著者
岩根 敦子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.163-170, 2009-03-15

(1) 五訂増補の「南部せんべい」成分値は原材料の配合比から算出されており,市販品の実測値と異なることが予想され,特に無機成分含量はゴマや落花生の使用状況による変動が大きいと推測されるため実態を検討した.<BR>また,市販品「ゴマ入り」と「落花生丸粒入り」の実測値とその配合比から求めた計算値との比較考察を行った.<BR>(2) 「ゴマ入り」試料の灰分と各無機成分含量は五訂増補をかなり上回った.「落花生入り」2種の灰分は,五訂増補の2割程度上回り,「丸粒入り」のNa以外の無機成分含量もかなり上回った.「落花生入り」は,製造元や試料個別に主原料以外の副材料が加えられており,無機成分組成への影響は特定できなかった.<BR>(3) 「ゴマ入り」の実測値と計算値を平均値で比較すると,灰分の実測値は有意に高かった.Mg,Ca,P,Cu,Mn,Znの実測値と計算値は正相関を示した.「落花生丸粒入り」は,Mgの実測値は有意に高かった.Kの実測値と計算値は正相関を示した.
著者
津久井 学 永島 俊夫 佐藤 広顕 小嶋 秩夫 谷村 和八郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.575-580, 1999-09-15
被引用文献数
2 3

わが国で栽培されているツクネイモ,イチョウイモ,ナガイモの3種類のヤマイモについて,それらから調製した「とろろ」の粘性の差異の要因を明らかにすることを目的とし,ヤマイモ粘質物の性状,特に多糖の構造について比較検討を行った.<BR>(1) 各ヤマイモの水分量と「とろろ」の粘度には負の相関がみられ,ツクネイモが最も高く,ついでイチョウイモ,ナガイモの順であった.<BR>(2) 佐藤ら4)の方法によって得られた粘質物の収量は,「とろろ」の粘度と相関がみられ,ツクネイモが最も多かった.粘質物は,いずれも糖が88~64%と主成分であり,タンパク質は36~12%を占めた.同一濃度での粘度を比較したところ,「とろろ」と同様にツクネイモが最も粘度が高く,ついでイチョウイモ,ナガイモであり,これらの粘質物の性状に差異のあることが示唆された.<BR>(3) 粘質物の主要構成アミノ酸は,イソロイシン,ロイシン,グリシンなどであった.<BR>(4) 各ヤマイモ粘質物の主成分である多糖は,いずれも平均分子量18000のマンナンであったが,これらの構造には差異がみられた.単位構造はβ-1→4直鎖部分の平均残基数がツクネイモ18,イチョウイモ15,ナガイモ10で,いずれもβ-1→3結合の分岐が1つあり,その残基数は1であった.<BR>粘質物を構成するマンナンの構造は,ヤマイモの種類により異なっており,粘質物ならびに「とろろ」の粘性に影響する要因のひとつであると推察された.
著者
上中 登紀子 森 孝夫 薮野 裕次郎 鷲見 桂一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.651-654, 2006-12-15
被引用文献数
4

牛レバー,ミノ,センマイ,シマ腸,鶏レバー,砂肝などの家畜内臓肉を安全に生食できるようにするため,高圧処理による殺菌効果を検討すると共に,処理前後の内臓肉の官能評価を行い,以下の結果を得た.<BR>(1)6種類の家畜内臓肉に,大腸菌,サルモネラ,黄色ブドウ球菌をそれぞれ10<SUP>1</SUP>~10<SUP>7</SUP>CFU/gの菌数を接種し高圧処理した結果,最も耐圧性の高い黄色ブドウ球菌でも400MPa・10分,6回の繰り返し処理により検出されなくなった.<BR>(2)細菌を接種していない場合の3種類の細菌は,300MPa・30分の高圧処理で検出されなくなった.<BR>(3)殺菌効果の面でのより安全を見込んで,牛レバー,センマイ,鶏レバー,砂肝を400MPa以上の高圧で処理し,処理前後の内臓肉について生食での官能評価(5%有意水準での有意差検定)を行った結果,400MPaの処理では色は悪くなったが,柔らかさ,美味しさには有意の差は認められなかった.500MPaの処理では色,柔らかさ,美味しさ共に明らかに悪くなった.
著者
山崎 慎也 澁澤 登 栗林 剛 唐沢 秀行 大日方 洋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.522-527, 2012-10-15
参考文献数
11

