかった.胆汁中のCA19-9は13,800,000U/mlであった.Percutaneous transhepatic cholangiodrainage (PTCD) にて減黄後, 血清CA19-9値は145U/mlまで減少し, 総胆管結石の診断にて手術を施行した.胆嚢壁は著明に肥厚し, 胆嚢内に混合石90個と総胆管内に混合石20個を認めた.病理組織学上, 胆嚢壁の強度の炎症所見と, 免疫組織学的に胆嚢上皮にCA19-9を証明した.術後CA19-9値の再上昇は認めない.
著者
豊坂 昭弘 村田 尚之 三嶋 康裕 安藤 達也 大室 儁 関 保二 金廣 裕道
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.417-423, 2009-04-01

日本で受けた男性性転換手術後に晩期合併症として超高位の直腸膣瘻を経験し局所的に閉鎖しえたので報告する.患者は33歳で,7年前に男性から女性への性転換手術を受けた.3年前から人工膣から出血,排便をみている.注腸および内視鏡検査で,直腸S状部の超高位の直腸と人工膣が大きな瘻孔を形成していた.まず人工肛門を造設し,2か月後経仙骨的経路で手術を施行し癒着に難渋したが瘻孔を閉鎖した.術後は順調に経過し,2か月後人工肛門を閉鎖した.現在術後1年3月経過し再発はなく,美容的にも満足している.術後は再発の恐れから膣は使用されていない.本例は解剖学的に通常では発生しえない直腸S状部の超高位の直腸膣瘻であり,このような超高位の直腸S状部の直腸膣瘻の報告は内外とも見られず,局所的手術で修復した報告も見られないので報告した.本例での瘻孔の原因は人工膣内へ狭窄防止用ステントの使用による圧迫壊死であった.
著者
岡田 禎人 鈴木 勝一 中山 隆 渡辺 治
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1930-1933, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

症例は54歳の女性で, 下腹部痛を主訴に来院した. 下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた. また尿中にも便が混じっていた. 腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた. 注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた. また膀胱鏡では膀胱内に便汁を認めた. 患者は20年以上子宮内避妊具 (intrauterine contraceptive device; 以下, IUD) を装着していた. IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため, IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし, これがS状結腸, 膀胱, 腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した. 絶食, 抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため, 手術により瘻孔の切除と膿瘍のドレナージを行った. 術後経過は良好で, 腹壁の膿瘍は消失した. 術後7か月の現在再発を認めていない.
著者
加藤 直人 鈴木 弘治 田中 淳一 利野 靖 今田 敏夫 天野 富薫 高梨 吉則
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1525-1528, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
21
被引用文献数
5 9

症例は48歳の男性. 発熱, 腹痛を主訴に来院, 腹部全体に反跳痛, 筋性防御が認められ, 汎発性腹膜炎の診断にて開腹した. 手術所見では漿液性腹水少量, 小腸間膜の肥厚, 発赤を認めるのみであった. 腸間膜脂肪織炎を疑い一部生検を施行し, 閉腹した. 術後39℃の発熱が8日目まで持続したが, γ-globulin投与したところ平熱化し, 炎症は鎮静化した. 病理組織所見では, 変性脂肪細胞, 炎症細胞浸潤, 微小膿瘍が認められ, 脂肪織炎と診断した. 腹水細菌培養は陰性であった.腸間膜脂肪織炎は原因不明の比較的稀な疾患であり, その臨床像は多彩なため診断は困難で確立した治療法はない. 今回, 我々はγ-globulin投与が奏効したと思われる1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
著者
小田原 良治 西 満正 小玉 徳信 野村 秀洋 愛甲 孝 金子 洋一
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.844-852, 1979 (Released:2011-03-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1

雑種成犬18頭および臨床例67例を対象として負荷試験によるセクレチン放出を検討した.その結果, 0.3M Glycinc, 各濃度Etylalcoholには直接的セクレチン放出作用はなく, 稀塩酸のみ有意のセクレチン放出作用を認めた.ヒトにおけるアルコールのセクレチン放出作用は, アルコール投与により惹起された胃酸分泌の亢進が原因と考えられる.臨床例の空腹時セクレチン値は, 胃全剔で低値を示す傾向にあり, セクレチン値と健常な胃の存在が密接な関係にあることがうかがわれた.塩酸負荷後のセクレチン放出は, 胃全剔例では, Roux-YよりDouble Tractが良好であり, 噴門側胃切除例ではN字吻合が良好であった.
著者
青山 法夫 米山 克也 徳永 誠 南出 純二 小沢 幸弘 山本 裕司 今田 敏夫 赤池 信 天野 富薫 有田 英二 小泉 博義 松本 昭彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2594-2598, 1991-10-01
被引用文献数
2

