著者
山口 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

我々ヒトを含む脊椎動物の大半は、鰓や腎臓の働きにより、体内の水分とイオンのバランスを常に一定に保つ「調節型」生物である。この体液調節能力の起源を明らかにするため、現生脊椎動物で唯一、体液組成が海水と等しい「順応型」のヌタウナギに着目する。ヌタウナギの鰓・腎臓および筋肉で、各種物質輸送に関わる分子群やホルモン受容体の局在パターンを調べ、個体レベル(鰓・腎臓)および細胞レベル(筋肉)での体液調節機構を検証する。これにより、「調節型」と「順応型」の違いを生み出す分子基盤を解明する。
著者
石原 悠子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究ではニーチェや後期ハイデガー、ガダマー、またフィンクらが展開した西洋近現代における遊びの哲学との比較研究を通して、京都学派における「遊びの哲学」の内実を明確化することを目的とする。具体的には、西田幾多郎・西谷啓治・上田閑照における「遊び」に関する論述を、「自己」「他者」「世界」という三つの問題圏において検討する。このことを通して京都学派の哲学が遊びの哲学に寄与しうる可能性について問う。
著者
雨宮 薫
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、訓練による運動習熟が時を経てどのように保存され、適応されていくのかを検討することにある。そのために、まず普段使用することのない運動学習を訓練させ、その後のブランク後にどのように獲得した技能が思い起こされるか、また思い起こされる技能は、最初の技能獲得時の運動技能レベルにどれほどよるのかを検討することを念頭に、初期の運動学習を設定した。この実験では、被験者に普段使用することのない左手の薬指と小指を自己最速スピードで交互に動かす訓練を繰り返し行ってもらった。技能レベルを操作する目的で、自主的に訓練をするグループ、そして受動的にロボットにより介助され訓練をするグループを設けた。通常、受動的な訓練は効果が限定的であることが知られているが、自分の能力を超えたスピードを経験する訓練効果については未だ効果が検証されていない。そこで、自己能力を上回るスピードで受動訓練をうけるSuper passiveトレーニンググループ、自己能力レベルと同じスピードで受動訓練をうけるSelf passiveトレーニンググループを設けることで、技能レベルが操作できるかを検討した。さらに、受動訓練が下方方向にも影響を与えるかを検討するために、自己能力レベルを下回るLow passiveトレーニンググループを設けた。結果、Super passive群は、自主的に訓練するグループの半分の訓練試行数で同等レベルの訓練効果を得ることがわかった。また、Self passive群やLow passive群の訓練効果より訓練効果が高く、受動訓練の直後にパフォーマンスが高くなる傾向が見られた。以上のことは、受動的にうける訓練内容により、パフォーマンスが通常訓練より促進される方向にも、抑制する方向にも影響することを示している。こうして得られた技能差や学習の相違を元に、次はブランクをへての学習の蓄積について検討する。
著者
西山 和宏
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

申請者は、受容体作動性/脂質作動性カチオンチャネルTRPC3の心臓リモデリングにおける役割に着目し、TRPC3と活性酸素生成酵素 (Nox2)との複合体形成を介した過剰な活性酸素の産生がマウス・ラットの心筋細胞萎縮や間質の線維化を形成する引き金となることを見出してきた。興味深いことに、TRPC3-Nox2複合体形成による筋萎縮は心臓だけにとどまらず、同じ赤筋である骨格筋typeI線維の萎縮にも関与する可能性が新たに示されてきた。そこで本研究では、哺乳動物個体の赤筋萎縮(衰弱)に着目し、その根底にあるTRPC3-Nox2複合体の形成機構を解明する。
著者
TRONU CARLA
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Recent research on early modern lay Christians in Japan compensantes for elite-centered earlier studies, but targets only highly Christianized villages or cities. This project studies lay Christians in cities where Christians were minoritarian (like Edo, Kyoto, Fushimi, etc) by looking at the spatial distribution of and tension between churches, mission posts and lay confraternities in order to elucidate the reality of the lay Japanese Christians, and how they engaged at a local level with the transregional and global missionary networks, and the rivalry between Jesuits and Mendicants.
著者
佐々木 宏樹
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,行動経済学の知見に基づく新たな政策手法である「ナッジ(Nudge)」が,野菜の消費拡大に与える効果を「ランダム化比較実験(RCT)」により検証する。個人の野菜への支出額を把握する際は,日本が世界に先行するレシート買い取りアプリを用いた個人レベルの日々の購買データを利用する。レシートデータは店舗横断的に把握が可能である。このため,購買場所,時間帯などのより詳細なデータを把握できるうえ,モバイルアプリを通じて個人に対するナッジが可能となる。今回の実験を通じて,消費者の野菜の購買パターンを精細に分析しかつ健康な食の選択を促すために有効なフード・ナッジを検証することが可能となる。
著者
高松 千尋
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

ヨアヒム・フォン・ザントラルトの著書『高貴なる建築・彫刻・絵画のドイツ・アカデミー』(1675-1679年、ニュルンベルク)について研究する。同書は17世紀に出版された画家伝兼絵画理論書であるが、その研究は未だ断片的なものにとどまっている。その資料的価値は近年ようやく認められつつあり、今後美術史研究の一次資料として重要性を強めていくと思われる。本研究ではザントラルトがローマで直接交際した北方の画家たちを対象とし、『ドイツ・アカデミー』中の伝記を他の画家伝と比較することで、その記述内容や芸術観の特質を明らかにする。
著者
高山 扶美子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ASD患児から単離したヒト乳歯歯髄幹細胞(SHED)を用い、①ASD患児から採取したSHEDより分化させた神経細胞の日内変動の解析を行う。②遺伝子発現の網羅的解析により、ASDにおける概日リズム破綻の原因遺伝子を同定する。③原因遺伝子のsiRNAや阻害剤によるノックダウンを行い、ASDにおける睡眠障害の原因遺伝子の機能解析を行う。④同定遺伝子の改変マウスを用いシナプス形態・機能および行動解析を行う。前述の結果により、新しい治療法や創薬開拓に繋がる基盤研究法を提供する。
著者
松浦 孝典
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

GBR(骨再生誘導法)を行なったインプラント周囲組織に対し炎症を惹起させると、使用した骨補填材によって炎症の影響に差があるか組織学的に評価することを目的として実験を行った。イヌ下顎骨顎堤に骨欠損を作製しインプラントを埋入、インプラント周囲の欠損部に自家骨、異種骨を補填し治癒後に実験的周囲炎を惹起させた。組織切片上で計測したBIC、新生骨面積、骨吸収面積などの各パラメーター間には統計学的に有意な差を認めなかった。本結果より、異なる骨移植材を用いたGBR後のインプラント周囲組織の炎症の影響には差がないことが示唆された。