(1) 杏仁をエタノール濃度0&sim;99.5 % (v/v)の水溶液に1&sim;3日間,25℃で浸漬し,アミグダリン量の変化を調べた結果,エタノール濃度10&sim;30% (v/v)の範囲の水溶液に浸漬した杏仁において,特にアミグダリンの低減促進効果が高かった.<BR>(2) 0,20,50% (v/v)のエタノール水溶液に杏仁を浸漬し,アミグダリンの低減における酵素分解と浸漬液への溶出の割合について調べた結果,分解量は20% (v/v),溶出量は50% (v/v)で特に高い数値を示した.<BR>(3) 細胞損傷による酵素溶出がエタノール水溶液による低減の要因である可能性について検討し,エタノール濃度0% (v/v)においてもアミグダリンの減少が見られたことなどから,細胞損傷はエタノール水溶液によるアミグダリン低減機構の直接的な要因ではない考えられた.<BR>(4) 以上の結果から,エタノール水溶液によるアミグダリン低減促進効果の要因の一つとして,杏仁からのアミグダリンの溶出力とエタノール水溶液中での酵素活性のバランスにより,10&sim;30% (v/v)のエタノール濃度で特に高くなったという機構を推察した.<BR>(5) 杏仁を20% (v/v)エタノール水溶液に35℃で2日間浸漬することによってアミグダリン濃度を低減した後,蒸留水に交換してさらに35℃で2日間浸漬し,その後40℃で16時間送風乾燥を行うことで,最終的にシアン化水素残存量を7&mu;g/gまで低減することができた.<BR>本研究の一部は,第58回日本食品科学工学会大会において発表した.
著者
田村 豊
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.375-379, 2013-07-15

食卵は,高い栄養価を有し,比較的安価な動物性タンパク食品である。日本では鶏卵とうずら卵が主なものであるが,外国ではアヒルや七面鳥の卵も食する習慣がある。鶏卵は,生卵として喫食する他,卵加工品および食品の原料としても広範囲に利用されている。生卵を食するというわが国独自の食習慣は,一方で食中毒などの食品衛生上の問題点も指摘されている。一般に食中毒といえば,微生物のみならず化学物質や自然毒を原因とするものも含まれる。その内,微生物を原因とするものは,食品媒介感染症と呼んでいる。しかし,本文では慣用的に用いられる食中毒という表現を用いることにする。食卵に起因する人の健康障害因子としては,病原微生物をはじめ,食物アレルギーのアレルゲン,動脈硬化との関連が指摘されるコレステロールなどが知られている。その内,最も重要なのが病原微生物で,中でも鶏卵のサルモネラ汚染がしばしば深刻な問題を提起している。事実,1990年9月に広島市を中心に1府9県に及んだ大規模なサルモネラ食中毒の発生は記憶に新しい。この事例では,大手の菓子メーカーでティラミスケーキの原料として使われた液卵にSalmonella Enteritidis(以下SE)が混入していた。ケーキの製造過程で室温に長時間放置したためSEが増殖することにより,それを食した若い女性を中心に食中毒が発生した。大手の菓子メーカーが介在したため広域に食中毒が発生し,患者数458名という記録に残る大規模な食中毒となった。このように食卵の衛生で最も注意すべき課題は,いかにSE食中毒を防ぐかである。そこで本解説では,内閣府食品安全委員会が公表したリスクプロファイルを基にサルモネラ食中毒の発生状況,SEの性状と食中毒の特徴,食卵の汚染要因,および対策について概説したい。
著者
平澤 マキ 志村 晃一 清水 章子 村 清司 徳江 千代子 荒井 綜一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.95-101, 2008-03-15
被引用文献数
8