消化管吻合部狭窄の治療法として,内視鏡的切開およびブジーによる拡大術の適応と限界について検討した.吻合部狭窄35例(瘢痕性26例,癌性9例)を対象とした.瘢痕性狭窄の長さによる狭窄解除率をみると,2cm未満14/15(93.3%),2cm以上3cm未満8/9(88.9%),3cm以上0/2(0%)であった.一方,癌性狭窄は0/9(0%)と効果不良であった.効果不良例13例(瘢痕性4例,癌性9例)の内,癌性3例を除く10例に他の治療を加えた.3例(瘢痕性1例,癌性2例)に手術,7例(瘢痕性3例,癌性4例)に食道ブジー挿管術を施行した.手術では,狭窄が解除出来たのは1例のみで他は試験開腹および合併症死におわった.食道ブジー挿管術は7例全例狭窄を解除でき退院可能であった.皮膚管瘢痕性狭窄1例のみ皮膚瘻孔を形成し手術を要した.食道ブジー挿管術は難治性吻合部狭窄の非観血的治療法として有用であった.
著者
福井 貴巳 横尾 直樹 吉田 隆浩 田中 千弘 東 久弥 白子 隆志 北角 泰人 岡本 清尚 加藤 達史 山口 哲哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.68-72, 2001-01-01
被引用文献数
6

敗血症性ショックを合併した超高齢者の虚血性大腸壊死症例に対して, 結腸大量切除術を施工し救命しえたので報告する.症例は102歳の女性.主訴は嘔吐と腹痛, 来院時, すでに敗血症性ショック状態にあり, 絞扼性イレウスの術前診断のもと, 全身麻酔下に緊急開腹術を施工した.結腸肝彎曲部より下行結腸まで広範な結腸壊死を認めたため, 上行結腸からS状結腸まで広範囲結腸切除術を施工した.病理学的検索にて, 虚血性大腸壊死と判明した.脱水, ショック, 高齢, 過大侵襲手術などの危険因子のため, 術後早期は極めて不安定な循環動態, 呼吸状態を呈したが, 無事救命しえた.この好結果は, 術直後からの血液浄化療法(PMX~【○!R】)の実施や, S-Gカテーテル留置による綿密なモニタリングのもと, 十分な循環血液量の維持を主眼とした全身管理によりもたらされたものと考えられた.
著者
橋本 充右 今村 正之 嶋田 裕 戸部 隆吉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.1924-1929, 1992-07-01
被引用文献数
18

胸部食道癌切除術前の胃と術後再建胃管の胃底部と前庭部の2点で24時間pHモニタリングを行った.全測定期間中pH頻度分布曲線を,1型(高酸型),2型(中間型),3型(低酸型),4型(前庭部高酸型)に分類し,各型群間で胃内酸度を術前後で比較検討した.深夜,食事中,食後の各期間pH中央値は各群間で特徴を有し,この分類法が酸分泌の解析上有用と考えられた.深夜胃底部pHは1,2型群で低値となり,1,2型群において,深夜胃底部pH中央値の平均,深夜胃底部pHが3以下となる時間の割合には術前後で有意差はなかった.術後長期経過例でも深夜胃底部は低pHを示す症例が多く,再建胃管の夜間酸分泌が保たれており消化性潰瘍発生に注意すべきと考えられた.また,術後1,2型群深夜前庭部のpHが3以下となる時間の割合と空腹時血清gastrin値の間の有意な逆相関(p<0.01)も証明された.
著者
安藤 拓也 山崎 雅彦 深尾 俊一 中野 浩一郎 呉原 裕樹 堅田 武保 舟曳 純仁 中野 貞生 池上 雅博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.1698-1702, 2003-12-01
被引用文献数
4

腸閉塞にて発症した非特異性多発性小腸潰癈疾の2例を経験したので報告する.症例1 26歳の男性.繰り返す腸閉塞にて入院.小腸造形にて回腸に粘膜集中像をともなう潰瘍,多発する輪状狭窄を認めた.小腸潰瘍による狭窄にて腸閉塞を呈したと診断し,回腸切除術と狭窄形成術を施行した.症例2 . 31歳の男性.繰り返す腸閉塞と貧血にて入院.逆行け回腸遺影にて回腸末端に不整形潰瘍と軽度の狭窄像を認めた.小腸潰癈による狭窄にて腸閉塞を呈したと診断し回腸切除術を施行した.いずれの症例も切除標本では,亜輪状傾向の潰瘍あるいは潰瘍徹夜を認め,それに伴い腸管の狭窄を呈していた.組織学的にはUl-IIの潰瘍が主体であり,狭窄部では線維化が著明であった.以上から非特異性多発性小腸潰瘍疾による腸閉塞と診断した.
著者
太田 博俊 高木 国夫 大橋 一郎 田村 聡 久野 敬二郎 梶尾 鐶 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1399-1408, 1981-10-01
被引用文献数
10

