著者
仲田 弘明 長谷川 秀樹 櫻井 博章 田村 雅彦
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-90, 2010-02-15
被引用文献数
1 3

当社は北海道十勝管内に所在する芽室製糖所の製糖工程から,産業利用目的に有用な微生物の取得を行っている.製糖工程の温水浸出汁から取得された乳酸菌を使用し,独自の乳酸菌を用いてサワーブレッドの作製を試みた.<BR>取得された乳酸菌菌株NT株は,16SリボソームDNA配列に基づく相同性検索の結果,ストレプトコッカス・サーモフィルス(<I>Streptococcus thermophilus</I>)と同定された.本菌種は古来よりチーズやヨーグルトの製造等に用いられており,食経験のある菌種である.<BR>NT株を乳酸菌培地で培養し,得られた乳酸菌菌体液を使用して市販スターター(TKスターター)と同じ工程によりサワー種を作製した.製パンは,ストレート法食パンにサワー種を添加しサワーブレッドを焼成し,官能試験,有機酸抽出,香気成分分析,防カビ性能の試験を行い市販スターターサワーブレッドおよびサワー種無添加ブレッド(一般的な食パンに該当)と比較した.<BR>官能試験の結果,NT(NT株を使用したサワーブレッド)は強いチーズ臭のするサワーブレッドであった.NTについてGC-MSにより香気成分を分析したところ,チーズ臭はアセトイン,酪酸に由来するものと考えられた.<BR>また,防カビ試験の結果より,NTは市販スターターよりも高い防カビ性能を保持していた.高い防カビ性能を有する理由として,NT株の生産する有機酸等の抗真菌活性物質が推測されたが,今回の試験では明らかとならなかった.
著者
玉川 浩司 飯塚 崇史 池田 彰男 小池 肇 長沼 慶太 小宮山 美弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.521-527, 1999-08-15
被引用文献数
4

大麦糠由来のポリフェノール抽出物BPE及びそこから分離精製したプロアントシアニジン類(2量体及び3量体)について,幾つかの抗アレルギー活性測定法を用い,その効果を検討した.<BR>(1) BPEは,生体内における炎症に深く関与しているヒアルロニダーゼ活性を濃度依存的に抑制した.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗ピアルロニダーゼ活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと比較して,小さかったが,(-)-EGC,(-)-EC及び(+)-Cよりは大きかった.<BR>(2) 大豆リポキシゲナーゼ活性についても濃度依存的に抑制し,また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗リポキシゲナーゼ活性は,カテキン類と比較して大きいことが判明した.<BR>(3) 感作ヒツジ赤血球における補体価の抑制はBPEの濃度に依存して大きくなった.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗補体活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと同等あるいはそれ以上の効果を示した.
著者
高山 侑樹 稲益 和子 横山 あゆ美 西田 淑男 古市 幸生
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.483-488, 2010-11-15
被引用文献数
2

本研究では,ニガイチゴ果実の成分組成および機能性について検討した.ニガイチゴはラズベリー,イチゴ(トチオトメ)と比較し,ビタミンC含量が少ない果実であった.総ポリフェノール含有量は,ニガイチゴ,ラズベリー,イチゴ(トチオトメ,サガホノカ,アキヒメ)がそれぞれ179.8, 108.7, 108.5, 94.8, 65.6mg/100gであり,イチゴの品種間で差が見られたが,ニガイチゴが最も高い値を示した.また,DPPHラジカル消去活性のIC<SUB>50</SUB>は,ニガイチゴが1.50,ラズベリーが2.31,トチオトメ,サガホノカ,アキヒメがそれぞれ2.32, 3.00, 4.25mg/mlであった.マルターゼ阻害では,予め吸着させたHP-20樹脂より40%エタノールで溶出した画分(40% EtEx)で最も強い作用を示した.正常ラットでのマルトース負荷試験でも,40% EtExを与えた群で血糖上昇が抑制された.これらのことから,ニガイチゴは抗酸化能が強く,血糖上昇抑制に有効な素材であることが示唆された.
著者
岡田 忠司 杉下 朋子 村上 太郎 村井 弘道 三枝 貴代 堀野 俊郎 小野田 明彦 梶本 修身 高橋 励 高橋 丈夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.596-603, 2000-08-15
被引用文献数
29 194 25

