著者
山中 明
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1,ナミアゲハ休眠蛹に特有なオレンジ色蛹の発現調節に関わる基礎的な内分泌学知見を得るために、オレンジ色体色発現に関わる環境条件を検討し、オレンジ蛹が90%以上出現する環境要因を作り上げることに成功した。その環境条件をもとに、短日飼育個体の前蛹期を6段階に分け、胸腹部間での結紮実験により前蛹期の後半に頭胸部より分泌されるオレンジ色蛹誘導化因子の存在が示唆された。次に、オレンジ色蛹誘導化因子の生物検定方法を確立した。また、オレンジ色蛹誘導化因子の分泌時期や存在部位を明らかにした。続いて、ナミアゲハオレンジ色蛹誘導化因子の精製手順の検討および精製を行い、オレンジ色蛹誘導化因子を精製し、N末端アミノ酸配列決定をした(Yamanaka et al.,未発表)。2,ナミアゲハ夏型ホルモンの精製のため、ナミアゲハ蛹の脳を集め、粗抽出液を調整したのち、ゲル濾過・逆相液体クロマトグラフィーにより部分精製を進めた。現段階では、カイコガの夏型ホルモン活性物質と同じ挙動を示すことから、カイコガ成虫の脳を用いて、精製を進めている。キタテハを用いた生物検定では、ほぼ最終精製標品が得られ、N-末端アミノ酸シークエンス分析を試みた。N末端アミノ酸10残基を決定した(Inoue et al.,未発表)。3,ベニシジミでは蛹の体色と羽化する成虫の翅の色彩との問に密接な関係があることを見出し、蛹体色の決定と夏型ホルモンの関係について検討した。その結果、ベニシジミでは蛹の体色は、日長と温度によって調節されていることを明らかにした。
著者
土居 元紀
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は皮膚構造の光学的モデル化と質感の高い皮膚画像生成であり,平成16年度は特に皮膚の分光スペクトル推定手法の検証と,そのモデルに基づく人体部分の3次元CGの生成を行った.平成15年度にKubelka-Munk理論を用いて皮膚内に存在する色素数や皮膚の厚みのパラメータをコントロールして反射光の分光スペクトルを推定する手法を確立したが,この手法では補正関数を導入していた.今回,その補正関数なしで推定できるように改良した.また,推定結果を用いて,皮膚内色素のパラメータをコントロールすることにより,日焼けや炎症などの生じた皮膚や,色素の少ない皮膚などの分光スペクトルを推定した.そして,推定した皮膚の分光スペクトルを用いて,3次元計測した人体部分の3次元CGを生成した.人体部分としては,手を対象とした.光源色と推定した皮膚の色および光源位置と手の3次元形状から,2色性反射モデルに基づいて手の上の各点における光の反射スペクトルを計算し,CG生成を行った.2色性反射モデルには,実際の2色性反射に最も適合する,Torrance-Sparrowモデルを用いた.さらに,テクスチャについて,テクスチャが顕著に現れる手のひらについて成分を解析し,フォトリアリスティックな皮膚画像の生成を行った.また,化粧肌の色についても,Kubelka-Munk理論を用いて解析を行った.これらの成果について、学会等で研究報告を行った。また,皮膚の光学的モデルとそのモデルに基づく3次元CGの生成について,成果をまとめ,現在学術論文誌に投稿中である.
