著者
長野 隆男 矢野 裕子 西成 勝好
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.344-349, 2003-08-15
被引用文献数
3 2 1

市販の絹ごし豆腐について,圧縮試験による力学物性測定と共焦点顕微鏡によるミクロ構造の観察をおこない,以下の結果を得た.<br>1) 豆腐の圧縮試験から得られた応力-歪み曲線をBST式でよくあらわすことができ,破断応力,破断歪み,ヤング率,弾性パラメーターnの4つのパラメーター値を抽出することができた.<br>2) 共焦点顕微鏡を使用することで,豆腐を固定せずにタンパク質と油滴を特異的に観察できること,1mm程度の厚さのある試料を用いてもタンパク質のネットワーク構造と油滴の状態が画像として得られることが明らかとなった.<br>3) 共焦点顕微鏡による観察結果から,市販の絹ごし豆腐は2つのグループに分けられた.すなわち,タンパク質の凝集が詰まって密にみえる「密構造タイプ」と,凝集が疎で粗い構造を示す「疎構造タイプ」である.<br>4) 「密構造タイプ」と「疎構造タイプ」の違いは,破断歪みの平均値の結果によく表されており,前者は50%より高く後者は50%より小さい値を示した.<br>5) 豆腐の力学物性測定結果は,タンパク質のネットワーク構造とよく相関し,油滴の状態との相関は低いと考えられた.弾性率,破断応力への寄与は,主にタンパク質のネットワーク構造によるためであろう.
著者
大原 浩樹 伊藤 恭子 飯田 博之 松本 均
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.137-145, 2009-03-15
被引用文献数
6 27

魚鱗コラーゲンペプチド(2.5g, 5g, 10g)の3用量の用量設定と豚皮コラーゲンペプチド(10g)の有効性確認を目的に,プラセボ群を設定して各々を4週間摂取して摂取前後の皮膚状態の変化を二重盲検法で比較した.その結果,魚鱗コラーゲンペプチド摂取によりその用量に応じて角層水分量の増加傾向が見られ,特に,30歳以上を対象とした層別解析で魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた.一方,豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった.この結果から,魚鱗コラーゲンペプチドの摂取は角層水分量の増加に有効であると考えられた.また,その他の評価項目(経表皮水分蒸散量,皮膚粘弾性,皮膚所見)に関しては,コラーゲンペプチド摂取に起因すると推定される変化は認められなかった.

17 0 0 0 エクオール

著者
田村 基
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.492-493, 2010-11-15

