著者
石橋 智幸 顧 優輝 脇屋 達 真部 雄介 菅原 研次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.211, pp.7-12, 2009-09-18

情報過多の問題を解決するために様々な推薦システムが研究,開発されてきたが,いずれも推薦対象を限定したものが多い.これは,個人の嗜好に関する情報の獲得の難しさや推薦対象であるWebページの情報が膨大であることに起因する.その一方で,近年,SNSの1つであるソーシャルブックマークの情報を利用する事で,個人の嗜好や有益な情報源を抽出するという新しいアプローチが注目されている.そこで,本研究では推薦対象を限定しない個人化度合が高い推薦を行うために,ソーシャルブックマークからアイテムグループ生成・推定し,ユーザの嗜好推定を行い,類似ユーザを見つけ,そこから嗜好に近いWebページを推薦するシステムを開発する.
著者
宮部 真衣 吉野 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.325, pp.85-90, 2008-11-20

機械翻訳を用いたコミュニヶーションにおいて,翻訳リペアは不適切な翻訳箇所を減少させるための方法として重要な役割を果たす.翻訳リペア作業はユーザへの負担が大きいため,修正の必要な単語の類義語や関連語を提示することによる言い換え作業の支援が必要である.しかし,提示数が多い場合,適切なものを選び出すことは容易ではないと考えられる.本稿では,より適切な言い換え候補の抽出のためにWeb日本語Nグラムを用いたフィルタリングを提案する.また,2-gramおよび3-gramのデータを利用し,前方品詞2-gram,後方品詞2-gram,3-gramの3種類の単語の組み合わせによるフィルタリング実験を行い,以下の知見を得た.(1)Web日本語Nグラムを用いたフィルタリングにより,90%前後の単語について,言い換え候補を7語未満に絞り込むことができており,多数の候補を絞り込むことができる可能性がある.(2)閾値を0とした場合,3-gramによるフィルタリングにおいて抽出失敗率が最も高く(34.4%),後方品詞2-gramが最も低く(15.9%)なった.また,除外失敗率については前方品詞2-gramが最も高く(52.7%),3-gramが最も低く(28.6%)となった.(3)複数品詞により構成される言い換え候補については形態素解析を行い,言い換え候補の構成品詞数に応じて利用するNグラムデータを変更することで,抽出失敗を減少できる可能性がある.
著者
藤平 光壮 岩沼 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.77, pp.17-24, 1996-05-24

逐次型探索において, 探索の順序は極めて重要である. PTTP型定理証明においては, ゴールの順序が探索の順序を決定する. ゴールの順序により探索空間の大きさが変わってしまう. 本研究では, 証明を開始する前に各リテラルの探索空間コストをある程度予測し, 探索空間が小さくなるようにリテラルの並び換えを行なう. 並び換えの方法をいくつか提案し, 実装, 性能評価実験, 他の証明器との比較実験を行なった.
著者
馬場 雪乃 石川 冬樹 本位田 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.119, pp.51-56, 2008-06-23

Folksonomyおけるタグは,コンテンツに関連したキーワードを入力するだけで良いという付与の容易さが利点ではあるが,どのコンテンツにどのタグが付与されているのかといった情報しか持たず,非構造的である.タグを構造的に扱うことでタグの有用性を向上させたいが,そのためには,タグが示す概念を知る必要がある.本論文では,タグが付与されているコンテンツの特徴から,タグの概念を抽出する手法を提案する.特に,「時間」「場所」を表すタグについて,そのタグと関連の強い「時間」「場所」の範囲を,Web上のコンテンツに付与されたタグとそのコンテンツに付与された時間・場所の情報から抽出する手法を示す.
著者
織田 充 南 俊朗 有馬 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.98, no.437, pp.33-40, 1998-12-01
被引用文献数
3

Web文書検索において, 自分の求めている文書を指定するのに適したキーワードを思いつけないことがある.そのような利用者に対して, 利用者達による過去の検索履歴を用い, 利用者の検索意図との関連が高いと推定されるキーワード(群)を指示することで, 利用者は候補の中から自分の意図に近いものを選ぶだけで検索を進められる.本発表では利用者の検索発想力を高めるための支援を行うSASSシステム(Searching Assistant with Social Selection)の設計思想及び概要を述べる.システムは, 蓄積された検索キーワード列を基に, 現在の状況との関連度を計算し, それに基づき推薦を行う.情報の提供者ではなく利用者による実績に基づく点が本方式の特徴である.
著者
沈 偉 川村 隆浩 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.119, pp.7-14, 2008-06-23
被引用文献数
1

