著者
森田 健宏
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では幼児期のメディア利用について(1)現行の幼児向けメディア機器のインタフェースデザインと操作性について、(2)一般的なPCがどの時期から利用可能かを、幼児向け機器からの移行教育のための基礎的研究を目的に調査している。まず、研究1では、現行の幼児向け機器としてS社製およびE社製の幼児向けコンピュータをサンプルに、デスクトップの構成調査とユーザビリティ検証を初期利用者を対象に行った。主な結果は、S社製については基本的にペンタブレットの操作スタイルであることから、初期利用者にとってユーティリティ性、習熟容易性に優れているが、モニタ画面と操作パネルの視点移動頻度は少なく操作パネルに長く注視しやすいことが確認された。一方、E社製については、マウス及びキーボードによる操作で各アイテムに子ども向けキャラクターデザインが利用されていることから長時間利用が好まれていたが、習熟までの視点移動頻度が高いこと、アイコン選択などのマウス操作にプレなどの誤操作が見られた。次に、入力デバイスの操作性について、マウス、ペンタブレット、および手描きによる円描写の操作内容を実験的に比較検討した。その結果、カーソルを始点へ同定させる所要時間がマウスはペンタブレットやクレヨンよりも多く要すること、円模写の軌跡からマウスとペンタブレットでは異なる部分で操作が困難となることなどが確認された。一方、研究2では、デスクトップ上のフォルダとファイルの操作、フォルダの階層性の理解について調査を行った。その結果、3歳児の場合、上位階層において階層性が視認できるデザインであれば内包される対象が特定できるが、フォルダの内包性が視認できず、かつ下位層でもフォルダデザインに変化がない場合、3階層以上のファイル特定は困難であるが、フォルダの色ラベリングの効果によりファイル特定が可能になるケースもあったことなどが確認された。
著者
森 道哉
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、環境政治という切り口から戦後の日本の政治過程を捉え直すことを目標とし、それに向けて理論志向の事例研究を積み重ねようとした。具体的には、T.J.ロウィによる政策類型論の再検討および事例研究の方法の探求を理論上の課題とし、その視角のもとで複数の事例の過程追跡を行うことを実証上の課題としたのである。結果として、共時的かつ通時的な観点から政治過程を記述するための方向性を示唆することができ、また、環境規制の問題としてのアスベストの管理に関する事例の分析を通じて「目標」の一端も明らかにできた。
著者
梶原 武久
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電子機器メーカーのA社を対象とするフィールドスタディを実施した。とりわけ、同社において過去に蓄積されてきた品質コストデータの分析に取り組んだ。現状は暫定的な分析段階であるが、分析結果は概ね以下の通りである。品質の作り込みと継続的学習が重視される日本的品質管理のもとでは、予防コストと評価コストを維持するか、もしくは削減しながら、失敗コストの削減が可能であると考えられてきた。しかし分析結果によれば、品質コストデータの蓄積が開始された1992年から1996年までは、上記の関係がみられるが、それ以降においては、予防コストや評価コストに減少がみられる一方で、失敗コストが横ばい、もしくは上昇傾向にあることが明らかになった。この分析結果は、従来の定説とは大きく異なるものであることから、今後、なぜこうした分析結果が得られたのかについて検討を進めていく必要があると考えられる。また過去の失敗コストが、将来の出荷額に及ぼす影響についても検証を行った。暫定的な分析結果によれば、5期前の内部失敗コストが、現在の出荷額にマイナスの影響を及ぼすことが示された。一方、外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響については検出することは出来なかった。これらの分析結果が得られた理由としては、内部失敗コストが増加することによって、手直しや補修が発生するために、通常の生産活動が制約されると考えられる。また外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響を検出することが出来なかったのは、同社の主要製品が、産業材であること、また外部クレームについては、手直しや補修が行われないことが主要な原因であると考えられるが、今後さらに検討が必要である。
著者
藤江 真也
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<1.顔表情認識システムの構築>昨年度の研究結果を踏まえ,本年度は,まず顔表情認識システムを構築した.認識対象とする表情としては,「笑顔」「しかめ」「見開き」と,平常を含む4表情とした.顔領域の中で,上記の表情で特に変化の大きかった眉間,眉毛を含む目,頬,口の部分画像を切り出し,主成分分析(PCA)や線形識別分析(LDA)などに基づき次元圧縮を施したベクトルを特徴量とし,サポートベクターマシンを用いて認識を行った,その結果,80%を超える認識率が得られた.<2.顔方向・視線認識システムの構築>上記に述べた顔表情システムは,基本的にユーザの顔が対話ロボットに正面を向けている場合を想定している.実際の対話では,ユーザの顔向きは様々に変化する.また,顔向きや視線はユーザとシステムとの間での発話権(発話の順番)のやり取りに大きな影響を与えるため,これらを認識することは顔表情と同様に適切な対話制御のために不可欠である.本研究では,画像のテンプレートマッチングの一手法であるLucas-Kanadeアルゴリズムを用いて,顔画像テンプレートマッチング問題を3次元情報を考慮して解くことで顔向きの推定を行った.また,ここで得られた結果から目の部分面像を切り出し,PCAやLDAなどを用いて得られた特徴ベクトルを,部分空間法を用いた識別器にかけることによって視線認識を行った.これらの結果,顔向き認識は平均誤差約5度,視線認識は76%の認識率という結果が得られた.これらのリアルタイムのデモンストレーションをノートPC上に実装した.