大豆に含まれる大豆イソフラボンは,種々の生活習慣病予防効果が期待されているフラボノイドの一種である.フラボノイドにはフラボノイド骨格のみからなるアグリコンとフラボノイド骨格に糖が結合したフラボノイド配糖体が存在する.ダイゼインやゲニステインはイソフラボンに属している.味噌や醤油などの大豆製品では,イソフラボンのアグリコンであるダイゼインやゲニステインの割合が多く,逆に,豆腐では,イソフラボン配糖体の割合が多いことが知られている.イソフラボンの一つであるダイジンからは,腸内フローラの代謝によってエクオール(Equol, エコールとも呼ぶ)を生成する(図1).腸内でイソフラボンから産生されるエクオールは,もとのイソフラボンよりもエストロゲン活性が強く,高機能性イソフラボン代謝物とみなされている.そのため,イソフラボンよりもエクオールの機能性の高さが注目されるようになってきている.エクオールは脂質代謝に影響すると考えられている.大豆加工食品を摂取したヒトの中で,エクオール濃度が高いヒトほど血中コレステロールおよび血中トリグリセリド低下効果が顕著であったことが報告されている.また,エクオールの癌予防効果が期待されている.乳癌リスクの低さとエクオール産生量の多さに相関があるという報告やエクオール濃度の高い男性では,前立腺癌のリスクが低い可能性があるといった報告がある.女性は閉経後に女性ホルモンの量が減少することや更年期において様々な障害が発生することが知られており,この更年期障害の緩和にエストロゲンを投与するエストロゲン療法が行われる場合もある.エクオールには弱いエストロゲン活性があるため,エクオールによる更年期障害予防効果や閉経後の骨粗鬆症予防効果が期待されている<SUP>1)</SUP>.一方,エクオール産生性を有する腸内環境が健康機能を高めている可能性も示唆されている.しかし,エクオール産生能は,ヒトによって個人差が大きく,50~70%のヒトは,エクオール産生能が非常に弱いことが知られている.エクオール産生に関与する腸内フローラ(腸内細菌叢)の個々人の違いがこれらエクオール産生能の個人差を生み出していると考えられている.エクオール産生に関与する腸内フローラが,イソフラボン類の機能性発現を含めて生体内で重要な役割を担っていると考えられている.しかしながら,イソフラボン類の代謝変換に関与している具体的な食品成分についての情報はまだ乏しいのが現状である.このような現状に於いても,腸内でエクオールの産生を高める食品は新しい機能性食品(腸内フラボノイド代謝改善食品)としての魅力がある.エクオール産生を向上させる食品に関する研究が報告されている.この報告では,イソフラボンとフラクトオリゴ糖を同時に摂取させたラットのグループでは,イソフラボンのみを摂取したラットのグループよりも血漿エクオール濃度が有意に高く,フラクトオリゴ糖がラットのエクオール産生を向上させることが示唆されている.また,ヒトの調査では,肉食やお茶の摂取とエクオール産生性との相関が認められるとの報告があるが,エクオール産生性を顕著に高める食品成分はまだ見つかっていない.また,エクオール産生性の腸内細菌をエクオール非産生のヒトへ投与することで腸内でのエクオール産生性の向上が期待されるが,腸内細菌の中でエクオール産生性の菌種は非常に少ないと考えられている.内山らは,公的機関より購入したビフィズス菌29株(22菌種),乳酸桿菌184株(52菌種)を用いてダイゼインからのエクオール産生能を検討したところ,いずれの菌もエクオールを産生しないことを見出した<SUP>2)</SUP>.しかし,内山らは,ヒトの糞便からエクオール産生性腸内細菌を見出し,この腸内細菌のヒトへの応用の可能性を論じている.ヒトの腸内でエクオール産生菌を増やしてやるとエクオールを産生できないヒトでもエクオール産生能力が得られることが推察される.現在,エクオール産生を高める食品の報告はほとんどなく,エクオール産生をヒトの腸内で高める機能性食品,腸内フラボノイド代謝改善食品の開発が期待されている<SUP>3)</SUP>.
著者
前橋 健二 有留 芳佳 股野 麻未 山本 泰
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.186-190, 2008-04-15
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

ゴーヤ料理にかつお節がしばしば使用されることに注目し,かつお節の苦味低減作用について検討した.<BR>(1)生ゴーヤおよびゴーヤチャンプルの苦味強度はかつお節をまぶすことによって著しく低下した.<BR>(2)苦味抑制効果はかつお節エキスよりもかつお節エキス調製後のだしがらに著しく認められ,ゴーヤエキスにかつお節だしがらを加えて乳鉢でよく混和したところ,その上清の苦味は大きく減少していた.<BR>(3) かつお節だしがらを詰めたカラムを作成しそれにゴーヤエキスを通したところ,ゴーヤ中の苦味成分はカラムに強く吸着し蒸留水では溶出されなかったが60%エタノールによって溶出された.<BR>これらの結果から,かつお節にはゴーヤ中の苦味物質を強く吸着する性質があることがわかり,この性質によりゴーヤに含まれる苦味成分を舌に感じさせなくすることがかつお節の脱苦味作用であると考えられた.
著者
大久 長範 堀金 明美 大能 俊久 吉田 充
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.522-527, 2005-11-15
被引用文献数
4 4

1) 稲庭うどん, ナンバーワンひやむぎ, 讃岐うどんの圧縮強度 (低圧縮H1, 高圧縮H2) 及びその比 (H2/H1) を求めた.<br>2) 茹で30分後のH2は, ナンバーワンひやむぎで1.9N, 讃岐うどんで2.5Nでに対し, 稲庭うどんでは4N~7Nと大きな値であった. 時間の経過とともにH1とH2は変化するものもあったが, H2/H1比はほぼ一定の値となり, No1ひやむぎが約10, 讃岐うどん約8, 稲庭うどんが13~18であった.<br>3) 茹でた稲庭うどんをMRIにより観察したところ, 空隙があり, 空隙には水が進入していない状態が6時間に渡り維持された. ナンバーワンひやむぎや讃岐うどんにはこのような空隙が観察されなかった.
著者
阿部 利徳 氏家 隆光 笹原 健夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.172-176, 2004-03-15
被引用文献数
5 11