近年,Webに関する研究において,オントロジーの利用が盛んに進められている.しかし,オントロジーは構築の難しさが指摘され,構築するコストが問題視されている.そこで,本研究では一般ユーザを対象として,集合知としてオントロジーを構築するためのサイト,オントロジーWikiを提案する.
著者
福田 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.332, pp.77-82, 2013-11-21

本研究では,複数ユニット組合せオークションの近似解法における,財に対する留保価格の考慮について述べ,その留保価格の指定が可能な複数ユニット組合せオークションを,エージェント仲介型の市場メカニズムに基づく電力資源制御フレームワークに適用する場合について考える.中規模なスマートグリッドに適用することを想定した場合に考えられる,プロトタイプ実装についても述べる.本稿では,特に現時点での実装における想定される性能に関する議論,および今後解決すべき課題について述べる.
著者
木口 浩之 渡部 広一 河岡 司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.456, pp.59-62, 2009-02-23

本研究では,USBカメラや測域センサからの検出情報により視覚障がい者の歩行支援を目的としている.USBカメラや測域センサが取り付けられたキャリーケースを歩行の際に押してもらい,歩行可能領域や段差・障害物等の情報を視覚障がい者にスピーカーの音で報せるというシステムである.歩行可能領域かどうかの判別には,カメラからの入力画像に対してクラスタリングという画像認識を行い,段差や障害物等の認識には測域センサからの検出情報を用いて実現する.
著者
松田 昌史 松原 繁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.727, pp.31-36, 2005-03-08

複数の売手が, 複数同一財を出品するオークションメカニズムを考案する.インターネットオークションにおいては多くの場合, 相手の素性が不明であり, 相手が優良な取引相手かどうかを知ることが困難である.社会的に効率の良い財の割当てを達成するためには, 望ましくない取引相手をオークションから排除することが必要である.そのための方法として, 本稿では買手が得た情報を他者と共有することで, 望ましくない売手を特定し, 取引から排除するオークションプロトコルを提案する.本プロトコルの特徴は, 売手の素性がわからない状態の時に, 一部の買手が売手と取引を行うことでその売手の情報を獲得し, それを他の買手や主催者と共有する誘因を, 価格を優遇することで与える点にある.解析では, 買手が正直に情報を共有することが均衡になることを証明する.また, 計算機実験を行い, 提案プロトコルでは社会的に望ましい割当てに近い状態が実現されることを実証する.
著者
向井 孝徳 宮下 裕充 若木 利子 松永 久美子 福本 太郎 沢村 一 新田 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.38, pp.1-6, 2006-05-11

これ迄,マルチ議論エージェントシステムにおいて,各エージェントの知識ベースは,対象問題に関する言明文(ルール)で表現され、オントロジー知識は用いられていない.一般にWeb上の電子商取引等の問題では,売り手と買い手の売買に関するそれぞれの固有の戦略的知識以外にオントロジー知識を用いた推論が必要と考えられる.本研究では、各議論エージェントがセマンティックWeb上のOWL DL言語,または,記述論理SHOIN(D)で表現された共有知識としてのオントロジーと,EALP(或は,ELP)の論理プログラムで表現された各自のルールベースの知識の両者を議論・推論で扱えることを目的として,オントロジーに関する単調な記述論理推論系と対話的証明論に基づくマルチ議論エージェントの非単調な推論との統合推論方式の提案,及び,それに基づく議論エージェントシステムとセマンティックWeb推論系の統合推論システムの試作と評価を行なった.
著者
宮島 敏明 トーマス デビッド 天野 英晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.70, pp.125-130, 2012-05-22

