著者
安田 誠宏
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

気象研究所の超高解像度全球気候モデルGCMの2次元気象場データを用いて、直接高潮シミュレーションをした。熱帯低気圧の存在期間の海面気圧および海上風を駆動力として与えた。高潮計算に用いた台風は北西太平洋領域を通過したものとした。台風ごとの最大高潮偏差の計算結果を極大値資料とし、極値統計解析を行った。将来気候下における100年に1度の高潮が現在気候に比べて増大すること、台風強度変化によって一様に増大するのではなく、エリア依存性があることを明らかにした。さらに、高潮モデル自体が内包する不確実性を減らすのに必要な要件を整理することができた。
著者
吉田 真理子 竹村 真菜 西尾 美沙子 上廣 真希
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

保育現場の観察および実験より、現段階では次のことが示唆された。(1)保育現場における過去に関する子ども同士の会話は、次の3つのカテゴリに分類された。①自己の過去(自分の過去について、それを知らないであろう他者に報告する)、②自他間で共有した過去(自分と他者が共有した過去について、他者に確認・同意を求める。)③他者の過去(自分が知らない他者の過去について質問する。)。(2)過去に対して事実レベルの違いをすり合わせるようなNegotiationは4歳児以降にしかみられなかった。(3)2~3歳児では、設定された未来の目的に対して言及しながら協力することは困難であった。
著者
森下 総司
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨髄増殖性腫瘍(MPN)には,主として真性赤血球増加症(PV),本態性血小板血症(ET),原発性骨髄線維症(PMF)などが含まれる。我が国のMPN症例におけるJAK2遺伝子変異の陽性率はPVが94.4%,ETが51.9%,PMFが54.7%であった。PVと診断されたにも関わらずJAK2遺伝子変異が陰性であった5例について,JAK2の全エクソンを次世代シークエンサーで解析したところ,共通する遺伝子変異を2つ同定できた。これらはアジア人に特有のSNPであったが,アミノ酸の置換を伴わない変異であった。以上のことから,我が国におけるPV診断ではJAK2遺伝子変異検査が重要であると考えられる。
著者
土肥 徹次
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、MRI 画像計測のための高感度なマイクロコイルとして、円錐型マイクロコイルの試作手法を確立し、MRI 画像計測を行った。円錐型マイクロコイルとして、直径 30 mm、高さ8 mm、抵抗値 2.14 Ω、インダクタンス 1.29 μH の良好な電気特性を持つコイルを試作することができた。 試作コイルにより、オクラやうずらの卵の MRI 画像計測を行い、深さ方向に深い画像を高感度に計測できることを確認し、高分解能な MRI 画像が取得可能であることを示した。
著者
武 小萌
出版者
国立情報学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、多様性に富んだ大規模放送映像アーカイブに放送メタデータの階層的構造化を目指し、視覚特徴と放送メタデータの統合に基づいた顔認識・構造化技術高度化を実現した。照明条件、姿勢及び表情による特徴量変動に頑強な顔画像照合法を提案した一方、放送メタデータと映像間の相関関係をもとに、顔認識をネットワークの経路を伴った因果関係の発生確率を定量的に予測する課題に帰着させ、放送メタデータ・ベイジアンネットワークに基づいた新たな顔分類法を実現した。
著者
三嶋 恒平
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は日本企業の国際的な競争優位の源泉としてトランスナショナル化(本社と海外拠点が相互依存の関係であり共同で優位性を構築し共有するようになること)に着目し、既存研究では不十分であった(1)新興国の市場・拠点でのイノベーションの発現、(2)そのグローバルな組織における共有経路・形態、(3)それらが組織全体の競争優位へ及ぼす影響の3つを明らかにすることを目的とした。目的(1)は企業や販売現場の実態調査を繰り返すことで特定の新興国におけるイノベーションを明らかにすることができた。目的(2)(3)は実態調査に加え、国際経営論を巡るサーベイと学会報告での議論を通じて概ね達成することができた。
著者
梅崎 高行
出版者
甲南女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

