著者
島田 弦
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

強力な行政権と著しく限定された政治参加を特徴とする権威主義体制において、法による権力の制限を内容とする「法の支配」が、民主化運動とどのように結びついたのか、また1998 年に始まる民主化以降、「法の支配」を支える制度がどのように変化したのかについて研究を行った。そして、立憲主義を通じた行政権の制限を担保する制度として憲法裁判所に関する論文、および、市民社会の側からの「法の支配」を基礎とする民主化運動について、法律扶助運動に関する論文を発表した。また、関連研究として、東ティモールの平和構築における司法制度の役割に関する論文、災害復興行政に関する学会報告を行った。また、イスラム法に基づく統治と国家法制度の緊張関係に関する論文を執筆中である。
著者
塩出 浩之
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、明治維新直後に誕生した日本の新聞が、公開の言論による政治空間を形成した過程について、近隣諸国との関係・紛争をめぐる議論を中心に分析した。征韓論と民権論の結合に象徴されるように、言論の自由(政府批判を含む)の追求とナショナリズムとは親和的だったが、"国益のための避戦"論のように議論には多様性があり、公に異論を戦わせること自体に重きが置かれていた。コミュニケーションの形態にも多様な模索があり、琉球併合問題をめぐっては中国の新聞との相互参照もみられた。
著者
松本 龍介
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

機械材料の高性能化や高度な構造健全性の要請のため,ミクロスケール構造変化に立脚した力学モデル構築の試みが盛んになされている.中でも代表的なアプローチとして,量子計算から原子間相互作用力を定義し,分子動力学法による欠陥構造のダイナミクスの理解を経て,離散転位動力学法による転位構造と力学特性の関連の解明へと繋げようとする一連の研究が挙げられる.しかしながら,離散転位動力学問題の単なる大規模化によってマクロな構造解析を実施することは非現実である.本研究ではこの問題点を突破するために均質化理論に基づく解析手法の開発を行なった.初年度は,連続体解析における代表体積要素内に周期境界条件を仮定した離散転位動力学問題を格納することで,連続体によるマクロ問題と離散転位動力学法によるミクロ問題を結合したマルチスケール解析手法の定式化を行なった後,それを用いて弾性体粒子を分散させた1滑り系の金属基複合材料の塑性変形挙動の解析を行った.本年度は,それに引き続き,転位が介在物内に侵入できるように,理論及び解析プログラムを拡張した後,転位源の活性化及び,介在物への転位のパイルアップと侵入挙動と,応力-ひずみ曲線との関係を異なる寸法の介在物に対して明らかにした.さらに,2滑り系に拡張し,多結晶体の塑性変形挙動と粒径及び転位構造との関わりに関する解析を行った.そして,転位が粒界を横断するメカニズムを離散転位動力学法に導入することで,降伏応力と加工硬化係数に対する粒径効果が適切に導入されることを明らかにした.
著者
金井 利之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は最終年度ということもあり、これまでの文献資料収集及び自治体ヒアリングを続けるとともに、それらを多様な機会を活用して公表していく作業を行った。例えば、上越市や岡山市の事例調査報告がある。また、特に本年度に力を入れたことは、公共政策系大学院における教育と研究と実務の一体的有機的連関である。この成果として、大学院における「事例研究」(演習形式)で法務管理を採りあげるとともに、その成果を、担当教員として監修しつつ、大学院生に執筆させることを行い、併せて、事例報告の学会への蓄積を行った(『自治体法務NAVI』第一法規、において連載)。こうして採りあげることができたのは、京都市、尼崎市、神奈川県、横浜市、川崎市である。本年度には連載は終了しなかったが、今後も、1県3市町程度の原稿を調整しているところである。これらの事例情報の蓄積を踏まえつつ、法務管理に関する理論枠組みを整理するため、給与管理や第三セクター処理などの他の行政管理との比較をおこなった。特に、後者においては、多面的な側面を有する第三セクター管理では、財務・人事・法務・情報などの管理が全体として整合している必要があり、第三セクター処理という限られた側面ではあるが、他の行政管理との対比のなかで、法務管理の占める位置と特徴を分析した。このようにして、事例を蓄積することで、自治体の法務管理の全体像ないしは平均像が、おぼろげながら浮上しつつあると考えられる。また、これらの蓄積を公表することで、学界・実務界の関係者には重要な基盤情報を提供できたものと考えられる。今後は、この蓄積を踏まえて、自治体の法務管理に関する実証的な仮説を提示し、それに沿って文献・ヒアリング調査を行い、検証していく作業が必要と考えられる。
