著者
村越 貴代美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学中国文学会報 (ISSN:02866889)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.43-58, 1996-04
著者
刑部 育子 戸田 真志 植村 朋弘
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、実践者(教師や保育者)と研究者が共に日常の教育実践や保育活動記録を気軽に共有でき、実践を協働でデザインすることを支援するインターフェイスを構築することを目的としている。インターフェイス・デザインの分野ではデザイナがユーザとともにモノとのかかわりを含めた活動文脈を有し、経験する「参加共有型デザイン(participatory design)」が行われ始めている。この手法を保育・教育実践に応用することで、実践者とともに保育(教育)実践および記録をその日のうちに共有し、新たな実践を共に日常的に創造することを支援するインターフェイスの開発を目指した。本年度は研究計画3年間の最終年であり、観察ツールを実践において使用し保育デザインの循環を構築した。本年の成果の特記事項として、昨年度の試作版ツール開発に関する受賞に続き、拡張版ツール開発における成果が国際教育工学系会議ED-MEDIA2009で発表した結果、657の採択論文のうちの18の受賞論文の一つとして選ばれ、二年連続で受賞したことである(Gyobu, Toda, Uemura, & kudo, 2009)。このツールを実際の保育実践の場で年間の園内研究会で使用した実績も大きな成果であった。実際に使用した結果として、このツールによる、その日のうちに即時の重要な活動のシーンの共有が園内研究会における話し合いを焦点化、活性化させる効果がみられ、複数の人々との議論における、言葉のみの議論にありがちな言葉によるすれちがい、イメージのずれを解消し、建設的な「場面」に基づく事実による保育実践の話し合いが可能となった。
著者
竹内 順子 柴坂 寿子 佐治 由美子 菊地 知子 塩崎 美穂 入江 礼子 小玉 亮子 私市 和子 中澤 智子 石塚 美穂子 肥後 雅代 今井 由美子 片桐 孝子 高坂 悦子 浜崎 由紀子 藤田 まどか 阿部 厚子 江波 諄子 杉本 裕子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

乳幼児0~2歳が過ごす学内保育所(お茶の水女子大学附属「いずみナーサリー(以下、ナーサリー)」)の教育的質の向上と、大学全体のコミュニティとしての教育環境「大学の中で赤ちゃんが笑う」構想を実現するために、下の3つの視点から研究を総合的にすすめた。(1)週1日から週5日の通所日数自由選択や一時保育、また、1日の保育時間もフレキシブルに決められる多元的保育体制において、保育の質を保証するための保育方法、カリキュラム(学び/育ちの履歴)開発(2)環境的教材、芸術的表現教材の開発(3)大学の特性を生かし多世代・他分野との協働を生かしたコミュニティ的実践。平成24年3月に最終報告書「大学の中で赤ちゃんが笑うII」を発行した。
著者
鈴木 禎宏
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究はイギリスの芸術家バーナード・リーチ(1887-1979)の活動と、柳宗悦(1889-1961)が主導した日本の民藝運動を題材として、対抗産業革命counter-Industrial Revolutionという観点から20世紀の日英の文化史を振り返った。リーチと柳、及びその周辺の人々は、芸術と生活という観点から、産業革命がもたらす負の要素を批判・是正することを工芸分野において試み、ある程度の成果を上げた。本研究は、リーチ、柳らが携わった対抗産業革命の理念とその実践を解明し、対抗産業革命という視点が20世紀の文化史研究に有効であることを確かめた。
著者
大場 清 横川 光司 橋本 義武
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

我々は,複素平面上のある種の図形である稲妻対というものを考え,その稲妻対からdipoleを持つリーマン面を構成する方法を利用して,リーマン面のモジュライ空間の位相的な性質を明らかにしていくことを目的として研究を進めた.稲妻対は,深度と呼ばれる非負整数と複素数のあるある条件を満たす列と対称群の対という組み合わせ的データにより与えられるものであり,そのデータからリーマン面の種数が如何に決まるかを決定した.また,リーマン面上の2次微分に關するStrebelの研究を通して,我々の研究がdipoleのみの状況から一般の第2種アーベル微分を持つリーマン面へと拡張できることがわかった.リーマン面は標数0の代数曲線であるが,正標数の代数曲線に関しても,前丹後構造という概念を導入して,小平の消滅定理が成立しない代数曲面をモジュライ空間の中で正の次元をもつほど多く構成することができた.数理物理的側面からは,最も基本的なリーマン面である2次元球面に関連して,5次元Ads Kerrブラックホールの2つの地平線を近づけrescaleして極限をとることにより,2次元球面上の3次元球面束上に可算無限個の新しいEinstein計量を構成することに成功した.また,Killingベクトル場のツイストにより,Gauntlettたちにより構成されたコンパクトな佐々木-Einstein多様体を再構成することも行った.一方,稲妻対のある種の高次元化として,6次元球面にsmoothに埋め込まれた3次元球面たちを考えた.これはHaefliger結び目と呼ばれる高次元結び目であり,我々は(6,3)-型のHaefliger結び目の結び目解消数を定義して,そのすべてを決定した.