競技スポーツにおける指導の相互的なバイアス構成-指導者によるコーチングの偏りと選手による指導の歪んだ認知-に着目した。バイアス構成は,選手の学びと指導者の教えにブレーキをかける。この影響を最小にするため,第三者のかかわりについて検討した。とりわけ保護者については,従来から選手に対する過剰な働きかけが指摘される。錯覚とよばれるこうした働きかけを,脱錯覚的なものへと整える意義について議論された。
著者
倉光 ミナ子
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.理論的枠組みの検討本研究の理論的枠組みとしての「トランスナショナルな場所」を考えるにあたり、トランスナショナリズムについての研究が盛んであるイギリスの人文地理学の文献を収集し、検討を行なった。その結果、多くの研究が先進地域へ流入する国際移動者を対象とした研究であること、また、このような現象を捉えるにあたり、「場所」ではなく「空間」という概念を使用していることが改めて明らかとなり、理論的枠組みの再検討が必要となった。2.フィールド調査:9月に2週間弱、サモアにおいて実施した。調査内容は以下の通りである。1)仕立て業店舗の分布の変容について:2年間のデータを基に、アピア都市部における仕立て業店舗の移り変わりについて調査を行なった。その結果、店舗数は依然として増加傾向にあるが、その一方で閉店に追い込まれている店もあった。また、フィリピン人女性の縫い子を雇用するという傾向が顕著になっていた。2)仕立て業店舗における顧客の調査:昨年の調査と同じ店舗において、その店を頻繁に使用する顧客に関する観察・簡単な聞き取り調査を実施した。その結果、双方の店ともに販売には都市部特有のイベントの影響を強く受けることがわかったが、帰還移民の多い店舗では衣服の多くが海外コミュニティのために購入されており、人だけでなくサモアの衣服が海外へ流入する様子が観察された。3.研究成果の公表に向けて本年度は研究機関を変更したこともあり、理論的枠組みおよびフィールド調査の結果が十分に整理・検討できなかったので、本研究に関わる研究成果をまとめ、発表するまでにいたらなかった。本研究の研究期間は終了を迎えたが、来年度のうちには、これまでの成果をまとめ、公表していく予定である。
著者
益満 環
出版者
石巻専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

世界的に牡蠣養殖で有名な宮城県石巻地域においてすでに「宮城県産生かきトレーサビリティ情報システム(以下、牡蠣トレーサビリティ・システムと記す)」が導入され、稼動している。しかしながら、システムを導入した牡蠣パック加工業者の多くが自社に見合った適切な牡蠣トレーサビリティ・システムを導入できずに、システムを破棄するか他のシステムに変更しているケースが多いことから、本研究では自社に見合った牡蠣トレーサビリティ・システムを選定するための選定評価基準を構築した。
著者
美谷島 杏子
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではApc; Id2遺伝子変異マウス(Apc; Id2マウス)を用いて、Id2の腸管腫瘍形成における機能を遺伝学的に解析した。Id2欠損による腫瘍上皮細胞の増殖能とアポトーシスへの影響は認められず、腫瘍の大きさへの影響も僅かであったが、回腸の腫瘍の数が80%減少するという著しい変化が観察された。このことからId2は回腸腫瘍形成のinitiationに重要であることが示唆された。DNAマイクロアレイの解析から、Apc:Id2マウスの腸陰窩ではApc欠損型腸腫瘍形成に必須なc-Mycタンパク質の阻害因子や腫瘍形成抑制因子の発現が変動しておりこれらが腫瘍形成抑制に関与していることが示唆された。
著者
石崎 博志
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度はポーランドのクラクフ、フランスのパリにて中国の字書の欧州の所蔵状況などを調査し、京都、東京にて関連する漢語資料の調査を行った。そして、来華宣教師および在欧の中国学者がどのような中国の字書を参照していたのか、また中国の字書が欧人の編纂した辞書にどの程度反映されているのかを考察し、口頭発表を行ったのち、論文を発表した。この研究で扱った辞書は『西儒耳目資』、"海篇類"の字書、『字彙』、『正字通』、『諧聲品字箋』、『五方元音』で、以下の結果を得た。"海篇類"の字書については欧州各地に数多くの所蔵がみられ、宣教師やヨーロッパ人学者もそれらの書名を引用するものの、具体的にそれらをベースに編纂された辞書はみあたらない。『字彙』『正字通』も欧州各国に伝わっているが、殆どの場合字彙の筆画検字法の導入に止まり、字書本体を使用した事例は挫折に終わっている。『品字箋』については、Antonio Diazが1704年にVocabulario Hai xing phin tsu tsienを著すが、その序文に『品字箋』の韻分類を示すも、本体は宣教師による辞書を引き写したものとなっている。『五方元音』とラテン語による"Vocabularium Sinico-Latinum juxta. Ou Fang Iuen In."については、発音体系に若干の齟齬があるが、辞書本体の語釈部分については『五方元音』の反映はみられない。
著者
池田 浩
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、メンバーを奉仕するサーバント・リーダーシップに着目し、その効果を実証的に検討した。その結果、サーバント・リーダーシップは従来の変革型リーダーシップとは異なる効果を持っていた。すなわち、変革型リーダーシップは、有能性を意味するメンバーの「認知的信頼」を引き出していたのに対し、サーバント・リーダーシップは「情緒的信頼」を引き出していた。また、サーバント・リーダーシップは、メンバーの基本的な心理的欲求(有能感、自律性、関係性)を満たすことで、自律的なモチベーションや職務パフォーマンスを引き出していた。さらに、サーバント・リーダーシップは職場全体に波及する効果も持っていた。
著者
市 育代
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