著者
伊藤 冬樹
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,複数の分子を組み合わせることで形成される組織化分子配列系で進行するエネル1ギー・電子移動反応などの励起ダイナミクスについて時間・空間分解分光法を用い,時間発展と空間分布の階層性を明らかにすることを目的とする.組織化された分子配列系として光捕集能や光導電機能をもつ分子をDNAにインターカレートした機能組織体を対象とする.前年度のアクリジンオレンジーDNA薄膜における時間分解蛍光測定,蛍光異方性減衰の測定から,DNAにインターカレートして形成される分子配列系において高効率な励起エネルギー移動が生じていることを明らかにした.本年度は,この結果に基づき,DNA鎖上にカチオン性ポルフィリン(TMPyP)とシアニン系近赤外蛍光色素(DTrCI)を吸着させた系における励起エネルギー移動を観測し,これを利用した近赤外蛍光増強について検討した.TMPyPとDTTCIを混合したDNA緩衝溶液中ではTMPyPの濃度が増加するにつれて,DTTCIの蛍光強度はTMPyP非存在下の最大86倍程度増加した.このエネルギー移動過程のタイナミクスを検討するために,時間分解蛍光測定を行った.TMPyPの蛍光強度は2成分指数関数で減衰した.一方DTTCIの蛍光強度は立ち上がりと減衰の2成分指数関数で再現された.立ち上がり成分はTMPyPの早い減衰成分と一致したことからエネルギー移動によってDTrCIの励起状態が生成したことを示している.また,本研究課題により得られた知見に基づき,高分子薄膜中に形成された色素分子集合体の集台体サイズとその励起状態ダイナミクスに関する研究へと発展させることができた.
著者
中谷 彰宏
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近年、生物的な自己強化や恒常性維持機能をも持つ適応的材料構造の実現への要求が、安全性、省エネルギー性、さらには環境確保という科学技術とその工業化への時代的要請の増大とともに、次第に高まりをみせてきている。本課題では、形状記憶合金を用いた知的複合材料および知的構造体のマクロな力学特性・変形特性をミクロな構成要素の特性から評価し、さらには、外場の変化に適応して、能動的に振舞う機能を設計するための有効な方法論を提案することを目的としている。ここでは、その基礎研究として、Ni-Ti形状記憶合金線を組み合わせた構造体を対象とし、内部構造の違いによる巨視的応答の違いを調べるとともに、目的とする巨視的応答を得るための内部構造の設計についてモデル解析を行なった。得られた成果は以下の通りである。(1)実験的検討として、知的構造体のセンサー・アクチュエーターとしての役割を担う形状記憶合金線の単軸引張試験を行ない、弾性および超弾性域の力学特性、および、その再現性を検討した。さらに、ここで得られた荷重変位曲線に対して、簡便な表式を用いた関数近似を行なった。また、複数の部材を簡便に組み合わせて、全体として複雑な応答をする構造を組み立てるために必要なジョイント部分の基礎的検討を行なった。(2)解析的検討として、形状記憶線材を組み合わせた構造体の有限変形問題を解くことができる有限要素コードを開発し、(1)で得られた荷重変位近似曲線を用いて、外力が作用する様々な構造体に対して、構造全体の変形と局所構造の変化を調べた。超弾性域の材料非線形性と負荷除荷過程のヒステリシスを利用することにより、様々な全体挙動を実現できることを示した。(3)以上で得られた知見をもとに、形状記憶線を組み合わせた構造、および、それを内部構造として用いる知的複合材料の設計に対する方法論を提案した。(以上)
著者
鄭 承衍
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

前年度には、日韓両国の国会図書館、各産業協会、大学図書館、民間企業への訪問を通じて集められた資料を整理することにより、両国間の自由貿易協定(FTA)の締結への動きとその課題を把握する作業を行った。本年度には、前年度に収集した資料さらに新しく集めた資料・データをもとに、具体的な産業分析を行った。つまり、日韓産業技術構造の比較という観点から、両国間の競合部門を代表する半導体産業と補完部門を代表する工作機械産業を取り上げ、日韓間の経済協力の現状やFTA締結に向けての課題について調査・研究を行った。その主な結果をまとめると、次の3点が言える。第1に、半導体産業においてはメモリー部門での両国間の競合は依然として続いているものの、近年のDRAM価格の急落や生産面においての後発国の急激な追い上げのため日本の大手メーカーがメモリー部門を大幅に縮小・整理しシステムLSIのような非メモリー部門に重点を移していることから、韓国のメモリー、日本の非メモリーという補完関係が成立し始めた。