アボカドの食物繊維やポリフェノールの機能性を明らかにするために,その構成成分と特性を解析した.使用したアボカドは水溶性食物繊維5.23±0.53g,不溶性食物繊維11.3±0.71g(可食部100g当たり/無水物)を含んでいた.不溶性食物繊維はペクチン画分 : ヘミセルロース画分 : セルロース画分はそれぞれ20.6% : 43% : 36.4%であり,不溶性食物繊維は膨潤性が大きく,色素吸着能はローズベンガルにおいて高い値を示した.水溶性食物繊維は鉄吸着能も高く,WSPは優れた鉄保持能力をもつことが示唆された.<BR>また,アボカドの抗酸化性は果皮が最も強く,次いで種子,果肉の順であった.果皮にはポリフェノールが多く存在し,種子,果肉は少ないことが認められた.ポリフェノールの組成をGC-MSで測定したところ,カテキン,エピカテキン,クロロゲン酸類が同定され,これらが抗酸化性に寄与していると考えられる.果皮は未利用資源として新たな食品機能性素材に利用されることが期待される.
著者
有山 愛 森 由佳 稲野 美穂 灘本 知憲
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.628-638, 2009-12-15
参考文献数
30
被引用文献数
2

ココア摂取がヒト体表温を上昇させる影響を検討した.被験者は健康な女子学生(18-24歳)とし,体表温と抹消部の血流量を測定指標とした.測定は22℃&plusmn;0.5℃,湿度50%&plusmn;5%の恒温恒湿環境下,4通りの異なった条件で行った.結果は次の通りである.<BR>(1) 実験1では,60℃に加温されたピュアココア飲料による影響を,栄養組成を揃えた飲料,水と比較した.ピュアココアは手首,足首,足指先に,体表温上昇傾向を示した.<BR>(2) 実験2では,37℃に維持したピュアココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.その結果,ピュアココアは手首に体表温維持傾向を示した.<BR>(3) 実験3では,60℃脱脂ココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.脱脂ココアは額における体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)と手指における体表温維持作用(<I>p</I><0.05)を示した.また,同様の傾向は,腹と腰にも示された.<BR>(4) 実験4では,実験3と同じ飲料を用いて就寝前状況を想定した実験を行った.脱脂ココアは栄養組成を揃えた飲料と比較し,腰・足首・足指先で体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)を示した.<BR>以上の結果より,ココア摂取はヒト体表温上昇作用または維持作用があることが示された.また,その効果は脱脂ココアで特に顕著に観察された.
著者
山中 克人
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.603-609, 1996-05-15

手延素麺「揖保乃糸」の貯蔵における油脂の酸化程度は,油脂量,乾燥法及び微生物について,その影響を試験した結果から,次のことが明らかになった.<BR>(1) AVは手延素麺製造直後から増加し続けたが,POVは複雑な挙動が観察されたが,貯蔵期間の長期化とともに減少した.<BR>(2) 製造時,使用する綿実油量はPOVの生成に対して影響を与えなかったが,乾燥法では外干法の方が内干法よりもPOVの生成が抑制された.AVは,塗布油量の多少および乾燥法の影響を受けた.油量を増加して内干法を使用した時,AVは低価であった.<BR>(3) POVの低い手延素麺は,貯蔵中の水分を調節して,15%に保持すれば良い.<BR>(4) POVは手延素麺に生息している微生物の影響を受ける.<I>Eurotium sp</I>.を加えて製造した手延素麺のPOVは製造後2ケ月以上の貯蔵により安定化した.<I>Eurotium, sp</I>.の水溶性代謝物もPOVを抑制した.<BR>(5) 手延素麺ではAVおよびPOV,脂肪酸組成の間には相関は認められなかった.
著者
柴田 克亮 小野 誠 平野 進
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.692-699, 2000-09-15
被引用文献数
1 2

市販のビターチョコレートを用い,融解した及び冷却固化したチョコレートの近赤外拡散反射スペクトルのPLS回帰分析によるテンパリング状態の判定について検討を行い,以下の結果が得られた.<br>(1) 融解したチョコレートのテンパリング状態を判定する検量線の精度は,R=0.85,SEC=0.88及びSEP=1.11であった.一方,冷却固化したチョコレートの場合,R=0.97,SEC=0.34及びSEP=0.57であり,高い精度が得られ,融解したチョコレーと比べ精度が向上した.<br>(2) 検量線を構成するファクターには脂肪及び砂糖に関連するものが含まれていることが明らかとなった.<br>以上のことから,近赤外分光法によりチョコレートのテンパリング状態が判定できることが示唆され,品質管理に応用できるものと考えられた.
著者
三上 正幸 Trang Nguyen Hien 島田 謙一郎 関川 三男 福島 道弘 小野 伴忠
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.152-159, 2007-04-15
被引用文献数
1 5