著者
橋本 博公
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コンテナ船や自動車運搬船で問題となっているパラメトリック横揺れの定量的予測のため,時々刻々の没水断面に対して流体力を計算する数値予測モデルを構築し,このモデルに強制横揺れ試験から得た横揺れ減衰力を用いることで,規則波中パラメトリック横揺れの定量的予測が可能であることを確認した.また,パラメトリック横揺れ防止効果に及ぼすアンチローリングタンク形状の影響,船首・船尾形状の影響を調査し,それぞれについての設計指針を得た.
著者
真鍋 陸太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、1つの共通するインターネット上の地図を複数の団体が使用でき、必要に応じて複数の団体の情報、すなわち異なるテーマの情報を重ね合わせて表示して議論できるようなシステムとした(=18年度成果)、インターネット上の双方向・開放型の地理情報システムである「カキコまっぷ」(以下、新カキコまっぷ)を、複数の団体で試用して、システムの意義・課題を検討した。具体的には、東京都23区全域を対象とするベースマップ(地図)を用意し、子育て支援関連の情報を発信している「ママパパぶりっじ(せたがや子育てネット)」、世田谷区若林地区でまちづくり活動をおこなっている「若林マップを作ろう!」プロジェクト、東京山手線程度の広さを対象として自転車に関する情報交換をおこなっている「東京バイカーズ」の3つの既存のカキコまっぷ使用団体の情報を「新カキコまっぷ」に再掲載し、さらに範囲全域を対象とした「何でも投稿」、文京区本郷地区を対象とした「本郷マップ」の2つの新しいレイヤー(=テーマ)も設定し、東京23区を対象とした多層型のインターネット地図型掲示板の運用実験をおこなった。結論として次の3点が明らかとなった。1点目は趣味的な自転車とベビーカーといった日常では同じ場面で議論することが少ないテーマが1つの地図上に掲示され投稿者が相互の情報に触れることで特定の場所・事象に関してこれまでには発想しづらかった新しい観点からの考察が可能となった。2点目は、対象範囲が共通でテーマが異なるインターネット地図掲示板を想定して研究を進めたが、個別テーマを扱う団体にとっては他の情報に触れたいという動機が低く、本システムに対する満足度は高くなかった。また、3点目として、使用できる地図の範囲は東京23区全域であったが、個別団体が扱う範囲はそれぞれ異なることから、システム利用初期に表示される地理的範囲の設定についての自由度が課題となった。
著者
伊藤 誠悟
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

無線LANを用いた位置推定手法に関して,受信電波強度の変化量を考慮し近接性方式(Proximity)および環境分析方式(Scene Analysis)を組み合わせた無線LANハイブリット位置推定手法について提案した.本手法では位置推定の際に,第一段階として,受信電波強度から近接性に基づき位置推定に使用するアクセスポイントを選択し,選択されたアクセスポイントを利用しベイズ推定により位置推定を行った.本手法を用いる事により,無線LANアダプタを保持する端末ならば,屋内環境において2m〜10m程度の精度で位置推定が可能となった.また,市中の実環境において無線LANを用いた位置推定システムに関する基礎検討を行った.無線LAN位置情報システムで利用するための基準点情報を住居地域及び商業地域において収集し,収集方法に関して収集効率と位置推定精度及びカバー率の観点から検討および評価を行った.実験結果より,屋外環境において基準点情報を用いた位置情報システムの推定精度は約30m〜50mであり,名古屋,大阪,東京の商業地域,住居地域等において全ての街路の半分の経路による収集でもカバー率が80%程度になることが分かった.この推定精度は,基準点情報の誤差に,無線LANによる屋外位置推定誤差が相加された精度である.また,収集時間は1平方キロメートルあたり5000秒程度であることが分かった.例えば,東京のJR山手線内側(総面積約65平方キロメートル)において,80%程度のカバ「率の広域な位置情報システムを構築する場合,162500秒(約45時間)程度の収集時間が必要である.我々の検討がこのような概算を行う際の指針となる.
