著者
伊藤 智宏 伊藤 裕子 水谷 峰雄 藤城 克久 古市 幸生 小宮 孝志 樋廻 博重
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.339-344, 2002-05-15
被引用文献数
1 15

アズキ熱水抽出物(アズキ煮汁)の抗腫瘍活性及びその作用機構の一つであるアポトーシス誘導について検討を行った.<BR>アズキ熱水抽出物をDIAION HP-20で処理した後,蒸留水,40%エタノール,60%エタノール,80%エタノールと順に溶出溶媒を切り換え,各溶出画分を得た.これらの溶出画分を用いてヒト胃癌細胞(KATO III cells)の形態学的変化,増殖抑制作用及びアポトーシス誘導により生じるDNAフラグメントの検出を行った.その結果,40%エタノール溶出画分に小球状のアポトーシス小体が観察され,さらにアポトーシス誘導により生じるDNAの断片化を示した.<BR>また,40%エタノール溶出画分によるアポトーシス誘導についてDNA断片化の濃度及び培養時間依存性に関して検討した.その結果,アポトーシス誘導は濃度及び培養時間依存的であることが判明した.また,40%エタノール溶出画分によるヒト正常細胞に対する影響は観察されなかった.以上より,40%エタノール溶出物による抗腫瘍活性機構にはアポトーシス誘導が関与していることが示唆された.
著者
杵淵 美倭子 関谷 美由紀 山崎 彬 山元 皓二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.323-328, 1999-05-15
被引用文献数
8 36

1. コシヒカリの原料玄米中の遊離アミノ酸<BR>コシヒカリの原料玄米からは6.4mgのGABAが抽出された.特に多く含まれていた遊離アミノ酸はアスパラギン,アスパラギン酸,グルタミン酸であった.<BR>2. 圧力処理による玄米の水分変化<BR>400MPaの圧力処理によって玄米中の水分の吸収が早まった.700MPaの場合は圧力処理直後の水分吸収が顕著であった.しかしそれ以降の吸水は無処理のものと比較して大きな差が認められなかった.<BR>3. 圧力処理および浸潰時間による玄米中へのGABAの蓄積<BR>(1) 400 MPaで圧力処理を施し,25℃で浸漬した玄米からは10時間で13.0mg,18時間で18,3mgのGABAが抽出された.200MPa,700MPaでは400MPaよりGABAの蓄積量が少なく,無処理では更に少なかった.<BR>(2) 玄米と水が1:1(w/w),1:0.3(w/w)の場合とも10時間後に玄米中へ蓄積されたGABAの量に違いは認められなかった.<BR>4. その他の遊離アミノ酸の変化(1) 玄米を浸漬することによって多くの遊離アミノ酸が増加したが,400MPaで圧力処理を施した後に浸漬をした場合にはそれが顕著であった.GABAの基質であるグルタミン酸も増加した.しかし圧力処理の有無にかかわらず浸漬中にアスパラギンとアスパラギン酸は減少した.<BR>(2) 圧力処理後浸漬を施した玄米中には無処理に比較して制限アミノ酸であるリジンの増加が認められた.
著者
松木 順子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, 2010-05-15
被引用文献数
4

