著者
西川 幸宏
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

物体内部の構造を三次元で観察できるX線CTは、空間分解能の向上とともに、産業分野での注目を集めており、急速に普及・発達しつつある。さらなる空間分解能の向上のためには、3つの要素技術が考えられる。点光源として用いるX線源の微細化、ベアリングを用いない試料回転機構、X線に対するコントラストの向上である。本研究では後者2つについて検討を行った。ベアリングレスのモーターシステムとして、連続回転するスピンドルモーターを使用し、高速カメラを組み合わせることで、試料の回転を止めずにCT撮影することに成功した。高コントラスト化については、検出器のシンチレータ-を薄くすることで、高エネルギーなX線に対する感度を大きく低下させ、低エネルギーのX線に対する感度を相対的に向上させた。これにより、高分子材料の種類の違いを区別できるコントラスト性能を達成し、高分子材料におけるX線CTの利用の可能性を大きく切り開いた。
著者
戸渡 智子
出版者
福岡女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、日常生活において曝される温熱・光環境について、年間を通した実態調査を行うと同時に、唾液分析によりホルモン分泌量を測定し、環境要因と内分泌挙動との関係について検討を行った.その結果、温熱・光環境ともに内分泌挙動と有意な相関がみられ、特に光環境が内分泌挙動の変動に及ぼす影響については、短期の光曝露履歴が個人内変動と関係し、長期的な光曝露履歴が個人間の差と関係することが示唆された.
著者
岡村 聖
出版者
名古屋産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

太平洋側沿岸部大都市の典型として名古屋を中心とした濃尾平野を対象に、当該地域の気候特性を活かした建物の空間分布、道路、植生、水田、水面分布等を調べることを目的とした研究を行った。手順としては、1.詳細な土地利用分布データの作成、2.空間3次元キャノピーモデルの改造、3.解析対象領域における真夏日、熱帯夜の温度空間分布の再現、4.省エネルギー都市空間構造に関するシナリオ作成及びモデルシミュレーションによる考察、の順に研究を進めた。1.については、(1)GISソフトウェア、(2)詳細な土地利用分布の基となるデータ、をそれぞれ導入し、当該データを作成した。2.ついては、並列計算機能を備えたあらゆる科学技術演算用サーバに対応可能なモデルソースコードへの改良を、計算時間の短縮に最も有効な支配方程式系およびキャノピー層内の熱収支計算について行った。3.については、(1)都市熱環境の広域性、(2)熱環境と都市空間構造の空間1次元性、(3)熱環境と都市空間構造の空間3次元性に対する知見を、それぞれ、研究発表として取りまとめた。例えば、(2)については、観測結果との比較によりモデルの有効性を確認すると共に、晴天で空間1次元性がなりたつ気象状況の場合、日中低層の建物が密集している地域がより高温になること、夜間高層の建物が密集している地域で気温が低下しにくいこと、等の結果を得た。4.については、3.(3)について更に研究をすすめ、極端な乾燥状態、湿潤状態等、様々な初期条件に対するモデルの感度解析を行いモデル細部のチューニングを行うと共に、3次元気象現象に対するモデルの有効性を検討した。今後、1.の詳細な土地利用分布データを入力とした、3次元モデルシミュレーション結果に基づく、省エネルギー都市空間構造に関するシナリオ研究を最終成果として取りまとめる予定である。
著者
浅川 麻美
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

う蝕病原性細菌の母子伝播について、妊産婦とその出生児間における機序を明らかにするために、まず母子間におけるう蝕病原性細菌の遺伝子学的相同性について検討した。対象は、岩手医科大学歯科医療センター小児歯科外来を受診している小児患者と、その母親とし、対象の児と母親の口腔内より滅菌器具にてプラークを採取し、試料とした。それらを生理食塩水にて、洗浄後、段階希釈を行い、バストラシン添加ミティスサリバリウス寒天培地(MSB寒天培地)にて37℃嫌気下にて48時間培養を行った。MSB寒天培地より採取したコロニーは、生化学的同定法およびPCR法にて菌種同定を行った。同定したS.mutansとS.sobrinusの分離株はトドヒューイット液体培地にて18時間培養し、増菌して菌液を調整した。その後菌液を低融点アガロースゲルに混和し、泳動用プラグを作成して、パルスフィールド電気泳動(PFGE)による解析を行った。プラグはlysozymeにで溶菌し、proteinaseKにで処理後、Sma Iにで制限酵素処理を行った。泳動条件は、switching time1.0〜3.0sec、pulse angle 120°electrophoresis 6v/cm、temperature 14℃とし、18時間泳動を行った。泳動後はエチジウムブロマイド溶液にて染色し、紫外線照射下にて観察を行った。本条件にて泳動を行った結果、明瞭にDNAのバンドパターンを観察することができ、遺伝子型の相同性の解析が可能であると考えた。今後は、母子間においてPFGEによる遺伝子型相同性の解析を行い、同時に口腔内におけるう蝕病原性細菌数、う蝕罹患率、生活習慣等を調査し、伝播形式とその菌株のう蝕罹患傾向との関連について検討していく予定である。
