著者
大場 厚志
出版者
東海学園大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13421514)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.125-136, 2000-03-31

In Hawthorne s "The Artist of the Beautiful, " Owen Warland completes the butterfly which is organic as well as mechanical. The process of creation correlates with the unconscious, the operation of which is inseparable from the creativity of an artist. Owen comes to know that not the product, the butterfly, but the process of creation and the instinctive content matter for him. The narrator describes him as grown spiritually as an artist. Nevertheless Owen does not evoke our keen sympathy. And the unconscious seems to concern one of the causes. The relation between Owen and the antagonists-Peter Hovenden and Robert Danforth-proves to be correlative rather than contrary. In spite of Owen's hostility, Danforth is friendly to Owen though he has little imagination and despises Owen's spirituality and fragility. Hovenden displays his hostility only when he suspects that Owen is engaging himself in an imaginative work. In view of these circumstances, Hovenden and Danforth severally function as the "shadow" in Jungian theory. The "shadow" Is what is denied by the ego, the center of consciousness, in conscious personality. Owen projects his personal "shadow" upon the two antagonists, which, it seems to us, indicates the conflict between an artist and a society. In fact, like Owen, they are also left behind in the society with a new system for mass production. Therefore the conflict between Owen and the antagonists proves to remain the personal one (or the one in an old community) rather than the generalized one between an artist and a society. In addition, Owen's alternate repetitions of artistic desire and lethargy remind us of a puer aeternus (child archetype). Without the betterment of his relation to the "shadow " we cannot expect Owen's true independence and maturity.
著者
正田 義彰
出版者
学習院大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-14, 1978

学習院男子高等科では希望者を対象とする海外での英語研修を、49年度から夏休みを利用して米国ハワイ州のオアフ島で毎年続けていますが、過去4回の参加者は合計163名に達し、ユニークな学校行事として注目されています。57名という多数の学生が参加した今夏(52年度)は、後述のごとく組織を改めて内容を画期的に充実させたことによって、そのプログラムはほぼ確立したといえを段階に達したので、これを機会にこのセミナーの概要を御紹介したいと思います。
著者
郡山 桂子
出版者
佐賀女子短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02882965)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-10, 2012
著者
福田 正治
出版者
[富山大学杉谷キャンパス一般教育]
雑誌
研究紀要 (ISSN:1882045X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-22, 2012-12

アメリカで心理学の父といわれているジェームズWilliam Jamesは、1884年、感情研究にとって記念すべき論文を書いた。それがここに掲げた「感情とは何かWhat is an emotion?」という論文である。ここで初めて、感情の末梢起源説として有名なジェームズ・ランゲ説James-Lange theoryが提唱された。情動は「怖いから逃げるのではなく、逃げるから怖い」という考え方で、その当時から情動の中枢説は考えられており、彼の末梢起源説は発表時から議論を巻き起こしていたことは容易に想像される。しかし彼の論文を詳細に眺めると、彼は身体変化を伴う情動についてだけ議論しているのであって、情動一般については議論していないことに注意を要する。そして身体変化を伴わない情動は「冷たくて中性的な状態」だけが残っていると指摘し情動における身体変化の重要性を指摘している。しかしこのジェームズの末梢起源説はキャノンCannonによって1920年代に完全に否定され、今日、感情の中枢起源説に取って代わっている。「感情とは何か」のテーマに答えるのは非常に困難で、その研究分野は、神経科学、心理学、哲学、社会学などの学際的な領域に渡っている。それらの研究を通して、感情の何がどこまで明らかになったのかと改めて考えてみると、130年前のジェームズの時代と比べれば情報は格段に多くなり、脳科学を中心とした神経メカニズムも明らかになってきているが、依然不明なところが多い。人びとから寄せられる質問の中で多いのは「なんとか嫌な感情をコントロールできないのか」という身に迫ったものが圧倒的に占めている。われわれは平和で安心でき、心穏やかな生活を送りたいと念じているが、人と人の間で生活する宿命として感情の軋轢は避けがたい。われわれは過去3000年の長きにわたって感情に関する考察を深め、その知恵を貯め込んできたが、未だにこのような負の感情の制御に関して有効な対策を見いだせていないでいる。最近の科学的知識の進展には目の見張るものがある。改めて感情の研究で、ジェームズが発した「感情とは何か」について過去130年間の進展を考慮しながら議論してみたい。
著者
高田 さやか
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
no.20, pp.23-30, 2012-03-31