第2に、工作機械産業においては韓国の内需市場の拡大により韓国工作機械メーカーも質量ともに発展を遂げてきているものの、NC工作機械に含まれるNC装置のような核心部品においては韓国の日本への依存が依然として続いていることから、韓国の標準型NC工作機械、日本の高性能NC機械や核心部品という分業体制が定着した。第3に、以上の2つの産業比較分析から分かるように、日韓両国が今後FTAの締結に成功しそのメリットを十分に引き出すためには、競合部門での国境を越えての整理・合併を通じての技術革新・生産の特化をより鮮明にすること、補完部門での組立加工生産や核心的な部品供給の面で産業内分業をより徹底して進めることが求められる。来年度には、以上の研究成果を集めて研究叢書を刊行する予定である。
著者
中谷 敬子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

アモルファス合金は、低い剛性にも関わらず、静的強度、衝撃破壊強度、疲労強度、いずれも大きいというその特徴をもち、その製品の開発が進んでいる。申請者は、鉄単元系アモルファス金属の理想化されたモデルに対して、分子動力学シミュレーションを実施し、その変形挙動、破壊機構が、結晶とは全く異なっており、その違いは、原子レベルの構造とその変化の違いから生じていることを明らかにしてきた。しかしながら、現実に存在する複数種類の原子を含む合金系では、その原子構造が有しているオーダーリングの複雑さのために、単元系に対する知識がそのまま通用するかどうかはわかっていない。一方、アモルファス合金の解析については、銅ジルコニウム(Cu-Zr)合金について、二、三の原子レベルシミュレーションがなされているが、合金系の原子間ポテンシャルのパラメータに単元系の値を平均したものを用いているなどの点で曖昧さを有している。また、損傷/破壊に対するメカニズムはまだ十分に明らかにされていない。このような経緯から、本研究では、実験データが豊富な銅-ジルコニウム(Cu-Zr)合金系のアモルファス相に対して分子動力学法を用いてその構造および力学特性、変形・破壊挙動について検討を加えることを目的としている。この目的達成のために、今年度は、昨年度に開発したポテンシャルをより適切なものへとブラッシュアップした。さらに、作成したポテンシャルを結晶構造に適用し、その相変態や、構造強度の変化を調べることを試みた。具体的には,(1)幾何学的な原子構造と原子レベルの固有応力,弾性定数の分布等の基礎的データの収集,(2)無負荷および引張予負荷を与えた試験片に対する単軸引張圧縮および二軸引張圧縮試験の分子動力学シミュレーションによる基本力学特性とその変形による損傷についての研究を行なった。得られた成果により、申請者は、(財)日本機械学会から2001年度日本機械学会奨励賞(研究)を授与された。
著者
湯浅 佳子
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、曲亭馬琴の読本・合巻作品の典拠調査から作品論を目指すものである。今年度は、昨年度同様に馬琴の初期の読本作品に注目し、物語世界がどのような先行作品をふまえ、それをどのような世界として描いているのかについて考察した。まず、馬琴読本世界の中で輪廻転生や因果応報という仏教的世界観、儒教的な道徳観念を背景として主張される善悪の問題について考えてみためが、「『新累解脱物語』考」である。『新累解脱物語』は、文化四年という比較的初期の中編読本作品であるが、馬琴読本の中でも登場人物の善悪の設定が曖昧な作品と評価されてきた作品である。そこで本論では、人物の善悪の描かれ方について詳細に検討した。その結果本作品では、従来の怪異説話を利用しながら、その怪異性よりもむしろ因果応報の理が強調され、親から子へ、子から孫へと、人物が犯してきた罪の報いが受け継がれる世界を描いていること、また、珠鶏という女性の善を終始一貫して描くことにより、勧善懲悪の世界が全うされているということが明らかになった。読本作品が前代の怪異説話をどのように継承・展開させたかを示した一論である。また、「『盆石皿山記』小考」では、同じく馬琴の中編読本『盆石皿山記』における善悪・神威の問題を、典拠作品との比較から考察したものである。そこでは、本作品が、浄瑠璃『苅萱桑門筑紫〓』の世界を、殺生の罪という問題を強調しつつ取り入れていること、また、紅皿欠皿伝説に取材した幾種かの草双紙作品や民間伝承に基づきながら、継子いじめの因果応報譚を描いていること、さらに、それら登場人物の罪の消滅が、皿屋敷伝説を展開させた話に添いながら、名僧による怨霊解脱譚としてなされていることを指摘した。
著者
宗澤 岳史