著者
内田 千秋
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1 会計監査役の民事責任上のフォートについて会計監査役の一般的な任務(監査・証明)の性質は手段債務として理解されており、「同一の状況にある通常程度に注意力がある会計監査役」と当該会計監査役の行動とが比較されたうえで、フォートが判断される。そこで、本研究期間では、不正の事例と誤謬の事例に分類したうえで(不正の事例は、横領の事例と粉飾決算の事例とに分類される)、会計監査役の民事責任に関する判例の検討・分析を行った。横領の事例においては、法定監査の前提となる内部統制の評価を行ったかどうかを重視する傾向が見られ、隠蔽手段の巧拙、横領額の多寡・頻度がフォートの判断要素とされていることが明らかになった。他方、粉飾決算の事例では、隠蔽手段の稚拙・粉飾決算の期間・会社の経営状態などがフォートの判断要素とされていた。また、判例の全体的な検討により、会計監査役の監査は試査を原則とするも(その内容は職業基準により決定される)不正の何らかの端緒が発見された場合には行うべき試査の程度を高めるべきであると判断されてきたことが明らかになった。このテーマについては、近く「早稲田法学」(早稲田大学紀要)に投稿する予定である。2 会計監査役の民事責任における損害と因果関係について本研究期間ではまた、会計監査役の民事責任における損害・因果関係のうち、対株式取得者(株式譲渡・増資引受による)責任に関する裁判例について検討・分析を行った。特に、会計監査役の法定監査による計算書類の信頼性と、買収者側の買収監査(いわゆるデューディリジャンス)の必要性との関係に焦点をあてており、買収者が買収監査を行わなかった場合には、判例が買収者のフォートを認定し因果関係を否定しまたは損害賠償額の減額を行っていること等が明らかになった。このテーマについても、2007年内の投稿を予定している。
著者
笛木 賢治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

I.目的本研究では咀嚼機能の観点からみた片側性遊離端義歯の人工歯部歯列の近遠心径についての臨床的示唆を得ることを目的としている.初年度は実験的に下顎の片側性遊離端義歯を対象にして人工歯部歯列の近遠心径を変化させた時にこれが咀嚼の混合能力に及ぼす影響を検討し第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼の混合能力は低下しないことを明らかにした.そこで平成15年度は,上顎の片側遊離端欠損の症例で検討を行った.II.方法被験者は上顎第一、第二大臼歯の遊離端欠損を有しかつ対合には天然歯もしくは固定性の補綴装置が装着されている患者8名(男性2名,女性4名,平均年齢61.5歳)を選択した.実験義歯は片側性の設計で白金加金を用いてワンピースキャストで製作した.上顎第二小臼歯に近心レストとバックアクションクラスプ,上顎犬歯および第一小臼歯にエンブレジャーフックを設置した.人工歯部歯列の頬舌径は顎堤頂を中心軸として幅を7mmとし,光重合レジンを用いて口腔内で直接製作した.人工歯部歯列の近遠心径は以下の3種類に変化させた.Aは欠損部に隣接する上顎第二小臼歯の遠心面から対合の下顎第二大臼歯の遠心面(平均18.2mm)までとした.順次近遠心径を13,9mmとし,それぞれB, Cとした.咀嚼機能の評価は当教室で開発した混合能力試験で行い,被験試料を義歯装着側で10回咀嚼させ混合値(MAI)を算出した.3回試行しその平均値を各歯列の代表値とした.各歯列間の比較はTukey法により有意水準5%で行った.III.結果とまとめ歯列の近遠心径がAとBの間には,混合値に有意な差は認められなかったが,AとCおよびBとCの間には有意差が認められた.この結果から,人工歯部歯列の近遠心径を13mmより短くなると混合能力が減少すると考えられた.このことから,下顎と同様に上顎の片側性遊離端義歯においても第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼機能が低下しないことが示唆された.