自ら相談に赴くことが困難で,家からほとんど出ることなく,家族と暮らしている障がい児・者がいる.そのようなひきこもり状態にある人たちの実態を分析すること,そして人との関わりさえ拒否している状態から就学・就労・福祉サービスという社会との接点につなぐためにどのような支援が必要かについて考察する. 大阪市城東区での発達障害児・者相談事業に寄せられた相談経路,相談者,相談内容について集計し,地域で暮らしながらも様々な困りごとを抱えている実態を明らかにし,その中でも家に閉じこもり,人との関わりを拒否・回避していて人たちの実態を明確にする.ひきこもり状態にある本人自身は,人とのかかわりを避け,こだわりを貫ける家は安全で安心できる場所となっている.一方家族は,「いつまでこの状態が続くのか」「自分にもしものことがあった時にどうなるのか」という焦りや不安な生活をなんとか打開する方法はないのかと相談に訪れるようである.家から出られない本人にとって,家に誰かが訪問することで家族間の摩擦の解消、家族の不安や負担の軽減,本人が他者との関わり方を学ぶ機会となる.ひきこもり状態の障がい児・者支援には,まずは適切な医師の診断,そこから本人に合った地域の社会資源など何らかの支援につなげていく必要がある.このことから人との関係が途絶えている「関係の危機」を直ちに「人生の危機」に直結させないシステム作りが必要であると考える.
著者
森田 浩司
出版者
大阪教育大学附属高等学校池田校舎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-81, 2008-10-20

本稿は、鹿児島県指宿市山川において、石敢當に関する現地調査を2度にわたって行い、その分布状況や特徴を明らかとしたものである。石敢當とは、中国起原の魔除けの石で、T字路の突き当たりやL字路の突き当たり、そして少しずれた四差路などに設置され、邪悪な霊が直進して家屋内に進入してこないように、石の霊力で防ぎ鎮めようとするものである。そのような風習は、琉球から伝播してきたものであり、鹿児島がまだ薩摩として琉球と交易をはじめた頃に、その風習がはいってきたと思われる。そして、山川は薩摩藩と琉球との貿易の拠点であったため、その琉球文化の風習が直接入り込んでくる可能性が最も高い地域であった。だからこそ、現在人口約11000人で面積37.18Km^2(旧山川町)と小さな町ではあるが、歴史的にかつ地理的、また民俗学的にも、山川は石敢當の調査・検討する価値がある地域である。
著者
林 鎭代
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.113-121, 2013-03

民話など昔話に登場する"鬼"は,山奥に住まい,村に来ては食べ物や財産,娘をさらっていく悪しき存在であることが多い。しかし, 筆者の「『読みがたり』に登場する"鬼"」1)には「鬼の田植え」のように,"善い鬼"が登場する話もある。そして,青鬼集落にも"善い鬼"の話が伝えられている。"善い鬼"の話は,非常に稀な例である。"善い鬼"は,どのような事情で生まれたのか。人間と鬼の関係性は,どのようになっているのか。また,子どもには,何を伝えているのかを探った。In a lot of cases," Oni" (demon), which appears on folk tales, is considered wicked who steals food, possessions, daughters and so on, falling sometimes on the mountain village and living in the heart of a mountain. However, the good "Oni" appears on " The rice planting by Oni, " introduced in Hayashi, '"Oni" which appears on" Yomigatari''. Generally, the story of good "Oni" is very rare. The story of good "Oni" is told in the colony of Aoni, Hakuba, too. The talk of "a good demon" is a very rare example. In what kind of situation was "the good Oni" born? What has the relationship of human beings and Oni become? Also, this paper explored what is taught to the child.
著者
後藤 範子
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.27-35, 2005-03

ネイチャーゲームの1つサウンドマップを保育者養成校の1年生が実施した報告書から自然環境での発見の度合いとその表現方法,幼児を対象にサウンドマップを行う場合への応用との関連について考察することを目的とする。結果から4点が考察された。(1)「どのような音」よりも「何が」聞こえるのかに興味が向いた学生ほど多様な音を発見することが難しい傾向がある。(2)多様な音を発見できた学生は幼児にも音に集中する行動を促そうとする傾向がある。(3)多くの音を発見することができなかった学生は環境設定の必要性を理解し,考える傾向がある。(4)多様な自然の音を発見できた学生は聞こえた音の表現方法の多様さや自然との一体化を楽しめるような配慮を考える傾向が見られ,多くの音を発見することができなかった学生は,どこから何の音がするのかを考えることを楽しめるように配慮する傾向と子どもに対する言葉がけをより具体的に考案する傾向がある。
著者
LEE Hyong Cheol 李 炯喆
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18838111)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.77-87, 2014-01-15