本研究は豚挽肉から発酵調味料である肉醤を製造し,その性質について検討した.豚挽肉に食塩,麹,胡椒,水およびプロテアーゼとしてAlcalase 2.4Lを加えて,3種の異なった食塩濃度(15,20および25%)のもろみを調製し,30℃,6ケ月間発酵させた.この間,1ケ月後にFlavourzyme 500Lを添加したものも調製した.発酵期間中に細菌数は減少し,6ケ月後に,一般生菌数は3.9~7.0×10<SUP>2</SUP>cfu/g, 乳酸菌数は300以下および大腸菌群は検出されなかった.発酵は1ケ月後から急激に進み,その後緩やかに進んだ.6ケ月後において,もろみからの肉醤の収率は67.0~78.5%,pHは4.76~5.01,タンパク質の回収率は71.9~79.8%,全窒素量は1.7~2.0g/100ml, ペプチド量は3.5~6.3g/100ml, 総遊離アミノ酸量は4.8~7.8g/100mlであった.Flavourzyme 500Lを添加したものは総遊離アミノ酸量が多くなった(<I>p</I><0.05).肉醤の食塩濃度は,15%の食塩でもろみを調製したものは,20.5~20.8%,20%および25%の食塩で調製したものは,22.8~23.5%であった.官能評価の結果は,総合評価で20%の食塩で調製したものが,さらにFlavourzyme 500Lを添加したものが良い評価であった.
著者
石崎 太一 黒田 素央 久野 真奈見 北面 美穂 早渕 仁美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.343-346, 2007-07-15
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

鰹節だしの継続摂取が単純作業負荷によって生じる精神疲労やストレス,および作業効率に対する影響について,健常な成人女性を対象として調査を行った.1週間の非摂取期間の後,被験者に鰹だしを1週間摂取させた.非摂取期間後および鰹節だし摂取期間後に評価を実施した.単純作業負荷として内田-クレペリンテスト(UKP)を行い,UKPの前後にProfile of Mood States(POMS)による気分&middot;感情状態の調査,フリッカー値の測定ならびに唾液コルチゾールの測定を行った.非摂取期間後には,UKP負荷後のフリッカー値は負荷前に比べて有意に低値を示したが,鰹節だし摂取期間後には負荷前後で有意な変化は見られなかった.負荷前の唾液コルチゾール値は非摂取期間後に比べて鰹節だし摂取期間後に有意に低下した.さらに,鰹節だし摂取期間後のUKPの誤答率は,非摂取期間後の誤答率と比較して,有意に低値を示した.これらの結果から,鰹節だしの継続摂取により,単純作業負荷時に精神的疲労が少なくなる傾向,ストレス応答が低下する傾向ならびに計算作業効率の低下が抑制される可能性が示唆された.
著者
寺沢 なお子 山崎 希 福井 優美子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.99-104, 2001-02-15
被引用文献数
7 12

各種フレッシュハーブの抗酸化能の評価及びカレープラント中のポリフェノール類の分離同定を行ない,以下の結果を得た.<BR>(1) ロダン鉄法による抗酸化能測定の結果,新たにカレープラント,スイートラベンダーにおいて32mg BHA/m<I>l</I>/g以上に相当する高い抗酸化能が認められた.<BR>(2) DPPH法によるラジカル消去能測定の結果,ナツメグでは約0.6mg BHA/m<I>l</I>/g,フローレンスフェンネル,イタリアンパセリ,ローズマリー,スペアミント,スイートラベンダー,スーパーアロエでは0.4mg BHA/m<I>l</I>/gと同等かそれ以上に相当する高いラジカル消去能が見られた.<BR>(3) カレープラントのラジカル消去能は総活性の約25%がポリフェノール由来と考えられた.<BR>(4) カレープラント中のポリフェノールをHPLCで検出した結果,ヒドロキノン,没食子酸,レゾルシノール,ピロカテコール,クロロゲン酸,(+)-カテキン,ゲンチシン酸,EGCgと思われるピークが検出され,ゲンチシン酸,EGCg,(+)-カテキンが多く含まれていた.またこれらについてラジカル消去能を測定した結果,EGCgが約500mg BHA/m<I>l</I>/gと特に高かった.以上より,カレープラント中ポリフェノールのラジカル消去能はその活性・含量から主にEGCgに由来すると考えられた.
著者
阿賀 美穂 宮田 学 牛尾 知恵 吉實 知代 有安 利夫 新井 成之 太田 恒孝 福田 恵温
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.374-378, 2007-08-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