1982年,Englystらは,アミラーゼ耐性澱粉を難消化性澱粉resistant starch (RS)と名付けた.現在では,1992年EURESTA (RS摂取の生理学的意義に関するヨーロッパ農産業食品関連研究共同作業部会)で定められたRSの定義「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れる澱粉および澱粉分解産物の総量」が広く受け入れられている.<BR>Englystらは澱粉を消化性別に3種に分類し,さらにRSを要因別に3種<SUP>1) </SUP>(後にBrownらにより4種<SUP>2) </SUP>)に分類した(表).RS<SUB>1</SUB>は細胞壁などで物理的に閉じこめられて,消化酵素が接触できない状態のものである.RS<SUB>2</SUB>はX線結晶回折図形がB型を示す生澱粉である.澱粉粒に穴が少ない,結晶部分のアミロペクチンの側鎖長が長く分岐が少ないことなどがRS<SUB>2</SUB>の難消化性の原因と言われるが,詳細は未解明である.RS<SUB>3</SUB>は,一度糊化した澱粉が再結晶して安定な構造をとるようになった老化澱粉である.湿熱処理澱粉,パーボイル加工澱粉,プルラナーゼ処理澱粉なども含まれる.RS<SUB>4</SUB>は化工によりエステル架橋,エーテル架橋などを施して消化性を低くしたものであり,食品加工後も難消化性を保つことができる.<BR>RSの定量は,消化性の澱粉を取り除いた後に残る非消化性澱粉を定量して行う.Megazyme社が販売しているRS測定キットは,AOACおよびAACCの公定法として認められている.<BR>RS<SUB>2</SUB>, RS<SUB>3</SUB>, RS<SUB>4</SUB>は市販されており,これらは一般的に無味,白色で,糊化温度が高く,エクストルーダー加工性,フィルム形成性がよい.非水溶性食物繊維に比べても保水性が低く,食品素材として小麦粉などと一部置換したときの加工性への影響も少ない.また,焼成品へのカリカリした食感や歯ごたえの付与が可能となる.<BR>RSの生理作用として,血糖応答性およびインスリン応答性の改善,腸機能の改善,血中脂肪に関する症状の改善,プレバイオティクス,シンバイオティクスとしての機能などが注目されている.RSを多く含む食品からのグルコースの遊離は緩やかであり,短期的には食後血糖値上昇の抑制,食後インスリン応答の抑制,満腹感の持続などが報告されている.また,インスリン応答の抑制により,貯蔵脂肪の消費促進が期待され,長期的には,2型糖尿病や耐糖能異常などの症状の改善と予防,肥満や体重の管理に役立つことが期待される.消化を免れて大腸に達したRSは,腸内微生物により酪酸を中心とした短鎖脂肪酸(SCFA)となる.SCFAは大腸上皮細胞の主要なエネルギー源となり,上皮細胞の増殖速度を上げて細胞数を維持する.また,消化管の血流量増加,空腸の蠕動運動の促進,結腸内pH低下,炎症反応の抑制,ガン細胞の増殖抑制など,腸の機能に影響を及ぼす.RSの種類別の効果,ヒトでの長期的な効果の検証が待たれる<SUP>3) </SUP>.<BR>RSは,アレルギー反応を起こすという報告もない.食品中の澱粉の一部をRSで置き換えることにより,食事の質を保ちながらカロリーを減らし,さらに食品からのグルコースの遊離を遅くすることができる.生活の質を高め,疾病リスクを低減する機能性食品の素材として,多岐にわたる応用が期待される.
著者
沖谷 明紘 大根田 弥生 久保 友人 石井 剛志 鈴木 理世子 粟田 隆之 砂田 泰志 山下 幸恵 右田 光史郎 松石 昌典 畑江 敬子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-176, 2008-04-15
被引用文献数
2 5 1

(1) スルメイカ外套膜を真空調理したとき,官能による測定では煮えたものの食感をもつ,軟らかい煮イカが得られる加熱時間は,50℃と55℃では4~5時間,60℃では1~4時間であった.この加熱時間で皮(表皮の第3層と第4層の膜で構成)が消失したので筋肉内コラーゲンも可溶化したと推察された.<BR>(2) 60℃で1時間真空調理したイカ肉と80℃で1時間真空加熱したイカ肉の破断強度は,環状筋筋線維に直角および平行に破断したときのいずれの場合も前者のイカ肉の方が小さかったが,両イカ肉間の差は平行に破断したときの方が著しく大きかった.<BR>(3)SDS-PAGE分析の結果,加熱によってイカ肉の筋原線維からアクチンが不可逆的に離脱することが明らかとなった.この反応は60℃で著しく進行し,2時間後でもアクチンは可溶化したままであった.80℃でもこの反応はわずかに認められたが,可溶化アクチンの出現は2分までであった.<BR>(4)(2)と(3)の結果より,60℃で1時間真空調理した煮イカが80℃で1時間加熱した煮イカより軟らかい原因の1つとして,筋肉中で加熱によって起るアクトミオシンからのアクチンの離脱可溶化度合が,前者でより大きいことが推察された.<BR>(5)すべての結果から,真空調理スルメイカ筋肉のソフト化は筋肉内コラーゲンの可溶化と筋原線維からのアクチンの離脱可溶化現象によって惹起されると示唆された.
著者
氏原 邦博 吉元 誠 和田 浩二 永井 竜児 広瀬 直人 照屋 亮
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.343-349, 2009-06-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