著者
前田 文彦
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日光角化症は紫外線に慢性的にあたり続ける事によって誘発される皮膚病変で,日焼けをしやすい顔面,耳介,前腕手背部の皮膚に好発する。いわゆる日焼け(surbum)とは異なり慢性的な紫外線曝露で遺伝子に変異が生じ発症する。本症は表皮内癌であり、進行すると有棘細胞癌へ移行することが知られている。日光角化症患者の数は近年増数してきており,環境問題として世界的な話題となっている成層圏オゾン層の破壊による紫外線量の増加との関連が指摘されている。イミクイモッドは米国で尖圭コンジロームの治療に用いられている免疫調製剤で近年ボーエン病や悪性黒色腫に対する有効例が報告されている。我々は日光角化症患者に対し5%イミクイモッドクリームの外用を行いその有効性を臨床的に確認している。現在60症例に対して外用療法を行い臨床的に88パーセントの治癒率を認める良好な結果を得た。その症例は組織的にも腫瘍細胞の消失を確認している。腫瘍細胞の消失はKi S5の免疫染色でも確認している。また腫瘍が消失した症例では現在までの所再発を認めていない。またイミクイモッドが著効した症例で、同薬の外用前、外用中、外用後の組織を採取しそれぞれを比較検討した。結果リンパ球が誘導されアポトーシスが生じて腫瘍が攻撃されている所見が得られた。イミクイモッドはTLR-7のアゴニストといわれている。その治癒機序の一つとしてTLR-7に誘導されるアポトーシスを仮定し、それを免疫染色で証明できた。また誘導されたリンパ球はT cellであった。現在以上の所見をまとめ論文執筆中である。
著者
奥谷 昌之
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、資源量が豊富で強い毒性を持たない元素から構成される半導体薄膜を用いた新規紫外線センサーの開発を目的とする。目標とするセンサーの感度は、太陽光中で日焼け及び皮膚ガンの原因となるWB(280-320nm)域に高い感度を有するものとする。本研究で開発する紫外線センサーの構造は、基本的にpin接合太陽電池と同様である。予備実験として、CuO/TiO_2/SnO_2によるセンサーを既存のSPD製膜装置で試作したところ、予想通り350nm付近に感度を示したが、S/N比が10^8(一般si系で10^<10>)で微弱であり、精度をさらに上げていく必要がある。まず、SPD法によるp層のCuO、Cu_2O、SnS、Sn_2OS、CuI、i層のTiO2及びn層のIn_3O_3、SnO_2の最適形成条件を特定する。得られる膜の多くは数百nmの粒子から構成されているためピンホールが多数存在し、これを緻密化する必要がある。本年度はこれまでの低温膜形成技術及び結晶化抑制剤の利用により粒成長の抑制を図った。特に透明導電膜(SnO_2)層は原料の選択により形成膜の表面形態が大きく異なり、適切な条件設定により膜のヘイズ率を制御することが可能となった。これにより、センサーの感度のS/N比は試験的に作成していた従来品に比べ10^2倍大きくすることができ、有効なセンサーの作製に成功した。本研究結果はセンサーに限らず、様々な光学材料に応用することができ、太陽電池や紫外・赤外フィルター等の幅広い応用が期待される。
著者
丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

アンケート調査に基づき実地震下での高速道路運転者の地震時の行動特性を評価すると,震度5以上の強震域を走行中であっても地震発生に気付かない運転者が見られるなど,震動の影響で路面の段差や陥没が発生すると衝突事故が発生する可能性が否定できないことが分かった.新潟県中越地震における盛土の段差などの被害と地震動強さの関係を精査したところ計測震度が5.1〜5.2に達すると通行に支障のある被害が発生することが分かった.これらのことから,交通量の多い都市部では地震直後に多数の事故が発生することが懸念される.橋梁などの道路構造物の地震応答特性が,走行車両の地震応答量に与える影響を検討した.地表面地震動を入力地震動とした場合と構造物の応答加速度を入力地震動とした場合の車両の応答を比較すると,車体のロール運動のための荷重移動量やヨー角が構造物応答を入力したときに大きくなり,その結果車両の横変位量も地表面地震動の場合と比べて大きくなることが明らかとなった.さらに,緊急地震速報が高速道路運転者に与える影響を,サーバーで連動された2台のドライビングシミュレータを用いた地震時走行実験で検討した.自動車交通に緊急地震速報を導入するためには,速報を受け取った場合のハザードランプを点灯させるなどの対応方法を共通化することが必要であるという課題が得られた.また,速報を受信した際や前方車がハザードランプを点灯したことを視認した際の行動の統一化を急ぐ必要があることが結論づけられた.
