著者
後藤 航
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,乳癌治療において腫瘍微小環境(TME)の評価が重要な役割を担っていると考えられるようになった.TMEには上皮間葉転換や腫瘍免疫応答など,癌細胞の悪性形質獲得に関わる変化が含まれており,TME制御が治療戦略の鍵と考えられる.非タキサン系の微小管阻害剤であるエリブリンは,TME調整作用などユニークな薬剤特性を有することが前臨床研究により明らかになっている.申請者はエリブリン耐性乳癌細胞株の樹立に成功し,耐性機序の観点よりエリブリンのTME調整作用について探究をすすめている.本研究ではエリブリンにおける腫瘍微小環境制御による新たな乳癌治療戦略を検証していく.
著者
則竹 香菜子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在、世界で最も乱用されている違法薬物である大麻の主要活性成分Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)には、認知機能障害や心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクがあることが報告されているが、それらのメカニズムは明らかとなっていない。本研究では、大麻草由来のTHCを用いて、THC毒性の分子機構を明らかにすることを目的とする。合わせて、申請者がこれまで研究対象としてきたアルコールは、大麻と併用して摂取されることが多いことから、THCの毒性との相互作用についても検討を行う。
著者
上原 顕仁
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

亜鉛は生体において必須な微量元素である。高齢者では亜鉛欠乏症が多く、褥瘡患者では血清亜鉛値が低いことなどから「亜鉛欠乏によって褥瘡が生じやすいのではないか」と想定されているが、実際にこのことを科学的に証明し、機序を解明した報告はない。そこで、本研究では、亜鉛欠乏マウスと正常マウスを用いて、皮膚の圧迫による褥瘡モデルを作製して、実際に亜鉛欠乏によって褥瘡が生じやすいのか、また、その機序について解明したい。
著者
荻野 龍平
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

花粉症患者が、花粉アレルゲンと似たアレルゲンを含む果物や野菜を食べることによりアレルギーを発症する、花粉-食物アレルギー症候群 (PFAS) の報告が増加している。しかし、PFASを発症する患者と花粉症のみを発症する患者の違いは明らかになっていない。この原因の一つとして、適切な動物モデルが存在していないことが挙げられる。本研究ではPFASの病態解明を最終目標として、より臨床に近い、経皮 (皮膚の傷から) と経鼻 (鼻の粘膜から) の2つの経路からシラカバ花粉を投与し、シラカバ花粉-リンゴアレルギーモデルマウスを作製する。この研究の成果は、PFASを回避するための足掛かりになるものと予想する。
著者
名波 拓哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

神経科学の発展により、昆虫脳の構造や機能が近年急速に明らかになりつつある中で、本研究では、昆虫の脳を模倣しその柔軟な知性や高いエネルギー効率を実現するシリコン神経ネットワークチップの基盤技術の開発を行う。構造と機能が特によく理解されている嗅覚神経系及び記憶中枢神経系を対象に、シリコンニューロンユニットの低電圧化による低消費電力化や、昆虫脳の神経ネットワーク構造を効率よく実現するバスアーキテクチャ構造といった技術開発を行い、デジタル ASICチップを試作し動作検証や消費電力の評価を行う。本研究で得られる成果は、将来的に昆虫脳全体の機能を実現する昆虫脳チップに発展することが期待できる。
著者
高林 知也
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は正常足と扁平足で足部内の協調性パターンと力学的負荷を検証することを目的とした.はじめに,正常足と扁平足の足部内の違いに着目し,扁平足はランニング中に正常足と比較して過剰に後足部と中足部,前足部が動くことを明らかにした.さらに,足部内の力学的負荷の性差も検証し,ショパール関節モーメントとリスフラン関節モーメントに性差は認められないことを明らかにした.
著者
陳 怡禎
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、ファン研究と社会運動研究の両面から東アジアの現代社会の若者、とりわけ女性は、いかに「趣味」を用いて社会空間を構築しているか、さらに社会的関係性を再編成していくかについて考察する。手かがりとして、2014年3月に台湾で起きた「ひまわり運動」、9月に香港で起きた「雨傘運動」といった二つの運動空間に注目し、その空間において女性参加者によって行われる「私的趣味」の実践について検討する。それらの社会運動に参加する女性たちが、戦略的に「私的趣味」を公的領域で実践することによって、趣味縁を中心に結成された女性による「趣味共同体」の可視化をいかに可能にしているのかを分析する。
著者
唐沢 康暉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