黒砂糖の色調,栄養成分,機能性成分および食味等に搾汁機のローラーの材質およびライミング処理が及ぼす影響を調査し,以下の結果を得た.<BR>(1) 市販黒砂糖の暗色化の原因は,搾汁機のローラー由来の鉄とライミング処理によるものであり,これらがアミノカルボニル反応を促進することで着色が進み,暗色化していることが明らかとなった.搾汁機のローラーの材質をステンレスに換え,ライミング処理しないことにより,黒砂糖の色調は明るくなった.<BR>(2) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖は鉄製ローラーで搾汁し,ライミング処理した黒砂糖よりも鉄含量とカルシウム含量は少なかったが,スクロース含量,アミノ酸組成,カリウム含量,マグネシウム含量および機能性成分であるポリフェノール含量は同程度であった.<BR>(3) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖の明るい色調は消費者に好まれ,食味は苦味,えぐみ等が改善されたことにより評価が優れ,料理への適性も高いと考えられた.
著者
辻田 隆廣 高久 武司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.102-108, 2008-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

カンキツ類の未熟果,成熟果果皮及びじょうのう膜に含まれる脂肪分解活性を測定し,比較検討した.未熟果と成熟果の果皮及びじょうのう膜に脂肪分解活性が認められたが,果汁には認められなかった.未熟果の活性が最も高く,じょうのう膜は果皮の約30%であった.果皮ではフラベドがアルベドより約3倍高い活性が認められた.田中の分類によるダイダイ区(イヨカン,アマナツ等)やミカン区(ウンシュウミカン,ポンカン等)のカンキツには強い脂肪分解活性が認められたが,ライム区(タヒチライム等),シトロン区(レモン等)及びザボン区(土佐ブンタン,グレープフルーツ等)のカンキツには強い脂肪分解活性は認められなかった.以上のことより,カンキツの種類により脂肪分解活性は大きく異なり,未熟果,果皮及びじょうのう膜でもその傾向は同じであった.未熟果のシネフリン含量と脂肪分解活性の間には正の相関関係が認められた.<BR>以上のことより,カンキツジュース製造過程の廃棄物である搾汁粕(果皮やじょうのう膜)は,抗肥満作用やコレステロール低下作用を有する機能性食品素材としての利用が考えられる.
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.229-235, 2011-06-15

大豆の浸漬水温の違いによる吸水時間と吸水量の関係を明らかにし,浸漬水温,浸漬時間,加熱時の昇温速度がイソフラボン含量に及ぼす影響を検討した.<BR>(1)平衡吸水量に到達するまでの時間は水温が60℃ではおよそ2時間,40℃では6時間,20℃では17時間であり,5℃では24時間の浸漬でも吸水量が平衡に到達しなかった.<BR>(2)浸漬水温がイソフラボン組成に与える影響は,浸漬時間が12時間では,5, 20, 30℃では浸漬によるイソフラボン組成の変化は浸漬前と比較してほとんど認められなかったが,40℃ではマロニル化配糖体が13%減少しアグリコンが僅かに増加,60℃ではマロニル化配糖体が54%減少し,アグリコンのダイゼインは10倍,ゲニステインは12倍に増加した.さらに60℃ではアグリコンの生成以外に,グリコシド配糖体であるダイジンとゲニスチンが浸漬前と比較してそれぞれ2.5倍に増加した.浸漬時間が24時間と長くなると,さらに前述の増減が著しくなった.<BR>(3)60℃ 1時間加熱と昇温2℃/minのイソフラボン組成は,加熱前と比較してマロニル化配糖体が僅かに減少し,その分アグリコンが増加していた.一方昇温速度が9℃/minと30℃/minは,マロニル化配糖体が加熱前と比較して昇温9℃/minでは38%減少,昇温30℃/minでは40%減少し,グルコシド配糖体はいずれも加熱前の2倍に増加した.<BR>以上のことより,「低温で充分吸水後に,60℃程度の低温加熱を保持」することでアグリコンを多く生成させることが可能となる.さらに「昇温速度を速くする」加熱がマロニル化配糖体を少なくする方法と思われる.
著者
金 哲 宿野部 幸孝 種谷 真一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.10-17, 1997-01-15
被引用文献数
1

