著者
高橋 朝歌 松岡 寛樹 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.610-614, 2005-12-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

アリルイソチオシアナートを含む市販の加工食品 (調味浅漬, わさび漬け, のり佃煮) を用いて, 2-チオヒダントイン化合物の検索を行った. その結果, 調味浅漬とのり佃煮からグルタミン酸との反応物であるATH-Gluが生成していることを確認した. また, のり佃煮中にはATH-Val, ATH-Phe, ATH-Leuの存在も確認された.
著者
熊谷 武久 瀬野 公子 渡辺 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.179-184, 2006-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

乳酸菌添加液に玄米を浸漬することによる乳酸菌の付着性を検討した.<BR>(1)米及び米加工品より分離した<I>L. casei</I> subsp. <I>casei</I> 327を乳酸菌スターターとして,コシヒカリ,ミルキークイーン及びこしいぶきの玄米を用い,玄米浸漬液にスターターを添加して37℃,17時間発酵することにより,乳酸菌の増殖が浸漬液及び玄米で見られた.16SrRNA遺伝子塩基配列により当該菌が増殖したことを確認した.<BR>(2)発酵処理した玄米のpHはおおよそ6であり,炊飯後の米飯の食味に影響を及ぼさなかった.<BR>(3)発酵温度の低下により発酵処理玄米の<I>Lactobacillus</I>数が低下し,玄米と浸漬液の配合比及びスターター量の変化では,大きな影響はなかった.<BR>(4)乳酸菌を添加しない区では,乳酸菌以外の菌数が増加し,<I>Enterobacteriaceae</I>が主要な菌であった.<BR>(5)5菌種,7菌株の乳酸菌,全てで発酵液及び発酵処理玄米の<I>Lactobacillus</I>数の増加が見られ,<I>L. acidophilus</I> JCM1132<SUP>T</SUP>のみ生育が悪く,<I>L. casei</I> subsp. <I>casei</I> 327が最も増殖効果が高かった.
著者
伊藤 知子 田中 陽子 成田 美代 磯部 由香
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.463-467, 2007-11-15
被引用文献数
4

ツタンカーメンエンドウの子葉細胞および単離デンプンを用いて,細胞内デンプンの糊化について検討を行った.細胞内デンプンの規則構造の崩壊は,単離デンプンと比較して,崩壊が始まるのが遅く,抑制されることが明らかとなった.また溶解度,膨潤力ともに単離デンプンと比較して抑制されていた.小豆の場合と比較して,細胞壁の性状,また抑制のパターンは若干異なるが,ツタンカーメンエンドウの子葉細胞内デンプンの糊化はその他のあん原料豆と似た性質を示したことから,ツタンカーメンエンドウは製餡適性を有すると考えられた.
著者
木村 俊之
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.57-62, 2010-02-15
参考文献数
24
被引用文献数
2 6

近年の疫学的研究により、食後高血糖が心筋梗塞などの動脈硬化性疾患に対する独立した危険因子であることが明らかにされ、食事後の血糖のコントロールが糖尿病予防のターゲットと考えられている。我々が摂取している食品成分の中には食後血糖値の上昇を穏やかにするものがあり、食習慣に取り入れることで糖尿病の予防効果が期待される。桑葉は古くから糖尿病の予防効果が謳われてきた素材であり、科学的アプローチにより、その有効成分、メカニズム、効能などが解明されつつある。本総説では、桑葉の糖尿病予防食素材への可能性と筆者らの取り組みについて解説する。
著者
丸 勇史 大西 淳 山口 信也 小田 泰雄 掛樋 一晃 太田 泰弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-149, 2001-02-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 6

We examined an estrogen-like activity in the pomegranate (<I>Punica granatum</I>) juice. The juice or its methanol eluate from C18 cartridge competed with 17&beta;-estradiol for estrogen receptor (ER) binding and also stimulated proliferation of human ER-positive cell (MCF-7) <I>in vitro</I>. Furthermore, they effectively increased uterine weight in the ovariectomized rat. On the basis of these data, we concluded that the pomegranate juice contained estrogen-like compounds.
著者
三浦 理代 五明 紀春
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.157-163, 1996-02-15
参考文献数
17
被引用文献数
7

