著者
阪上 弘彬 川端 光昭
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.549-559, 2018 (Released:2018-12-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

近年,地理と土木の連携が注目されており,また土木技術者の育成において地理を学ぶことの重要性が指摘されている.本稿の目的は,高等専門学校(以下,高専とする)における地理と土木が連携したモビリティ・マネジメント教育(以下,MM教育とする)の学習単元開発・実践を示すこと,およびそれを踏まえて高専地理が土木と連携してMM教育に取組む意義について示すことである.岐阜市におけるコンパクトシティ構想を題材に,政策提案者の立場から,LRT導入の影響を持続可能な開発の観点から判断し,交通政策を提案する学習単元を開発し,実践した.開発・実践を踏まえて,地理が土木と連携してMM教育に取組む意義として,土木技術者の育成と公民的資質の涵養双方に貢献できる点,地理の学習成果が土木の学習においても活用できることを学生に気付かせることができる点,街づくりをより実社会のやり方に即して学習することができる点を指摘した.
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018
被引用文献数
2

<p>本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.</p>
著者
村中 亮夫 埴淵 知哉 竹森 雅泰
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-11, 2014
被引用文献数
1

近年,社会調査における個人情報の保護に対する関心が高まっている.本稿では,日本における近年の社会調査環境の変化によってもたらされた個人情報保護の課題と新たなデータ収集法について解説することを目的とする.具体的には,①社会調査データを収集・管理するにあたって考慮すべき住民基本台帳法や公職選挙法のような法制度の変化や調査倫理,①個人情報そのものを取り扱うことなく調査データを収集できるインターネット調査データや公開データの仕組みのようなデータ収集法の活用可能性に着目した.
著者
井上 孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.87-100, 2018
被引用文献数
3

<p>筆者は,2015年6月に「全国小地域別将来人口推計システム」の試用版を公開した.このシステムは,小地域(町丁・字)別の長期(2015~2060年)にわたる日本全国の推計人口(男女5歳階級別)を,初めてウェブ上に公開したものである.システム構築にあたっては,小地域の人口統計指標を平滑化する新たな手法を提案した.その後,本システムにはさまざまな改良が加えられ,2016年7月に正規版が公開されるに至った.本稿では,まずこのシステム開発の経緯に言及したあと,システムの理論面の根幹である,新しい平滑化法の概要を述べる.つづいて,推計方法と推計精度を中心に本システムの概要を述べたあと,その操作方法について解説し,最後にむすびに代えて今後の展望を示す.</p>
著者
一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.332-337, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
岩船 昌起 田村 俊和
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.184-201, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
34
被引用文献数
5

自然災害の認識の向上に関する地理学的な「アウトリーチ」の一環として,岩手県山田町で『東日本大震災記録誌』の制作に携わった.筆者らが構成・執筆した『津波の来襲と避難』の節では,次を試みた.避難行動については,的確な時空間の表現に不慣れな被災者から聞き取った経路や時間推移の情報を鍵に,地図に表し,津波高の推移と重ねた時間–位置図表に整理した.そこには,移動経路がパーソナル・スケールで時空間的に復元されており,避難者の思いや判断を地点ごとに対照できる.一方,日常生活が営まれ,避難行動が具体的に展開された各地区で,避難に関わる“地域性”あるいは“環境特性”を整理して記載した.このような,いわば地理学的な手法で体系化された情報は,後世や他地域の人が避難行動を追体験し,学校や地域社会で防災・減災教育を進めるために,さらには集落移転を含む長期的な地域計画を考える際にも,有用な資料となることが期待される.
著者
長谷 川均 鈴木 厚志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.164-169, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
10

日本地理学会は,GISと地域調査の2分野で4種類の資格の認定事業を管轄している.これらの資格制度は,地理学の社会的地位を高め地理学会が社会貢献をするために設置され,大学教育における地理学の発展を図ることを目的とした.制度の設立は,アウトリーチを意識したものではなかった.しかし,二つの資格制度は,有資格者のバックグラウンドが地理学であることが認知されることで,地理学会の存在を外に向かってアピールすることに貢献している.今後は,日本地理学会サマースクールの充実を図ることなど,地理学会が主導して専門的な視点からのアウトリーチを行うことが必要である.さらに,日本地理学会は,地理学におけるアウトリーチ,社会連携・社会貢献を活性化させるために,さまざまな方法を試みる必要がある.
著者
氷見山 幸夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.158-163, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
21

1991年に旭川市で始められた「私たちの身のまわりの環境地図作品展」はこれまで,国内唯一の全国規模の地図展として発展してきた.その成果は環境教育,地理教育,地図教育,生涯学習など多岐にわたる.本稿では大学のアウトリーチ,すなわち社会貢献ないし社会との連携の観点から,北海道教育大学生涯学習教育研究センターがその発展に果した役割,およびこの地図展に関連した各種実践活動とそこで育まれた人々のつながりに焦点を当てた.その結果,この地図展が歩み来た道が,大学のアウトリーチを推進する上で有用な示唆に富み,それが学術的,教育的,社会的なさまざまな成果に結びついていることが再確認された.特に重要なのは,大学を中心とする環境,地図,教育に関わる小・中・高・大・官・民の連携が,学術–教育–社会の協働・協創を促進し,日本最大の地図展を発展させ,それが大学ないし学術のアウトリーチの一つのあり様を提示しているということである.
著者
小川 芳樹 秋山 祐樹 金杉 洋 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.140-155, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
17
被引用文献数
2