エダマメ9品種および普通大豆5品種を用いて,開花後35日の未熟子実の遊離アミノ酸含量および糖含量の品種間差異,およびこれらの成分がゆで操作により加熱した場合にどのように変化するかを調べた.未熟子実の全遊離アミノ酸含量には顕著な品種間差異が認められた.おいしいエダマメとして知られている白山ダダチャは全遊離アミノ酸は新鮮重1g当たり,11mg含有し,最も多く,含量の少ない品種の約3倍量含有していた.遊離アミノ酸の中で,特に呈味性アミノ酸のグルタミン酸,アスパラギンおよびアラニン含量が多く,この3種の遊離アミノ酸で全遊離アミノ酸の約50%を占めた.白山ダダチャの他,サッポロミドリ,青ばた,かほりが比較的高く,その他のエダマメ品種や普通大豆品種は低い含量であった.また,3分間煮沸水中でゆでた場合,多くのアミノ酸は含量がやや減少した.平均して全遊離アミノ酸は74%に減少した.全糖およびショ糖含量の品種間差異をみると,白山ダダチャが最も多く,新鮮重1g当たり全糖で約47mg,ショ糖では約30mg含有していた.白山ダダチャに次いで,青ばたと秘伝が多く含有していた.3分間煮沸水中でゆでた後のショ糖含量の増減は認められなかったが,全糖含量は平均して1.5倍に増加した.
著者
小早川 知子 松尾 和吉 橋本 忠明 築山 良一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.336-345, 2010-08-15
被引用文献数
2 2

淡口醤油パラドックスともいえる淡口醤油の調理特性をあきらかにするため,淡口醤油と濃口醤油での「塩味」「かつおだし風味」「煮干だし風味」「昆布だし風味」の閾値を2点識別試験片側検定にて比較した.さらに,醤油とかつおだしを組み合わせた時の減塩効果についてプロビット解析により検討を行い,以下の知見を得た.<BR>(1) 「塩味」の閾値は喫食時を想定して設定した3種類(0.92%,1.28%,2.75%)すべての食塩濃度範囲で濃口醤油より淡口醤油の方が低いことが明らかとなった.<BR>(2) 「かつおだし風味」「昆布だし風味」の閾値は,食塩水,濃口醤油よりも淡口醤油が低い結果となった.<BR>(3) 「煮干だし風味」の閾値は,醤油使用量が多い5.6%濃口が最も低い結果となった.5%淡口醤油,5%濃口醤油の閾値に差は見られなかった.<BR>(4) 0.90%食塩水と同等の塩味の強さと感じる等価食塩濃度は2%,3%,6%のかつおだし溶液それぞれ0.903%,0.894%,0.843%となり,だし濃度が高くなるほど塩味を強く感じる傾向を示したが,95%の信頼限界域から判断して,濃厚な6%かつおだしにのみ減塩効果が認められ,通常のだし濃度3%以下では減塩効果はなかった.<BR>(5) 4%淡口醤油,4%濃口醤油そのものには減塩効果はなかった.<BR>(6) 3%かつおだしと4%醤油を併用した場合の0.90%食塩水との等価食塩濃度は,淡口醤油の場合0.872%,濃口醤油の場合0.891%と共に減塩の傾向を示したが,95%信頼限界域から判断して淡口醤油の場合のみ有意な減塩効果が認められた.<BR>以上より,調理に淡口醤油を使うことは,目的とする塩味に調節し易く,且つ,だし風味を効かせた低塩料理につながることが強く示唆される結果となった.
著者
恒次 祐子 芦谷 浩明 嶋田 真知子 上脇 達也 森川 岳 小島 隆矢 宮崎 良文
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.347-354, 2005-08-15
被引用文献数
3 1

