著者
鈴木 誠 渡辺 敏郎 三浦 麻子 原島 恵美子 中川 靖枝 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.507-511, 2002-07-15
参考文献数
20
被引用文献数
13 18

本実験ではFolin-Denis法の抽出溶媒の比較検討をおこなった.抽出溶媒には,蒸留水,各種濃度の含水メタノール,含水ェタノール,含水アセトン,およびDMSOを用いた.<BR>結果は各試料ごとに異なり,赤ワイン抽出物では含水エタノール,緑茶抽出物では含水メタノール,イチョウ葉抽出物では含水アセトンが高い値を示したが,DMSOで抽出すると,いずれの試料を用いた場合でも最も高い値を示した.また添加回収実験では,DMSOで抽出した場合に添加した(+)-カテキンが最も効率よく回収できた.このことより,Folin-Denis法における抽出溶媒にはDMSOが最も適していることがわかった.
著者
小川 哲郎 一色 賢司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.535-540, 1996-05-15
参考文献数
14
被引用文献数
3 18

アリルイソチオシアネート(AIT)を含むハーブの揮発性成分による微生物の増殖抑制の可能性を追求すると共に,これらの揮発性成分の併用による微生物制御を試みた.<BR>AITを除く14種の揮発性成分のうち,真菌に対してはアルデヒド類のみが抑制効果を示し,枯草菌に対してはアルデヒド類および炭化水素類が抑制効果を示した.特にサリチルアルデヒドは,供試した真菌,細菌いずれの増殖も抑制した上,細菌に対してはAITと同じ10.0mgの添加で抑制効果が認められた.また,カルバクロールは,AITでは抑制効果の弱かった黄色ブドウ球菌に対し増殖抑制効果を示した.AIT 3.0mgとカルバクロールあるいはサリチルアルデヒド5.0mgを併用することにより,供試菌すべての増殖を抑制することが可能であり,それぞれの使用量も半分以下に軽減された.AITとこれら2種の揮発性成分の組み合わせによる餅の保存試験では,40日経過後においてもカビの発生は認められなかった.<BR>AIT臭のマスキングについて検討した結果,バニラ及び柑橘系オイルで高いマスキング効果が認められた.
著者
早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.197-207, 2000-03-15
参考文献数
8
被引用文献数
13 14

食感覚の擬音語・擬態語が,どのような食物のどのような特性を表現しているのかを明らかにすることを目的に,調査,解析を行ったところ,以下の結果を得た.<br>(1) 各用語が示す食味要因(外観,匂い,味,温度,音,テクスチャー)が明らかになった.<br>(2) これらの用語は,テクスチャーを表現するものが多く,また,音を表現する用語は,同時にテクスチャーも表現していることが明らかになった.さらに,テクスチャーと味,テクスチャーと外観のように,全く質の異なる2つの要因を表現する用語もみられた.<br>(3) 食感覚の擬音語・擬態語は,一部の例外を除くと,「脆性」と「弾性」の2軸からなる平面に布置された.<br>(4) 食感覚の擬音語・擬態語と食物との関係が明らかになった.
著者
室田 一貴 馬場 貴司 島田 昌彦 佐藤 信行
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.163-170, 2010-04-15
参考文献数
25
被引用文献数
3

骨粗鬆症予防に寄与しうる食品研究の一環として,メタアナリシスにより骨粗鬆症予防効果が示された,一日摂取目安量あたり400mgのカルシウムを配合したフィッシュソーセージの過剰摂取時の安全性を評価した.<BR>試験はオープン試験形式のヒト臨床試験で行い,20名の健常者が推奨の3倍量を,食事とは別に,4週間連続して摂取した場合の影響を検証した.評価は有害事象の確認,理学検査,臨床検査および栄養調査を行った.<BR>4週間の摂取期間,および摂取期間終了後に設定した2週間の後観察期間において臨床上問題となる変動は認められなかった.<BR>以上の結果から,本フィッシュソーセージを日々の食事とは別に日常的に摂取しても,常識的な範囲で摂取を行う限り安全性に問題はないと考えられた.
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009-06-15
参考文献数
25
被引用文献数
2 12