著者
畑江 敬子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

魚類の骨は一般に廃棄されているが、カルシウムを多く含むことからこれを食品として利用できれば、栄養的に有意義である。東北・北海道の郷土料理の一つである「氷頭(ひず)なます」は、サケの鼻軟骨あるいは頭部を食酢に数時間から数日間浸漬し薄切りにして、ダイコン、ニンジンの線切りと合わせた酢の物である。酢に浸漬して軟化した軟骨の独得の食感を賞味する。そこで魚骨の有効利用という観点から、酢酸浸漬によるサケ鼻軟骨の軟化の機構を知ることを目的とした。そこで先ず、酢酸浸漬中のサケ鼻軟骨のテクスチャ-および嗜好性の変化を物性測定と官能検査により検討し、あわせて化学成分の変化を測定した。船上凍結後ー40℃で2ー3ケ月貯蔵したアラスカ産シロザケ頭部を4℃16時間解凍後、鼻軟骨の部分のみ実験に用いた。これを2mm厚さの薄切りにし4%酢酸水溶液に168時間まで浸漬し経時的に測定を行い、以下の結果を得た。1.サケ鼻軟骨は酢酸処理により生臭いにおいがなくなり、テクスチャ-は軟らかく、もろくなり、嗜好性が高まることが官能検査によって確められた。酢酸浸漬時間は24時間程度が適当とされた。2.テクスチュロメ-タ-による硬さ、圧縮に要するエネルギ-および保水性の測定によっても鼻軟骨の軟化が示され、特に浸漬初期の軟化が著しかった。3.軟骨のpHは比較的短時間のうちに浸漬液のpHに近づき、168時間後には軟骨のpHは浸漬液のpH(pH3.10)に等しくなった。4.サケ鼻軟骨成分は浸漬により、水分、粗タンパク質量はほとんど変化しなかったが、糖質と灰分量の減少が著しかった。5.糖質と灰分の主成分であるムコ多糖とカルシウムは著しく減少し、168時間後には未処理の1/2となった。
著者
真島 秀行
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

1)多次元虹の発生と撮影.昨年度から行っている滑らかな凹凸のあるガラスに懐中電灯の光をピンホールで絞って照射し多次元虹を発生させる実験を続けた.デジタル一眼レフを購入し,それによるバルブ撮影を行った.撮影時間は通常の一眼レフより短縮でき,画質をすぐ確認できたので連続的な変化を捉えるのに役立った.初等カタストロフ理論における,双曲型の臍,梢円型の臍,放物型の臍の特異点集合がモノクロでなく分光し虹としてかつ過剰虹を伴って発生させ撮影でき,数理科学的解析するための実験資料を得ることができた.2)過剰虹の数理解析的研究.カスプ虹などの多次元虹の発生を表す関数は,初等カタストロフのポテンシャル関数を指数関数の肩に乗せ積分したいわゆる振動積分として与えられる.この多変数関数としての漸近展開は上の実験の結果を説明するような,ある方向では指数減少,ある方向では正弦関数的に振動するものとして計算できるはずである.カスプの場合はパーシー積分であり,また,一般エアリー関数の変数を適当に制限してやることによりにより,エアリー・ハーディーの関数に還元されることが以前の研究で分かっており,それを手掛かりにして行っているがまた完全ではない.3)視覚教材を作成.自然界や人口虹スクリーン上の過剰虹,カスプ虹などの多次元虹を撮影したものと数理解析学的理論を解説した教材を印刷物および計算機上にハイパーテキストとして完成させることも一つの目標としてきたが,この研究で得られた資料等を参考に大学院生が「虹を題材とした計算機支援教材の研究」を行い,ハイパーテキストによる教材例が作成された.