5種類の味と香りの異なるチョコレートに対する主観的快適感と被験者の性別およびパーソナリティの関係を検討したところ, 以下の結果が得られた.<br>1) 女性群においては,<br>i) チョコレート全体に対する快適感が男性群よりも有意に高いこと, ならびに個別のチョコレートについては, 苦みを強くしたチョコレートにおいて快適感が男性群よりも有意に高く, オーク材抽出物を添加したチョコレートにおいても高い傾向にあることが認められた.<br>ii) 快適感に対する男性性ならびに女性性の有意な正の影響が認められた.<br>2) 男性群においては,<br>i) 快適感に対するタイプA型傾向の有意な正の影響が認められ, 特性不安の有意な負の影響が認められた.<br>3) チョコレート別の快適感とパーソナリティとの関係について,<br>i) 男性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートの快適感と女性性との間に有意な正の相関が認められた.<br>ii) 女性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートならびに甘みを強くしたチョコレートの快適感と男性性との間に有意な正の相関が認められた.<br>以上により, チョコレートの快適感に評価者個々人のパーソナリティが影響を与えていることが明らかとなった. 今後個人の価値観や好みを重視したチョコレートの創造を検討していく上で, 有用な示唆を与えるものと考えられる.
著者
柴原 裕亮
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, 2008-11-15
参考文献数
2

甲殻類アレルギーは,エビ,カニといった甲殻類を摂食することにより,蕁麻疹,呼吸困難,眼瞼浮腫,嘔吐,咽頭瘙痒感に加え様々な全身症状を呈するもので,時にアナフィラキシーショック症状を発現する.甲殻類の主要なアレルギー誘発物質(アレルゲン)であるトロポミオシンは分子量3.5~3.8万のサブユニット2つからなる2量体で,アクチン,トロポニンとともに細い筋原繊維を構成している熱に安定なタンパク質である.各種甲殻類のトロポミオシンはお互いに抗原交差性を示すが<SUP>1)</SUP>,これは甲殻類間におけるトロポミオシンのアミノ酸配列の相同性が高いためでえび類のブラウンシュリンプを,クルマエビ(えび類),アメリカンロブスター(ざりがに類),シマイシガニ(かに類)とそれぞれ比較すると,すべて90%以上と非常に高い値を示している.さらに,ブラウンシュリンプのトロポミオシンについては,全配列をカバーするペプチドとエビアレルギー患者の血清IgEを用いた評価から主要なIgE結合エピトープが報告されている.これらのエピトープの部分配列は他の甲殻類においてもよく保存されており,抗原交差性を裏付けている.また,甲殻類以外とのアミノ酸配列の相同性は,上記と同じくブラウンシュリンプとの比較で,甲殻類と同じ節足動物に属するゴキブリ類,ダニ類が約80%,軟体動物のたこ類,いか類,貝類が60%程度で,いずれも抗原交差性が確認されている.一方,脊椎動物の鳥類,哺乳類もアミノ酸配列の相同性は60%程度なものの,抗原交差性は確認されていない.これらの抗原交差性の違いは節足動物および軟体動物では甲殻類とIgE結合エピトープのアミノ酸配列の相同性が高いが,脊椎動物では低いことに起因すると考えられる.<BR>平成14年4月より本格的に開始されたアレルギー物質を含む食品表示制度において,甲殻類(えび・かに)は過去に一定の頻度でアレルギーの発症が確認され,引き続き調査を必要とする品目であることから,特定原材料に準ずる20品目に含まれた.その後も調査は継続され,平成17年度の調査ではアナフィラキシーショック症状を誘発した食品として「えび」は特定原材料に次ぐ6位であった<SUP>2)</SUP>.一方,「かに」は13位で「えび」と比較して頻度は少ないものの,エビアレルギー患者の65%が「かに」に対しても反応することから,「えび」と「かに」との交差性の頻度の高いことが確認された.このような新たな知見によりアレルギー表示対象品目の見直しが行われ,「えび」「かに」は平成20年6月より特定原材料に追加された.さらに表示の範囲も,従来の「えび」の範囲である日本標準商品分類の分類番号7133 えび類(いせえび・ざりがに類を除く)に加えて,7134 いせえび・うちわえび・ざりがに類が追加された.また,「かに」については7135 かに類を範囲としており,「えび」「かに」は生物学的に十脚目に分類される甲殻類を表示の範囲としている.
著者
本多 正史 石崎 太一 黒田 素央
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.443-446, 2006-08-15
被引用文献数
7 23