トレハロースが口腔内細胞を酸やタバコなどの傷害物質から保護するかについて検討した.培養ヒト細胞粘膜モデルに酸またはタバコ煙成分と同時にトレハロースを添加し,傷害の程度を形態的または定量的に評価した.その結果,トレハロースには,酸またはタバコ煙成分による傷害から細胞を保護する作用があることが示された.これらのことより,のど飴等へのトレハロースの配合添加の有用性が示唆された.
著者
佐藤 恵美子 三木 英三 合谷 祥一 山野 善正
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.737-747, 1995-10-15
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

「煮つめ法」,「滴下法」を用いて調製した胡麻豆腐の調製時における攪拌速度と加熱時間の影響について,テクスチャー測定,クリープ測定,走査型電子顕微鏡による構造観察を行って検討したところ,次のような結果が得られた.<BR>(1) 「煮つめ法」により調製した胡麻豆腐のクリープ曲線は四要素モデル(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>, η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)として解析可能であった.硬さおよび瞬間弾性率,フォークト体弾性率(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>)は,どの攪拌速度においても加熱25分(谷の部分)で最も軟らかくなり,その後加熱時間の増加とともに硬くなった.また,その加熱25分の調製条件が構造的にも均一な蜂の巣状構造を形成した.<BR>「滴下法」によるテクスチャーと加熱時間における一次式の傾きは,加熱45分までの時間依存性を示すもので,攪拌速度が高くなる程,大きくなり,付着性には攪拌速度による依存性が認められた.ニュートン体粘性率,フォークト体粘性率(η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)は加熱時間にともなう変化がテクスチャーの付着性と類似していた.<BR>(2) 走査型顕微鏡観察の結果,加熱15分では不均一な部分があり,加熱25分で均一な空胞が形成され蜂の巣状を示した.さらに加熱攪拌を続けると蜂の巣状構造は崩壊し始めた,250rpm 25minの試料が空胞の形成がよく,最も均一な蜂の巣状の空胞の集合体が観察された.<BR>(3) 胡麻豆腐は葛澱粉を主体とするゲルであり,胡麻の蛋白質と脂質が関与している相分離モデルであると推察される.
著者
茂木 弘之 宇佐見 衛 勝崎 裕隆 今井 邦雄 樋廻 博重 小宮 孝志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.688-691, 2002-10-15
被引用文献数
5

15種の香辛料粉末の80%<B>エタノール</B>抽出物についてヒト白血病細胞の増殖抑制率を調べた。<BR>(1)<B> タイム,ナツメグ,スターアニス,クローブ,トウガラシ,ターメリック,ジンジャー,ガーリック,シナモン,ブラックペーパー,オールスパイス,ローズマリー,セージ,ローレル</B>の抽出物のうち200<B>μ</B>g/mlの濃度で80%以上の細胞増殖抑制率を示したものは<B>タイム,ナツメグ,クローブ,ターメリック,ジンジャー,シナモン,ブラックペーパー,ローズマリー,クミン,ローレル</B>であった。これらの香辛料抽出物の50<B>μ</B>g/ml濃度で細胞増殖抑制率が70%以上のものは<B>ナツメグ,ターメリック,シナモン,ブラックペーパー.ローズマリー,セージ,ローレル</B>であった。香辛料抽出物の10<B>μ</B>g/ml濃度で<B>ターメリック</B>は100%,<B>ローレル</B>は95%の高い細胞増殖抑制率を示したのに対して,他のものはいずれも50%以下であった。<BR>(2) 細胞増殖抑制率の高かった<B>ターメリック</B>と<B>ローレル</B>の抽出物の作用機構としてDNA断片化が観察され,<B>アポトーシス</B>誘導によるものと推定した。
著者
四宮 陽子 宮脇 長人
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-279, 2009-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
1