著者
伊藤 龍史
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、先進国諸企業による国境をまたいだアウトソーシング、すなわちオフショア化を分析するものである。具体的には、日本企業によるオフショア化を戦略レベルで検討し、その成否について分析した。本研究から得られた知見は以下の通りである。すなわち、企業のオフショア化戦略が、市民権を得ていないようなオフショア化の仕方に先鞭をつけようとしつつ策定され、その実行においては市民権を得ている仕方をとる場合には、オフショア化は成功的となる。
著者
肥前 洋一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

どのような市町村どうしであれば合併が住民に賛成されやすいかを政治経済学の理論を用いて分析し、その理論的帰結を平成の市町村大合併のデータを用いて検証した。合併の是非を問う住民投票での賛成票を増やす効果があるのは、合併後の65歳以上人口比率・可住地面積・一人当たり所得が大きいこと、人口や公債費比率が小さいことであることが確認された。また、合併協議開始後の経過年数が長いとき、もしくは合併支援金が交付されないとき、賛成票のシェアが大きいことも観察された。
著者
藤波 初木
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

東アジアモンスーン域の陸上(主に中国の長江・黄河流域)における降水・対流活動の季節内変動とその要因を解析した。長江、黄河流域ともに、年々変動はあるが、夏季の降水・対流活動に顕著な季節内(7~25日周期)変動が確認された。これまで熱帯・亜熱帯の対流活動や大気循環場の変動の影響といった観点からのみ解析をされてきた対象領域の季節内変動は、中緯度亜熱帯ジェット気流上のロスビー波の影響を非常に強く受けていることが明らかになった。
著者
幡野 弘樹
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

私生活・家族生活の尊重を定めるヨーロッパ人権条約8条と、婚姻をし、家族を形成する権利を定める同条約12条に着目し、これらの条文における「家族」の意味は何かを検討することを目指した。その際、ヨーロッパ人権条約が、フランス国内の家族法における理論的・実務的影響も視野に入れて検討を行った。
著者
倉科 一希
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、1960年代のケネディおよびジョンソン政権に着目し、アメリカの対西ヨーロッパ政策を、通商問題を中心にしつつ、政治・安全保障問題との関係にも注意を払いながら検討した。当該時期には、ヨーロッパ統合をめぐって西ヨーロッパ諸国が対立していたこともあり、通商政策が大きく動いたとは言えない。その一方で、アメリカの政治・安全保障政策とヨーロッパ統合との密接な関係が確認された。
著者
西 信康
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は、古代儒家思想における人性論の歴史的展開と、儒家道家の思想交渉の歴史的展開に関する研究を進めた。具体的には、(1)『孟子』所載の仁内義外説を再検討し、「義」に対する告子の倫理思想を明らかにした。(2)郭店楚簡『性自命出』に見える「性」「命」「勢」「物」といった概念の意味内容と比喩表現を再検討し、その思想的特徴を明らかにした。(3)上博楚簡『民之父母』に見える「五至」について、『老子』『荘子』『淮南子』の記載を手がかりにその意味内容を検討し、儒家と道家の思想的交渉の様子を明らかにした。
著者
薮下 彰啓
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レーザーイオン化個別粒子質量分析計を用いて、春季に長崎県福江島において大気エアロゾルの観測を行った。本装置はリアルタイムに単一粒子毎の化学組成を分析する事ができる。黄砂期においては、鉛を含む粒子と多環芳香族炭化水素を含む粒子の数が増加した。黄砂期の鉛を含む粒子の多くにははんだや石炭燃焼由来の金属成分が含まれており、非黄砂期の粒子には海塩由来の成分が含まれていた。本装置により、粒子状汚染物質や黄砂粒子の発生源や輸送・変質過程についての知見を得る事ができた。
著者
泉 岳樹