回転膜ろ過システムで,連続的に酸カゼインをプロテアーゼMにより加水分解を行い,その分解物を膜ろ過し,運転条件を把握した.<BR>(1)酵素プロテアーゼMによる加水分解物の膜透過液は,運転時間(0~6時間),および(基質濃度S/酵素濃度E)比に関係なく,分子量300~600のペプチドが多い.<BR>(2)反応槽中に酵素液を入れ,その酵素が濃縮される途中の酵素濃縮液および透過液の酵素活性を調べた結果,漏れはごくわずかであった.また透過流束の変化から酵素の膜面付着を調べたが,付着は微量であった.<BR>(3)回転膜ろ過システムでの反応速度が,ミハエリスーメンテンの理論式に従うとすると,ミハエリス定数は2.94%,最大反応速度は33.56%・h-1であった.<BR>(4)透過流束は圧力とともに,増加するが,圧力200kPaで,S/E=3.0%/0.25%,およびS/E=5.0%/1.0%では,運転時間が長くなるほど,透過流束は減少する傾向があった.透過流束量の減少の少ないS/E=3.0%/1.0%が最も良好であった.<BR>(5)反応槽の固形分濃度に対する透過液固形分濃度の割合を基質変換率と定義した.基質変換率は圧力の増加に対して低下する傾向をもち,またS/E比にも関係し,S/E=3.0%/0.25%で低く,S/E=3.0%/1.0%およびS/E=5.0%/1.0%では同じ傾向を示し,35kPaの圧力で最大基質変換率0.85を示した.<BR>(6)平均滞留時間は,圧力の増加につれて減少する.35kPaではS/E=5.0%/1.0%で35kPaのとき13.5hの最高値,S/E=3.0%/1.0%で200kPaのとき1.82hの最低値を示した.<BR>(7)膜回転数に関係するテーラ数と透過流束との関係から,圧力100kPaの場合,透過流束はテーラ数450(1000rpm)で最も低く,678(1500rpm)で最大になり約30.5kg・m-2・h-1の高い値を示し,その後は減少した.<BR>(8)酵素重量に対する膜透過分解物の重量割合で表す生産性からみて,S/E=3.0%/0.25%が最も良好な生産性を示した.
著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.144-148, 1998-02-15
被引用文献数
6 5

野菜ジュースの<SUB>O2</SUB>-消去能を2種類の測定法(NBT法・ルミネッセンス法)で比較した.<BR>(1) NBT法において実験に供した20種類の生ジュースはいずれもO<SUB>2</SUB>-消去能を有していた.特にブロッコリー・キャベツ・ピーマン・ニラ等は強い活性を示した.しかし,ルミネッセンス法ではニンジンの生ジュースに活性は認められなかった.<BR>(2) 加熱処理によりキュウリ・カボチャ・レタスの活性が最も低下した.1O<SUB>2</SUB>消去能が高いと報告されているカロテノイド系の色素を含むトマト・ニンジンも,加熱により活性が低下した.特に,加熱後のニンジンはほとんどO<SUB>2</SUB>-消去能が認められなかった.タマネギ・モヤシ等のフラボノイド系野菜も加熱により活性が低下した.<BR>(3) クロロフィル系野菜は品種によって幅があるが,比較的加熱後もO<SUB>2</SUB>-消去能が持続した.クロロフィル類縁体の存在比率は,生・加熱に関わりなくクロロフィルaが圧倒的に高く,加熱によってクロロフィルaは減少するものの,1/2~2/3量残存した.逆にフェオフィチンaは1.5~2倍に増加した.<BR>一般的に,野菜の色素の中ではカロテンの活性酸素消去能が高いと報告されているが,実際に野菜ジュースにおいて,特に温野菜においてはクロロフィル系の色素を含む野菜に,活性酸素消去能の活性が持続することがわかった.
著者
宮本 敬久 川口 穣 下津 智志 河岸 丈太郎 本城 賢一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-208, 2009-04-15
被引用文献数
2 4