医薬品として販売されているγ-アミノ酪酸製剤(合成GABA製剤)は,脳代謝促進作用があり,脳梗塞・脳出血後遺症等,脳血管障害の諸症状の改善や血圧上昇抑制効果が認められている.また最近の医学分野の研究では,更年期障害や初老期の自律神経障害にみられる精神的症状の緩和にも効果があると報告されている.<br>本試験では,コメぬかから分別製造した「GABA蓄積脱脂コメ胚芽」を用いて,更年期及び初老期の被験者20名に対する効果をプラセボとの比較にて検討した.<br>その結果,更年期及び初老期に見られる抑うつ,不眠,イライラ,不定愁訴の自律神経障害の改善に,GABA蓄積脱脂コメ胚芽が高い効果を示すことが明らかになった.またこのほかに,高血圧症や肝機能の改善作用も示され,服用に伴う副作用も全く見られなかったことから,毎日摂取できる機能性食品素材として高い利用価値を有していることも明らかになった.
著者
伊澤 華子 青柳 康夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.459-465, 2006-09-15
被引用文献数
6 12 9

キノコに含まれるACE阻害物質について,野生,栽培種,市販品の食用キノコ計23種を調査した.熱水抽出物のACE阻害活性を調べた結果,シメジモドキ,スミゾメシメジ,ホウキタケ,コウタケなどのキノコに強い阻害活性が認められた.各キノコの抽出固形物のIC<SUB>50</SUB>は,ヌメリスギタケ(野生種,栽培品),コウタケ,ホウキタケ,スミゾメシメジの順で強いことが示された.透析膜による分画では,キノコの種類によりACE阻害を示す物質に特徴があることが示された.<BR>シメジモドキの70%エタノール抽出画分を種々のクロマトグラフィーによる分画を行った結果,ACE阻害物質が単離され,ニコチアナミンであると同定された.シメジモドキに含まれるニコチアナミン量は13.2mg/dry 100gであった.<BR>また,他の23種のキノコについて,ニコチアナミンの有無を調査した結果,ホウキタケに28.7mg/dry 100g含まれていた.イッポンシメジ科ではシメジモドキ以外には含有が認められなかったが,ホウキタケ科では他の種にも存在が認められた.
著者
石崎 太一 黒田 素央 杉田 正明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.225-228, 2006-04-15
被引用文献数
6 17

プラセボ食群を対照とした,シングルブラインドの2群並行試験により,中高年の気分・感情状態に対する鰹だし継続摂取の影響について調査を行った.全被験者を対象とした解析の結果,鰹だし摂取により「眼の疲れ」,POMSの「抑うつ-落込み」得点が有意に低下(改善)することが示された.疲労感を自覚している被験者を対象とした解析の結果,気分アンケートの「疲労感」,「集中力」の項目において,鰹だし群は摂取時に有意に低下(改善)した.また,POMSについて,鰹だし群は「緊張-不安」において有意に低下し,また,TMD(総合感情障害指標)変化量において鰹だし群はプラセボ群よりも有意に低値を示した.すなわち,鰹だし群はプラセボ群と比較して有意にTMDが改善することが示唆された.これらの結果から,味噌汁形態で鰹だしを摂取した時に,気分・感情状態が改善する可能性が示唆された.
著者
野坂 千秋 星川 恵里 足立 和隆 渡邊 乾二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.857-863, 2000-11-15
被引用文献数
2