1. 『四訂日本食品標準成分表』搭載の香辛料19種(ラー油を除く)25品目について,α-アミラーゼ,α-グルコシダーゼの活性に及ぼす影響を調べた.<BR>2. 香辛料の磨砕水抽出物に人工基質Starch Azure (α-アミラーゼ),<I>p</I>-nitrophenyl-α-D-glucoside(α-グルコシダーゼ)を加えて酵素反応試験を行った.<BR>3. オールスパイス,シナモン,タイムは加熱処理の有無によらずα-アミラーゼ,α-グルコシダーゼのいずれに対しても強い阻害作用を示した.<BR>4. オールスパイス,シナモン,タイムは加熱処理の有無によらずα-アミラーゼ,α-グルコシターゼのいずれに対しても強い阻害作用を示した.<BR>5. 他の香辛料は対象酵素の種類,加熱処理の有無によって多様な阻害作用,活性化作用を示した.<BR>6. 香辛料の適切な選択による糖尿病予防・治療食への香辛料の応用可能性が示唆された.
著者
肥後 温子 寺本 あい 五十川 友子 引地 由佳里
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.382-391, 2011-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

多機能オーブンレンジのオーブン(Ov),グリル(Gr),スチーム(Sm),マイクロ波(Mw)加熱機能および過熱水蒸気のオーブン加熱機能(SSO),過熱水蒸気のグリル加熱機能(SSG),スチームとマイクロ波の併用加熱機能(Sm+Mw)の違いを,食パンのテクスチャー,水分,焦げ色を指標として比べた.<BR>(1) 過熱水蒸気を使用したSSG, SSOでは加熱初期に急速に軟化し,軟らかさとパリ感を兼ね備えた破断特性が得られた.オーブンとスチームを併用したSm 180℃では軟化効果のみが認められた.<BR>(2) 過熱水蒸気のグリル機能(SSG)では焦げ速度がGrの約2.5倍,過熱水蒸気のオーブン機能(SSO)では焦げ速度がOvの約2倍速く,Sm 180℃では焦げ速度がOvの約1.2倍速かった.<BR>(3) 一定の焦げ色に到達した時間はSSG<SSO<Gr<Sm 180℃<Ovの順となり,短時間で焦げた試料ほど残存水分量が多くなった.<BR>(4) モデル系を使って水分布を調べた結果,SSG, SSOに特有の破断特性は,試料表面の乾燥の速さ,焦げ速度の速さ,内部水分量の多さによって説明することができた.<BR>(5) マイクロ波加熱したパンは急速に硬化し,Ovの約2倍大きい破断特性を示した.スチームを併用することによって硬化時間は遅くなったが,長く加熱するとMwと同じ硬さになった.
著者
三宅 義明 井藤 千裕 糸魚川 政孝
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.38-42, 2013-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

小笠原&middot;島レモンに含まれる機能性成分のフラボノイド,フェニルプロパノイド,クマリン類の特徴を調べることを目的に,低熟度,高熟度の小笠原&middot;島レモン,マイヤーレモン,ユーレカレモン,温州みかんに含まれる各成分を定量分析し,比較検討した.小笠原&middot;島レモンはフラボノイドのヘスペリジンが主成分であり,未熟果実のアルベドに多く含まれていた.マイヤーレモンから単離報告<SUP>8) </SUP>されているフェニルプロパノイドのメイエリンは小笠原&middot;島レモンのアルベドに多く含まれ,ユーレカレモンより高含有であった.小笠原&middot;島レモンに特徴的な物質を単離し,7-メトキシ-5-プレニロキシクマリンと同定した.小笠原&middot;島レモンのクマリン類は,5,7-ジメトキシクマリンと7-メトキシ-5-プレニロキシクマリンが低熟度果実フラベドにユーレカレモンに比べて高含有であった.小笠原&middot;島レモンに含まれるこれら機能性成分の成分組成と含有量は全般的にマイヤーレモンと類似していた.
著者
三宅 義明 井藤 千裕 糸魚川 政孝
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.178-181, 2011-04-15
被引用文献数
1 1 2

マイヤーレモンは,レモン類とマンダリン類の自然交配種と考えられ,これのフラボノイド,クマリンの含有量の特徴をユーレカレモン,ウンシュウミカン,ネーブルオレンジとの比較により調べた.マイヤーレモンのフラボノイドの特徴は,eriocitrin, hesperidin, nobiletinの含量がウンシュウミカン,ネーブルオレンジに類似し,narirutin, 6,8-<I>C</I>-diglucosylapigenin, 6,8-<I>C</I>-diglucosyldiosmetin, diosminはユーレカレモンと類似していた.各果実のフラボノイド含量を主成分分析したところ,主成分第一と主成分第二の散布図ではマイヤーレモンは,ユーレカレモンとマンダリン類(ウンシュウミカン,ネーブルオレンジ)の中間位置であった.クマリンの5-geranyloxy-7-methoxycoumarin, 8-geranyloxypsoralen, 5-geranyloxypsoralenはユーレカレモンに特有に存在し,マイヤーレモンには含まれていなかった.5,7-dimethoxycoumarinはマイヤーレモンに特徴的に高含有であり,果皮緑色の未熟果実に多く含まれていた.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-91, 2004-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

