著者
深井 貴明
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、様々な分野でデータが爆発的に増加し、これを共用 HPC 環境で計算処理する需要が増えている。しかし、現在の共用 HPC はユーザーが管理者権限を持つこと (以後 root 化) ができないため、クラウド環境と比べユーザーによるソフトウェアの導入やシステムレベルの最適化が困難である。これまで 共用 HPC 環境での完全な root 化はセキュリティと性能のトレードオフがあり実現されていない。本研究ではこのトレードオフを解決するシステムを軽量ハイパバイザというシステムソフトウェアを基に設計し、共用 HPC 環境の性能を維持しつつ安全な root 化の実現する。
著者
間島 慶
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

機械学習アルゴリズムを適用することによって、脳活動から被験者の知覚・認知内容・運動意図などを読み出すことが可能になっている。この技術は脳情報デコーディングと呼ばれ、脳を介した情報通信技術の基盤にもなっている。しかし、既存の多くの機械学習アルゴリズムは、入力されるデータの次元数が数万以上になると、膨大な計算時間を要するため、実質適用することができない。そこで、本研究では、近年提案された「量子インスパイア計算」を用いて、機械学習アルゴリズムの高速化を試みる。
著者
佐浦 宏明
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

髄膜腫は、形態や発生母地に加え、硬さによって手術の難易度は異なる。術前に髄膜腫の硬度を計測する方法としてMRIを用いて直接振動を加えながら撮影する方法があるが、振動を加える特殊な装置が必要があり、どの施設でも撮影できるわけではない。近年、拡散強調MRIの基礎的概念であるintravoxel incoherent motionを外部振動による組織の動きを含む概念へと拡張し、腹部臓器の弾性率を術前画像から推定する手法が確立された。本研究では、この方法を基礎にしてMRIを用いて新たな術前髄膜腫硬度推定法の確立を目指す。
著者
漆 さき
出版者
大阪経済大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

国境を越えた税務調査は困難であるため、国際的脱税の横行の可能性が指摘されてきた。これに対抗するため、条約に基づく租税に関する国際的情報交換が急速に発展している。しかし、それに対応する納税者保護の手段は十分に整備されていない。情報交換のための条約の中には納税者保護のための規定は設けられておらず、国内法は国内での調査・課税を前提としており、国際的情報交換に対応できない。このような状況の下、プライバシー権やデータ保護の観点から納税者保護及び情報交換に対する制約を検討し、日本法における納税者の権利保護の在り方を提案することが本研究の目的である。
著者
阪口 翔太
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

平行進化では共通の遺伝変異で類似表現型が生じたのか,異なる変異が関与したのかが問題となる.アキノキリンソウはもともと秋に開花する植物だが,北海道の高山と蛇紋岩地では夏前に開花する性質が進化している.本研究ではこの2生態型について早期開花性の遺伝基盤を特定し,その進化過程を解明することを目的とした.蛇紋岩型で著しく分化したゲノム領域を調べたところ 2つの開花遺伝子が抽出された.しかしこれらの候補遺伝子は高山型では分化していなかった.また共通圃場で2型間でも開花期のずれが確認され,開花遺伝子の発現にも時間差があったことから,早期開花性は高山と蛇紋岩地で別個の遺伝変異に基づいて進化したと考えられた.
著者
大森 俊宏
出版者
東北大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度では,精子と精子の間に働く流体力学的相互作用に着目し,流体干渉による精子遊泳の変化を議論した.この解析を行うため,精子鞭毛の弾性変形と鞭毛周りの流れ場を連立する計算手法を開発し,2体精子の遊泳シミュレーションを行った.その結果,精子と精子が,体長程度の近距離にいる場合,鞭毛運動によって作られる流れ場の変動の効果が大きくなり,単体で遊泳する時よりも1割ほど早く遊泳できることを明らかにした.これは,精子が集まることで素早く遊泳できることを意味し,この協調遊泳の効果は受精競争に有利に働くものと推察できる.これらの結果をPhysics of Fluid誌(Taketoshi et al., Phys Fluids, 2020)に発表,また大学広報を通じてプレスリリースを行った.協調遊泳の効果は,多体になるほど大きくなるものと予想されるため,多体干渉時にどの程度の効果が出るのかを解析していく予定である.本手法を,繊毛・鞭毛を用いて遊泳する生物運動(繊毛虫の遊泳など)へと一般化し,繊毛運動によって生じる流体粘性散逸,遊泳効率の解析を行った.特に,繊毛の本数と細胞体の大きさとの関係に着目して解析を行ったところ,遊泳効率が最大となる繊毛密度が存在することを発見.得られた最適な繊毛数密度は自然界に存在する微生物との一致しており,この結果は現存する微生物は運動エネルギーを最小化していることを意味する.本研究結果はPNAS誌に掲載された(Omori et al., PNAS, 2020).
著者
谷野 圭亮
出版者
大阪府立大学工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,第二言語習得研究により明らかにされてきた動機づけ理論,特に第二言語自己動機づけシステム理論を基礎として学習者の動機づけ状況を個人レベルで判定し,そのレベルに適切な動機づけ戦略を提供することにより,学習者の動機づけレベルの向上に貢献するスキームの開発,実証とそれを運用することができる学習支援システムの開発とその評価実験を行う.
著者
石川 正昭
出版者
兵庫県立尼崎総合医療センター(研究部)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

