著者
田中 琢三 高橋 愛 中村 翠 福田 美雪
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度に引き続きエミール・ゾラの作品におけるモニュメントの表象の分析を行うとともに、ゾラ以外の作家とモニュメントの関係について検討した。研究分担者の高橋は、パリのヴァンドーム広場にあるナポレオン円柱に着目し、ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』の小説、具体的には『獲物の分け前』『居酒屋』『壊滅』『愛の一ページ』における登場人物たちと、ナポレオン伝説のモニュメントといえるこの円柱との関わりに注目して、ナポレオン円柱に対する作中人物の多様な視線の意味を政治的、社会的な観点から検討し、その成果を学術雑誌に論文として発表した。そして平成29年10月29日に名古屋大学東山キャンパスで開催された日本フランス語フランス文学会2017年度秋季大会において、北海道大学准教授の竹内修一氏をコーディネーター、研究代表者の田中と研究分担者の福田をパネリストするワークショップ「パンテオンと作家たち」を実施した。このワークショップでは、第三共和政以降にパリを代表するモニュメントのひとつであるパンテオンで行われる国葬、つまりパンテオン葬を取り上げ、田中がヴィクトル・ユゴーの、福田がゾラの、竹内氏がアンドレ・マルローとアレクサンドル・デュマのパンテオン葬について報告した。これらのパンテオン葬の検討によって、フランスという国家と文学が取り結ぶ関係の変遷について明らかにした。その成果を踏まえたうえで、田中と福田はそれぞれ異なった視点からゾラのパンテオン葬を検討した論文を学術雑誌に発表した。
著者
本間 清一 頼澤 彩 村田 容常
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

コーヒーの試料として大量に入手でき、保存ができるインスタントコーヒーを選び、コーヒー亜鉛複合体を以下のとおり調製した。pH4.0,10mMのヘキサミン緩衝液(10mM KClを含む)にコーヒーを溶かし、終末濃度20mMになるようZnCl_2を加え、生じた沈殿を集めた。沈殿の1%アンモニア可溶性画分を(Sample AP)した。ApをAmerlite410とAmberlite IR120にかけ、水と1%アンモニアで溶出し、Zn含量の高い画分を塩酸で酸性にして生じた沈殿を遠心分離した。この沈殿物質をセルロースカラムにかけイソプロパノール-1%アンモニア水の系で展開し、混合比3:2で溶出される画分が最もZn-キレート能力の高い(-log kd=8.6×10^<-9>)画分(Ap-V)であった。の分子サイズは48kDで構成成分は30.4%のフェノール、糖とアミノ酸がそれぞれ3%と4%、ケルダール法による窒素含量が10%を越えた。リンが殆ど検出されなかったのでZn-キレート性成分の形成にメイラード反応とフェノール化合物の酸化分解や重合の関与を推定した。高分子のAp-V画分の構成成分を推定するために、アルカリ溶融分解を行い中性と酸性画分に主要な分解物が回収されてくることを確かめた。3D-HPLCとLC-MSによる解析の可能性を見いだした。キレート成分の生成する要因を調べるためコーヒー生豆の熱水抽出液乾燥粉からインスタントコーヒーと同様にキレート成分を精製した。Ap-V全量中の亜鉛含量は生豆よりインスタントコーヒーの方が多かったが、1g当りの亜鉛含量は生豆の方が多く、生豆は多くのZnをキレートすることが示唆された。インスタントコーヒーのAp-Vは、470nm吸光度が高い値を示し、生成に焙煎が関与している可能性が高い。生豆のAp-Vでは280nmの吸収も確認され、また生豆試料をトリプシン処理したもののキレート能を比べるとAp-V全量中の亜鉛含量が極端に減少したことから、生豆の亜鉛キレート性成分は約13,000Dと約10,300Dのタンパク質である可能性が示唆された。コーヒーを飲む時、乳脂肪やタンパク質の多いクリームを加えて飲むことが多い習慣をふまえ、熱いコーヒーにミルクを添加したサンプルからAp画分を調製したところ、コーヒーのみから調製したAp画分より亜鉛含量が低かった。そのため、乳成分はコーヒー成分と複合体をつくることにより、コーヒーのキレート作用を抑制することがあると考えられる。
著者
松阪 輝久
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-4, 1952-07

In his book "Varietes Abeliennes et Courbes Algebriques", A. Weil has proved that every Abelian Variety is generated by a finite number of Curves (cf.prop.30, § IX of the book). We shall show in this paper that every Abelian Variety is generated by one Curve. This will be one of basic tools for the investigation of Abelian Varieties. Using this, and applying Chow's result on Jacobian Varieties, we shall generalize his celebrated theorem to arbitrary Abelian Varieties in the forth-coming paper.