酸化ストレスは動脈硬化発症と進展に深く関与している。セラミドはアポトーシスを誘導する生理活性脂質で、細胞内のセカンドメッセンジャーとして機能していることが知られている。我々は以前、ヒトの血漿セラミドが動脈硬化の脂質マーカーと相関関係にあることを報告している。そこで本研究では、酸化ストレスにおけるセラミド代謝の変化を動物実験によって明らかにするために、四塩化炭素による劇症肝炎時に誘発される酸化ストレスが、肝臓だけでなく、他の臓器においてもセラミド代謝に影響をあたえるかについて調べた。組織のセラミドは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定した。次に、ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットにおいて、各臓器でセラミド代謝の変化がみられるか、またセラミドの蓄積が糖尿病の合併症に関与しているかについて検討した。肝臓のセラミドには変化はみられなかったが、血漿と腎臓のセラミドは糖尿病ラットで増加した。またセラミドの産生酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性は、血中の分泌型SMaseが有意に増加した。このように、酸化ストレスを介した過度のセラミド蓄積は動脈硬化の発症因子のひとつであることが示唆された。
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

授業における私語の発生過程について, コンピュータ・シミュレーションや質問紙調査等によって検討した。シミュレーションの結果, (1)周囲の状況を考慮せずに私語をする確率が10%程度であっても, 教室全体に私語が広がる可能性があること, (2)教室内の仲間集団の数が多いほど私語が広がりやすくなること等が示唆された。一方, 質問紙調査では, 友人の数と私語の頻度・被私語頻度との間に, 弱い正の関連があること等が示された。また, 私語の発生位置に関するシミュレーションと質問紙調査の結果は, ほぼ一致した。
著者
馬場 哲晃
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

3年間の研究活動を通じ,論文誌5件,学会発表61件,知的財産5件の成果を残した.身体接触インタフェースでは,商品化4件を通じて,研究成果の周知浸透が実現できた他,福祉施設や教育施設における利用を実践した.
著者
森 寛敏
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アクチニド・ランタニドイオンを選択的に捕捉のために必須となる水和様式の解明を目指した理論的研究を行った。これらの元素は,放射性元素であるものが多く,また,原子番号に比例して増加する核電荷に由来して,その電子状態は,多数の電子が複雑に絡み合う(電子相関)のみならず相対論効果に支配されたものとなる。これまで,電子相関と相対論効果を同時に精度良く取り扱った理論計算は困難であったが,酒井・三好型のモデル内殻ポテンシャル法を拡張することでこの問題を解決できることを示した。
著者
金田 由紀子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

全国の自治体(市区町村数1,741)に所属する保健師を対象に「老いと死の準備教育」に関する実態調査を実施した(有効回答率38.4%)。自治体における教育実施の必要性については61.7%があると回答していたが、実際に実施ありと回答した者は15.8%であった。今後の実施予定ありと回答した者も12.0%と低かった。実施上の問題として、実施方法が未確立とした者が89.7%と9割にものぼり、必要性を感じながらも具体的な根拠に基づく方法が未確立であるため、実施に至っていない実態が明らかとなった。本研究結果から、多死社会において、自治体レベルでの具体的なプログラムを早急に構築する必要性が明らかとなった。
著者
大島 薫
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

<説法>と称される一連の言説に<経釈>を位置付け、その構造を明らかにするとともに、法会における一連の所作として、学侶の研鑽を明らかにするために行われた<論義>と、これら<説法>における言説との関連性など見出した(福田晃編『唱導文学研究第四集』、三弥井書店、発表予定)。また<経釈>に限らず、<説法>における一連の言説として表白された<表白><施主段>についても伝本調査を行い、東寺観智院金剛蔵『十二巻本表白集』ほか、その本文を電子化するなど、それらの解読をすすめる準備を行った。さらに、「説法の上手」とうたわれ、「説法道」を確立したと伝えられる、安居院澄憲の<説法>を相対化するために、澄憲以前に、多くの「説法詞」を草したことで知られ、その「詞」の多くが伝存する寛信について、その著作に関する調査と解読をすすめた。結果、『類雑集』の成立ほか、勧修寺流の形成についても私見を得た(勧修寺聖教文書調査団における夏期報告会において口頭発表した)。また、澄憲草を中心とする、安居院流の「説法詞」を伝える文献に関して、真福寺・神奈川県立金沢文庫・叡山文庫・東寺観智院金剛蔵・勧修寺などで伝本調査を行った結果、「説法の上手」で知られた澄憲が、天台教学の研鑽をすすめるべく「宗要」の編纂を手がけたむねを伝える文献を発見するなど、これまでの澄憲理解を覆す新見をも得た。
著者
本多 克宏
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

非構造的なテキストデータから有益な情報を抽出することを課題とし,線形ファジィクラスタリング(局所的主成分分析)に基づく標本や変量の分類,視覚化などを通して,分析者が潜在的な相関ルールを直感的に理解することができる分析手法の開発を目的に研究を行った.テキスト-単語マップ作成におけるキーワードの自動選別法や,ノイズ文書を無視しながら類似したテキストからなる群ごとに核となる文書を強調する手法などを開発した.
著者
山下 和也
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

雪の結晶はどれをとっても美しい形をしているが、その形は千差万別で、全く同じ形のものは存在しないといわれている。Packardが定義した六角格子上の2次元セルオートマトンを拡張し、六方晶上の3次元セルオートマトンを新たに定義した。このモデルを用いて、従来のモデルでは生成できなかった角柱,針といった立体的な構造を持つ雪の結晶の類似パターンの生成を行った。