慢性副鼻腔炎には通常の治療に抵抗性を有する難治症例があり、その多くがType2免疫反応型である。近年、このType2免疫反応型を制御する因子として副交感神経から放出されるアセチルコリンの重要性が報告されており、今後アセチルコリンと慢性副鼻腔炎の関連性に着目した研究の増加が予測される。しかしアセチルコリン受容体の全サブタイプを対象にして、ヒトと実験動物の鼻腔内発現パターンの比較を行った研究は現時点で皆無であり、鼻腔内でのアセチルコリン受容体発現パターンに対する更なる知見の蓄積が求められる。本研究ではマウス・ラット・ヒトから得られる検体を用い、アセチルコリン受容体発現パターンの異種間差を検証する。
著者
田辺 浩介
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

大量のデータの収集と分析によるデータ駆動型研究の進展に伴い、データの効率よい収集や検索のために、実験データや計測データなど、研究活動において作成された実際のファイルと、それらのファイルの作成者や作成時刻、ファイルの属性などを記述したメタデータを関連付けた管理が求められるようになっている。本研究では、これらの研究データを複数の研究分野において管理・流通・再利用可能とするための「研究データパッケージング」の手法を検証・確立し、データ駆動型研究を円滑に進めるための枠組みを構築する。
著者
保科 斉生
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

1989年に提唱された衛生仮説では、衛生的な生活環境が整うにつれて、アレルギー疾患が増加すると説明しています。近年、日本では炎症性腸疾患を患う方が増加傾向にあり、生活の質の低下、免疫抑制療法による弊害等が問題となっています。欧米では豚の寄生虫である豚鞭虫にわざと感染し、腸管免疫の暴走を抑えるという方法がこれまでにいくつかの研究で実施され、安全性の確認と、一部の研究ではその有用性が報告されています。本研究では、これまで評価の対象となっていなかった日本人の炎症性腸疾患患者さんやその他の自己免疫疾患を対象に、この療法の安全性・有効性を評価します。
著者
菅野 早紀
出版者
大東文化大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、高齢者を対象とした個票パネルデータを用いて、高齢期の資産の状況とその推移を明らかにする。高齢になるほど、その影響があると考えられる(1)介護、(2)医療、(3)自然災害、(4)家族の形態の変化の4つのリスクに直面した時に、高齢者はどのように資産を変化させているだろうか。また、年金や医療保険、介護保険といった社会保障制度がこれらのリスクに対して資産変動を防ぐ機能を果たしているか実証的に検証する。
著者
菅原 慎矢
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