「ジャガイモの裏ごし操作」における経験の異なる熟練者と非熟練者の違いを明らかにすることを目的として,運動解析法を用い実験を行った.さらにこの解析によって得られたヘラが裏ごし器を押し付ける力,そしてヘラの角度と裏ごしされたジャガイモの性状との関連を観察した.<br>(1) 熟練者の裏ごしは,力の各成分の最大値・力積が非熟練者に比べ有意に小さく,かつヘラの押し付け時の角度も10°以下のこすりつけ状態をとらない操作であることが明らかとなった.一方,非熟練者の動作は,力の各成分の最大値・力積が熟練者と比較して有意に大きく,かつヘラの押し付け時の角度が小さく,こすりつけ状態の長い操作であることが明らかとなった.<br>(2) 裏ごしされたジャガイモの性状を比較すると,非熟練者のジャガイモ細胞の状態は,熟練者のものに比べ細胞外へ流れ出た澱粉が多く,細胞の損傷が観察された.このことから,裏ごし時の力のかけ方やヘラ角度の状態がジャガイモの細胞壁の損傷に影響することが示唆された.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 加藤 芳伸
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.421-427, 2011-09-15
被引用文献数
2

緑茶を対象としてretroposon-like sequence DNA (RLS-DNA)塩基配列の比較解析により品種の判別を試みた.実験には,やぶきた品種のチャ葉より製造した緑茶と,市販されている中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶,そして日本の緑茶用40品種の生茶葉を用いて実験した.RLS-DNAの塩基配列を比較解析することにより,おくみどり,べにふうき等の品種の判別が生茶葉と緑茶葉を用いた場合,共に可能であることが認められた.また,中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶についてもRLS-DNAの多型解析により我が国の緑茶と識別可能であることが認められた.今回の実験から,RLS-DNAを指標とした塩基配列の多型解析は,おくみどり,べにふうき品種等の品種を判別するための手法に適用できるものと考える.
著者
高橋 誠 本間 紀之 諸橋 敬子 中村 幸一 鈴木 保宏
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.394-402, 2009-07-15
被引用文献数
17 24

16品種・系統24点の米を用いて米粉試料を調製し,粗蛋白質含量,アミロース含量,損傷澱粉量および粒度構成を測定した.米粉の粒度は全ての供試材料で200メッシュ通過割合が90%以上だったが,粒度構成は米粉試料により異なった.特徴的な品種は300メッシュ通過割合が他種類に比べ高かった北陸166号であり,損傷澱粉量も少ない傾向が認められた.<BR>グルテンを添加混合した米粉の物性を測定したところ,ファリノグラフ吸水率は品種間差が存在し,米粉のアミロース含量との相関が認められた.一方,米粉パンの比容積や形状は米粉試料により異なり,グルテンを添加混合した米粉中のアミロース含量やビスコグラフ特性と相関がある事が示唆された.なお,米粉パンの最大比容積は米粉のアミロース含量が25%前後で得られると推定された.米粉パンの硬度は米粉のアミロース含量と相関が認められた.焼成後の時間の経過とともにパンの硬度は増加したが,品種により硬度の増加速度に違いが認められた.アミロースや蛋白質含量が同程度の品種に比べ,粉質米や低グルテリン米ではパンの硬度や硬化速度が低いものも存在し,米の蛋白質組成等がパン物性に影響を与えていることが示唆された.以上の結果から,中アミロース米(アミロース含量15~25%程度)が米粉パン製造適性に優れると思われた.
著者
峯木 真知子 棚橋 伸子 設楽 弘之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.266-271, 2003-06-15
被引用文献数
4 5

ダチョウ卵の形状,卵構成,濃厚卵白率,卵黄係数,pH,成分分析,テクスチャーについて検討し,白色レグホーン種鶏卵と比較した.<br>(1) ダチョウ卵は,形状が丸く,鶏卵の20個分に相当する大きさであった.卵殻が厚く,卵殻比が大きく,卵白が卵黄に対して多かった.卵黄の品質を示す卵黄係数は0.17と低く,卵から卵黄を分離すること自身が難しいので,卵黄係数を用いることは難しい.また,濃厚卵白率も個体差が大きく,品質・鮮度判別方法には利用しがたい.<br>(2) ダチョウ卵の一般成分には鶏卵と大差がなかったが,卵白及び卵黄の電気泳動パターンは,ニワトリ卵とは異なるパターンがみられた.ダチョウ卵の卵白の物理的特性では付着性が大きかった.
著者
竹中 真紀子 永谷 幸善 小野 裕嗣 七山 和子 五十部 誠一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.533-537, 2012-10-15

