著者
姫宮 彩子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

飲酒実験では、呼気採取直後では口腔内等に残留するアルコール(Alc)が多いが、時間経過にしたがって吸収過程に伴って上昇した循環中(血中)Alcが呼気中へ排泄される分が増加するため、呼気中Alc濃度(BrAC)は指数関数的に減少した後、10~20分程度の時点で増加に転じる挙動を示した。一方、洗口実験では、BrACは採取直後から指数関数的に減少して10~20分程度で十分に低下した。両実験のBrAC値の差をとった曲線は、血中Alc動態における吸収相を考慮したモデル式に合うと考えられた。今後も引き続きデータの集積を継続し、完了次第、ALDH2遺伝子型を考慮した動態モデルの検討を行う予定である。
著者
宮崎 剛亜
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

N結合型糖鎖はタンパク質の翻訳後修飾の一つであり、ヒトなどの真核生物においてあらゆる生理機能や疾患などに関与する極めて重要な役割を果たしている。医療用の糖タンパク質の生産方法として昆虫細胞やカイコ虫体を用いた発現系が検討されているが、昆虫のN結合型糖鎖の構造はヒトのそれとは異なる点が大きな問題となっている。一方で、昆虫にはヒト型糖鎖生合成に必須な酵素と類似するタンパク質の遺伝子をゲノム中に有しているが、それらの機能や構造はほとんど解明されていない。本研究では、これら昆虫の機能未知酵素群の構造や機能を明らかにし、これらを利用したヒト型糖鎖の合成や新規機能性糖質を創出することを目的とする。
著者
石井 正将
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

急性心筋梗塞に対する治療法の発展により、その予後は改善傾向であるものの、最近、閉塞血管のない心筋梗塞であるMINOCA(myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries)の存在が認識され始めたが、日本においてはまだMINOCAに関する報告がほぼなく、MINOCAの実態は不明である。本研究ではビッグデータを用いて日本におけるMINOCAの診療実態を疫学的に明らかにするとともに、その診断に寄与する血液バイオマーカーの探索を行う。
著者
吉田 寿人
出版者
福井大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

ハトムギは漢方薬として中国や日本で古くから利用されてきた。近年、ハトムギの抗腫瘍効果が注目され、ハトムギの抽出エキスであるヨクイニンにも抗腫瘍効果があることが示された。今回の研究では、口腔癌におけるヨクイニンおよびその有用成分Trilinoleinの抗腫瘍効果について検討を行った。口腔扁平上皮癌細胞にヨクイニンおよびTrilinoleinを作用させたが、細胞増殖活性に変化はみられなかった。口腔扁平上皮癌にCOX-2 inhibitorを作用させると抗腫瘍効果がみられたため、今後、COX-2が関与している漢方薬の抗腫瘍効果についての検討していく。
著者
谷本 祥
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

代数方程式で定義される幾何学図形を代数多様体と呼び、その方程式を満たす有理数解をその多様体上の有理点と呼ぶ。Manin予想とはFano多様体と呼ばれる多様体上の有理点の数え上げの問題、つまりその多様体上の有理点の数え上げ関数の漸近公式に関する予想である。そのManin予想の幾何的側面を高次元代数幾何特に極小モデル理論を用いて研究する。特に、整数点や有理曲線のManin予想に関する研究を行う。
著者
富永 晃好
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ナガボナツハゼはツツジ科スノキ属の絶滅危惧種であり、絶滅回避技術確立のためには絶滅危機に至った原因を究明することが必須である。この原因について、ツツジ科およびマツ科植物が代表的な菌根菌共生植物であることと、ナガボナツハゼがマツの樹周辺にのみ自生するという調査に基づき、「ナガボナツハゼは、地下部で菌根菌の菌糸を経由してマツと繋がっており、マツの養分に依存して生きているのではないか?」と考え、植物・菌・植物の3者間共生の仮説を立てた。本研究ではこれを検証し、我が国のマツ林の激減とナガボナツハゼの絶滅危機との因果関係を科学的に解明するとともに、絶滅危惧種の絶滅回避技術確立のための基盤を形成する。
著者
小野 太雅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