制度開始から15年以上がすぎ、介護保険は様々な問題を孕みながらも進展を広げてきた。しかしその実態と効果に関しては、データの不足を背景として、十分な実証分析がなされてきたとは言いづらい。この状況に対して、2015年以降、国際的にみても珍しい規模のビッグデータである介護レセプトデータが、研究者に提供されることになった。本研究は、まずこのデータへの先進的なデータサイエンス手法の応用を通じ、エビデンスに基づく効果的な科学的介護を提案する。さらにこの知見を社会実装するための考察を行う。2019年度の研究内容としては、動学パネルモデルの一つであるPanel VARモデルを用いて、介護サービスへの支出と要介護度の動学的な関係を明らかにする研究を、大阪経済大学石原庸博氏と共同で行った。本研究については、東京経済大学におけるセミナー発表と、関西計量経済学研究会における発表を行った。本研究については英語論文を投稿準備中である。また、2018年に行っていた、この論文は介護レセプトを用いて介護保険サービスの組み合わ せの効果を検証した論文"What composes desirable formal at-home elder care? An analysis for multiple service combinations"が査読付き英文誌 Japanese Economic Reviewに受理された。また、最近の研究から得られた知見を日本語でまとめた論文「わが国における高齢者介護制度の課題と展望」を、季刊個人金融に掲載した。一方で、2020年度における研究のためにデータの申請を行い、介護DBに関して利用の許可を得た。
著者
原 真理子
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

PFAPA患児の扁桃における自然免疫関連遺伝子の発現に関してトランスクリプトーム解析を行った。クラスター解析から、本疾患は2つのサブタイプに分かれ、endotypeを持つことが示された。また、上流因子解析から、IFN-γ刺激、1,25-(OH)2ビタミンD減少が、自然免疫関連遺伝子を誘導する免疫経路であることが推測された。endotype間では、臨床症状も有意に異なっており、本疾患はphenotypeを持つことも示唆された。
著者
石原 武明
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

過去の文献および海外の学会から手に入れた情報をもとにholeのサイズ、holeの間のサイズ、表面あたりのholeの個数、その配列情報を収集した。これらの情報より人へ照射できるサイズのグリッドを作図し、鉛素材をつかって、金属加工の業者に作成していただいた。まずはこのグリッドをX線が正確に通過することを確認する必要があり、そのためフィルムを使った照射実験を行った。照射を行ったフィルム解析では、想定どおりの線量のvalleyとpeakが表現できており、照射可能な状況であることを確認した。また、エネルギーを変えたり、線源を変更したが、いずれも問題なくこのholeを通過することを確認することができた。
著者
熊倉 永子
出版者
国立研究開発法人建築研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、人々が生活の中で感じる温冷感を対象とした新たな指標の開発を目指している。都市生活者が投稿したジオタグ付きTweetデータの中から、暑さや涼しさを表現した短文や写真データを抽出し、投稿された場所や時間の特徴を明らかにする。また、投稿が集中する場所について、実測とシミュレーションによる物理的な熱環境の実態や、空間用途及び人口統計データ等との関係から、都市生活者が感じる暑さや涼しさとの相違を分析する。その結果をもとに、都市生活者が感じる暑さや涼しさのパターンを明らかにし、暑熱に対する適応策を検討する。
著者
仲吉 信人
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は次の二つの事項を達成する.1:地上気象ビッグデータ取得デバイスの開発,2:地上気象ビッグデータの数値気象モデルへの同化手法の構築,および計算精度の向上性の評価.それぞれについて今年度の実施状況は以下の通りである.1.地上気象ビッグデータ取得デバイスの開発:3つの球形温度センサを用いた気象3変数逆同定システムであるグローブ風葬放射センサを従来の直径12 mmから4 mmまでダウンサイズすることに成功した.また,同定する3気象変数として,風速・日射・輻射熱の組み合わせから風速・日射・気温の組み合わせを逆同定するシステムを新たに構築した(Globe Radio-anemo Thermometer; GRaT).GRaTとすることで,正確な気温測定に必要であった強制通風筒が必要なくなるため,システム全体の低消費電力化,さらなる小型化が可能となった.GRaTに関して特許の出願を行った.加えて,PM2.5を測定する簡易・小型測定デバイスを開発した.2.地上気象ビッグデータの数値気象モデルへの同化手法の構築:地上気象ビッグデータの気象シミュレーションへのデータ同化インパクトを評価するため,オープン気象モデルWRFの3Dvarを用いたデータ同化数値実験を行った.夏の晴天日を対象としたシミューレーションにより地上気象データの同化が上空の気象解析値を有意に修正させることが確認された.一方で,精度の向上は確認されておらず,2020年度は4dvarを用いた同化数値実験を行う.上記に加え,上空風速の簡易・安価な測定原理であるCIV(Cloud Image Velocimetry)の開発,および羽田・成田空港を離発着する航空機から排出される排熱・排ガスのメソ気象用データベースの構築を行なった.
著者
島崎 淳也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