著者
佐藤 紀子
出版者
東京工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

初心者の描画プロセスを時系列のデータとして扱い、定量的な分析から導きだす描画傾向を描画支援として応用することを目指した.本研究の成果により,描画過程を詳細に分析することが可能となった.1.ペイント系ソフトの開発 従来のアナログの描画形態を保ったまま描画内容をデジタル化する手法として,液晶ペンタブレットでの描画入力に特化したソフトを開発した.このソフトは,描画再生時間を任意に設定できる他,指定時間帯のみの再生も可能である.渡辺賢悟."でっさん"描画パート.Version 2.03, 2007-12-17.発信者(渡辺賢悟)info@mediatelier.net, Windows 2000/XR,ファイルサイズ:364KB.2、解析ソフトの開発 1のソフトで取得した時間単位ごとの描画結果を静止画で取り出すことが可能である.描画部分をAdobe社のIllustrator CSを用いて領域ごとに色で分割指定し^<*1>,領域内の濃度の推移を取得した.竹内 亮太."でっさん"分析パート.Version 2.00, 2007-6-24.発信者(竹内亮太)s2rita@nifty.com, Windows 2000/XP,ファイルサイズ:244KB.3.結果 参加者である美術大学生と工科大学生それぞれ5名が,9オンス紙コップとりんごをそれぞれ5回描画し,それらの描画時間の平均値と標準偏差,消去時間を求めた.どちらの参加者も,それぞれの項目で同じ数値を示す該当者がいた.特に,質感表現に傾向があり,時間の多くがこの表現に費やされることが時間単位ごとの静止画から把握できた.さらに,対象物を見ることに対する意識が異なることも描画結果のアンケートから示唆された.よって,形態の把握と平行して質感表現も描画支援する必要があると考える.注.*1色指定は8箇所まで可.ドロー系ソフトであれば,Adobe社以外のソフトも使用可能.