宮澤喜一と言えば、戦後日本の政治外交と経済に深くかかわった戦後史の証人である。占領から経済摩擦にいたる対米関係のみならず、アジアの隣国とも深く関わっていて、教科書問題の際の近隣諸国条項、PKO 協力法、従軍慰安婦問題(河野談話)、新宮澤構想などの決定と政策を打ち出した。そのため、毀誉褒貶相半ばする異色の保守政治家である。首相としての評価は高くないが、宮澤の政治活動には並の保守政治家とは異なる戦前の意識、自由主義、アジア認識が通底している。決して弱腰、優柔不断のせいではなく、彼の信念に由るものである。
著者
山崎 正氣
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09178333)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-36, 2003-03-20

バングラデシュは,総面積144万km^2の国土(日本の0.4倍)に1億4千万の人口をかかえ,その80%は農村部に居住している.1971年のパキスタンからの独立以降,政情の不安,行政制度の未整備,天然資源の不足,輸出力の低さ,農村の貧困,さらに,度重なる自然災害等の諸問題を抱える中で,食糧自給の達成は,国の最優先課題として取り組まれてきた.就業機会の65%を創出する農業は,稲作を中心に,畑作,園芸,畜産,水産,林業等が密接に絡み合った営農形態をもち,農家の70%は10ha(2.5acre)以下の小規模農家層や土地無し農民で,その割合は増加の傾向にある.しかし国土のほとんどが平坦で,耕地率は66%と極めて高く,農地の拡大は不可能で,貧農層にとっては内延的な充実による営農改善の余地しか残されていないと言える.近年における農業部門の特徴は,これまでの穀物生産優先政策から,各地に適した作目・畜目の多様化と選択的拡大を図ろうとするもので,特に,近年の灌漑事業の進展や改良品種の導入・普及に伴い,作目の多様化を促進してきた栽培システム研究(Cropping Systems Research)の経験を基礎に,園芸,畜産,水産,林産部門を加え,農家の土地・労働・資本の総合的な活用を図ろうとする営農システム研究(Farming Systems Research)への展開は,小農経営の改善にとってその成果が期待されよう.バングラデシュの栄養水準は,他のアジアの国々に比べても低く,特にタンパク質と脂肪の摂取量は最低の水準にあると言われている.FAOの試算では,一日の平均必要熱量を2,120Kcal,蛋白質を61.5gとしているが,カロリーでは人口の44%,蛋白質では78%が水準以下の栄養不良の状態にあると見られ,都市部の30〜40%と農村部の30%の人口が絶対的貧困レベルに置かれていると言われている.農村生活の改善は,栄養改善,衛生改善,家族計画,教育の向上,地域住民の互助組織等が総合的に結びついて効果が発揮されてくるものであるが,まずは,食糧生産の増加によって,食生活における栄養水準が少しずつでも向上する様な段階を維持してゆく事が最優先の課題となっている.本稿においては,近年の農業生産多様化の下で,栄養収量が高く,栽培技術体系の定着が注目されている大豆生産の振興事業に焦点を当て,その沿革や,研究・普及組織,生産と消費の動向,そして,国際協力等の展開について考察する.
著者
小野 一郎
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02869756)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-24, 1980-03-31

本抄録は雪舟筆「慧可断臂図」について,特に画面上部の岩壁に描かれた2箇の岩穴が,画面における重要なpointを成していると考え,人体美学的な研究態度で考察を行ったものである。
著者
中根 淳子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.3-19, 2008-12-20

フランセス・B・ホーキンス先生は、1941年、第二次世界大戦の戦局悪化により、カナダに一時帰国するが、その後、日本語に堪能であり幼児教育に精通していることから、カナダ聖公会からBritish Columbia州の日系人のために働くよう要請された。1942年2月にはBC州の日系人はすべて海岸線から100マイル以内の防衛地域からの退去を命じられ、多くの者が収容所に移送された。ホーキンス先生は、ポートアルバーニ、バンクーバーを経て、1942年から内陸部の日系人収容所タシメに派遣された。幼稚園の立ち上げなど、そこでの具体的な活動について、カナダ聖公会アーカイブの協力により入手した資料から調査した。これらは第1部に述べられている。 また、第2部には、ホーキンス先生が1959年の卒業生に贈った黒いスーツについて書かれている。卒業式に慣例で着用していた黒いスーツを準備できなかった学生のことを心に留めてホーキンス先生が贈ったスーツは、今も卒業生のもとで大切に保管されていた。スーツをめぐっておよそ50年前の卒業生とめぐり合い、その生き方にホーキンス先生を見るようであった。
著者
小畑 恒夫
出版者
昭和音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09138390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-27, 2012-03-15