現在熱中症における意識障害の原因解明研究をすすめている。研究の柱は3つあり、①ラットモデルを用いた病態解明、②臨床研究による熱中症性脳症の臨床像解明、③レジストリーデータを用いたリスク因子の抽出である。①熱中症ラットモデルを用いた熱中症性脳症のメカニズムを解明:データ解析を行っている②熱中症患者における熱中症性脳症の臨床像解明:現在多施設研究を実施している③熱中症レジストリーを用いた熱中症性脳症の疫学調査:HeatStroke Study2017-2018のデータ解析を現在すすめている。
著者
豊島 邦義
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

双極性障害では、気分が安定した後にも認知機能障害が残存し、様々な場面で生活に支障をきたすことが知られている。認知機能は気分症状の影響を受けやすいため、本研究では気分症状の安定した時期に、事象関連電位、神経心理学的検査、主観的認知機能評価等をおこない、双極性障害の認知機能障害を多角的にとらえることを目的とした。本研究は、双極性障害の認知機能障害に対する新しい治療法の開発に寄与しうるものと考えている。
著者
石下 洋平
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

ASMR(Autonomous sensory meridian response)は、聴覚や視覚への刺激によって、頭の中がゾワゾワするような心地よさを感じる反応のことである。社会的・医学的にASMRに対する関心は高まっているが、その発生機序は明らかになっていない。その発生には、聴覚野や視覚野、感覚運動野など多領域が相互に関与していると推測される。皮質脳波は脳表から直接脳波を測定するため、時間空間分解能の高いデータが得られる。本研究では、てんかん焦点診断目的に皮質脳波測定を行う脳神経外科患者に協力を仰ぎ、ASMRを惹起しうる動画を視聴させながら皮質脳波を測定し、その発生機序の解明を目指す。
著者
塩谷 剛
出版者
香川大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、「社内外のつながり」と一人の人間が多様な経験と幅広い知見を持つという「個人内多様性」に着目し、経営者(マネジャー)の社内外のつながりが強くなり、個人内多様性が高まるほど彼らの両利き性が高まり、両者は互いにその効果を高め合うという仮説を構築した。この仮説を検証するため、調査対象を戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択されている中小企業の経営者とし、質問調査票及び送付リストを作成した。一方で、組織学会の学術企画に参画し、大企業のミドルマネジャーを対象にした質問票調査プロジェクトに携わり、上記仮説を検証するための質問項目を作成した。このように、本研究では、中小企業経営者と大企業のミドルマネジャーという2方向から仮説検証を行う。また、本研究の前段階として2016年度~2017年度に実施した農業経営者を対象とした質問票調査を用いた研究論文が『組織科学』に採択された。本論文では、企業パフォーマンスに対する経営者の探索2変数(新商品開発及び新市場開拓)と活用の交互作用について検討した。分析の結果、企業パフォーマンスを向上させるためには、経営者は両利きであることが望ましいが、それは探索の内容に左右されることが示された。また、知識源の多様性と異業種経験が探索・活用にもたらす影響についても検討した。知識源の多様化は、農業経営者の選択肢、知識の組み合わせを増大させるが、分析の結果、その効果は活用に限定されていることが示された。また、異業種経験は探索には影響を与えず、活用に対して負の影響を与えることが示された。