著者
鈴木 禎宏
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究計画に従い、資料の蒐集・整理を継続しつつ、研究発表活動を行った。当初の計画では、イギリスのクラフツ・スタディ・センターでの調査を予定していたが、同センターがウェブ上での資料公開を開始したため、渡英の緊要性が薄れた。そのため、代わりに日本国内での調査に重点を移し、四国地方(砥部、伊予西条など)や北陸地方(高山、富山、金沢)、信州(松本)などで調査を行った。特に倉敷市の大原美術館においては、同館の全面的な協力のもと、充実した作品調査を行うことができた。今年度は研究の最終年度にあだるが、これまでの研究を総括し、社会に還元する好機に恵まれた。それは、松下電工汐留ミュージアムの「生誕120年バーナード・リーチ生活をつくる眼と手」展(平成19年9月1日-11月25日)である。研究代表者は「企画協力」として、この展覧会の構成や作品解説に関わった。これは、前年度までに行った調査に基づく最新の研究成果を展示に生かす機会となった。さらに、この展覧会を契機に、同ミュージアムでの講演や、『エクラ』『カーサブルータス』といった一般商業誌への取材協力を通して、研究を社会に発信することができた。以上の他にも、12月6日には総合地球環境学研究所の第6回人と自然:環境思想セミナーにて、「民芸運動の自然観と生活のかたち:バーナード・リーチを手がかりに」を発表し、「自然観」という新たな視点から、リーチ論を試みた。蛇足ながら、平成19年6月に、拙著『バーナード・リーチの生涯と芸術』(ミネルヴァ書房)が第11回日本比較文学会賞を受賞した。
著者
岸 邦宏
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度はロジット型価格感度測定法(Kishi's Logit PSM ; KLP)の精緻化に重点を置いて研究を進め、モデルの評価指標の信頼性について明らかにした。平成14年度はその結果を受けて、KLPを用いて公共交通機関の運賃と利用者数について分析を行った。適用事例を以下に示す。1.北海道におけるコミューター航空北海道宗谷南部地域において空港が建設され、コミューター航空が就航された場合の運賃評価について意識調査を行った。業務目的と観光目的、目的地が道央圏と首都圏について分析を行い、それぞれの運賃評価と市場規模を考察した。2.北海道新幹線の函館開業時北海道新幹線が函館まで延伸された場合の函館〜東京・東北地方の運賃について意識調査を行い、利用目的によっての詳細な運賃評価から、北海道新幹線開業時のサービス提供方策を提言した。また、KLPのさらなる理論構築を目的として、公共事業に対する住民の負担金領の評価と道路構造改良による心理的負担軽減の価値について適用を試みた。前者は北海道の4都市における除雪事業について、住民の望む除雪水準とそれに対する住民の費用負担意識を分析した。その結果、住民は除雪水準の向上に対して費用負担の増加を受け入れることが明らかになった。後者については、山間部における高規格幹線道路の安全性に対する価値を通行料としてKLPで評価した。そして、KLPの評価指標のうち、基準価格を用いて心理的負担軽減の価値を求め、道路解消による心理的負担軽減の便益を算出した。以上、主に4つの意識調査を行い、KLPによる利用者の運賃評価と利用者数についての検討、そして公共事業の価値の評価手法としてKLPの理論構築を行った。
著者
太田 陽子
出版者
聖学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に実施した調査結果を分析し、整理してデータ化することと成果をまとめることに主眼をおいた。研究実施計画に挙げた、以下の1〜3の作業を通して、現在、4として総括を試みているところである。1.構文機能の実態調査昨年度に引き続き、シナリオ集や新聞コーパスを中心に、ハズダ・ニチガイナイ・カモシレナイの実例を収集・分析し、各表現の使用文脈と機能を具体的に記述、リスト化した上で、相互比較を試みた。2.教材分析これも昨年度に引き続き、主要教材(初級教科書15種・中〜上級教科書20種・文法書27種)の例文、練習、解説、場面設定を観察し、その傾向をまとめるとともに、文脈的観点(発話者や聞き手の資格、発話意図、場面設定など)の欠如による問題点などを指摘した。