動物エキス中に存在するアンセリンとカルノシンをヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)総量として測定する迅速・簡便な定量法について検討した.熱水抽出した各種動物エキス(牛肉,豚肉,鶏肉及びマグロ煮汁)をTSKG-2500PWXlカラムへ注入し,0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトニトリルを溶媒として流速0.5mL/minで展開し,波長210nmの検出器で検出した.動物エキス中のアンセリンとカルノシンは同じ単一ピークとして溶出され,他の蛋白質,ペプチド及びアミノ酸と分離された.アンセリンとカルノシンで構成される単一ピークにはリジンとアルギニンが微量混在していたが,これらのアミノ酸は波長210nmに吸収を持たないものなので,アンセリン又はカルノシンと同一の溶出位置に検出されたピークはHCDPピークと見なすことが可能であった.本法ではアンセリンとカルノシンの個別定量は出来ないが,各種動物エキス中のHCDP含量を1検体あたりわずか30分で定量が可能であり,この測定値はアミノ酸自動分析計で測定されるアンセリン-カルノシンの合計値と良く一致する結果であった.
著者
遠山 良 種谷 真一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.223-231, 1998-04-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

単軸エクストルーダにより製造した冷麺(水分含量40%前後)に対する加熱殺菌処理(85℃40分程度)の効果について,でんぷんと小麦粉を4:6の割合で混合した原料粉により冷麺を試作して検討し,以下の結果を得た.<BR>1) 加熱殺菌処理は,バレイショでんぷん,サツマイモでんぷん,キャッサバでんぷんのいわゆる根茎由来のでんぷんを使用した麺の茹溶出量を低下させたが,トウモロコシでんぷんでは殆ど変化は見られなかった.<BR>2)多重バイト法により加熱殺菌処理が茹麺のテクスチャーに及ぼす影響を調べた結果,バレイショでんぷんを使用した麺では,加熱殺菌処理によりテンダネス,プラィアビリティ,タフネスは少し増加し,ブリットルネスは僅かに低下した.これに対して,他の3種(サツマイモ,キャッサバ,トウモロコシ)のでんぷんを使用した麺では,キャッサバでんぷんのタフネスが低下したことを除き大きな変化は見られなかった.<BR>3) 加熱殺菌処理前のX線回折像は結晶性を持たないV図形を示すのに対し,加熱殺菌処理直後のX線回折図形には,既に僅かながら結晶性の存在を示すピークが現れていた.また,5日間以上冷蔵した試料には3b,4a,5a,6a環が出現し,加熱殺菌処理前と加熱殺菌処理後では殆ど差は認められなかった.<BR>4) 製造直後の加熱殺菌処理前試料のうち,バレイショでんぷんを使用した麺とキャッサバでんぷんを使用した麺では最初から粘度が高く糊化状態であり,再糊化のピークは観察されなかったが,加熱殺菌処理により,再糊化のピークが出現した.冷蔵10日目試料では,いずれのでんぷんを使用した場合にも再糊化のピークが観察された.加熱殺菌処理により,粘度上昇開始温度や最高粘度時の温度が上昇したが,その効果はそれぞれバレイショでんぷん,サッマイモでんぷんで大きく,キャッサバでんぷん,トウモロコシでんぷんを使用した麺で小さかった.<BR>5) 以上のように,麺の加熱殺菌処理によりでんぷんを湿熱処理した場合に見られるアニーリングと類似した現象が観察された.この効果は特にバレイショでんぷんを使用した場合顕著であり,麺の茹溶出量を減少させるなどの物性改良効果があるものと考えられた.
著者
舘 和彦 小川 宣子 下山田 真 渡邊 乾二 加藤 宏治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.456-462, 2004-09-15
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