計算集約的なアプリケーションは、該当部分をFPGAやGPUへ処理をオフロードすることで実行時間を劇的に短縮することができる。しかし、どのアクセラレータを選ぶか、アプリケーションの解析、実行時間の見積もり、コーディングなどをそれぞれ専用のツールを用いて繰り返すような既存の実装サイクルは時間がかかるだけでなく、高度な専門知識を必要とする作業である。加えて、このサイクルのどこかで高速化に最も重要な低位の並列化だけでなく、タスクレベル並列性を取り出す必要がある。本論文では、Courierと呼ぶバイナリアクセラレーションのためのツールチェインとドメイン固有言語を提案する。Courierは、実行中のソフトウェアバイナリファイルからのデータフローの抜き出し、処理をオフロードした際の実行時間の見積もりなどを行い、元のバイナリを高速化する。Courierを用いることで、元のソースコードや専門的な知識がなくとも、容易にタスクレベル並列性を取り出すことが可能となる。また、ソフトウェア/ハードウェア協調設計環境でどの部分をオフロードするのが最適かの決定も容易になる。
著者
松島 由紀子 舩曵 信生 中西 透
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.301, pp.19-24, 2010-11-12
被引用文献数
4

本グループでは,社会人,学生,子育て家庭など,忙しい人の手料理支援を目的として,主調理者とその補佐役の副調理者による調理作業をシミュレーションすることで調理時間を算出する調理モデルと,それを用いた調理手順スケジューリングアルゴリズムを提案している.本論文では,調理時間精度の改善と利便性向上のために,これまで考慮していなかった,「電子レンジによる加熱」,「食材の混ぜ合わせ」の2つの調理手順に対する拡張を行う.また,拡張後のモデルを用いて,副調理者の実行可能手順の増加による調理時間の短縮効果を調査する.6種類の料理を用いた評価実験で,拡張後のモデルと実際の調理結果での時間差が約2分となり,調理時間精度の改善が確認された.また,様々な料理数での調理モデル計算により,副調理者の実行可能手順の増加と共に調理時間が短縮されることが示された.
著者
粉川 貴至 坂本 良太 小川 均
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.400, pp.1-6, 2006-11-24

日本は頻繁に地震が起こる国である.そこで,気象庁により運用されている緊急地震速報システムがある.このシステムは地震の初期微動を感知することにより,地震の主要動が到着する前に人々に地震の通知を行うことができる.それでも主要動が到着するまで数秒しか残されていないため,誰がどこに居るか,どの家電を消すべきか,家の中にいる家族の安全をどう確保するかという判断を冷静に行う事は難しい.本研究では,地震が起こる際に,緊急地震速報を受け取りネットワークに接続された家電を制御することで人々を支援するシステムを開発する.システムは地震に対する対策として一般的な対策,家の中に居る人に関連した対策,各家庭に特化された3種類の対策を扱う.これら異なる種類の対策を同時に行おうとする場合,家電制御において競合が起こることがあるため,それを解決するメカニズムを実装した.対策は制約として表され,重み付き制約充足問題を拡張した最適化手法により解決した.本稿ではシステムの実現と実験を示し,最後にその結果と課題について述べる.
著者
上條 敦史 石川 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.439, pp.47-52, 2010-02-22

日本語による自然言語文を拡張型述語論理に変換する手法を提案する.この手法は,基本的には既存の自然言語処理ツールと電子化辞書の活用を前提に,述語の項のラベル付けを核とした意味解析を行うものである.この述語論理では,知識構成要素をすべて日常語とし,単文,複文ともに一つの文を一つの述語式で表現する.複文の場合には,主節を表す述語式中の述語部や項に従属節を埋め込んで表現する.従属節の表現には主節を表す述語式と同様の形式を用いる.変換対象は省略のない文法的に正しい文とし,平叙文以外の受身文や丁寧文も含む.
著者
福本 淳一 小松 英二 木下 哲男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.95, no.76, pp.23-28, 1995-05-26
被引用文献数
1

従来の自然言語処理では,文法,辞書,語用論などをはじめとする様々な知識が利用されてきた.自然言語処理の頑健性を向上させるためには,これらの知識を用いた種々の自然言語処理機能が協調的に動作する必要がある.このような協調的システムのモデルとしてマルチエージェントモデルがある.我々は,このマルチエージェントモデルに基づいて,従来の自然言語処理システムに埋め込まれていた自然言語処理モジュール群をエージェントとして形式化し,これらエージェントの協調的動作によって頑健で効率的な自然言語処理システムについて検討を進めている.本稿では,まず,従来のシーケンシャルな自然言語処理における問題点についていくつかの例をあげ,それらの問題点を解決するための基本的な処理の枠組みについて検討する.次に,種々の知識の協調的活用という視点から頑健な自然言語処理の基本的枠組について検討し,マルチエージェントモデルに基づく自然言語処理システムのアーキテクチャについて考察する.
著者
和泉 潔 山下 倫久 車谷 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.725, pp.53-58, 2004-03-09