3.調査結果の分析昨年度に日本・中国・韓国・ベトナム・マレーシアにおいて実施した「文型使用意識調査」の結果について、それぞれの回答を、学習者の会話作成例、および意見文における運用例としてリスト化した上で、(1)会話場面での運用における問題点、および(2)文章構成上の位置づけの問題点という観点から分析し、現行の日本語教育における指導に欠けている視点を模索した。4.非断定表現の文脈化と教材化を通した文法記述方法の提案上記の1〜3の作業を通して得た結論を基に、現行教材や教育現場の問題点を補い、学習者の運用に不可欠な文脈情報を踏まえた文法の記述方法の提案を、現在試みている。
著者
田窪 祐子
出版者
富士常葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、2000年に「脱原子力合意」を達成し、同時に再生可能エネルギー促進を中心とするエネルギー政策の転換を行いつつあるドイツと、依然として原子力を主要エネルギー源と位置づけている日本を比較し、政策転換を規定する要因は何であるのかに焦点を当てて調査と分析を行った。調査の方法は、関係者へのインタビューと資料の収集分析を中心とする質的調査である。ドイツ調査におけるインタビュー対象者は、政党・環境省、経済省などを中心とする政府(98年以降の社民党と緑の党の政権)関係者・環境運動団体・電力業界関係者、等の諸主体のうち、脱原子力合意のプロセスに関わった担当者らを中心に選択した。研究成果として、以下のことが明らかになった。1)ドイツの「脱原子力合意」は、原子力からの撤退を大前提とするならば、電力業界にとって有利な受け容れやすいものであった。2)合意の背景には、電力市場自由化をはじめとするエネルギーをめぐる社会経済的条件の変化に加え、州の権限が強い連邦制国家において原子力推進に批判的な政権の誕生、反対運動の激化による社会的コストの上昇等々の政治的状況も大きく影響している。3)合意に至るプロセスは、政府関係者と電力業界トップとの話し合いによるものであり、極めて閉鎖的なものであった。より持続可能性の高い環境政策を策定するにあたっての政策策定過程は、必ずしも「環境民主主義」の達成を伴うものではないことが推測される。4)日本におけるエネルギー政策は、基本的に大きく転換したとはいえない。自治体・市民有志らによる導入の試みが各地でなされてきているが、全体的な構造転換を促すには至っていない。
著者
寺部 慎太郎
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

我が国の社会基盤整備計画への市民参画が叫ばれて久しく,社会的合意形成を図るために様々な試みが適用されている.しかし,実際の事業段階で「計画を知らなかった」という声が上がることが未だに多い.効果的な情報伝達により,市民の計画に対する興味が励起され,効率的なPI活動がその後の展開できると考えられることから,社会基盤整備計画PIにおける情報伝達の効果測定は重要な課題である.そこで,本研究の目標を,1人でも多くの市民に計画の存在・内容を知らせ,市民の社会基盤整備事業に対する意識向上を促し,市民参画実現を目指す事とする.そして,継続性のある「意識モニタリングシステム」を構築し,その認知度・受容度指標の客観性と,実際の政策の実施過程における有効性を検討するために,調査内容の濃密な比較的小規模の意識調査を設計し,第一次調査を行った.昨年度の分析では,特に市民の特性を調査し,属性に分け,市民が住む対象地域のメディア別特性と影響力を調査し,市民に対し属性別にどのような情報を提供すべきかを明らかにすることに重点を置いた.今年度はその分析をさらに深度化させ,構造方程式モデルを用いてPI要求意思決定モデルを構築した.その結果、PIにおける情報伝達活動として,市報または回覧板による網羅的で定期的な情報発信,新聞地域面でのPR,大都市通勤者向けの鉄道広告を利用したプロジェクトの存在告知などを複合的に活用する事と,事業コスト意識やPIでの意見に対する位置づけの明確化といった点を強調する必要性を示唆することができた.