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本年度は、都市型集中豪雨に都市ヒートアイランド(以下、UHIと称す)が与える影響を分析するために都市気候モデルを用いたアンサンブルシミュレーションを行った。具体的には、複数の対象事例と複数の客観解析値を初期値に用いたシミュレーションを行い、その平均(アンサンブル平均)を用いた解析を行った。使用した客観解析値は、JRA-25、RANAL、NCEP-FNL、NCEP/DOE-R2、GANALの5つである。アンサンブル平均を用いることにより、カオス性の高い都市の対流性降雨の再現精度は、単一のシミュレーションのみを用いた場合に比べ大幅に向上することが確認された。その結果、UHIは、関東での都市型集中豪雨の際によく見られるE-S型風系(鹿島灘からの東よりの風と相模湾からの南よりの風が東京付近で収束する風系)の形成自体には、大きな影響を持っていないことが明らかとなった。一方で、UHIは、都市の風下側や都市内部での風の収束を強化し、降水量を増加させる効果があることが明らかとなった。このことは、都市の高温化は、それ自体だけで都市型集中豪雨を引き起こすだけの力はないが、他の発生要因が揃っていた際の豪雨の発生確率を高くしたり、降雨量の増大をもたらす効果があることを示唆している。計画当初は、緑化や人工排熱の削減など様々な対策シナリオを設定し、都市型集中豪雨を減らすだめに効果的な方法を分析することを最終的な目標としていた。しかし、アンサンブルシミュレーションを行うのには、多大な計算機負荷がかかることやデータ解析の作業量も増大するため、効果的な対策シナリオの分析までは行うことができなかった。
著者
坂本 美紀
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究代表者の転勤に伴い,新しい勤務校で,協力学生を募った。大学と教育委員会との提携に基づいて小中学校にスクールサポーターとして派遣されている学生を対象に,実態アンケートの依頼と協働学習への勧誘を行ったところ,アンケートの回収率が非常に低かった上,協働学習の参加学生を確保できなかった。やむなく今年度の研究計画を変更し,ボランティア配置校の担当教員への意識調査を実施した。まず,学生アンケートの回答のうち,現場での支援活動の実態と,彼らが体験した困難や問題点を,事業の設定,教育・研修,実践活動の調整,校内連携の4つの観点で整理した。その結果,教育研修,実践活動の調整ともに十分でなく,打合せがあっても予定を話す程度で,教師との協議やスーパービジョンの場になっていない事例が大半であること等,学生の活用を支える基本的条件が十分でない実態が明らかになった。この結果を元に,教員インタビューの質問項目を設定した。提携先の教育委員会からの許可を待ち,冬休みから3学期にかけて配置校を訪問し,学生の活動内容や,学生活用を支える条件の実態,学生および派遣元の大学,派遣コーディネーターへの要望について,担当教員等から意見を聴取した。インタビューの模様は,許可を得て録音した。録音記録は現在分析中である。結果の概要を以下に示す。活動記録が単なる提出・保管用で,一方通行となっている学校が大半であること,打合せが最小限であること,指導機会の不足を認識している担当者もいることが明らかになった。学生の活用に対する要望として,活動スケジュールなど派遣された学生に対する要望,制度や派遣元の大学での人選に対する要望を採取することが出来た。得られた結果のうち,学生のデータをH19年度の学会で発表した他,本年度の主要な成果である教員インタビューの結果を,H20年度の学会で発表予定である。
著者
池添 昌幸
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

用途転用した公共建築物は運用後に利用要求が高度化し、空間改変が行われていることを実証するとともに最適化の条件を示した。さらに、公共建築物の民間利用によるストック活用事例を検証し、3つの活用パターンを明らかにした。最後に、公共建築物の新たなストック活用手法として、時間別の併用利用型施設の可能性を提示した。
著者
江田 匡仁
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大動脈瘤に対する低侵襲手術のための治療デバイス開発を行った。動脈瘤の進展を防ぐDoxycycline(DOXY)に着目し、生体吸収性材料(ポリ乳酸)とDOXYを混和してelectrospinning法で紡糸し担体を作製した。DOXYの徐放化が可能で、平滑筋細胞やマクロファージと共培養するとMMPs、カテプシン、炎症性サイトカイン、ケモカインを抑制し、エラスチン発現が亢進した。大動脈組織との共培養ではエラスチン分解が抑制され、MMP-2の発現も抑制した。さらに、アポE欠損マウスによる大動脈瘤モデルでは、エラスチン分解抑制、MMP2,9、IL-6、TNF-αの発現抑制、TIMP-1、IGF-1の発現促進を認め、新たな動脈瘤治療の可能性が示唆された。