本研究は,超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と,その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与,さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した.<BR>(1) コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり,8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された.<BR>(2) クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く,順にカフェオイルキナ酸,フェルロイルキナ酸であった.その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し,カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された.<BR>(3) コーヒー豆抽出物は&alpha;-GI剤(アカルボース,ボグリボース)と類似した作用機序を示し,効果量より低い&alpha;-GI剤量に対して,相加的な併用効果があることが推測された.また,&alpha;-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し,糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された.
著者
成田 正直 阪本 正博 秋野 雅樹 武田 忠明 今村 琢磨 飯田 訓之
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.277-283, 2011-07-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

2009年度における北海道のホタテガイの生産量は44万9千トン、生産金額は476億円で、これは北海道の魚種別生産量の約3割、生産額の約2割を占める.ホタテガイは1970年代に天然採苗技術や中間育成技術が確立され、その後、オホーツク海での地まき放流の拡大などにより、生産を増大させてきた.しかし、生産量の増大とともに価格は低下し、1990年代前半から低迷している(図1). ホタテガイの主な加工品目は冷凍貝柱、生鮮貝柱、ボイル冷凍、乾貝柱で(図2)、生産量の割に加工品の種類が少ないことが、魚価低迷の一因とされる.特に冷凍貝柱と生鮮貝柱への仕向け割合が高く(66%)、これらのアメリカ向けを中心とした輸出がホタテガイ価格の底支えを行っている. 北海道立総合研究機構水産研究本部(旧北海道立水産試験場)では、ホタテガイの付加価値向上と需要拡大を図るため、これまで多くの技術開発を行ってきた.この中では、生鮮貝柱の高鮮度流通技術の開発や乾貝柱の品質向上技術など既存製品の高品質化、生産の効率化とともに、新たな製品の企画、開発を行ってきた.その中で、最近製品化されたものとして、ホタテガイ貝柱フレーク(以下、貝柱フレーク)とホタテガイ貝柱の飯寿し(以下、ホタテ飯寿し)がある.本稿では、これら新規製品の基本的製法の確立、技術的改良から、企業移転を図るまでの経過を紹介する.
著者
石丸 幹二 古賀 咲江 高田 真菜美
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.45-48, 2012-01-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 4

微生物制御発酵茶は,近年特に日本において開発,商品化されている新しいタイプの発酵茶である.単一の微生物を用いて発酵処理を行うのが特徴であるが,特に<I>Aspergillus</I>で発酵処理した茶から,新しいカテキン代謝物であるteadenol類が発見され,その化学構造の新規性と抗メタボリックシンドローム活性が注目されている.今回,現在日本で市販されている<I>Aspergillus</I>で発酵処理した5種の微生物制御発酵茶についてHPLC分析をおこなった.分析したすべての茶においてteadenol類が含まれていたが,発酵条件等の違いによる成分含量の差異も認められた.また,茶葉からのteadenol類の調製に関する実験では,比較的安全&middot;安価な試薬類を用いたカラムクロマトグラフィーによりteadenol類を効率的に単離することができた.今後も,茶由来の新規機能性成分の生産とカテキン代謝機構の解明に利用される新しい微生物制御発酵茶の開発が期待される.
著者
石原 昌信 玉城 健雄 平良 東紀 多和田 真吉 小波本 直忠 野崎 真敏 荒木 伸春
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.141-144, 2003-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
1

パイナップル茎部の搾汁液画分がハブクラゲ(Sea Wasp, Habu-Kurage) <i>Chiropsalmus guadrigatus</i>毒素による溶血を阻害することが明らかになった.本抗溶血物質はパイナップル茎部の搾汁液からSephadex G-25, TLCおよびMiniQ PC32 2/3カラムを装着したにHPLCより均一に精製された.精製標品は260nm付近に吸収極大値を有し,14種類のアミノ酸から成るペプチドであった.パイナップル抗溶血物質はハブクラゲによる溶血を100&mu;g/mlで50%抑制した.
著者
須美 洋行 馬場 健史 岸本 憲明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1124-1127, 1996-10-15
参考文献数
9
被引用文献数
2 6

納豆抽出液中に従来のナットウキナーゼでは説明できない強力なプロウロキナーゼアクチベーター活性を確認した.6種の市販納豆の活性はヒトプラズミンを標準として21.8±5.5CU/g湿重量であった.同酵素はゲル濾過法で分子量2.7万以上に3つ以上の活性ピークを示し,またDFPあるいはNPGBで阻害されるセリン酵素と思われた.<BR>この酵素を高力価含む乾燥粉末30gを5人の健常成人ボランティア(51~86歳,男女)に経口投与した結果,4~8時間目にわたるEFAの上昇あるいはFDPの増加から持続的な血中線溶亢進と血栓溶解の起こることが確認された.
著者
内田 あゆみ 陶 慧 荻原 淳 赤尾 真 熊谷 日登美 松藤 寛 竹永 章生 櫻井 英敏
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.639-646, 2009-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