著者
斎藤 多佳子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

中高生の理系科目への興味喚起や理科志向の動機付けを実験・体験を通じて行う際に主題の理解を深める為、五感を介して認識するようなモデル実験系の構築を目指し本研究を遂行した。日本人にとって最も身近な樹木のひとつであるサクラの葉を材料として、サクラ葉成分のクマリン酸配糖体が糖分解酵素β-グルコシダーゼにより分解される過程で生じる香気成分(クマリン)の分析や、酵素反応での分子構造変換による分子構造と物性の変化を、クロマトグラフィーでの検出に加えて、蛍光性、匂いの変化として感知する系を検討する。1 構内のサクラ葉を6月、10月の2回採集し、水洗浄後-30℃で保存しサンプルとした。2 標品(クマリン酸配糖体(メリロトシド)、β-グルコシダーゼ、クマリン)を用いて、蛍光スペクトル、薄層クロマトグラフィー(TLC)を測定手段として酵素反応の経時変化、物性、等を検討し、反応条件を決定、生成物を同定した。結果、(1)クマリンの蛍光は325nm励起で、395-420nmの範囲に濃度、溶媒条件による蛍光極大を示す。β-グルコシダーゼによる糖分解反応は、37℃、0.1M酢酸ナトリウムー酢酸、pH5.6(pH3.2-11.0の緩衝液で検討)が至適条件である。(2)クマリン酸配糖体の酵素分解ではまずクマリニック酸が生成し、その後徐々に閉環してクマリンとなる。クマリニック酸は500nmに強い蛍光を示し、反応開始30秒で検出され、クマリンは、60分以降で検出されてくる。(3)TLC分画 : シリカゲルを担体として2種類の溶媒系(酢酸エチル/ヘキサン)、(エタノール/アンモニア/水)で展開すると、メリロトシドと、中間生成物、クマリンの分離同定ができる。(4)上記反応進行により、クマリン芳香を感知できる。本研究により、モデル実験系を構築する基礎条件が得られた。
著者
藤原 葉子 澤田 留美 脊山 洋右
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は市販の植物油脂の品種改良により、脂肪酸組成がオレイン酸を大量に含むようになった場合には、世界的に見ても理想的であると考えられる現在の日本人の脂肪酸の摂取バランスが変化する可能性があることから、多量のオレイン酸を摂取することによる栄養学的な影響と安全性を検討することを目的とした。14年度は、動物実験によるオレイン酸リッチ油の栄養学的な評価を行った。ハイオレイックひまわり油はオレイン酸を約80%とこれまでの植物油脂と比較して多量に含み、リノール酸は7.7%、リノレン酸は0.1%しか含んでいない。オレイン酸を多量に含むオレイン酸リッチ型の油脂を摂取しても、リノール酸によるコレステロール低下作用や、プロスタグランジン合成に関わるアラキドン酸合成量には大きな変化はないものと考えられた。15年度にはリポ蛋白プロファイルがラットよりもヒトに近いモルモットにハイオレイックタイプ油を投与して同様な実験を行った。オレイン酸が多くてもHDLコレステロールの増加はほとんど見られなかったが、抹消組織からコレステロールを引き抜き肝臓へ逆転送する働きを持つ、LCAT活性の増加傾向が認められたが、ラットと同様に大きな変化は認められなかった。また、成人女性14名に一日10gのハイオレイックひまわり油を4週間摂取させ、血中脂質とLDL抗酸化能を測定しオレイン酸リッチ油摂取による影響を検討した。試験前に比べて4週間のオレイン酸リッチタイプの油を摂取した後では、血中コレステロール、血中TGおよびHDLコレステロールはほとんど差が認められなかったが。血漿から調製したLDLの抗酸化能を共役ジエン形成までのラグタイムで比較したところ、ハイオレイックひまわり油摂取後には有意に抗酸化能が高かった。ハイオレイックひまわり油の摂取を止めて2週間後に再度測定したところ、LDL抗酸化能は元のレベルに戻った。オレイン酸を多く含む油の摂取によるHDLコレステロールの増加作用は、日本人では欧米ほどはっきりと見られなかったが、血中LDLの抗酸化能が上がることで、長期摂取を続けると抗動脈硬化作用を持つ可能性があると考えられた。今回の結果からは、必須脂肪酸としてのリノール酸やリノレン酸の必要量はわずかであるので、オレイン酸を多量に摂取しても大きな影響は認められなかったが、さらに長期的な効果やPUFAに特有な生理作用についてはさらに検討する必要がある。