タマネギを原料とした風味付け調味料であるオニオンエキスが高いラジカル消去活性を有していることに着目し,その変動特性を明らかにするために,オニオンエキスの製造工程におけるラジカル消去活性の変動,主要なフラボノイドの含有量および褐変度の変動を追跡した.製造工程のうち,タマネギ搾汁濃縮液を加熱する段階でラジカル消去活性および褐変度が上昇し,遊離糖および遊離アミノ酸の一部ならびに多くのフラボノイドは消失した.オニオンエキスのラジカル消去活性本体はメラノイジンであると考えられ,疎水性相互作用による固相抽出を用いたオニオンエキスの分画において,疎水性の高い画分がより高い褐変度およびラジカル消去活性を有する傾向が見られた.
著者
梶本 修身 平田 洋 中川 聡史 梶本 佳孝 早川 和仁 木村 雅行
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.79-86, 2004-02-15
被引用文献数
13 43

WHO/ISHの血圧の定義・分類で正常高値に該当する者を対象として,FMGのプラセボを対照とした12週間の2重盲検長期摂取試験を実施したところ,以下のことが明らかとなった.<br>被験飲料群では,収縮期血圧が摂取8週間後に有意に低下し,摂取12週間後まで継続して安定した降圧が認められた.また,拡張期血圧は摂取12週間後に有意に低下した.<br>試験期間中,血液および尿検査値の異常はみられず,また,診察所見および自覚的所見において,被験飲料摂取によると思われる重篤な副次的作用は認められなかった.<br>したがって,FMGは,正常高値血圧者に対して,収縮期血圧および拡張期血圧の降下作用を有し,かつ高い安全性を有することが明らかとなった.
著者
宇田 靖 吉田 昭市 後藤 勝利 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.559-562, 2007-12-15
被引用文献数
2

山形県在来のアブラナ科野菜である藤沢カブ(鶴岡市藤沢地区)と雪菜(米沢市上長井地区)およびそれらの漬物製品について特有成分であるグルコシノレート分解生成物をGC-MS分析した.<BR>生鮮藤沢カブでは,主なイソチオシアナート(ITC)は2-フェニルエチル-ITCであり,比較的少量の3-ブテニル-ITCおよび4-ペンテニル-ITCが存在した.しかし,揮発成分の大部分はこれらITCではなく,1-シアノエピチオアルカン類であった.<BR>一方,生鮮雪菜では3-ブテニル-ITCが主なイソチオシアナートであり,これに,比較的少量の4-ペンテニル-ITCと2-フェニルエチル-ITC, 4-メチルチオブチル-ITC, および5-メチルチオペンチル-ITCが検出されたが,生鮮雪菜の場合も藤沢カブと同様にニトリル類が高い割合で検出された.<BR>これに対して,両野菜の漬物では,いずれも生鮮物で多量副生した1-シアノエピチオアルカンの生成がほとんど見られず,ITCが主たる揮発成分となることが示された.したがって,両野菜の漬物はニトリルの生成が劇的に抑制された食物となっている.この点大変興味深い事象であり,このようなニトリル抑制機構については今後なお検討する必要がある.
著者
井原 啓一 加治屋 千鶴 嶋田 康伸 浅野 祐三 小久保 貞之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.553-559, 2005-12-15
被引用文献数
1 5

(1) ホイップ速度の違いによりホイップドクリームの物性に差が見られ, 低速ホイップ品 (回転数 : 120rpm, 140rpm) は保存時の貯蔵弾性率の低下が少なく, 高速ホイップ品 (回転数 : 180rpm, 220rpm) は貯蔵弾性率の低下が大きかった.<br>(2) 低速ホイップ品は脂肪球凝集が生じる前に気泡の導入がほぼ終わり, 高速ホイップ品は気泡の導入途中に脂肪球凝集が生じていると考察された.<br>(3) 低速ホイップ品は1日の冷蔵保存中においても顕著な気泡の巨大化は観察されなかったが, 高速ホイップ品は顕著な気泡の巨大化が見られた. 低速ホイップ品では連続相粘度が高く, 高速ホイップ品では低かったのが原因であると考えられる.<br>(4) 気泡の導入と脂肪球凝集の生じるタイミングが以上の現象の原因である可能性が示唆された.
著者
酒井 昇 程 裕東 半澤 保
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.181-184, 1996-02-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