ジャンボリーキ鱗片から得られた泡粉末と比較のために鱗片末およびクルクミンを用いてGaINにより誘発される急性肝障害およびEtOHによって惹起される慢性肝障害モデルラットに対する影響を調べた.また同時に,推定関与成分として生鱗片からサポニンの単離・同定を試みた.その結果,ジャンボリーキの泡粉末および鱗片末は,GaIN,およびEtOHのラットへの投与実験において急性肝障害時の機能低下を抑制すること,またアルコール吸収を抑制することにより慢性肝障害を予防することを明らかにした.そして,その関与成分として既知のステロイドサポニンである(25R)-spirost-5-ene-2&alpha;,3&beta;-diol-3-<I>O</I>-{<I>O</I>-&beta;-D-glucopyranosyl-(1→2)-<I>O</I>-[&beta;-D-xylopyranosyl-(1→3)]-<I>O</I>-&beta;-D-glucopyranosyl-(1→4)-&beta;-D-galactopyranoside},(C<SUB>50</SUB>H<SUB>80</SUB>O<SUB>23</SUB>,MW : 1048),カラタビオサイドAの存在を提示した.
著者
藤原 しのぶ 春日 敦子 菅原 龍幸 橋本 浩一 清水 豊 中沢 武 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.191-196, 2000-03-15
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

栄養添加物の混合割合を変えることにより段階的に窒素量の異なる菌床培地を設定し,培地窒素量と子実体中の窒素量との関係について検討した.<br>菌床培地とそれぞれの培地から発生した子実体の全窒素量との間には強い相関が認められた(p<0.001).窒素量の多い菌床培地から発生する子実体ほど窒素含有量が高くなるという相関関係が,同一の栽培方法と種菌を用いて得られたシイタケについて確認された.<br>シイタケ子実体に含まれる主要な窒素含有成分(総アミノ酸,遊離アミノ酸,核酸,キチン)中の窒素量は,全て培地の窒素量と有意な相関が認められた.特に培地窒素量との相関性が高かったのは総アミノ酸と遊離アミノ酸であった.また,レンチニン酸含有量と培地窒素量との間には明確な関係は認められず,むしろ栄養添加物の種類によって含有量に差が認められた.<br>栄養添加物の種類や混合割合などの菌床培地の組成を変える試みは,現在のところ収穫量の増加を主な目的としているが,発生する子実体の質も制御できる可能性が示唆された.
著者
田畑 武夫 篠原 寿子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.682-686, 1995-09-15
参考文献数
7
被引用文献数
3 7

ヒラタケやナメコをカルシウム添加培地で栽培した.1, 5, 10%の濃度のカルシウム化合物を添加したPSA培地とオガクズ培地におけるこれらのキノコの菌糸生育状況を調べた.収穫後これらのキノコの子実体中のカルシウム含量を測定し以下の結果を得た.(1)キノコの菌糸生育はカルシウム化合物の種類や添加量および培地の初発pHによって影響された.(2)供試したリン酸カルシウム,硫酸カルシウム,炭酸カルシウムおよび酢酸カルシウムの中では,炭酸カルシウムがPSA培地およびオガクズ培地上でヒラタケ菌に対し良好な菌糸生育を示した.オガクズ培地で栽培したヒラタケ子実体のカルシウム含量は無添加培地からのそれに比べて1.4倍に増加していた.(3) PSA培地およびオガクズ培地上でのナメコ菌の菌糸生育はリン酸カルシウムが最も効果的であった.オガクズ培地で栽培したナメコ子実体のカルシウム含量は無添加培地のそれに比べて2.3倍に増加していた.
著者
鈴木 彌生子 中下 留美子 赤松 史一 伊永 隆史
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.250-252, 2008-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
8 14