著者
張 陽
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

アンケート調査を行わず、中国政府の公表したデータに基づき、1992年〜2007年までの中国の全国的な失業率を算出することができ、結果は中国政府の公表したデータの5倍となっている。中国の失業率がすでに20%に近いという外界の風聞や推測に確証を提供した。さらにFDIと都市部失業率との関係を究明するため、修正したHarris-Todaroモデルを開発し、シミュレーション結果によってFDIが被投資国のGDPを増加させるが同時に被投資国の失業率をも増加させることを示した。
著者
川西 諭
出版者
上智大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

投資家の情報戦略が証券価格変動に与える影響について、理論と実証の両面から研究の成果は以下のとおりである。理論面では2種類の投資情報が存在する資産市場モデルにおいて、3つの異なる情報戦略が均衡において共存すること、そして均衡外の戦略調整が循環する可能性をあきらかにした。実証面では、東京証券取引所の株式市場では時間帯によって投資収益率に違いがあることを確認し、投資主体別取引と関係がある可能性を明らかにした。また、情報戦略の理論モデルを為替市場モデルに応用し、金融当局の介入アナウンスメントが為替に与える効果を説明できることを示した。
著者
瀬戸 浩二
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では,南極宗谷海岸の露岩域に分布する湖沼を,主に湖水の起源に着目し,3つのタイプに分類した.さらにそれらは地理的特徴,流出口の有無(涵養量)によってそれぞれ2つのタイプに細分した.これらの特徴は,湖水の塩分や堆積物の特徴に反映される.本研究において,粒度分析,CNS元素分析,安定同位体(有機物のδ^<13>C)分析を行うことによって,定量的にそれらの関係を解明した.それらの基礎データをもとに,6つの湖沼について柱状試料の堆積物を分析し,古環境の変遷の解析を行った.湖水面の標高が低い3つの湖沼では,柱状試料の下部に海棲の貝あるいは有孔虫化石を含む海成堆積物が見られる.親指池(Type 3a)やぬるめ池(Type 3b)のような塩湖では,貝化石を含む海成堆積物から黒色有機質泥に移り変わっている.淡水湖の丸湾大池(Type 1a)では,有孔虫を含む海成堆積物から黒色のラン藻質堆積物を経てコケを含む氷河性堆積物に移り変わっている.海成堆積物からラン藻堆積物に移り変わる年代は,約3800年前で,海洋〓塩湖に移り変わったことを意味する.また,ラン藻堆積物が存在することは,当時氷床から涵養を受けていないことを示唆する.ラン藻堆積物から氷河性堆積物に移り変わるのは,約3100年前でその間に氷床が拡大したことを示している.すなわち,南極の氷床は約3100年より前が最大の後退を示し,現在はその時より氷床が大きいことを示唆している.これによりヤンガードライアス以降後退し続けていると考えられている南極氷床も実際には前進・後退を繰り返し,氷床後退最大期からそれほど変化していないことが明らかになった.これは,8000年以降急速に隆起し続けている地殻変動が,最近では観測されていないことに関連するものと考えられる.
著者
松本 弘子
出版者
武蔵野大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

申請者はこれまで民生委員に対して、在宅精神障害者とどのようなかかわりをもっているのかについてインタビューを行ってきた。これらの結果から、地域で精神障害者に関わったことのある民生委員のうち、対応の困難を抱えていることがわかった。また多くの民生委員が対応に困ったときには役所の担当もしくは、保健師に支援してほしいと考えていることが明らかになった。そこで今年度は、民生委員から精神障害者の対応に関する相談を受けたことがある保健師4名に合計5回のインタビューを行い、民生委員と保健師のかかわりについて情報収集を行った。4名のうち、3名は民生委員とともに精神障害者に関する訪問等の支援を行ったことがあり、1名は民生委員から精神障害者に関する相談を受けたことはあるが、実際に訪問等の支援を行ったことはなかった。保健師がこれまでに民生委員から受けた相談内容としては、「いつもと様子が違うので訪問してほしい」「薬を飲んでいないと本人が言っていたけれど、どうすればよいか」「最近道で会ったときに太っていて心配なので、栄誉指導をしてほしい」等予防的な視点でかかわりを求めるものと、医療的なことに関する疑問等が多くみられた。保健師は自分たちを民生委員がうまく利用してくれるといいと願い、そのためには日ごろからのコミュニケーションや連携の必要があると感じていた。また1度かかわりをもった民生委員とは、見かけたときに声をかけたり、ケース以外のことでも積極的にかかわりをもつことによって、普段から連絡がしやすいような環境を整える努力をしていた。