著者
坂元 章 箕浦 康子 菅原 ますみ 鈴木 佳苗 内藤 まゆみ 小林 久美子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、テレビ番組の暴力描写、向社会的行為描写の内容分析、これらの描写の視聴が攻撃性、向社会性に及ぼす影響を検討する縦断調査を行い、テレビ番組の暴力描写に対する評価システムを提案することであった。平成15年度には、暴力の文脈的特徴を詳細に検討した米国テレビ暴力研究のコードブックを翻訳し、平成17年度までは身体的攻撃について、平成18年度には、言語的攻撃、間接的攻撃を加えて分析を行った。その結果、フィクション番組では、視聴者の暴力の学習、恐怖世界観、脱感作を高める要素は全般的に少なかったが、暴力行為後の被害・苦痛や罰の描写が少ない、多量の暴力が多い、現実性が高いなどの特徴が見られた。言語的攻撃、間接的攻撃の描写は多くはなかったが、身体的攻撃と共通する特徴が多く見られた。向社会的行為描写については、行為の成功描写は多かったが、報酬の描写は少なく、学習を促進する要素はあまり含まれていなかった。報道番組の暴力描写では、視聴者の恐怖世界観を高める要素である正当化されない暴力や被害結果の描写がある程度見られた。CMの暴力描写では、被害・苦痛描写が少ない、現実性が高いといった暴力の学習、恐怖世界観を促進する特徴が見られた。また、報道番組、CMの向社会的行為描写では、行為の成功や魅力的な行為者が多く描かれており、学習を促進する要素がある程度見られた。縦断調査では、平成16〜17年度の2回の調査への協力を得た首都圏、地方の小学校13校、中学校15校のデータを分析した。攻撃性への影響については、小学生では身体的手段による暴力や魅力的な行為者による暴力の描写が間接的攻撃性を高めること、中学生では間接的攻撃の描写が攻撃性全体を高めることなどが示された。最後に、以上の内容分析、縦断調査の結果に基づいて、暴力描写の出現頻度、影響の強さを組み合わせた暴力描写の評価システムを提案した。
著者
河村 哲也 林 農 佐藤 浩史
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では砂丘移動現象の解明と植生利用による制御を目的として数値シミュレーションによる研究を行い以下のような成果を得た。はじめに以下に示すような3段階の計算法を提案し実際にプログラム開発を行った。(1)砂丘など複雑な地形上を吹く風による風速場の計算,(2)風速場による砂面上の表面摩擦と砂の輸送量の推定,(3)砂の輸送による砂面形状の変化の計算そして、断面が二等辺三角形の砂丘に稜線に垂直に風があたっている場合を想定し、そのひとつの断面内での2次元計算を上述の手法で計算した。この研究により砂丘の移動が計算できることが確かめられ、また砂丘の風下側の傾斜が安息角になることがわかった。次に、二等辺三角形の底辺の長さを共通にして、高さをいろいろ変化させて計算を行い、砂丘の高さが移動速度に及ぼす影響を調べた。そして高さが低いほど移動速度が大きいことが明らかになった。さらに植生がある場合の影響も調べた。計算結果から、植生がある場合には、ない場合に比べ砂丘の移動速度が小さくなることも確かめられた。また植生の広さや配置場所を変化させその影響も調べた。また乱流の効果を入れるため、もっとも単純なモデルとして混合距離モデルを用いた計算も行った。以上の結果、基本的には計算法の妥当性が確認されたため、計算法を3次元に拡張した。そして、実際の砂丘地帯に多くみられるバルハン砂丘の成因をシミュレーションにより調べた。また砂の輸送と構造物との相互作用の計算も行った。具体的には、砂面上に鉛直または傾斜して立てられた円柱まわりの流れの計算を砂の移動を考慮して行った。この研究と平行して、現実の砂丘地形に対応させるため、鳥取砂丘まわりの流れのシミュレーションを植生を考慮して行い、実際の観測結果と比較して定性的によい結果を得た。
著者
寺沢 なお子 村田 容常 本間 清一
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