著者
江草 由佳 高久 雅生
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

既存のWeb APIに基づくマッシュアップを想定し、論文検索システムを連携する仕組みについて検討した。特に、論文の同定について着目し、教育研究論文索引とCiNiiとの論文単位のリンケージについて検討し、調査を行った。調査結果で得られたデータを元に、プロトタイプシステムを試作した。また、マッシュアッ プ実験の1つとして、任意のテキストを対象に、そのテキストに類似した文書の検索を実現する手法「ふわっと関連検索」を開発した。
著者
亀井 清華
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

動的無線ネットワークに適した分散アルゴリズムとして,安全に収束する自己安定分散アルゴリズムの研究をおこなった.これは,故障が起こった後の任意の状況から短時間で(解の質を問わない)安全な状況に遷移し,そこからは安全性を崩さずに最適解に収束するという性質を持つ分散アルゴリズムである.様々な最適化問題にモデル化される分散問題について,この性質を持つ分散近似アルゴリズムの設計を行った.
著者
寺原 猛
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

一般に遺伝子発現系で使用される大腸菌でさえも、産生タンパク質が失活することが多い。そこで、マリンメタゲノム・ライブラリー約2000クローンから組換えタンパク質の活性を補助・促進する新たな因子を探索した。その結果、既知のものとは異なる因子が含まれ、低温での大腸菌の増殖能を向上させる3クローンを発見した。これらのクローンは、大腸菌を用いた低温での組換えタンパク質産生系の構築に役立つ可能性が示唆された。
著者
中澤 克昭
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究期間最終年度となる今年度も、尊経閣文庫をはじめ、国立公文書館、宮内庁書陵部、蓬左文庫、静嘉堂文庫などに所蔵されている故実書類を閲覧・調査した。また、慶應義塾図書館(魚菜文庫)、金沢市立玉川図書館近世資料館(加越能文庫)の所蔵史料は複写を入手。松本市文書館では小笠原流故実書の写真を閲覧した。さらに、石川文化事業団お茶の水図書館(成簣堂文庫)所蔵の小笠原家文書に「矢開文書」と題された故実書類があることを確認。閲覧・調査により、室町殿や細川氏の矢開に関する貴重な史料群であることが判明し、公家文化との差異が明瞭な武家の狩猟と狩猟儀礼「矢開(矢口開)」の変化についても考察することができた。摂家将軍も親王将軍も狩猟を行なった形跡は無いが、北条泰時・経時は鹿を獲物とする矢口祭を行なっており、北条氏にとっても狩猟は重要な政治文化だった。ところが、室町期には鳥を獲物とする矢開の故実が流布し、室町殿も雀を獲物として矢開を行なっている。そうした鳥の故実は室町期に形成されたのではなく、北条得宗家において創始されていたと考えられ、近世の故実書が引用する徳治二年(1307)の矢開の日記によれば、得宗家で雀の矢開が行なわれていた。武家首長の矢開は中世に一貫してみられたが、その獲物は十三世紀後半以降、鹿から鳥へと変化していたのである。武家首長の公家化という面だけでなく、武家文化の変容についても考えてみることが重要であろう。この研究成果の一部は、2005年11月、「武家の狩猟と矢開の変化」と題して、史学会(東京大学)第103回大会日本史部会(中世)において発表した。
著者
関場 亜利果
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は美術運動が産業デザインの発展と多様性に寄与した一つの様相を明らかにする事を目的とし,1960年代にイタリアで発祥した美術運動アルテ・プログランマータ(Arte Programmata)を研究対象とした。この美術運動は当時先進的な情報科学技術であった「プログラミング」を芸術へ応用することを試み,ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)とウンベルト・エーコ(Umberto Eco)が企画した展覧会がヨーロッパとアメリカ各地を巡回,美術史においてキネティック・アートと位置づけられている。2008年度にイタリアとドイツで現地調査を行い,イタリア人作家ブルーノ・ムナーリ,エンツォ-マーリ(Enzo Mari),ジェトゥリオ・アルヴィアー二(Getulio Alviani),グルッポT(Gruppo T),グルッポN(Gruppo N)について資料収集した。2009年度はこれら作家がグラフィック・デザインやプロダクト・デザイン的な作品も制作していく点に注目しその背景と要因について考察した。