虚血による神経細胞死では、酸化ストレスが重要な役割を果たしている。ラットの虚血モデルにおいて、虚血部位の周囲でMAPキナーゼがリン酸化がおこる。酸化ストレスによる神経細胞死において、シグナル伝達物質、MAPキナーゼの活性化が関与するといわれ、治療のターゲットの一つとして期待されている。 本研究では、酸化ストレスによる細胞死モデルであるマウスの海馬由来のHT22細胞を用いて、MAPキナーゼの活性化を反映するFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブを組み込み、酸化ストレスによるMAPキナーゼの活性化を、可視化、定量化する実験系を確立した。本年度は,ベルギーのSarah-Maria Fendt研究室と共同研究の結果、「脂肪の多い食事をしたマウスは糖を飲んだ後、乳酸が多くでき、人でも、太めの人の方が糖を飲んだ後、乳酸が多く出る傾向がある」ことをしめした。さらに培養細胞、マウスのデータとともに、高脂肪食と肝細胞癌の発生機序の関連を示した論文を出版した( Broadfieldら、Cancer research 2021)。健康なヒトが糖を摂取した後に繰り返し採血をおこなうことで、詳細な血中代謝物およびホルモンの時系列データを取得した。数理モデル解析を行い、個人間および分子間における、代謝物とホルモンの時間パターンに、1)大きさや早さなどの時間成分、2)個人間の時間パターンの類似性、3)個人間の大小関係の時間変化、4)分子間の時間パターンの類似性、の4つの指標があることを示した論文を出版した(npj systems biology and applications 2021, These authors contributed equally: Suguru Fujita, Yasuaki Karasawa.)
著者
白戸 力弥
出版者
北海道文教大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

手首関節部の骨折である、橈骨遠位端骨折の手術後は、痛みや手関節の可動域制限により、安全な自動車運転操作が困難となる。本研究では自動車運転シミュレータを用いて、橈骨遠位端骨折手術後の上肢を使用した両上肢による運転能力を経時的に定量化し、安全な運転再開がいつから可能か、またそれに必要な手関節の機能を明らかにする。これらより、橈骨遠位端骨折手術後の安全な自動車運転再開に関する指標の確立を目指す。
著者
VARGHESE VARUN
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

The goals of the research will be achieved through two objectives. The first objective of the research is to develop an ICT platform that implements an ethical, attractive, and personalized algorithm that will prioritize the reduction of CO2 emissions. The ICT platform will provide users with a choice between the novel algorithm and traditional algorithms (such as profit maximization and travel time reduction). The second objective of the research is to conduct a randomized control trial in Higashihiroshima to quantitatively evaluate the adoption and effectiveness of the ICT platform.
著者
市川 俊和
出版者
科学警察研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

たばこは死者発生住宅火災の主要原因であり、火災の原因究明や予防の観点から大きな関心を持たれている。紙巻たばこの燃焼形態はくん焼(無炎燃焼)であり、可燃物との接触から出火に至ることが知られている。近年、着火に裸火を使用せず電気ヒーターで加熱する加熱式たばこが急速に普及し始めたが、加熱器の連続使用時における加熱器内たばこ残渣物の火災危険性や、様々な可燃物に対する延焼・引火危険性は十分には明らかにされていない。本研究では、加熱式たばこの温度特性、熱特性、燃焼形態、周囲可燃物への延焼危険性、可燃性ガスへの引火危険性を実験により明らかにし、実大規模の出火実験を行うことで、予想される火災危険性を抽出する。
著者
中村 美緒
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Weighted Blanket (以下,WB)は、寝具の中におもりを入れて身体に圧刺激を与える掛け布団である。これまでに発達障害者や精神障害者、認知症者による実証が行われており、不安感の減少や睡眠時間の増加、日中の活動性の向上などの効果が明らかにされている。一方で、身体的な効果については、臨床観察にてその効果が推測されるものの、学術的な報告は見当たらない。そこで本研究では、WBによる圧刺激が筋緊張を緩和するといった身体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。本研究の成果は、WBの適応範囲の拡大と使用方法の確定につながる。
著者
清水 英雄
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