<I>S.</I> Enteritidisのマイクロプレートへの付着を阻害する物質の検索を39種の安全性の高い食品添加物および天然色素について行った.一次スクリーニングの結果,コントロールに比べて<I>S.</I> Enteritidisの付着を阻害したのは,アナトー色素,ガーディニアイエロー,モナスカス色素などの天然色素,アナトーAN,サンブラウンAC,サンイエローNo. 2 AU,サンレッドYM,サンレッドRCFU,サンビートL等の天然色素製剤,プロタミン,唐辛子抽出物,ショ糖ステアリン酸エステル,モノグリセリン脂肪酸エステルなどの食品添加物,ケンフェロールのようなフラボノイドであった.このうちで付着阻害効果の高かったのは,アナトーAN,ガーディニアイエロー,モナスカス色素,プロタミン,モノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルであった.糖脂肪酸エステルではパルミチン酸およびステアリン酸エステルなど脂肪酸鎖長の長いものの方が付着阻害効果も高かった.特にモナスカス色素とショ糖ステアリン酸エステルは0.01%と低濃度でも<I>S.</I> Enteritidisの付着をほぼ完全に阻害したが,この阻害効果は抗菌力に起因するものではなかった.
著者
内田 あゆみ 陶 慧 荻原 淳 松藤 寛 太田 惠教 櫻井 英敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.549-558, 2008-11-15
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

イヌリン含量の高いジャンボリーキの生理学的機能を調べるため,ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットの血糖値および血液生化学的指標とアセトアミノフェン(AAP)投与により発生する肝障害に対するジャンボリーキの凍結乾燥粉末(イヌリン含量60%)(PSII)の影響を検討した.最初の実験ではPSIIをラットのSTZ(60mg/kgbw)処理の1週間後から,2週間投与した.糖負荷試験は7日目と14日目に行った.血液の生化学的指標は14日目に測定した.2番目の実験では2週間,PSIIを投与した後にAAP(500mg/kgbw)を投与し肝障害を発生させた.投与24時間後に肝障害の指標である血中ASTとALTの活性を測定し,また摘出した肝臓の病理組織学的検査を実施した.<BR>最初の実験の糖負荷試験において,1日あたり8.3g/kg(イヌリンとして5.0g/kg)のPSIIの投与により食後血糖値の上昇は抑制されることが確認された.血液の生化学的指標において,総コレステロールとトリグリセリドはSTZ処理により上昇したが,PSIIの投与によりSTZ無処理の値以下に低下した.またASTとALTの活性に低下傾向が観察された.第二の実験において,ASTとALTの活性は低下し,肝臓の壊死と空腔は抑制され,PSIIの肝障害保護作用が確認された.
著者
渡辺 敏郎 川田 あゆみ 井上 美保 石原 伸治 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.415-418, 2007-09-15
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

カキドオシ抽出物が本態性高血圧自然発症ラット(SHR)への血圧上昇抑制に対してどのような影響を及ぼすかを検討した.カキドオシ全草から熱水抽出することで収率20%のカキドオシ抽出物を得た.この抽出物には灰分が多く含まれ,特にカリウム(K)含量が高かった.カキドオシ抽出物を飼料中へ5%添加し,28日間SHRに自由摂取させると,試験14日後から対照群に比べて有意に血圧の上昇を抑制した.24時間尿を採尿し,ナトリウム(Na)およびK排泄率を算出したところ,カキドオシ抽出物を摂取することでNaおよびK排泄率ともに有意に増加した.これはカキドオシ抽出物に含まれるKの摂取によりSHRのNa排泄効果を促したことで,血圧上昇抑制作用を示したものと考えられた.
著者
石原 伸治 川田 あゆみ 井上 美保 渡辺 敏郎 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.412-414, 2007-09-15
参考文献数
8
被引用文献数
2