著者
古郡 規雄
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

P糖タンパクは腸管、肝臓、腎臓および血液脳関門に存在し、汲みだしポンプとして作用する薬物輸送トランスポーターである。P糖タンパクをコードするMDR1遺伝子にはいくつかの多型が存在する。この多型が血液脳関門に発現するP糖タンパク機能を規定し、中枢神経薬の脳内濃度の個人差を導き出す可能性がある。そこで申請者は、定型抗精神病薬ブロムペリドールの臨床効果に及ぼす血液脳関門遺伝子MDR1多型の役割について検討した。本研究に対し文書での同意が得られた31例の急性期の未治療あるいは治療中断中の統合失調症患者であった。ブロムペリドール(6-18mg/day)による治療を3週間行い、毎週BPRSとUKU副作用スケールによる臨床評価および血漿薬物濃度測定用の採血を行った。MDR1遺伝子多型であるC3435TとG2677T/AをPCR-RFLP法で同定した。これらの両遺伝子多型、年齢、体重、性別および血漿薬物濃度を独立変数にそれぞれの臨床反応を従属変数に多変量解析を行ったところ、認知障害の改善スコア(β=0.673,p<0.01)においても改善率(β=0.464,p<0.05)においてもC3435T遺伝子型と有意な相関を認めた。副作用はいずれの変数とも差がなかった。今回の結果より、血液脳関門遺伝子MDR1の多型は抗精神病薬の薬効に関与する可能性が示された。今後、脳内薬物濃度を規定する因子を考慮に入れた検討をすることで薬効予測が容易になることが示され、将来の研究に大いに役立つ所見であると考えられた。
著者
有光 奈美 松浦 雅人
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

英語の対比の接辞認知を整理、分析し、そのデータを非侵襲的脳活動計測に基づいた手法で応用して大学生の英語運用能力の向上を図ることを目的とした研究において、対比表現について言語的側面の整理と分析を進展させた。対比表現の整理、分析を行った。国内外の学会にて、研究を発表した。
著者
竹村 剛一
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ホインの微分方程式とは、確定特異点が4点となる2階のフックス型微分方程式の標準形である。ホインの微分方程式やこれの拡張とみなせる微分方程式に対して、可積分系の考え方を用いて解のモノドロミーの様相を研究した。とくに、ミドルコンボルーションと呼ばれる微分方程式系の変換を用いることでホインの微分方程式においてこれまで知られていなかった解を発見し、そのモノドロミーを調べた。また、第六パンルベ方程式の初期値空間とホインの微分方程式との関係を鮮明にした。
著者
潮村 公弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度の成果を踏まえた上で、新たに、少数派側条件に割り当てられる人物にはサクラ(実験協力者)を用いる。サクラは、ディスカッション場面において予め定められた行動(2条件:性役割分業を肯定する発言、性役割分業を否定する発言)をとる、という実験操作を加えた実験研究を遂行した。性別混成状況下での自己意識・自己ステレオタイプ化については、複数の競合仮説が存在し、依然として解決をみていないテーマである。本研究では、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件と私的な状況としてなされる条件も設定された。従属変数としては、意識的で顕在的な測度(評定尺度)と、非意識的で潜在的な測度の両者を用いた。非意識的な測度としては、IAT (Implicit Association Test)技法群に属する新しい測度であるGNAT (GO/No-go Association Task)を採用した。この手法は、複数の概念に対する潜在的な選好を各々の概念ごとに独立に測定できる新しい手法である。主たる知見としては、自己に対する顕在的なステレオタイプ化測度については、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件においては、男性実験参加者も女性実験参加者も自己の女性性を反ステレオタイプ的に自己評定していたことが見出され、創られた性差として捉えうるような回答パターンが男女いずれにおいて示されていた。その一方、潜在的な測度の結果は高度に複雑なパターンを示した。このことは、ディスカッション場面という伝統的な区分での男性的特性が発揮されやすい傾向にある場面において、性別分業を肯定する/あるいは否定するという明確な主張を向けられることが、少なくとも大学生実験参加者にとっては複雑性の高い課題であったことが関係していよう。