将来予測されている南海トラフ地震が発生した場合における危機管理対応を的確に実施するために,本研究は高知市周辺を対象として,近年の観測技術の向上に伴い蓄積されている観測ビッグデータを用いて被害予測に適用可能なミクロデータを整備することで高精細な被害推定を目指す.そのためにGPS付帯の携帯電話のプローブデータ,住宅地図,電話帳などのジオビッグデータを用いて時空間内挿することで,季節ごとの数日間ずつを対象に15分単位の詳細な人の流動が把握できる人流データを開発した.また,整備した人流データを用いて津波・倒壊・火災による人的被害を統合的に推定する環境を構築した.さらに,多様な被害推定結果を分析することで地域ごとの被害尤度分布を明らかにし,地域ごとに起こり得る最大被害・最尤被害を明らかにした.その結果,地域により被害が大きくなりやすい地域とそうでない地域の分布が明らかになった.
著者
秋山 祐樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.109-126, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
28
被引用文献数
1

商業集積地域の分布とその盛衰は,その近隣住民の生活や来訪者の行動に日々影響を与えているが,これまで商業集積地域の詳細な位置と規模を全国規模で迅速かつ継続的に把握する手法は存在しなかった.そこで本稿ではマイクロジオデータの一つである,日本全国の店舗・事業所の位置と業種が把握できるデジタル電話帳を用いて,日本全国の商業集積地域の分布と規模をポリゴンデータとして把握できるデータである商業集積統計の開発について紹介する.また商業集積統計と商業統計との突き合わせ検証により,同データを用いることで商業統計に掲載されている全国の多くの商業集積地区の位置,規模ともに把握できることが確認された.さらにいくつかの商業集積地域において現地調査を実施し,同データが実在する商業地域の空間的分布を適切に把握できることが明らかとなった.
著者
関根 智子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.101-108, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
15

本論文では,GISによる近接性研究の進展について,近接性と公平性,近接性と移動性,そして潜在的近接性に関わる公共交通の近接性から論じる.GISは,地理情報の重要性を社会に認識させるとともに,近接性の研究に対しても,1)分析地域の広域化,2)分析対象のミクロ化,3)距離の測定方法の変化,4)単一交通手段から複数交通手段への考慮,5)近接性の可視化など,研究方法を大きく変化させ,詳細な研究結果を得ることを可能にした.また,近接性の概念が,人々と場所を隔てる距離の側面から,移動性を通じて距離を克服する能力の側面へ変化している.GISは,距離を克服する能力として,複数の交通手段による移動を測定する交通手段間近接性や,出発時間や到着時間を測定する行程近接性での分析を可能にした.
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.
著者
澤田 康徳 秋元 健作
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
16

本研究では,関東地方の夏期降水発現時における気温低下の地域的特徴を明らかにした.夏期平均気温の高低は降水頻度の高低と相関が強く,平均気温の低下に降水雲の出現による日照時間の低下が関わっている.また,降水発現時の気温の標準偏差は平野北部より南部で大きい.南部では気温が高い日中のほか,降水発現前に日照時間が寡少で低温な広領域曇雨天時および夜間の降水発現事例が北部より多く,広領域曇雨天時は降水強度が大きく気温低下幅が大きい.一方,局地的に発現した対流性降水事例は北部で多発し,日中においては,降水発現時前に日照時間が気温低下に先立って減少し,降水強度が夜間より大きくその後の気温低下も大きい.対流性降水事例では,発現後5~8時間で領域晴天日の気温の日変化とほぼ同じになった.平野南北における降水発現時の気温の標準偏差の違いには,降水強度とともに降水発現前の日照の有無などによる気温の差異が関与している.
著者
磯野 巧 宮岡 邦任
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.233-245, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本稿では,三重大学教育学部の開設科目である地理学野外実習を事例として,当該科目に関わる具体的な授業実践の成果を報告し,地方国立大学の社会科教員養成課程における地理学的フィールドワーク教育の課題と改善点を検討した.その結果,地理学野外実習に対する限定的な学生参加,実習科目の不足,自然地理学と人文地理学両分野の意思疎通強化,成果報告方法の体系化が課題として導出された.今後の改善点として,実習科目の強化,分野横断的な調査テーマの設定,講義科目の一部実習化を提案し,社会科教員養成課程に在籍するより多くの学生が地理学的フィールドワーク教育を享受できるようカリキュラムを見直した.
著者
瀧本 家康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.209-216, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

神戸市の六甲山地中腹において,冷気流の気温低減効果を明らかにするために,2016年7~11月を対象として風と気温の観測を実施し,解析を行った.山地中腹では,15時以降,北寄りの風が定常的に吹き始めるとともに,気温が急激に4~5°C低下する.この北寄りの風は冷気流であり,その吹送時間は15~07時で,風速は約1~2 m/sである.神戸市街地で広域海風の卓越する時間帯に,六甲山地中腹では冷気流が発生し,神戸市街地と異なる局地循環が成立することが明らかになった.
著者
藤村 健一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.199-218, 2016

<p>本稿では,上海における仏教の観光寺院5カ寺の調査結果に基づいて,中国の観光寺院の空間構造や性格,拝観の特徴を考察する.中国仏教には,寺院の建物配置の基本的なパターンが存在する.中心市街地に近く境内が狭い寺院でも,そのパターンに近づくよう工夫している.一般に,観光寺院には宗教空間・観光施設・文化財(文化遺産)という3つの性格がある.中国の場合,日本の観光寺院と比べて,宗教空間としての性格は濃厚である.多くの拝観者が仏像に対して叩頭の拝礼を行っている.また境内には,位牌を祀る殿堂を備えていることが多い.観光施設としての性格ももつが,むしろ観光にとどまらず多様な手段で収益をあげる商業施設としての性格をもつ.一方,文化財としての性格は日本と比べて希薄である.</p>
著者
加賀美 雅弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.116-117, 2017 (Released:2017-09-30)
被引用文献数
1