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、睡眠薬の相補・代替治療として注目されている不眠症に対する認知行動療法(以下CBT-I)に関する研究として(1)CBT-Iの睡眠薬の減薬・離脱効果の検証、(2)不眠症に対する集団認知行動療法の開発と効果の検証を実施したものである。本研究結果から、CBT-Iは(1)睡眠薬の減薬・離脱の効果を有する,(2)集団療法においても不眠症状の改善効果が期待できることがそれぞれ確認された。
著者
桐原 和大
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、測定対象の分子に強電界などのストレスをかけずにその伝導性や電子構造を知る新しい分子デバイスとして、有機分子の熱起電力を測定する素子を構築することを目的とする。ミクロンからサブミクロンに至るスケールの微小領域の熱起電力測定システムを開発し、その信頼性の評価として、ボロンナノベルト1本の熱起電力の測定に成功した。サブミクロンギャップの微細電極間に、有機分子を架橋するためのAuナノ粒子とAl_2O_3マトリクスのナノコンポジットを製膜した。その結果、約5nmの粒径のAuナノ粒子が最小2nm程度の粒子間隔で分散した薄膜を堆積出来た。しかしながら、測定ターゲットであるビピリジン誘導体を固定化しても、電流電圧特性に変化があるものの、再現性が見られなかった。ナノ粒子間隔をさらに小さくする必要があることを示している。
著者
松本 峰哲
出版者
種智院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、『カーラチャクラ・タントラ』及び、『ウィマラフラバー』の翻訳研究と平行して、特に『カーラチャクラ・タントラ』の成立に重要な影響を与えたとされる『ナーマサンギーティ』の注釈書『アムリタカニカー』のテキスト再校訂及びコンピューター入力、そして翻訳研究を行った。再校訂作業が難航し、翻訳が進まなかったため、成果を外部に発表するまで至らなかった。しかし、従来指摘されてきた『カーラチャクラ・タントラ』と『ナーマサンギーティ』の関係について、特に本初仏に関する論議があまり行われていないなど、従来指摘されていた両教典の密接な関係性について、疑問を提示する箇所がいくつか見つかっており、この点に関しては、今後なるべく早い段階で発表したいと考えている。また、本年度は『ヴィマァプラバー』が、『カーラチャクラ・タントラ』の説かれた場所であると説明するインドのアマラヴァティーの遺跡を実際に調査し、許可を得て、博物館の収蔵物を写真撮影した。遺跡から発掘された遺品には、密教に関するもの非常に少なく、また、アマラヴァティーの遺跡自体も『ヴィマラプラバー』に説かれる仏塔のイメージとはかなり異なっていることから、なぜ『ヴィマラプラバー』に説かれるアマラバディーの異名とされるダーニヤタカタの仏塔が、現存するアマラバディーの仏塔と同一のものなのか、新たな疑問が浮かび上がった。
著者
佐藤 史郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまで、政策上、核抑止の重要性を主張することは「現実主義」である一方、核軍縮・不拡散措置の重要性を主張することは「理想主義」として捉えられてきた。前者が核に依存して安全の確保を試みるのに対して、後者は核に依存しないで安全確保を試みるからである。本研究は、威嚇型と約束型という2つの再保証(reassurance)の行動予告に着眼することで、核軍縮・不拡散措置の重要性を主張することは「現実主義」である旨を提示した。
著者
中山 京子 中牧 弘允 森茂 岳雄 織田 雪江 居城 勝彦 ALISON Muller RONALD Laguana LAWRENCE Cunningham
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来の先住民をテーマとした教育活動について、ポストコロニアルな視点から問題点を示し、先住民学習の意義を検討した。そして、先住民に関する展示をもつ博物館や先住民研究機関との連携のもとに、偏りのない理解を深めるための教材の開発を行った。その際、主にグアムの先住民チャモロをテーマにした試行実践を行った。研究を通して先住民学習の意義を明らかにし、これからの先住民学習の可能性を検討した。
著者
重信 秀治
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

生殖細胞の形成機構の普遍性と多様性-すなわちその進化-を理解するために,モデル生物ショウジョウバエでこの過程に働く遺伝子をゲノムワイドに同定し,他の生物種との比較を行った.まず,マイクロアレイを利用してショウジョウバエ生殖細胞の詳細な遺伝子発現プロファイルを得た.次に生殖細胞形成に関わる遺伝子群を他の昆虫と比較したところ,その多くは昆虫の間で保存されているが,ショウジョウバエ特異的な遺伝子(oskarなど)やnanos, vasaの種特異的な遺伝子重複(アブラムシ,カイコ)が明らかになった.