当外科において手術された1978年10月までの1000例の単発早期胃癌に対して肉眼分類を中心に時代的変貌を加味しつつ, その臨床像を検討した. 最近は手術胃癌の3例に1例は早期癌で, 陥凹型早期癌が多く, 占居部位では隆起型は胃下部, 陥凹型は, 胃中部に多い. 年齢分布はピークは隆起型は60歳代の山型, 陥凹型は50歳代の丘型を示した. 症例数では隆起型と陥凹型は, 1対4の比率で, 深達度 m と sm ではほぼ同率であった. 早期胃癌のリンパ節転移率は 12.7%, m 癌は 21.7%. 隆起型では, 20.9% その内 m 癌は 1%, sm 癌は, 33.3%, 陥凹型では, 10% その内 m 癌は 3.9%, sm 癌は 16.7% であった. 治癒切除例の5生率は 93.8% 非治癒切除例で 56.5% であった.
著者
小野 文徳 小野地 章一 吉田 節朗 内山 哲之
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.63-67, 2004
被引用文献数
1

症例は71歳の男性. 約20年前に背部打撲により脾損傷と診断され, 保存的に加療されたことがある. その後は特に外傷の既往はない. また, 3年前頃から心房細動のためアスピリンを服用しており, 半年前に脳梗塞を発症している. 脳梗塞後のリハビリにて近医入院中, 腹部CT検査にて脾 胞を指摘された. その1週間後, 突然の左側腹部痛とショック症状を呈したため当院に搬送された. 腹部CT検査および腹腔穿刺にて脾破裂による腹腔内出血と診断し, 緊急手術を施行した. 腹腔内に多量の凝血塊と血性腹水を認めるとともに, 脾には仮性襄胞とその破裂が認められ,外側は横隔膜,大網と強固に癒着していた. 病理組織検査では, 外傷性変化とともに, 新旧の壊死巣・出血巣が混在した脾梗塞の所見を認めた. 本症例の脾破裂の直接原因は脾梗塞と考えられたが, 外傷性変化, 抗凝固薬の服用も影響したものと考えられた.
著者
高台 真太郎 上西 崇弘 市川 剛 山崎 修 松山 光春 堀井 勝彦 清水 貞利 玉森 豊 東野 正幸 久保 正二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.50-55, 2007-01-01
被引用文献数
6

肝癌切除後の孤立性リンパ節転移を摘除することで,術後2年6か月の現在,無再発生存中の症例を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,C型慢性肝炎に伴う肝癌に対して肝切除術を2回施行されていた.経過観察中のCT像上,肝尾状葉に約4cm大の腫瘤性病変を認め,AFP, PIVKA-II値の著明な上昇がみられた.腹部血管造影像では腫瘤は中肝動脈および左胃動脈より栄養される腫瘍濃染像として描出され,肝癌の尾状葉再発と診断し開腹した.腫瘍は肝尾状葉に接するように総肝動脈の腹側に存在していたが,肝臓からは独立しており肝癌の総肝動脈幹リンパ節転移と考え摘除した.病理組織学的検査では中分化型肝癌のリンパ節転移と診断された.AFP, PIVKA-IIは術後2か月日に標準値範囲内へ低下し,以来,再発徴侯を認めていない.原発巣がコントロールされた肝癌の孤立性リンパ節転移は摘除により良好な予後が得られる可能性が示唆された.
著者
橋本 直樹 野田頭 達也 藤田 正弘 高屋 誠章 熊谷 達夫 田中 正則 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-327, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
26

症例は35歳の女性で, 下腹部腫瘤を主訴とし近医を受診, 卵巣腫瘍の診断で当院産婦人科にて両側付属器切除術が施行された. 組織診にて印環細胞癌と診断されたため, 当院内科にて胃内視鏡検査を施行し, 胃体中部大彎にIIc病変が認められた. 生検にて印環細胞癌と診断され, 当科にて胃全摘術3群郭清を施行, 再建はρ吻合, Roux-Y法で行った. 病理組織学的検討では深達度m, リンパ節転移n2 (+), 脈管侵襲はly (-), v (-) であった. 術後, 化学療法を施行し, 現在外来にて経過観察中である.一般にKrukenberg腫瘍は播種性転移として取り扱われているが, 本症例では肉眼的および腹水細胞診での腹膜播種は認められなかった. 検索した限りでは胃粘膜内癌によるKrukenberg腫瘍の報告は6例のみで, 本症例はまれであると考え報告した.