乾熱卵白を生中華麺に添加した時の影響について力学物性値の測定と官能試験の結果より評価した.また走査型電子顕微鏡を用いて中華麺の表面および断面構造を解析することにより,以下の結論を得た.<br>(1) 中華麺に乾熱卵白を添加することで茹で伸びを抑制し,破断応力,瞬間弾性率は上昇し,硬さおよび弾力性に改善が見られた.さらに付着性の低下より舌触りが良くなること,引っ張り時の歪率の上昇から伸長が良く切れにくくなっていることが推測された.<br>(2) 官能試験の結果より,乾熱卵白を添加した中華麺は噛みごたえ,弾力性,つるみ感,伸長度において無添加麺や乾燥卵白を添加した麺よりも良い評価となり,且つ高い嗜好性を示した.<br>(3) 走査型電子顕微鏡による観察結果より,乾熱卵白を添加した麺の表面構造は,無添加麺や乾燥卵白を添加した麺と比較して隙間が狭く,滑らかであった.また乾熱卵白を添加した麺の断面構造も,蛋白質によって構成される網目構造が細かく,密であった.
著者
杉山 純一 蔦 瑞樹
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.457-465, 2013-09-15
参考文献数
16
被引用文献数
5

光の指紋の説明をする前に,まず既存の蛍光という現象を説明する。通常,蛍光とは,図1(左)に示すように,ある特定波長成分だけからなる光(励起光)を試料に照射し,それによって生じる様々な波長の光(蛍光スペクトル)のことを指す。日常では,蛍光灯の白色光は,蛍光管の内側から目に見えない短波長の光が蛍光管内側に塗られた蛍光体に照射され,白色光を生じる蛍光現象である。また,よく遊園地のお化け屋敷などの暗闇で,ブラックライトという,これも目に見えない光が白いYシャツにあたると,青白く光ってみえるのも,洗剤やシャツ等に含まれるリン(p)による蛍光現象である。そして,このような蛍光現象を利用して,さまざまな化学成分の判別・定量を行うのが蛍光分析法である。しかし,この場合は,刺激(特定の励起波長)が1種類,それに対する応答(蛍光スペクトル)が1本というひと組の刺激と応答の情報を解析することになる。しかしながら,情報は多ければ多いほど,その中に含まれる有用な情報が抽出できる可能性が高い。そこで,情報量を多くすることを考える。それには,刺激を複数にし(つまり,複数の励起波長を順次走査して照射),それに対する応答(蛍光スペクトル)も複数本,得られれば,図1(右)のような3次元の膨大な情報が得られる。この3次元データを上から見れば,等高線図のようなパターンが観察される。このパターンは,その試料特有の蛍光特性が全て表現されたものと考えられ,蛍光指紋(Fluorescence Fingerprint),または励起蛍光マトリクス(Excitation Emission Matrix)と呼ばれ,本稿が主題とする「光の指紋」である。
著者
御堂 直樹 徳永 美希 磯村 隆士 野口 孝則
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.262-267, 2012-06-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は,摂取するスープの温度が温度感覚,体温および心拍数に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.健常女子大学生13名(22.2 _mls00b1/ 3.2歳)を被験者とし,ランダム化クロスオーバーデザインにて試験を実施した.前夜から絶食した状態で温スープ(87 kcal,70℃),冷スープ(87 kcal,10℃)または温湯(0 kcal,70℃)をそれぞれ異なる日の朝に摂取させ,摂取後60分間の温度感覚,鼓膜温,口腔温,心拍数などを測定した.温度感覚と口腔温の変化量は,摂取直後に温スープと温湯で冷スープに比べ有意に高値を示した.鼓膜温変化量は,3試験区間に有意差が認められなかった.心拍数変化量は,摂取直後に温スープで,冷スープと温湯に比べ有意に高値を示した.摂取直後の口腔温は局部的な温度を反映し,鼓膜温は核心温度を反映すると考えられる.従って,スープ摂取直後の温度感覚の変化には,核心温度ではなく局部的な温度変化が関与すると推察された.また,試験食の中で温スープのみに認められる要因はより高いおいしさであったため,温スープ摂取後の心拍数の変化には,おいしいと感じられる味刺激が関与すると推察された.
著者
濱渦 康範 飯島 悦子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.645-651, 1999-10-15
被引用文献数
5 12