著者
足立 大樹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

Al-Zn-Mg合金にMnを過飽和に添加し、急冷凝固法を用いてアトマイズ粉末を作製し、773Kで脱ガス処理をすることによりサブミクロンオーダーのMn金属間化合物を高密度に分散させることが出来る。これを773Kで熱間押出することでMn金属間化合物の周囲に転位が高密度に導入される。通常の合金であれば不連続動的再結晶の一種である粒子促進核生成再結晶(PSN)が生じるが、今回はMn金属間化合物間の距離が非常に近いことからPSNは抑制され、連続動的再結晶が生じ、微細な等軸の動的再結晶粒が一部で生じた。動的再結晶率は30%強であり、未動的再結晶部分は押出方向に伸張していた。得られた押出しままの組織は押出方向、ED//<111>or<100>に強度に配向した押出し集合組織であったが、これを423Kという非常に低い温度で熱処理することにより未動的再結晶部分からも静的再結晶が生じ、全面に微細な結晶粒が得られた。非常に低温における変化であったため、静的連続再結晶の可能性が考えられたが、集合組織の変化を調べたところ、押出集合組織が緩和され、よりランダムに近い組織が得られていたため、低温熱処理中の静的再結晶は連続再結晶であることが分かった。ランダムな組織は押出効果が得られる押出集合組織よりも押出し方向の強度には劣るが、その他の方向に優れた当方的な組織である。以上のことから、動的再結晶組織に低温熱処理の条件を加えることにより、強度に一方向に配向した組織から、ランダムな組織まで、目的に応じて容易に制御することが可能であることが分かった。
著者
川平 友規
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.1990年代,リュービッチとミンスキーはクライン群に付随する3次元双曲多様体のアナロジーとして,複素力学系に付随する3次元双曲ラミネーションを定義した.特に,クライン群におけるモストウ剛性のアナロジーにより,ある種の複素力学系の剛性定理を証明している.一方で,3次元双曲多様体に比べ,3次元双曲ラミネーションの構造の詳細は未だ限られた例を除きほとんど知られていない.今年度は昨年度から引き続き,無限回くりこみ可能な2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションの構造について研究(カブレラとの共同研究)し,以下の結果について論文を発表した:(1) 無限回くりこみ可能な2次多項式は,チューニング不変量と呼ばれる組み合わせ的な不変量(超吸引的な周期点をもつ2次多項式の列によって記述される)をもつ.一般に,無限回くりこみ可能な2次多項式が特異軌道が持続的回帰性をもつとき,その2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションほチューニング不変量に2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションと同相な「ブロック」を可算無限個つなぎ合わせることで「ほぼ」得られる.(2) 上記の性質を満たし,かつアプリオリ・バヴンドと呼ばれる幾何的な条件を満たす無限回くりこみ可能な2次多項式について,そのリーマン面ラミネーションと別の2次多項式のリーマン面ラミネーションが向きをこめて同相でれば,ふたつの2次多項式はおなじチューニング不変量をもつ.特に,マンデルブロー集合(2次多項式のパラメーター空間)が前者に対応する点において局所連結であれば,前者と後者は同じ2次多項式である.特に(2)は,力学系から得られる幾何学的な対象が逆に力学系を決定する,という意味で,モストウ剛性に近い剛性定理といえる.2. その他,放物的分岐におけるハウスドルフ次元の微分の評価,ゴールドバーグ・ミルナー予想の研究などを行った.
著者
清水 唯一朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では戦前日本の二大政党制下における政官関係の研究をベースに、現代日本で現出しつつある戦前日本の二大政党制下における政官関係との比較分析を行った。特に2009年の政権交代以降進行しつつある政治主導と公務員制度改革について、政権交代と政界再編、官僚の政治任用と党派化の問題から現代に有効な知見を得ることができた。それらの成果については『法学研究』などの学会誌をはじめ『朝日新聞』『WEDGE』など一般紙に発表し、現在、書籍としてまとめるべく作業を進めている。