本評価では,(1) 1日4時間以上VDT作業を行っている労働者であり,(2) 11名中9名が「眼が疲れる」「眼がかすむ」「肩,腰がこる」を感じており,(3) 平均年齢が45.7&plusmn;7.8歳のパネル11名(男性)を対象に解析を行い,以下2点が明らかになった.<BR>(1)鰹節だしの4週間継続摂取により,自覚症状に関して,眼精疲労にみられる「眼が疲れる」「眼がかすむ」「涙がでる」「眼が赤くなる」などの項目が初期値に比べて主に摂取3週目,4週目で改善傾向を示した.<BR>(2)フリッカーテストの結果,主に夕方のフリッカー値が初期値に比べて摂取4週目で有意に上昇した.前観察期間のフリッカー値の&Delta;(朝-夕方)の平均値を基準に層別解析を行った結果,平均以上のパネルでは,顕著に&Delta;(朝-夕方)が低下した.平均以下のパネルでは,ほとんど変化しなかった.<BR>以上の結果から,鰹節だし摂取により眼精疲労が改善される可能性が示唆された.
著者
立花 正一 中沢 孝 渋川 喜和夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.583-588, 2008-12-15
参考文献数
7

宇宙環境のストレスと宇宙食。1961年4月に旧ソ連のガガーリン宇宙飛行士が初めて宇宙に飛び出してから既に50年を経ようとしている。有人宇宙開発もアメリカと旧ソ連が互いに覇権を争っていた「競争」の時代から、現在地上約400kmの軌道上に建設が進む国際宇宙ステーション(ISS:15カ国の国際共同プロジェクト)が象徴するように「協力」の時代に人っていると言える。我が国も今年3月と6月に「きぼう」という愛称の科学実験棟の主な部分(船内保管室、船内実験室、及びロボットアーム)を相次いで打上げ、ISSに首尾よく取り付けたことで、このプロジェクトの主要なメンバーとして本格的に活動を始めた。来年2月にはJAXAの若田飛行士が我が国初の宇宙長期滞在(3ケ月)に挑み、ISS内での科学実験を本格化させると共に、「きぼう」の最後のパーツである船外実験プラットホームのISSへの組み込み作業に主体的に取り組むことになっている。2009年中にはISSの乗組員の数は3人から6人に倍増する予定で、その後は若田飛行士に続いてJAXA飛行士が次々と約6ケ月の長期滞在ミッションに参加することになる。これまでスペースシャトルでの2週間ぐらいの短期ミッションしか経験の無かった我が国が、いよいよ6ケ月間を基本とする長期宇宙滞在に参加するわけである。
著者
高橋 陽子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, 2011-04-15
被引用文献数
1 1 2