現在、インプラント治療で用いられる歯根膜を持たないインプラント体は、歯根膜由来のバリア機構や固有感覚が存在しないため、細菌感染を生じやすく、過度な咬合圧の原因となることもある。これらの欠点を補うため、歯根膜とインプラント体との複合体である「バイオハイブリッドインプラント(BioHI)」の開発が進められている。申請者は既に、バイオ3Dプリンタを応用し、未分化なヒト歯根膜由来細胞の細胞塊を三次元的に積層した歯根膜様のチューブ型構造体と、インプラント体との複合体の作製に成功している。そこで本研究では、この複合体をラットの顎骨内に移植することで、BioHIとして機能するかを検証することを目的とした。
著者
嶋内 佐絵
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本における国際的で学際的な学士課程プログラムに関する研究成果を書籍の1チャプターとして準備し、2022年6月に刊行予定である。また韓国およびオランダにおける国際的で学際的な学士課程教育プログラムに関する研究調査をまとめたものの内容をアップデートした上で修正を加え、章執筆と本の編集作業を行った(編著書として2022年6月に刊行予定)。訪問調査自体は2019年のコロナ流行前に行ったものだが、研究会や文献調査を通じて分析やデータの補強を行い、また書籍の編集作業を通して共著者と議論を重ね、学士課程教育をグローバルスタディーズの枠組みで分析するという視点で、韓国・日本・オランダの比較検討を行った。成果物は2022年度の実績として発表予定である。また本研究と関連し、国際的な大学教育プログラムにおける教員のオートエスノグラフィーとして、Yusuke Sakurai, Sae Shimauchi, Yukiko Shimmi, Yuki Amaki, Shingo Hanada & Dely Lazarte Elliot (2021) Competing meanings of international experiences for early-career researchers: a collaborative autoethnographic approach, Higher Education Research & Development, DOI: 10.1080/07294360.2021.2014410 を刊行した。
著者
中立 悠紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-03-01

本研究は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効後における、戦争犯罪者の釈放過程を解明する。特に、①当時、日本国内で盛り上がっていた戦犯釈放運動が、関係国との外交交渉に与えた影響を分析する。また②主にアメリカとの懸案事項であった再軍備・MSA協定の締結に、戦犯釈放問題がどのように関わっていたのかも考察する。この二つの分析は、日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの外交史料などを用いて行う。
著者
磐下 徹
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は平安時代末期の貴族である源俊房(みなもとのとしふさ)の日記である『水左記(すいさき)』の記事を丹念に読み込み、その註釈を作成することで、古代から中世へという日本の歴史の転換期の政治・社会状況、都である平安京の都市的環境、この時期における日記のもつ意義・機能について考察することを目的としている。こうした目的を達成するため、古代史・中世史の各分野の専門家が参加する「水左記輪読会」を開催して、質の高い『水左記』の註釈を作成することを第一の目的とする。こうして蓄積された註釈をもとに、古代から中世への転換期である平安時代後期についての考察を深めていきたいと考えている。
著者
二瓶 真理子
出版者
松山大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

科学的知識の客観性=「価値自由」という見方は、近年科学哲学上でも影響力を失いつつある。科学は、社会のなかの一事業として、様々な諸価値や状況からの影響をうけざるをえない。しかし、同時にそれは、特定の個人や立場のみに占有されるのではなく、社会全体に共有される公共知でもあるべきだ。こうした新しいいみでの「客観性」概念を担保するひとつの要素として、近年、科学者共同体内部の価値観、信念背景、立場、観点などの「多様性」を重要視する見方が、提起されている。さまざまな観点をもつものによる共同体部の相互批判により、科学知のステイタスを確保するという見解だ。本研究は、このような見解の是非と意義を理論的に検討する。
著者
浜中 耕平
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

クリッペルフェイル症候群は頸椎癒合などの骨の症状を呈する遺伝性疾患であるが、その原因は特定されていない。我々は過去の研究において、本症候群を呈する家系に染色体転座を同定した。染色体転座はその周辺の遺伝子の発現を変えることで疾患を起こすことが知られている。本研究では、オミクス解析により本転座の周辺の遺伝子の発現を網羅的に解析し、発現が変化している遺伝子を同定する。次にその遺伝子の骨分化に与える影響を解析し、クリッペルフェイル症候群の病態メカニズムを明らかにする。これらの解析により、本研究はクリッペルフェイル症候群の原因を明らかにし、その診断や治療の開発に貢献するだろう。
著者
下町 健太朗
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

我が国の漁村ではその持続可能性を脅かす問題が未解決である。漁業におけるエネルギー消費の問題と,漁業のみを生活の基盤とするリスクを解消するために,既存の概念から飛躍するような新しい漁村システムの確立が急がれるが,そのような漁村はまだ発生していない。本研究では漁村が再生可能エネルギーの導入適地であることに着目し,これを利用したシステムによって前述の問題を解決する。具体的には漁村がエネルギーを活用しつつ売却もできるシステムを新たに提案し,これが漁村を持続可能とすることを明らかにする。これにより,日本各地に点在する漁村を持続可能としつつ,新たなコミュニティ形態へと昇華させることが期待される。