リンゴ果実の果肉抽出物およびその画分について,ポリフェノール組成とSDSミセル内のリノール酸の酸化に対する抗酸化活性を調べた.<BR>(1) 果肉抽出物より酢酸エチルで抽出されるポリフェノール画分(画分B)において,主要な成分はクロロゲン酸,(+)-カテキンおよび(-)-エピカテキン,プロシアニジンオリゴマーおよびフロリジンであり,水溶液に残留したポリフェノール画分(画分A)においてはプロシアニジンポリマーが主要成分であった.<BR>(2) リンゴの果肉ポリフェノールにおける主要成分はカテキン類とその重合体であり,中でもプロシアニジンポリマーが占める割合が最も多かった.<BR>(3) 果肉抽出物のポリフェノール濃度と抗酸化活性の関係は標準(-)-エピカテキン溶液のそれと同程度であったが,画分ごとでみると画分Bの活性が画分Aの活性をやや上回る傾向があった.<BR>(4) 抗酸化活性およびDPPHラジカル消去能は,カテキン類よりもプロシアニジンオリゴマーの方が高かった.プロシアニジンポリマーを含む画分はカテキン類および二~三量体のプロシアニジン画分に比べて抗酸化活性が低かったが,DPPHラジカル消去能は最も高かった.
著者
内田 あゆみ 荻原 淳 熊谷 日登美 赤尾 真 松藤 寛 櫻井 英敏 関口 一郎
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.280-285, 2009-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 5

ジャンボリーキ(大粒ニラネギ)と他のネギ属について,スルフィドおよびスルフィド基質成分を比較した結果,ジャンボリーキは,ニンニクやGHガーリックとは異なり,リーキに近似することが判明した.<BR>すなわち,ジャンボリーキから生成するスルフィドとしてM-SS-M(1.7mg/kg wet wt),M-SS-Pe(15.7mg/kg wet wt kg),P-SS-Pe(7.5mg/kg wet wt),M-SSS-M(21.5mg/kg wet wt),M-SSS-P(10.0mg mg/kg wet wt),M-SSS-Pe(14.0mg/kg wet wt),alk(en)yl CS0として,MCS0(4.1&plusmn;0.5mg/kg wet wt),PCSO(0.1&plusmn;0.3mg/kg wet wt)およびPeCSO(2.4&plusmn;0.4mg/kg wet wt)が検出され,その総量はタマネギ,およびリーキと類似していた.<BR>またスルフィド基質前駆体物質であるGlu-alk(en)yl Cの検索を試みたところ,Glu-PEC(87mg/kg wet wt)が単離,同定された.<BR>従って,ジャンボリーキの低臭気発現機構は,リーキと同様に,基質前駆体物質のGlu-PECが&gamma;-グルタミルトランスペプチダーゼにより<I>S-E</I>-1-プロペニルシステイン(PEC)となり,これが酸化される結果,スルフィド基質であるPeCSOが形成され,もともと存在するalk(en)yl CSOと共にアリイナーゼ(C-Sリアーゼ)によりジアルキルチオスルフィフィネートを経由でスルフィドが形成されるものと推定された.
著者
石井 靖子 中原 久恵 服部 滋 川端 晶子 中村 道徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 1995-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量M<SUB>W</SUB>と分子の広がりを示す慣性半径<I>R</I><SUB>G</SUB>の測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.<BR>その結果M<SUB>W</SUB>と<I>R</I><SUB>G</SUB>の関係は,M<SUB>W</SUB>が(4-5)×10<SUP>6</SUP>近辺に減少する過程では,M<SUB>W</SUB>に対して<I>R</I><SUB>G</SUB>がやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともM<SUB>W</SUB>の減少に対する<I>R</I><SUB>G</SUB>の減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.<BR>更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またM<SUB>W</SUB>や「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.
著者
奚 印慈 山口 敏康 佐藤 實 竹内 昌昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.310-316, 1998-05-15
参考文献数
12
被引用文献数
16

ステビア茎粗抽出物は強い抗酸化活性を示した.その活性は抗酸化指数で葉に比べ5倍程度高く,現在ほとんど利用されていない茎の新たな利用価値を提示した.ステビア抽出末はマイワシ油およびリノール酸に対して100ppmの添加で抗酸化効果を発現した.その効果は同濃度のBHT,α-Tocに匹敵する強さを示した.ステビア抽出末はα-Tocおよびクエン酸を併用することにより抗酸化効果が増強された.<BR>ステビア抽出末の抗酸化有効成分は主として透析外液(分画分子量500)に存在した.外液濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー.薄層クロマトグラフィーで分画し,複数の有効画分を認めた.その多くは,ポリフェノール化合物であったが,最も強い効果を示した成分にはカリウムが高濃度で存在した.