食料自給率40%の2002年と60%の1970年の食事を国民栄養調査結果などの資料に基づいて再現し,食品構成や栄養バランスおよび食料消費に伴うCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行った.<BR>1. 1970年は和・洋・中の料理の種類に関わらず,ご飯とみそ汁,漬物がベースという食事パターンが多かった.2002年は主食の米が減少し,主菜の肉類や魚介類が豊富に増加し,副菜も季節,産地を問わず贅沢に多様化した.<BR>2. PFCバランスを比較すると1970年の方が理想バランスに近く,2002年はたんぱく質と脂質が増加し,炭水化物が減少していた.<BR>3. 献立から計算された1日平均CO<SUB>2</SUB>排出量は,1970年907g/日に対して,2002年は2743g/日と約3倍に増加し,その差は環境省のCO<SUB>2</SUB>削減目標値1人1日1kgを大幅に超えた.この増加の原因は摂取量増加と自給率低下の両方が考えられる.
著者
大久 長範 大能 俊久 熊谷 昌則
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.91-95, 2006-02-15
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

1)稲庭うどんのタンパク質含量と茹で麺の表面の硬さ(H1),全体の硬さ(H2)及びH2/H1の関係を調べた.H2/H1とタンパク質含量とは負相関になった(r=-0.61).<BR>2)同一企業でタンパク質含量(10.3%,9.6%)の異なる稲庭うどんの空隙を調べたところ,タンパク質含量が低い方が平均長径が大きくなった.<BR>3)各種の稲庭うどんの横断面の空隙率とH2/H1には空隙率が8%から10%に最大値があり,それを越えるとH2/H1が低下するという傾向があった.
著者
法邑 雄司 鈴木 忠直 小阪 英樹 堀田 博 安井 明美
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.619-626, 2006-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
9 12

丹波黒の無機元素組成による産地判別モデルを構築し,丹波黒一粒による産地判別の可能性について検討を行った.<BR>国産,中国産計66点の丹波黒について,約100粒をマイクロ波試料分解装置により酸分解し,ICP-AES法及びICP-MS法により計24元素測定した.後進ステップワイズ法により選択した6元素(Ba, Ca, Mn, Nd, W, Ni)とKの濃度比により,全試料66点について国産,中国産を正しく分類する線形判別モデルを構築した.<BR>モデルの構築に用いた試料65点,及び新たに収集した試料32点の計97点からそれぞれ一粒ずつ取り出し,同様に各元素とKとの濃度比を求めた.6元素とKとの濃度比を,構築した判別モデルに代入したところ,約84%(97点中81点)が適中した.さらに,ICP-MS測定の15元素から選択した3元素(Cd, Cs, V)とKとの濃度比により線形判別モデルを構築し,一粒による産地判別について検討したところ,約94%(97点中91点)を適中し,判別精度の向上を図ることができた.
著者
藤野 正行 何 普明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.618-623, 1998-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
8 5

食用キノコであるタモギタケの加工にともなって生じる煮汁の有効利用に端を発した研究の一環として,熱水抽出物(煮汁)の血糖値抑制効果を調べた.<BR>タモギタケの熱水抽出物は,経口投与により,II型糖尿病モデルマウスKK-A<SUP>y</SUP>の血糖値上昇を抑制し,耐糖能を改善した.<BR>熱水抽出物をβ-グルカナーゼ処理した後,3倍容のエタノールで処理して得たエタノール処理画分は,KK-A<SUP>y</SUP>マウスの血糖値を一時的に抑制したが,作用は微弱であった.<BR>熱水抽出物を対照動物(C57BL/6Jマウス)に投与したが,血糖値および耐糖能に変化はみられなかった.<BR>今後,有効成分の特定と作用機序の解明が必要であるが,本研究は,副生物の有効利用の可能性を示唆した.