具体的には,この運動がデザイン文化に力を入れるオリヴェッティ社の支援で始まった事,制作過程で工業生産という手段に関わる事,多くの作家が当時急速に産業都市として発展したミラノに関わりがあった事,作品のコンセプトとして「オブジェ」「マルチプル」というキーワードを掲げ,思想的背景として旧来の芸術への批判精神から「共同研究」「共同制作」を行い,従来の芸術と異なる観客との関係を模索していた事,一人の享受者ではなく大衆へ開かれた作品を目指していたこと等である。また,こうした立場を国際舞台で他芸術家や研究者らと交流・議論し再確認した「新しい傾向」への参加が後の制作姿勢に影響を与える過程を調査した。本研究は,他国のキネティック・アートに見られない特徴,デザインへの展開の過程を考察し,美術史的視点のみにとどまらない文化的側面から再考察した点に意義が有る。
著者
林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

平成19年度には、平成18年度に引き続き、他者一般に対する信頼の生成プロセスを検証するための、全国調査を行った。平成18年度調査では、全国の満20歳以上の男女とし、各市町の住民基本台帳より、層化二段無作為抽出法を用いて2000サンプルを抽出し、66.3%の回収を得た。このデータを用いた分析により、一般的信頼の高低は、制度への信頼により大きく規定されていること、また制度への信頼は、格差感により強く影響されていることが明らかにされた。平成19年度には、電子住宅地図を用いた層化3段無作為抽出法を用いて全国調査を行った。社会調査を取り巻く環境の変化により、住民基本台帳等を用いたサンプリングが年々困難になっており、今後の調査の展開を見据えて、サンプリング方法の違いによるデータの偏りについて検討することも目的の一つとした。19年度調査に関しては、現在データ分析の途中ではあるが、18年度調査の結論と一貫した結果が得られている。2つの調査のデータは、今後国勢調査のメッシュ統計とマッチングした上で、個々人の社会経済的背景だけでなく、所得の地域間をも考慮に入れた上で、信頼の生成プロセスの総合的な検証に用いられる。また、平成19年度には、上記全国調査と平行して、特定の地域内における信頼と社会的ネットワークの連関構造を分析するために、兵庫県有馬町において留め置き調査を行った。その結果、強い社会的ネットワークが信頼を高めるというこれまでの知見と一貫する結果が得られたが、社会関係資本の構成要素のひとつである互酬性の規範と信頼との間には相関関係がみられなかった。
著者
増田 周子
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近現代の関西文壇や出版の状況は、まだ全貌が分からないことが多い。本研究では、関西の出版や文壇の状況を把握することを目的とし、海外文壇が関西の作家や出版状況に与えた相互影響関係や、関西の作家と中央文壇(東京)とのつながりについて研究した。明治、大正、昭和期における関西文壇や関西の出版文化が、どのような文化的背景の中で生まれ、東京などの中央文壇や、海外の文学状況と相互に関わりながら、成立し、発展していったのかを調査研究した。関西の作家は、東京の文壇にも進出し、多大な影響を及ぼした。また、海外の中でも、本研究では、とりわけ中国、台湾における関西の作家の役割が一部明らかとなったことは成果といえる。
著者
上原 徳子
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中国語文化圏では現在も小説に限らず様々な形で古典を娯楽作品や芸術作品として取り入れている。調査の結果、現在も明代短篇小説のテレビドラマ化が進められていることがわかった。また、映像化の傾向には90年代の原作に沿ったものから2000年代に入ってからの思い切った翻案をする手法へと変化が見られる。我々がこの事象について考察するとき、原典とされる小説が何であるかや登場人物の服装や言葉遣いが古いことに注意するだけではなく、現代人がその枠組みを必要としていることに注目すべきである。これはなにより中華文化圏では「古典」が文化の根底にあることを示しているのである。
著者
バワール ウジャール
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

BRAK/CXCL14はどの正常細胞でも発現しているケモカインであり、種の異なるマウスとヒトのBRAK/CXCL14のアミノ酸配列が非常に高い相同性を示すことから、非常に普遍的かつ重要な機能を持つ分子と考えられる。BRAK/CXCL14のin vivoにおける腫瘍抑制機構を明らかにすることは、口腔癌ばかりでなく、種々の癌の進展機構の解明と、将来における癌のドーマント療法開発の分子標的として有望であり、また、全ての正常細胞で発現していることから将来における遺伝子導入等における治療において副作用の少ない新しい標的分子と考えられる。