コメの産地偽装問題が起きており,コメの産地を科学的根拠に基づいて判別する技術が必要とされている.本研究は,日本産,豪州産,米国産コシヒカリを用いて,炭素・窒素・酸素安定同位体比解析を行い,安定同位体比解析によるコメの産地判別の可能性を検証した.解析の結果,日本産のコメの安定同位体比は,平均値で,炭素では米国産よりも0.7&permil;,窒素では豪州産よりも3.8&permil;低く,酸素では豪州産と米国産よりもそれぞれ12.6&permil;,3.5&permil;低い値を示した.安定同位体比から,日本産のコメは,他国産のコメと識別できることが明らかになった.安定同位体比解析は,DNA判別や微量無機元素測定などの他の技術と相補的に利用すれば,強力な産地判別技術になる可能性がある.
著者
渡辺 満 鮎瀬 淳
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.215-222, 2009-04-15
参考文献数
33
被引用文献数
2

リンゴ果実に接種した<I>P. expansum</I>の,マイコトキシン産生量に及ぼすリンゴ品種および果実成分の影響を検討した.<BR>(1) 日本のリンゴ主要5品種への<I>P. expansum</I>(ATCC 36200)の接種によるパツリン産生量は,「ジョナゴールド」が「ふじ」よりも有意に多かった.「つがる」「さんさ」「王林」でのパツリン産生量は「ジョナゴールド」よりも少なく「ふじ」よりも多かったが,いずれも他品種の産生量と有意差はなかった.腐敗果から分離した3菌株を使用した3品種のリンゴへの接種試験では,「ジョナゴールド」が「ふじ」および「王林」よりもパツリン産生量が多かった.<BR>(2) パツリン同様果実で産生の恐れのあるシトリニンは2回の接種試験,エクスパンソリデスA/Bは1回の試験で,品種間での産生量の違いは認められなかった.<BR>(3) パツリン産生量と相関の認められたリンゴ果実成分は,全ポリフェノール量とリンゴ酸量であった.それに対して,パツリン産生量と全遊離アミノ酸量との間には負の相関関係が認められ,糖含量との間には相関関係は認められなかった.<BR>これら結果から<I>P. expansum</I>によるリンゴ果実でのパツリン産生には,リンゴ品種および複数の果実成分が影響することが示唆された.
著者
秋山 正行 片倉 友義 渡邊 武俊 今吉 有理子 池田 三知男 市橋 信夫 大西 正展 岩渕 久克
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.76-83, 2012-02-15
参考文献数
12
被引用文献数
1

(1) ゲーブルトップ紙容器の透過香気成分を捕集するガラス製装置を作製した.<BR>(2) グレープティーの透過香気成分の捕集条件を検討した結果,SPMEファイバー種:PDMS/DVB,捕集温度:10℃,捕集時間:30分間,捕集タイミング:24時間静置後,に設定した.<BR>(3) ノンバリアとバリア容器種間で,香気成分量に差が認められるグレープティーの透過香気成分を明らかにした.特にエステル類において差が顕著であった.<BR>(4) 容器種間で透過香気の匂い強度が顕著に異なる,6種の匂い成分(ethyl 2-methylpentanoate, ethyl butanoate, ethyl 2-methylbutanoate, ethyl 3-methylbutanoate, ethyl 2-methylpentanoate, methyl anthranilate)を明らかにした.
著者
貝沼 やす子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.487-493, 2008-10-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

精白米を10℃,-20℃,-40℃,-60℃に6ケ月間保存したところ,いずれの保存温度においても保存中に水分は変動しなかった.米への吸水は,10℃に保存した場合,保存期間が長くなるに連れ減少し,6ケ月後には顕著に低い吸水率となった.-20℃,-40℃と保存温度が低くなるにつれて0ケ月との差は小さくなり,-60℃保存は最も差が小さかった.0ケ月との差は浸漬の最初の段階で顕著に現れ,表層部に生じた古米化現象による影響であると考えられた.吸水後の米粒の硬度は,-60℃保存は0ケ月と変わっていなかったが,-40℃,-20℃保存はわずかに差が生じ,10℃保存については大きな差が見られ,いずれも硬く変化していた.浸漬液に溶出した還元糖量は10℃,-20℃,-40℃保存では,保存期間が長くなるにつれて減少したが,-60℃保存では溶出する還元糖に変化が見られず,酵素の活性が維持されていると考えられた.<BR>米飯の破断強度測定,テクスチャー測定では,保存期間が長くなると0ケ月と比較してかたく,付着性が少ない米飯となり,保存により米飯の物性が変化した.この変化は10℃保存の米飯で顕著であった.-20℃,-40℃と温度が低下するにつれて変化は小さくなり,-60℃保存では0ケ月の米飯の物性とほぼ同じ状態であった.官能検査においても,保存温度が最も低い-60℃保存の米で炊飯した米飯は10℃保存の米飯に比較して,有意に粘りがあり,やわらかいと評価され,総合評価においても有意に好まれた.
著者
伊藤 満敏 大原 絵里 小林 篤 山崎 彬 梶 亮太 山口 誠之 石崎 和彦 奈良 悦子 大坪 研一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.576-582, 2011-12-15
参考文献数
31
被引用文献数
2 7