繊維質とは,自然に放置しても分解されにくく,動物によっても消化されにくい成分のことを指す.本来,ヒトの消化酵素で消化されない繊維質は,生理的意義が低い非栄養素とされてきたが,難消化性の繊維質はヒトの健康維持に重要な役割を果たすことが次第に知られるようになった.食物繊維とは多糖類のひとつであるが,日本食品標準成分表2010では「ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」と定義されている.ヒトの炭水化物消化酵素であるアミラーゼは,デンプンを構成している糖分子のα結合を分解できるが,食物繊維を形成しているβ結合を分解する能力がない.従来,食物繊維はエネルギー源にならないと考えられていたが,実際は,消化されない食物繊維の一部が腸内細菌により発酵分解されて短鎖脂肪酸とガスになるため,エネルギー量はゼロにはならない.また,食物繊維はタンパク質,脂質,炭水化物(糖質),ビタミン,ミネラルに次いで,ヒトに不可欠な第六の栄養素として数えられるようになっている.<BR>食物繊維は水に溶けない不溶性(water-insoluble dietary fiber ; IDF)と水に溶ける水溶性(water-soluble dietary fiber ; SDF)に大別される.一般的に食物繊維は,食物の咀嚼回数や消化液の分泌を増加させたり,便通や腸内環境を改善したりするが,不溶性と水溶性で異なる生理作用もある.不溶性食物繊維は保水性が良く,便量の増加や腸の蠕動運動の促進,脂肪や胆汁酸,発がん物質等の吸着・排出作用がある.水溶性食物繊維は,糖の消化吸収を緩慢にして血糖値の急な上昇を抑える糖尿病予防効果,胆汁酸の再吸収を抑えてコレステロールの産生を減らす脂質異常症の抑制効果が期待できる.また,水分を吸収してゲル化するため,胃腸粘膜の保護や空腹感の抑制作用がある.<BR>不溶性食物繊維には植物体を構成するセルロース,ヘミセルロース,リグニン,エビやカニ類の外骨格成分であるキチン・キトサンがある.セルロースは植物の細胞壁の主成分で,野菜や穀類の外皮に多く含まれる.グルコースがβ-1,4結合により直鎖状に連なってリボン状に折り重なる構造をしているため,力学的に強固な物質である.ヘミセルロースも細胞壁を構成する不溶性食物繊維であるが,セルロースを構成するグルコースが他の糖で置換された多糖類である.糖分子の種類によって水溶性が異なり,マンナン(グルコマンナンとも呼ばれるコンニャクの成分.グルコースとマンノースがβ-1,4結合したもの),β-グルカン(キノコ類や酵母類に含まれる.グルコースがβ-1,3または-1,4結合したもの),キシラン(細胞壁の成分であるキシロースがβ-1,4結合したもの)等がある.リグニンは果物や野菜の茎,穀類の外皮に含まれる木質の繊維である.キチンはセルロースに構造が似ているが,N-アセチル-D-グルコサミンが連なるアミノ多糖であり,キトサンはキチンからアセチル基が除かれたD-グルコサミン単位からなるものである.水溶性食物繊維にはガム質,ペクチン,藻類多糖類等が分類される.ガム質は植物の分泌液や種子に含まれている粘質物で,代表的なものにグアー豆に含まれるグアーガム(マンノース2分子に1分子のガラクトースの側鎖をもつ多糖類)がある.ペクチンはガラクツロン酸がα-1,4結合した構造をしており,腸内細菌では分解できるがヒトの消化酵素では分解できない.果物類に多く含まれ,水分を吸収してゲル化する性質があり,砂糖と酸を加えて加熱調理するジャムやゼリーの製造に利用されている.藻類多糖類には渇藻類に多いアルギン酸,紅藻類に多いフコイダン,寒天の主成分であるアガロース等がある.この他に,トウモロコシを原料として人工的に合成されるポリデキストロースや難消化性デキストリンも食物繊維として使用されている.<BR>食物繊維の摂取目標量は,日本人の食事摂取基準(2010年版)によると,18歳以上では1日あたり男性19g以上,女性17g以上とされている.日本人の食物繊維摂取量は,食生活の欧米化や穀類,芋類,野菜類,豆類の摂取減少の影響を受けて第二次世界大戦後から年々減り続けており,実際の摂取量は若い世代を中心に目標量を満たさない状況が続いている.
著者
黒田 澤井 玲子 佐々木 裕 西川 智子 黒田 和道 桜井 孝治 山本 樹生 清水 一史
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.496-498, 2011-10-15
被引用文献数
2

我々は,カリン(<I>Chaenomeles sinensis</I>)中の高分子ポリフェノールの季節性インフルエンザウイルス A/Udorn/ 307/72 (H3N2)に対する感染性中和活性および赤血球凝集抑制効果を既に報告している.<BR> カリン中の活性画分CSD3を用いて,新型インフルエンザウイルス A/Chiba/1001/2009 (H1N1) pdm に対する赤血球凝集抑制活性および感染性中和活性を評価したところ,5 μg/ml のCSD3で処理したウイルスは赤血球凝集価が約1/2に,感染性が約1/10に減少することが明らかになった.250 μg/mlの処理では感染価は1/3 000に減少したこれらの結果は,カリン中の抗インフルエンザウイルス活性成分は,H1N1新型インフルエンザウイルスに対しても有効であることを示す.更に,赤血球凝集価の減少以上に感染性が減少したことからウイルス吸着段階以降における抑制作用の存在が示唆された.
著者
大富 あき子 田島 真理子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.20-30, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