2450MHzおよび915MHzの周波数において,20℃~75℃の温度範囲で合成糊の誘電特性を測定し,以下の結果を得た.<BR>(1) 合成糊の誘電率は水の値よりも若干小さく,誘電損失は水の値よりも顕著に大きくなった.<BR>(2) 合成糊の浸透深さは水の値よりも顕著に小さい.合成糊は水よりも表面加熱されやすく,合成糊を用いてマイクロ波加熱の可視化を行う場合はこの点を考慮に入れる必要がある.
著者
深井 洋一 田中 廣彦 内藤 成弘
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.597-603, 2011-12-15
参考文献数
25
被引用文献数
1

市田柿の水分分布が関係するカビ発生について新たな知見を得る目的で,予め試験品として選別した健全品とカビ発生品の水分分布を磁気共鳴画像(MRI)法を用いて検討した.1個のカビ発生品を1個または3個の健全品と一緒にスピンエコー法を用いて,0.2テスラの永久磁石と1辺12 cmの開口部をもつソレノイド型検出器を備えた小型MRIで測定した.水分および水分活性に有意差が認められない(<I>p</I> > 0.05)健全品とカビ発生品のMR画像では,NMR信号の強さをMR画像の明るさで表現した場合,両者の明るさに明瞭な違いが認められた.カビ発生品は健全品よりも中果皮,内果皮ともに明るくなるが,内果皮が特に明るくなった.T<SUB>1</SUB>およびT<SUB>2</SUB>緩和時間測定の結果,MR画像の明るい部分では運動性の高い水が増えていた.この明るさの違いは,市田柿のへた側から尻側までのどの横断面でも見られたので,2次元MRIで任意の一断面を測定すれば健全品とカビ発生品の水分分布の違いをとらえることができた.MRIは水分や水分活性ではとらえられなかった市田柿の健全品とカビ発生品の水分分布の違いを,水の運動性の違いからとらえることができたため,品質管理の手段として実用化の進展が期待される.
著者
楠本 憲一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, 2011-03-15
参考文献数
4