有色素米8品種(赤米4種,紫黒米4種)と対照のコシヒカリについて,抗酸化能(活性酸素吸収能(ORAC)およびDPPHラジカル消去能)の測定,ならびにフォーリン-チオカルト法を用いた総ポリフェノール含量の測定を行った.有色素米の抗酸化能は総ORACが58.0-169.4 &mu;mol TE/g-dry weight,DPPHラジカル消去能が10.8-52.2 &mu;mol TE/g-dry weightの範囲であり,いずれも「コシヒカリ」の24.9および2.5 &mu;mol TE/g-dry weightに比べて著しく高かった.総ポリフェノール含量とH-ORACおよびDPPHラジカル消去能には高い正の相関(<I>r</I>=0.984および<I>r</I>=0.948,<I>p</I><0.01)があり,H-ORACとDPPHラジカル消去能との相関性も高かった(<I>r</I>=0.946,<I>p</I><0.01).また赤米からはプロアントシアニジンが,紫黒米からはアントシアニンが検出され,これらポリフェノール成分含量と抗酸化能との相関も高かった.5品種の有色素米において,収穫年の違いにより抗酸化能およびポリフェノール含量は増減したが,品種間の大小関係への影響は少なかった.以上の結果より,有色素米が抗酸化能の供給源として有用であり,その主要な抗酸化成分はポリフェノールであることが示唆された.
著者
木谷 裕亮 堀田 博 本多 一郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.49-52, 2002-01-15
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

小麦4品種(バンドウワセ,農林61号,つるぴかり,あやひかり)を,様々な栽培条件や収穫時期で栽培・収穫した.収穫物は60%粉(A粉)に製粉し,色相(L*, a*, b*値)を測定し, Ca, K, Mg, Cu, Fe, Mn, Znの含有量を測定した.<BR>ミネラル含有量と小麦粉の色相を比較したところ,窒素施肥量の増加により色相が低下した場合,Mg, Cu, Znの含有量が増加し,収穫時期の遅れに伴って色相が低下した場合,Ca, K, Mg, Znの含有量が減少したが,Feの含有量は増加した.<BR>また,鉄の含有量の増加に伴ってL*値の減少が観察され,鉄の含有量とL*値の間には相関関係があった(相関係数は0.70-0.84)ことから,鉄が小麦粉の色相と関連していることが示唆された.
著者
林 徹 翠川 美穂
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.471-475, 2011-10-15
参考文献数
8
被引用文献数
2

3月11日の東日本大震災に伴う原子力発電所の事故以降、われわれが口にする食品や水などの放射能汚染が次々と明らかになっている.3月中旬の水素爆発直後はホウレンソウ、しいたけ、牛乳、水道水などの汚染、汚染水の海洋放出が始まるとコウナゴをはじめとする魚介類の汚染、そして7月中旬にはセシウムで汚染した牛肉の販売が明らかになった.また、母乳や子供の尿からは放射性元素が検出されている.その結果、国民の間に健康への不安が広がり、科学的な情報提供が求められている.そこで、放射能や放射線の基礎から放射能汚染した食品、飲料、大地が健康に及ぼす影響について解説する.
著者
津田 孝範 深谷 吉則 大島 克己 山本 明 川岸 舜朗 大澤 俊彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.430-435, 1995-06-15
参考文献数
18
被引用文献数
2 11

タマリンド種皮抽出物の抗酸化性を食品加工へ利用するための基礎について検討した.<BR>(1) タマリンド種皮抽出物は,リノール酸モデル系において強い抗酸化性を示し,クエン酸及びα-トコフェロールとの間に相乗効果を示した.<BR>(2) タマリンド種皮抽出物は,100℃,2時間の加熱に対して安定であり,pHの変化に対しては,pH 5.0で抗酸化性の低下が認められた.また塩化ナトリウム存在下では,10%溶液中でも抗酸化性は,70%以上の残存率を示した.<BR>(3) 実際の食用油脂としてラード及びコーンサラダ油にタマリンド種皮抽出物を添加したところ,いずれの油脂においても抗酸化性を示した.