めんつゆの味に関して,SD法を用いて食味特性(プロフィール)と品質(分析値)との関連を調べ,めんつゆの材料が味にどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的に,材料の種類や割合を変えた16種のつゆを調製し,SD法による食味特性評定および一般成分分析を行った.重回帰分析,因子分析を行い,次の結果を得た.<BR>(1) 砂糖を少量増したつゆ,鰹節をIMPに等量置換したつゆはおいしさを保っており,鰹節や昆布を増量したつゆ,MSGを添加したつゆはだしの味やうま味は増強されたものの,多すぎると必ずしもおいしいとの評価にはつながらなかった.昆布をMSGに置換したつゆは,コントロールと有意な差がなく昆布の代用としておいしさを保てることがわかった.<BR>(2) 一般成分分析値と食味特性値との重回帰分析結果より,グルタミン酸濃度はつゆの特性にかなり大きな影響を与えていたが,食味特性としての塩味には特徴があったにもかかわらず,食塩濃度分析値はつゆの特性に対して影響は少なかった.また,全糖濃度も甘味,かど,ひきしまった味以外にはあまり影響を与えてはいなかった.<BR>(3) 因子分析の結果,「複雑な濃厚さ」「つゆのシャープさ」「だしとうま味」の3つの特性が認められた.鰹節を増量したつゆ,濃口醤油に置換したそれぞれのつゆは特にこれら3つの特性が強く認められたので,この両者を適量使用することにより,複雑な濃厚さ,シャープさ,だしとうま味をつゆに付与できることがわかった.<BR>以上より,つゆの材料としてMSGを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することがわかった.
著者
箭田 浩士 我藤 伸樹 永友 榮徳 忠田 吉弘 小野 裕嗣 吉田 充
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.188-192, 2003-04-15
被引用文献数
3 2

梅肉エキス中のMFについて,固相抽出カートリッジを用いた前処理法ならびにHPLCによる分析法を確立した.これにより,梅肉エキス中のMFを迅速・簡便に回収率良く抽出し,定量分析することが可能になった.<br>また,MFの正確なモル吸光係数1.78×10<sup>4</sup>(λ<sub>max</sub>282nm,water)を決定した.これにより吸光度からMF標準溶液のモル濃度を決定することができる.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005-08-15
被引用文献数
9 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.<br>1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, "もちもち" "ぷりぷり" など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.<br>テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
保井 久子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.191-192, 2009-03-15
被引用文献数
1

ヒトや動物には,外敵から身体を守るために免疫系が備わっている.多くのウイルスや病原菌の侵入口である粘膜面には効果的な「粘膜免疫」が存在し,抗原特異的分泌型IgA応答や細胞障害性T細胞(CTL)を誘導する.各粘膜は共通粘膜免疫機構(common mucosal immune system(CMIS))により関連をもち,ある粘膜組織で誘導されたIgA産生細胞やCTLは他の粘膜組織にも帰巣(ホーミング)する.とくに,分泌型IgA産生細胞は,腸管関連リンパ組織(GALT),鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)および気管支関連リンパ組織(BALT)などの誘導組織(inductive site)で誘導され,実効組織(effector site)である腸管粘膜固有層,呼吸器粘膜固有層,乳腺,涙腺,唾液腺,泌尿生殖器にホーミングする.抗原により直接暴露された粘膜組織において最も強いホーミングがおこり,強い免疫応答がみられ,それに準じた免疫応答が隣接する粘膜組織でみられる.例外として抗原の経鼻投与では,呼吸器粘膜だけでなく,生殖器粘膜にも抗原特異的免疫応答が誘導される.<BR>腸管や鼻咽頭からの抗原は,それぞれパイエル板やNALT/BALTのM細胞に取り込まれ,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に送られ,その後,B細胞およびT細胞に提示される.感作されたB細胞およびT細胞はホーミングを開始し,体内循環をし,各実効組織に到達する.B細胞が産生するIgAは,上皮細胞で産生される分泌片と結合して分泌型IgAとして各粘膜面に分泌される.そして,侵入したウイルス,細菌,細菌毒素,アレルゲンなどと免疫結合体を作り,これらを排除する<SUP>1)</SUP>.<BR>多くの粘膜経由の感染症に対する最適な防御は粘膜面と全身系で免疫を誘導することである.抗原投与法と免疫応答との関係を図1に示した.従来の注射によるワクチンでは血中IgG抗体価で代表される全身系での免疫は誘導できるものの,分泌型IgAに代表される粘膜面での免疫は効果的に誘導できない.これに対して,腸管や鼻咽頭などの粘膜面をターゲットとして経口あるいは経鼻的な経粘膜に投与されたワクチン,いわゆる「粘膜ワクチン」では粘膜面での感染侵入防止と全身系免疫での防御の両方が誘導できる.現在,多くの粘膜ワクチンの開発が進められている.経口投与では,近隣の唾液,消化管,乳汁のIgAの上昇が大きい.経鼻投与では近隣の鼻,唾液,肺のIgA抗体の上昇が大きく,遠隔に存在する女性生殖器での抗原特異的分泌型IgAおよびCTLの誘導も報告されている.このことから,HIV(human immunodeficiency virus)の粘膜ワクチン開発には経鼻投与経路も考えられている.<BR>現在,国際的に認可されている粘膜ワクチンを表1に示した<SUP>2)</SUP>.コレラやロタウイルスなどの胃腸感染症では投与方法として経口投与が選択される.一方,呼吸器感染症であるインフルエンザでは経鼻投与が選択されていることがわかる.しかし,現在日本で承認されているのは経口ポリオワクチンのみである.<BR>種々の感染症に合わせたワクチンの投与経路の選択は重要である.経口ワクチンは従来の注射によるワクチンや他の経粘膜投与法に比較して,投与の際に特別な医療器具を必要としないため,最も簡便かつ安全な投与方法といえる.しかし,経口的に投与された抗原は,大半が胃,腸などで消化作用を受けた後,パイエル板などの粘膜免疫誘導組織に到達するため,効果的な抗原特異的免疫応答を誘導するためには多量の抗原を必要とする.このため,ワクチンの抗原の安定性と粘膜免疫誘導組織へのワクチン抗原の効率の良い送達を得ることが経口ワクチンの開発において重要な鍵となる.一方,経鼻ワクチンは,NALTにより効率の良い抗原処理が行われ,酵素による分解が少ないため,少量の抗原で効果が得られるなどの利点を有している.今後,経鼻ワクチンについての研究を重ね安全性などを確認する必要があろう.
著者
山崎 勝利 鳴戸 康 上田 要一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.219-225, 2005-05-15
被引用文献数
2 4