著者
平山 東子
出版者
独立行政法人国立美術館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、紀元前6世紀前半の初期アッティカ黒像式陶器の展開を様式、図像、技法、器形、出土分布などから多角的に跡づけ、その形成過程と古代地中海世界における社会的機能をさぐることを目的としている。そのケーススタディーとして、初期アッティカ黒像式陶器を代表的する陶画家の一人である逸名の画家「KXの画家(KX Painter)」を採り上げ、関連資料の収集と調査を実施、「KXの画家」とその周辺作品の図像と技法、装飾方法、器種、出土状況などに関する多くの知見を得ることができた。採取したデータを分析し、当該作家の個々の作品の比較や、同時代および後代のアッティカ陶器および周辺地域の陶器との比較、影響関係の考察などを行った。これらの作業と考察を通じて、「KXの画家」とその工房の作品を明確化し、「KXの画家」の特徴とその背景、周辺作家との影響関係、アッティカ陶器の形成期における当該作家の意義が明らかとなる。
著者
下ノ村 和弘
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生体の視覚系は,長年の進化の過程で獲得された独自のアーキテクチャを用いて,複雑な視覚情報を極めて効率的に処理している.本研究課題では,脳視覚野の神経細胞がどのようなメカニズムで奥行きを計算するかを説明するモデルに着目して,これをアナログおよびディジタル集積回路を用いて効率よく実装する方法を提案し,ロボットが環境認識を行うために不可欠な奥行き情報を実時間で計算する集積視覚システムを構築した.
著者
船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

リン脂質キナーゼPIP5Kは、PIP2の産生を介して多様な生理機能を発揮する。PIP5K にはα、β、γの三つのアイソザイムが存在する。先に研究代表者の属する研究室ではPIP5Kの活性化因子として低分子量Gタンパク質Arf6を同定しているが、本研究では各アイソザイム特異的なArf6による活性化を検討し、PIP5Kγに固有のN 末領域が分子内マスキングによりArf6による活性化を調節するというユニークな制御機構を明らかにした。
著者
澤登 千恵 村田 直樹
出版者
高松大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,現代の財務報告制度の起源を19世紀イギリス鉄道会計に求め,当時の主要な鉄道会社が株主総会後に作成していた報告書と関連資料をテキストマイニングで分析した。特に,自身がこれまでの研究で想定していた会計変化に対する資金調達不確実性(資金不足)の影響を再検討した。いくつかの鉄道会社で資金調達不確実性を示すキーワードを確認でき,さらにこれらの会社は,複会計システム,減価償却実務,そしてコストマネジメントを積極的に採用する傾向にあったことがわかった。
著者
永島 達也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

先行研究で用いられている、比較的簡便で使用する数値モデルに適した手法を選定し、炭素性エアロゾルの内部混合過程が考慮できるように気候モデルを改変した。この改変により、炭素性エアロゾルによる放射の吸収・散乱過程が変更されるとともに、これまでの使用していたモデルに比べて、煤粒子の雲粒への取り込みや雨滴としての消失が強化されるようになった。このモデルを用いて、幾つかのテスト実験を行って実験用パラメータの妥当性を評価した後に、産業革命前(1850年付近)を想定した外部境界条件の下で1000年の長期実験を行い、気候ドリフトの無い安定した基本状態を得た。その後、上記1000年実験のデータから100年間隔で4つ取り出された初期値を用いた、4メンバーの20世紀再現アンサンブル実験、及び同初期値を用いたやはり4メンバーの感度実験を行った。感度実験は、エアロゾル(或いはエアロゾル前駆物質)の地表放出量を、(1)全てのエアロゾル種に関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、(2)炭素性のエアロゾルに関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、の2ケースについて行った。また、エアロゾルによる放射強制力を評価するための実験も当初の計画に追加して行った。初期的な解析によれば、20世紀全体で評価した場合、全球平均した地表面気温の長期的なトレンドの再現性は、炭素性エアロゾルの内部混合を慮しいな場合と遜色ないが、20世紀中盤の気温寒冷化傾向はより過大に評価された。これは、内部混合を考慮することによって日傘効果が増す一方で、大気を暖める事によって二次的に地表面を温める効果はあまり大きくない事を示唆するが、準直接効果による雲場への影響などは今後の解析課題となった。