ハンチントン病(HD)は、変異型ハンチンチンが原因で引き起こされる神経変性疾患である。HDのモデルマウスでは、シナプスの機能異常が起きており、責任遺伝子であるハンチンチン遺伝子のノックアウトは胎生致死に至る。これらのことから、変異型ハンチンチンは発生期から発現して、脳発達初期からシナプス形成に対して悪影響を及ぼすことが予想される。本研究では、シナプス形成異常と興奮毒性等による神経細胞死を、HDモデルマウスと同腹仔の野生型の初代培養神経細胞をそれぞれ用いて定量的に比較する。これにより、HDにおけるシナプス形成異常と神経細胞の脆弱性を明らかにし、HD発症に至る神経発達異常のメカニズムを解明する。
著者
富田 瑛智
出版者
関西国際大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は飽きの発生と解消に関わる要因を検討する。特に,飽きの解消に焦点を当て,反復提示によって生じる飽きの時間変化について検討するものである.研究では,時間経過などを操作し,飽きを測定する主観評価,行動指標及び生理反応を取得し、発生および解消の過程を検討する.
著者
篠原 彩子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、『全身麻酔覚醒時高炭酸ガス血症に維持された患者では、リドカイン静脈内投与が覚醒前咳反射を抑制する』という研究仮説を、二重盲検によるランダム化比較試験で科学的に検証することである。高炭酸ガス血症もリドカインも気道反射抑制作用が報告されているが、それぞれ単独では抜管直前の咳反射抑制効果は臨床的に求められるレベルではない。両者の相乗効果を抜管時の咳反射抑制効果として活用する。咳反射は、より重篤な呼吸循環合併症や再出血などの手術治療への悪影響を及ぼす。本研究は今後の抜管ガイドラインの科学的エビデンスを提供し、全身麻酔覚醒時の安全性向上のために大きく貢献することが期待できる。
著者
細貝 亮
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、全国紙の論調の極性化現象について、その実態と進行メカニズムを明らかにすることである。近年、全国紙の論調の違いが以前よりも大きくなってきているとの指摘がしばしばなされるようになった。しかしながら、このような論調の極性化現象は、いつから、どの程度、どのような意味で進行していると言えるのか、検証が待たれているところである。本研究では、新聞記事の極性化の程度を示す「極性化指標」を提案し、これを各時代各争点の記事に適用することで、新聞論調の極性度の時代的変化を一貫した基準で記述するとともに、その進行メカニズムと発生条件の一端を解明することを目指す。
著者
西村 俊哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、異種母体を利用した個体作出システムの構築を目的とし、胚盤胞補完法を用いて子宮欠損ラット体内にマウス幹細胞由来子宮を作製し、そこにマウス胚を移植し、ラット母体内でのマウス胎子の発生を試みる。異種母体内で移植胚と同種の子宮を作製することができれば、異種母体を利用した個体作出システムの構築に大きく近づくと考えられる。また、本研究が進めば、産子作出に同種母体が必要なくなることから、個体の確保が困難な絶滅危惧種やすでに絶滅した種の近縁種を用いることによる“代理異種母出産”が可能となる。本年度は、前年度に開発した飛躍的なドナーキメリズムを上昇させる新規手法(細胞競合ニッチ法)をさらに改良することで、子宮特異的に成長因子受容体欠損を誘導する遺伝子改変マウスを作製した。具体的には、Wnta7遺伝子のプロモーター下でCREタンパク質を発現するマウスとIgf1遺伝子にloxp配列が挿入されたマウスを掛け合わせることで、両方の組み換え遺伝子を有したマウスを作製した。今後、本マウス胚にドナー細胞を移植することで、①ドナー細胞のキメリズムが子宮内で上昇するか、②ドナーキメリズムが上昇した場場、ドナー細胞由来子宮を誘導することが出来るかを検討する。また、これまで得られたデータをまとめ、論文発表(Nishimura et al., Cell Stem Cell. 2021)、学会発表(第20回再生医療学会総会 口頭発表)を行い、研究成果を社会に発信するとともに、得られた研究結果の米国特許申請を行うことで産業に結び付ける足掛かりを作った。
著者
白木澤 涼子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、第二次世界大戦を未曽有の人災と捉え、そこでの町内会の働きをソーシャル・キャピタルの観点から捉え直し、そのポジティブとネガティブな二面性を明らかにする。ソーシャル・キャピタルの二面性を前提として、今後のわが国の自然災害・人災を問わず、災害時における人々の生活と生命を守る指針の一つとなることを目指す。従来の研究史では、町内会は第二次大戦下、戦時国家体制を支えたとされた。仮に町内会がなければ、国民生活はより壊滅的でパニック状況に陥り、戦後の復興は遅れたであろう。戦時下の町内会は、人々の生活と生命を守るために、地域の実情と特徴に合わせた創意工夫ある働きを行った。その全国的実態の解明を行う。
著者
宇野 博武
出版者
高松大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、プロスポーツ組織におけるフロントスタッフを主体とした「みる」スポーツ・プロダクト(具体的にはホームゲーム)の生産プロセスを概念化すること、及び、より多くの人々に受容されるプロダクトの開発システムモデルを検討することであった。研究成果として、第一に、本研究では、プロダクトの生産プロセスをフロントスタッフによる試合運営関連資料の作成と運用のプロセスとして概念化した。第二に、本研究では、「技術の社会的形成」の知見に依拠しながら、「柔軟な解釈」や「説得的な対話」のプロセスを開発活動のモデルとして提示した。
著者
中田 北斗
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

鉛はその廉価性や利便性から人類の生活に欠かせない金属である一方、採掘活動に伴う鉛汚染により、途上国を中心に年間23万人が鉛中毒で死亡している。鉛の毒性評価や環境モニタリングは広く行われているが、有効な鉛中毒の治療法や汚染環境の修復法は皆無である。本研究では、世界各地に自生し栽培が容易な植物モリンガを用いて、鉛中毒の治療法および汚染環境の修復手法の開発を目指す。