本研究では, タンパク質架橋重合化酵素であるトランスグルタミナーゼ (以下, MTGと略す) に着目して, スポンジケーキの調製工程における有用性について検討した. その結果, スポンジケーキの要件を満たすことが可能となり, 以下のような有用性をみることができた.<br>(1) MTGによりスポンジケーキの比容積の向上が図れた.<br>i) MTG 0.5u/gp~5.6u/gp最も効果を発現された. 14u/gpでは比容積の減少がみられた. ii) MTGと他の改質材0.5%との併用においては, 乳化剤, 増粘多糖類, 小麦タンパク分解物の順に作用性が高く得られた. iii) MTG 1.4u/gpと乳化剤0.2%の併用において, MTG単独に対して, 約1.2倍の比容積を得た.<br>(2) MTGの添加により, スポンジケーキの上面の凹みや, 皺もみられず形状の整ったスポンジケーキが得られた. i) MTGの最適添加量は0.5~1.4u/gpであった. ii) 2.8u/gp以上では表皮部がやや硬くなる傾向を示したが, 乳化剤, 増粘多糖類0.2%との併用において, 保形性のよいクラムが形成され, 気泡がよくのびて, しっとりして柔らかい食感が得られた.<br>(3) 破断試験による物性評価では, 無添加に対して, MTG 1.4u/gp添加において破断強度が高くなり, 破断距離ものびたことから, 弾力と柔らかさが向上する傾向が得られるものと推定された.<br>(4) SDS-PAGEからも低分子グリアジン画分の減少が認められた. これらのことからMTGによるスポンジケーキの有用性および主な反応基質タンパク質などが示唆された.
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011-12-15
被引用文献数
1

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後,腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して,モリンガ(<I>Moringa oleifera</I>)の葉を3種の混合比(0.3%,1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ,好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は,総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より,モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.
著者
高橋 義宣 河原崎 正貴 星野 躍介 本多 裕陽 江成 宏之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.428-431, 2008-09-15
被引用文献数
1 4 1

アンセリンは回遊魚や渡り鳥など持久力を必要とする動物の筋肉に多く存在することが知られており,マウスの強制遊泳試験によりその抗疲労効果が確認されている.サケ肉より抽出したアンセリン含有サケエキス(SEAns)を用いてヒト臨床試験を行い,疲労の低減に関する効果を検証した.SEAns摂取群は対照群と比較して,筋肉疲労の血中マーカーであるクレアチンホスホキナーゼおよび精神ストレスの血中マーカーであるコルチゾールの有意な減少,さらに運動継続時間の減少を抑制する傾向も確認された.以上の結果より,SEAnsには筋肉疲労,及び疲労感(精神ストレス)を低減する効果があると考えられた.