正常ラットにおけるカキドオシ抽出物の経口糖負荷試験では,ショ糖負荷30分後から60分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.01)な上昇抑制効果を示した.また,ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおける経口糖負荷試験では,ショ糖負荷60分後から90分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.05)な上昇抑制効果を示した.さらに,カキドオシ抽出物を固相抽出カラムでシリカゲル担体吸着画分と非吸着画分に分けたところ,非吸着画分に血糖値上昇抑制作用が認められた.
著者
田幸 正邦 武田 真治 照屋 武志 玉城 志博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.495-502, 2010-12-15
被引用文献数
1 2

著者らは沖縄県で約300年間食されている褐藻類の1種のナガコンブから複数のフコイダンを分離し,それらの化学特性を調べた.ナガコンブから0.1mol/L塩酸で多糖を抽出し,塩化セチルピリジニウムで部分精製を行った.得られた部分精製多糖を陰イオン交換クロマトグラフィーで分画し,4つの画分(LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4)を得た.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の化学組成比には差異が認められたが,いずれの画分もL-フコースおよび硫酸を有していた.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の分子量はそれぞれ27.7×10<SUP>4</SUP>, 1.0×10<SUP>4</SUP>, 0.8×10<SUP>4</SUP>および1.9×10<SUP>4</SUP>であった.主要な画分であるLA-2とその脱硫酸化物の<SUP>1</SUP>H-NMRスペクトルを解析した結果,(1→3)-結合α-L-フコピラノシル残基を主鎖とし,主鎖の一部のα-L-フコピラノシル残基のC2位に(1→2)-α-L-フコピラノシル残基が結合し,さらにこれらのα-L-フコピラノシル基のC4位が硫酸化されている構造が示唆された.画分LA-3とLA-4はフコイダンとガラクタン硫酸が混在したものであることが分かった.
著者
山中 美穂 大田 忠親 福田 哲生 西山 一朗
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.491-494, 2004-09-15
被引用文献数
1 8

マタタビ属果実の品種/系統特性ならびに有効な利用法を検討するため,果汁中に含まれるアクチニジン濃度およびプロテアーゼ活性について調査を行った.用いた12品種/系統のうち,'さぬきゴールド'および'Ananasnaya'では,主要な経済栽培品種である'ヘイワード'と比較して,アクチニジン濃度やプロテアーゼ活性が有意に高値を示した.一方,'ファーストエンペラー','ティアドロップ'および'紅鮮'の果汁では,アクチニジン濃度やプロテアーゼ活性が有意に低値を示した.特に'紅鮮'果汁のプロテアーゼ活性は,'ヘイワード'のわずかに13%であった.
著者
樋渡 一之 成澤 昭芳 保苅 美佳 戸枝 一喜
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.40-43, 2010-01-15
被引用文献数
1 9

γ-アミノ酪酸(GABA)含有米糠発酵エキスを配合した飲料の血圧上昇抑制作用を検証することを目的として,高血圧自然発症ラットを用いた実験を行った.ラットの体重1kg当たり10.1mgのGABAを含む飲料を1日1回強制経口投与し,8週間飼育した.GABAを含む飲料を摂取した群は対照飲料を摂取した群に対して3週目から低値を示した.試験7週目の血圧は,対照群の234mmHgに対して GABA摂取群は218mmHgであり,有意な低値であった.以上の結果より,GABA含有米糠発酵エキスを配合した飲料は,血圧上昇抑制作用を示すことが明らかとなった.
著者
後藤 昌弘 橋本 和弘 山田 喜八
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.50-54, 1995-01-15
参考文献数
5
被引用文献数
4 10

フランスから導入された新しい調理法である真空調理についてその特性を明らかにするため,野菜,果実,肉類などを用いて調理を行い,従来の調理法(普通調理)とアスコルビン酸残存率,テクスチャー,食味のちがいなどを比較した.<BR>1)野菜類では真空調理は普通調理に比べ,アスコルビン酸の流出が少なかった.また,キウイのフルーツソースでは,緑色が保たれた.<BR>2) 肉類の調理では歩どまりがよく,軟らかく仕上がった.<BR>3)香ばしさを出したり,生臭さをなくしたりする必要のある料理は官能検査の評価が低く,適さなかった.<BR>4)肉じゃがや果実のコンポートのように調味液をしみ込ませる料理では官能検査の評価が非常に高く,最も適していると思われた.
著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15
参考文献数
22
被引用文献数
6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.<BR>果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.<BR>これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
金沢 和樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, 2008-04-15