本研究では,資源選択を簡略化したマイノリティーモデルと呼ばれるモデルを用いて,資源割り当て問題の分類を行った.学習の効率性と正確さの異なるエージェントを3種類用意して,獲得した利得の比較を行った.その結果,システムの複雑性と学習への時間的制約という2つの条件に応じて,4つの領域が存在することが分かった.そして,それらの領域にしたがって,実際の資源割り当て問題を分類できた.実際の資源割り当て問題が属する領域に応じて,モデル化を行うときにエージェントの持つべき特徴が分かった.
著者
中尾 好佑 峯 恒憲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.51, pp.31-36, 2009-05-15

ブラウジング支援のための情報推薦手法として、「関連ページ推薦」を提案する。関連ページ推薦とは閲覧中のWebページと関連が深いと思われるWebページを推薦する手法であり、この手法によりユーザによりパーソナライズされたブラウジングを提供することができると考える。ページ間の関連の深さはユーザの履歴を分析することによって算出される。本研究では、ユーザの閲覧履歴が林構造にマッピング可能であるということ、またタブブラウザにおいて異なるタブで同時に出現するページの間には共起性があるという仮説に基づいた関連度の算出法を提案し、さらに行った実験の結果を考察することで今後の課題、方針を示す。
著者
三浦 大生 秋元 崇 宮内 新 石川 知雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.88, pp.15-20, 2000-05-18
被引用文献数
1

本稿では複数のエージェントを同時に学習する手法として, 遺伝子プログラミングを用いた学習にエージェント間評価を導入して, エージェント同士が互いに評価する手法を提案する.実ロボットに提案した手法による学習法を実装してのサッカーゲームによる実験を行う.まずスルーパスに戦術を特定した学習を行い, エージェント間評価を用いることでスルーパス行動の学習効率を高めることができることを示し, エージェント間評価が有効な手法であることを示す.続いて戦術を特定することなく複数の戦術を1回の学習で同時に学習することができることを示す.
著者
上野 晴樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.548, pp.19-24, 2005-01-10

なぜ文化とAIなのか。AIが心の心理学モデルであるならば、当然その研究者の心理学の理解に基づいているわけであるし、想定している応用システムのユーザが一般の人々であるならば、当然そのユーザは人とシステムとの関係についてある種の"関係のあり方"をごく自然に持っているはずである。知能システムの設計は、研究者やユーザの思考法に基づくはずであり、それは彼らの属する伝統文化あるいは地域文化に基づいていると考えるのが自然であろう。一方、AIは科学技術であるから、AIに関する理解もグローバルであるはずであると信じ込んでいる研究者がほとんどであるように感じられる。むしろ違いを意識することが創造に繋がるのではないかと思う。芸術や建築の世界でも日本の伝統文化を意識している人々のほうが国際的にも高く評価されていることを考えれば、納得していただけるのではないか。著者の研究成果も多少織り交ぜながらAIの文化論を述べてみたい。
著者
兼平 大輔 川村 秀憲 車谷 浩一 大内 東
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.536, pp.57-64, 2002-01-03
被引用文献数
1

2001年4月16日, 皇太子妃のご懐妊に関する情報が育児関連用品株を急騰させた.各会社の価値に関係しない情報がその企業の株価を押し上げたのである.これは情報を受け取ったトレーダーの情報の解釈が影響していると考えられ, この現象を理解するためには, トレーダーの情報の解釈と市場の関係を明らかにする必要がある.そこで本稿では, 情報解釈とが異なる2種類のエージェントを作成し, マルチエージェント人工市場を構築し, その市場構成比を変えシミュレーションを行った.また, 情報解釈の違いと市場のマクロな構造の関係について, 相関次元分析を用いて市場の複雑さを計測した.その結果, 構成するエージェントの情報解釈と, 市場の複雑さに関係があることが明らかになった.