メタゲノムとは,ある生物の遺伝子全体を意味する「ゲノム(genome)」に,さらに「超越」を意味するメタ(meta-)を融合した造語であり,微生物群集のゲノムを培養に依存することなく網羅的に解析することをメタゲノム解析と呼ぶ.この解析技術の特徴は,試料中の微生物のDNAを混合物として抽出し,このDNA集合体の塩基配列を解読することである.試料中に含まれる微生物(培養法の不明なものを含む)の種類やその存在比率を推定することを目的として実施される.また,これまで知見のない新たな酵素遺伝子の候補を見出すことが可能である.<BR>塩基配列を自動的に解読するDNAシークエンサーの開発から20年以上を経て,解読能力が大幅に向上した次世代高速シークエンサーが開発され,ゲノム解析は新たな局面を迎えた.その超高速解読能力を利用し,膨大な遺伝子配列情報が蓄積されつつある.メタゲノム解析は,現在,次世代シークエンサーを利用して行われている.<BR>2000年,E. DeLongを中心とする研究グループが,試料中に存在する数十キロ塩基対の長鎖DNAをバクテリア人工染色体ベクターに連結し,これを網羅的に配列解析することで海水中の菌叢解析を実施した<SUP>1)</SUP>.彼らの研究が実質的なメタゲノム解析の端緒であった.次いで,2004年,J. Venterらはサルガッソ海の海洋細菌群集のメタゲノム解析を行い,合計で1兆塩基対の非重複塩基配列を取得し,それらの解析結果から,少なくとも1800種の細菌種の存在と,148種の未知細菌種の存在を推定した.また,12億種類の未知遺伝子を同定し,Science誌に発表した<SUP>2)</SUP>.彼らの研究成果から,彼らのようなアプローチが環境中の微生物群集の解析や,新規有用遺伝子の発見につながることが広く認識されるようになった.その後,上述した次世代高速シークエンサーの開発に伴い,239件(平成22年8月現在)のメタゲノムデータが蓄積されている.現在までに公開されたメタゲノムデータは,Genomes Online Database (http : //www.genomesonline.org/cgi-bin/GOLD/bin/gold.cgi)で公表されている.主として海水,ヒト腸内,土壌,淡水,温泉環境中の微生物群集が解析されている.<BR>このメタゲノム解析は,次世代シークエンサーと共にバイオインフォマティクスの進展が必須であった.バイオインフォマティクスとは,生物学に関わる情報解析学の総称である.通常のゲノム解析は,1種類の生物の網羅的遺伝子解析であり,得られる遺伝子情報は全てその生物に由来した情報である.一方,メタゲノム解析では,複数の生物種の混合した配列情報が得られる.また,存在比の低い種の情報が得られにくい等,試料に含まれる全ての生物種のDNA情報が取得できるとは言えない.そこで,これまでのゲノム解析と異なる概念が必要となる.ゲノム解析の流れとしては,断片化した個々のDNAの配列からなる生データ取得,これらの中から末端配列が共通している配列同士を順次連結していくアセンブリー,その配列の中から遺伝子をコードする領域を見つけ出す遺伝子予測となる.メタゲノム解析では,遺伝子予測をアセンブリーの前に行う場合と後に行う場合があり,研究目的により使い分けられている.また,メタゲノム解析に特化した遺伝子予測プログラムが開発されている.また,予測した遺伝子が由来する生物種を推定する手法も総説で解説される等,一般化されてきている.注意すべきは,次世代シークエンサーもメーカーと機種によりその塩基配列解読原理が異なり,解読鎖長や精度等が異なるため,目的に応じた機種を選択する必要がある.<BR>メタゲノム解析のデータは,次世代シークエンサーの機能改良に伴い,今後急速に増加すると期待される.今後の応用分野としては,エネルギー分野や環境浄化で力を発揮する新規遺伝子資源の開拓<SUP>3)</SUP>,栄養学・医学分野からのヒトの腸内細菌叢解明<SUP>4)</SUP>,難培養微生物を含む環境微生物群集の生態解明等であり,基礎研究成果としてメタゲノム解析に関する学術論文数が多数蓄積している.メタゲノムデータの蓄積と,バイオインフォマティクスの発展,他分野との研究連携によるメタゲノム解析技術の発展が,人類の健康や環境,エネルギー問題等,我々社会の課題解決につながることが期待される.
著者
沢村 信一 原口 康弘 安田 正俊 松坂 修二
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.103-107, 2009-02
被引用文献数
4

抹茶の流動性試験の結果をまとめると以下のようになる.(1) 石臼抹茶,ボールミル抹茶,微粉抹茶の流動開始振動加速度はほぼ同じであった.粗粉抹茶は,流動を開始するのに強い外力を要した.(2) ボールミル抹茶は,流動開始振動加速度と終了加速度が近接しており,非常に流動性が良かった.(3) 石臼抹茶は,帯電しやすく流動性は低かった.帯電は湿度と関連しており,抹茶を取り扱うときはある程度の湿度を保つ方ことで流動性が良くなる.(4) 抹茶は帯電制御によって流動性が向上するので,抹茶を扱うプロセスには除電設備を備えるのが望ましい.(5) Carr流動性指数では,粉砕方法の異なる抹茶の差は小さかったが,本粉粒体流動性試験装置を用いることによって,抹茶の流動性の違いを明確に評価できた.; Matcha, powdered green tea, is difficult to handle in the factory or manufacturing facilities due to its small particle size and low density. In the present study, the powder flowability properties of various matcha samples were investigated using a dynamic powder flow tester with high detection sensitivity to facilitate machine handling during matcha manufacturing. The sample powders were prepared from tea leaves picked during different seasons (i.e. the first, second, third, and fourth crops) using a stone mill or ball mill. Matcha ground with the electrostatically charged stone mill showed poor flowability, whereas that ground with the ball mill showed fairly good flowability. The fine and coarse powders classified after ball-milling had different characteristics. Furthermore, it was found that the electrostatic discharge of matcha can improve flowability, depending on humidity.