フコキサンチンは,炭素数40のイソプレノイド構造を骨格とするテトラテルペン類で,自然界に600種類余り存在するカロテノイドの一つである.カロテノイドのうち,化学構造に酸素を含むものをキサントフィルと細分類するが,フコキサンチンは褐藻が特異的に生産するキサントフィルで,1914年に発見,1969年に化学構造が決定された(図1).よく知られているキサントフィルに鮭のアスタキサンチン,マリーゴールド色素のルテイン,柑橘のβ-クリプトキサンチンなどがあり,いずれも鮮やかな黄色から橙色なので,古くから食品の着色料として利用されているが,フコキサンチンも鮮橙色である.<BR>褐藻は日本人が好んで食する海藻である.フコキサンチン含量は,生褐藻の場合,新鮮重100gあたりおおよそ,コンブ19mg,ワカメ11mg,アラメ7.5mg,ホンダワラ6.5mg,ヒジキ2.2mgである.日本人は干し海藻にすることが多いが,乾物にするとコンブ2.2mg,ワカメ8.4mg,他は検出限界以下となる.つまり酸化に不安定であるが,これは化学構造にアレン結合があるためと考えられている.褐藻を餌とする貝類のカキやホヤもフコキサンチンを多く含み,さらにアレンが安定なアセチレンとなったハロシンチアキサンチンを含んでいる.<BR>注目を浴びているフコキサンチンの生理機能の一つは発がん予防作用<SUP>1)2)</SUP>である.フコキサンチンがヒト前立腺がん細胞にアポトシースを誘導する作用は,カロテノイド類の中ではもっとも強い.また,結腸がんモデル動物に経口投与すると,前がん病変形成を有意に抑えた.作用機序は,p21<SUP>WAF/Cip1</SUP>というタンパク質の発現を促すことで,その下流のレチノブラストーマタンパク質をリン酸化するサイクリンDとキナーゼ複合体の活性を阻害し,レチノブラストーマタンパク質からの転写因子E2Fの遊離を抑えることであった.結果として,腫瘍細胞の細胞周期をG<SUB>0</SUB>/G<SUB>1</SUB>期で停止させ,腫瘍の増殖を抑えた.<BR>もう一つは宮下和夫らによる興味深い発見,肥満予防効果<SUP>3)</SUP>である.食餌フコキサンチンは,白色脂肪細胞に,ミトコンドリア脱共役タンパク質1の発現を促す.このタンパク質は,本来はATP生産に用いられるミトコンドリアの電気化学ポテンシャルを体熱として放出させる.結果としてフコキサンチンは,脂肪細胞の脂肪を体熱として消費させることで肥満を防ぐ.<BR>フコキサンチンは栄養素ではなく非栄養素である.栄養素は体内に加水分解吸収されて肝臓でエネルギー代謝されるが,非栄養素は加水分解吸収後,まず小腸細胞内で代謝を受ける.小腸細胞内代謝で官能基がグルクロン酸や硫酸抱合を受け,生理活性を示さない化学形態となり,多くは管腔側に排泄さる.したがって,非栄養素がヒト体内で機能性を発揮するか否かは,小腸細胞内でどのような代謝を受けるかによる.フコキサンチンの体内吸収率は数%であるが,小腸細胞吸収時に図1の右環のアセチル基がアルコールのフコキサンチノールに加水分解されるだけで体内吸収される.体内では一時的に脂肪細胞にとどまり,数十日ほどの体内半減期で尿に排泄される.また一部は肝臓で,左環がアマロシアザンチンAに代謝される.長尾昭彦らによると,この2つの代謝物が生理活性の本体である.フコキサンチンを生昆布量に換算して日に100kgを4週間与えても,その動物に異常は認められていない.他のキサントフィルにも過剰摂取毒性は今のところ報告されていない.フコキサンチンなどのキサントフィル類による,ヒトの生活習慣病予防に大きな期待が寄せられている.