著者
鍋島 美奈子
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

主に大阪の熱環境性能を向上させるために「気候資源と既存インフラのデータベース群」「人間活動のデータベース群」の整備をおこなった。地理情報科学分野で体系化された空間分析手法とGISを適用することにより、気温の日変化特性にもとづいた地域類型や、気温の水平分布に関する空間的相関構造の分析、気温の形成要因の分析をおこない、地域の特徴を活かした環境改善策を提案することできた。
著者
荻山 正浩
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.泉南地方の事例明治期における泉南地方の若年女性の就業態度をめぐって、綿布生産量など、各種出来高を通して分析すると、彼女たちは家族に対して強い愛着を有していたため、生家では勤勉に働いたが、家を離れて働く場合には逆に充分な働きをしていなかったことが判明した。こうした家族に対する愛着は、彼女たちを含めて、この地域の人々の就業行動にも相当な影響を与えていた。この点を実証するため、明治後期における泉南から他の地域への労働移動のあり方に注目し、寄留統計にもとづき、この地域の人々の多くは家族をともなって移動していたことを解明し、それを英文の論文にまとめ所属機関の紀要に発表した。また泉南地方の貝塚に所在した商家の廣海家には、同家の雇用していた家事使用人の記録を収めた史料が残されており、その家事使用人の雇用動向は、若年女性の就業行動を解明する貴重な手掛かりを与えてくれる。そこで、明治後期から大正期に至る同家の家事使用人の雇用動向を分析した論文を所属機関の英文のワーキングペーパーとしてまとめた。これについては、平成18年度に英国の学術誌に投稿する予定である。2.両毛地方の事例明治40年代に群馬県桐生に所在した桑原家の絹織物工場の史料を分析し、女工の絹布生産量の多寡から女工の就業態度を分析することを計画していた。だが、この地方では多種多様な絹布が生産されていた関係から、当初の予想と異なり、絹布生産量から女工たちの就業態度を分析することは困難であると判断し、同地方の研究を中断することにした。3.秋田県北部の事例平成17年度から、両毛地方に代わり秋田県北部の事例に対象を移し、若年女性の就業態度を分析する作業を開始した。具体的には、明治末期から大正期に至る秋田県北部の大館に居住した資産家である中田家の史料を使用し、同家が家事使用人として雇っていた若年女性の雇用動向を分析する作業を進めている。
著者
久保 勇
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当該助成研究開始前より整理済の延慶本『平家物語』における音楽記事一覧から、他の諸異本に共有されない独自な傾向を抽出、「読み本系」と称され、「読まれる」享受を前提とする該本本文に口頭(音声)伝達を意識されていると推される「音声字解(注釈)傾向」を指摘(「延慶本『平家物語』と<音楽>-巻六の音楽記事から叙述方法をさぐる-」2005・3)した。現存最古と見なされる「読み本系」の該本が如上のように、音声理解を前提とする本文を有している可能性があることから、「語り本」以前「読み本系」先行成立という通説に、未だ検討の余地が残されているという問題提起をおこなった。当該助成研究開始前より着目していた『発心集』等、中世期の文芸思潮の中、「音楽」を考える上で重要な「数寄」の問題に着手、「数寄者」と称される人物の心象をめぐって、延慶本は「心」が「澄まされた」状態にあることを一つの価値として表象している点に注目、検証作業をおこなっている。(同上論文)中世以降の古典文学世界において、「延喜聖代」は理想的帝政期を表し、『平家物語』でも「秘事」として別巻に同章段名を掲げる諸本があるが、延慶本においては清盛死去関連記事群内に「延喜帝堕地獄説」が展開しており、一般に音楽をはじめとする理想的文化形象期とされる当該帝政期に、独自な価値認識が指摘できる。そこには、「高倉院≒堀河院」といった、延慶本の物語世界における理想帝政期の認識が基盤となっている傾向がうかがえる。具体的には巻六冒頭などに潜在する「礼楽思想」との関連において考究すべき問題が残されている。現状では、延慶本の成立と直接繋がらないが、『平家物語』と盲僧琵琶との関連について、当該助成によって調査をおこなっている。九州、筑前・薩摩に本拠を置く盲僧琵琶は、何れも天台宗の管轄となっており、自身の『平家物語』の天台圏成立説と関わりを有する。調査によって、島津久基氏「筑紫路の平曲」等の研究で注目された筑前地域の再検討の必要性が明かとなった。近時看過されている感のある、筑後一宮・高良大社伝来の覚一本の存在、筑前盲僧琵琶拠点・成就院の存在等々、当該助成期間内には成果を発表し得なかったが、追跡調査を進め、論文・HP等で順次公表していく予定である。