土壌中よりメラノイジン脱色能を有する放線菌Streptomyces werraensis TT 14を、また開封したインスタントコーヒー中よりコーヒーを脱色する糸状菌Paecilomyces canadensis NC-1を得た。これらの微生物と、高いメラノイジン脱色活性を有する担子菌Coriolus versicolor IFO 30340の3株を用い、褐色色素の脱色率を調べた。その結果、モデル褐色色素においてはS.werraensis TT 14はXylとGly、またGlcとLysより調整したメラノイジンをよく脱色した。またフェノールの重合色素は脱色せず、逆に着色した。C.versicolor IFO 30340はすべてのモデルメラノイジンをよく脱色したが、フェノール系の色素は脱色せず、着色した。P.canadensis NC-1はXylとGly、GlcとTrpから調整したメラノイジンを50%以上脱色し、またフェノール系の色素も脱色した。各種食品の褐色色素の脱色率をみると、S.werraensis TT 14は市販のカラメルA、コーラ、ココアを、C.versicolor IFO 30340は糖蜜、醤油、味噌、カラメルA、黒ビール、麦茶、ウスターソースA,B,C、ココア、チョコレートなど、アミノカルボニル反応が主体と考えられる食品を50%以上脱色した。一方P.canadensis NC-1は、インスタントコーヒー、紅茶、ウスターソースC、ココア、チョコレートなど、フェノールの重合反応が関わっていると考えられる食品も50%以上脱色した。これはモデル褐色色素の脱色の結果とよく一致している。このことより、カラメルAはGlyやLysが着色促進剤として加えられ、Xyl-Gly、Glc-Lysメラノイジンのような反応が起こっているのではないか、またコーラにはカラメルAのようなカラメルが添加されているのではないか、ウスターソースCはウスターソースAやBよりもフェノールの関与が強そうであるなど、これらの微生物を用いることにより、食品の褐色色素の識別が可能であることが示唆された。
著者
池田 寛子 扇澤 美千子 長谷部 ヤエ 會川 義寛
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
生活工学研究
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.226-231, 2004
著者
浜田 史子 田中 辰明
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
生活工学研究
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.260-261, 2001
著者
寺井 英子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.34, pp.27-46, 2005

本実践は,生徒の選書に関する知識や技能の幅を広げ,読書をめぐる豊かなコミュニケーション体験を積ませることにより,生徒をより一層読書好きにさせることを目指して取り組んだものである。それによって,文学作品の魅力を感じ取ったり分析したりしながら,作品まるごとを深く読み味わう力を伸ばすことも考えた。そこで,本単元では,三省堂神田本店,リブロ池袋店,小石川図書館の協力を得て,書店や図書館のニーズに応じて文庫本のキャッチコピーやボディコピーを作り,競合的なプレゼンテーションを行うという場を設定することによって,さまざまな選書の方法や,読書,特に文学読書をめぐるコミュニケーションを学ばせることができるよう工夫した。特にキャッチコピーとボディコピーを入れたポップを作る活動を通して,キャッチコピーで文学すること,つまり,それらを使っていかに文学作品を読み深め,読み味わい,文学的な表現を生み出し楽しむかを追求した。プレゼンテーション当日は,書店や図書館の方に依頼者(判定者)として参加していただいた。プレゼンテーション後の質疑応答では,キャッチコピーやボディコピーをめぐって,豊かな文学や読書に関するコミュニケーションが営まれた。プレゼンテーション終了後,キャッチコピー・ボディコピーは,実際にポップに仕上げて書店や図書館に掲示していただいた。生徒は学習過程全体を通して非常に意欲的に取り組み,学習後の振り返りでは,選書の幅が広がり,新しい読書の楽しみを発見したという感想が多数認められた。