著者
鈴木 禎宏
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究計画に従い、資料の蒐集・整理を継続しつつ、研究発表活動を行った。当初の計画では、イギリスのクラフツ・スタディ・センターでの調査を予定していたが、同センターがウェブ上での資料公開を開始したため、渡英の緊要性が薄れた。そのため、代わりに日本国内での調査に重点を移し、四国地方(砥部、伊予西条など)や北陸地方(高山、富山、金沢)、信州(松本)などで調査を行った。特に倉敷市の大原美術館においては、同館の全面的な協力のもと、充実した作品調査を行うことができた。今年度は研究の最終年度にあだるが、これまでの研究を総括し、社会に還元する好機に恵まれた。それは、松下電工汐留ミュージアムの「生誕120年バーナード・リーチ生活をつくる眼と手」展(平成19年9月1日-11月25日)である。研究代表者は「企画協力」として、この展覧会の構成や作品解説に関わった。これは、前年度までに行った調査に基づく最新の研究成果を展示に生かす機会となった。さらに、この展覧会を契機に、同ミュージアムでの講演や、『エクラ』『カーサブルータス』といった一般商業誌への取材協力を通して、研究を社会に発信することができた。以上の他にも、12月6日には総合地球環境学研究所の第6回人と自然:環境思想セミナーにて、「民芸運動の自然観と生活のかたち:バーナード・リーチを手がかりに」を発表し、「自然観」という新たな視点から、リーチ論を試みた。蛇足ながら、平成19年6月に、拙著『バーナード・リーチの生涯と芸術』(ミネルヴァ書房)が第11回日本比較文学会賞を受賞した。
著者
内田 忠賢
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は主として近世史料を用いて、都市における怪異空間を復原・記述することを目標とした。そして本年度はさしあたり、江戸で流通していた説話的史料を分析することにより、新しい知見を得た。つまり科研費をいただいたお陰で、次の成果があがった。(1)フィクション(怪異小説)で描かれる怪異空間には、読書(聞き手)にリアリティを感じさせる周到な状況描写がなされ、近世の怪異空間の論理が読み取れた。(2)フィクションの怪異空間は、悪/良、魔/神という両面性を常に帯びており、日本文化に共通する空間的特徴をもつ。(3)ノンフィクション(世間話)の怪異空間とフィクションのそれを比べ、その共通点と相違点を見出だせた。これは当時の空間認識を知る手掛かりとなる。以上の知見は管見の限り、地理学はもちろん、このような研究対象を扱ってきた民俗学・歴史学などでも指摘されておらず、オリジナルな成果であろう。一方、このように研究を進めるプロセスで、いくつかの課題が残された。(1)地方都市(高知)の怪異空間と比較することを目指したが、在地の日記類を分析する途中である。(2)ノンフクションの空間のハード面での検証が残る。(3)空間に対する感覚のより詳細な検討が必要。(4)異なる時代・地域への目配りが欠ける。以上の仮題は次年度以降、解明していきたい。なお研究成果は学術論文以外にも、公開講座・放送ほか一般にも還元するよう心掛けた。
著者
金子 晃
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は偏微分方程式とトモグラフィに関連した数学の問題の理論的研究と計算機を援用した実践研究を主題とした継続的なものであり,今期の科学研究費受領期間中においては,主として以下のような研究を行い,成果を得た.(1)冪型の非線型項を持つ非線型熱方程式に対する藤田型の爆発の臨界指数は,錐の開きを識別できたが,放物型や柱状などのさらに狭い領域に対しては,有界領域との区別さえできない.これに対し,対数型の非線型項を導入すると,これらが区別できることを期待して,その一般論を構築した.特に,log uと1/log uを補間した函数logg uのp冪とuの積の形の非線型項に対して,任意の領域においてpに対する爆発の臨界指数が確定することを示した.具体的な領域に対するこの新しい臨界指数の決定は将来の課題として残された.(2)平面2値画像の2方向投影データからの再構成は,ほとんどの場合に一意性が無く,得られる解の関係や,よい条件を持つ解の探索はあまり明らかにされていない.本研究では,スイッチング演算により解の集合に有向グラフの構造を与え,その諸性質を調べることで,この問題への新たな接近法を開発した.こうして導入されたスイッチンググラフについて,さまざまな連結性,特にハミルトン性など,多くの興味深い結果が得られた.また,多くの未解決予想も得られ,新しい研究分野を拓いた.(3)代数幾何符号を画像に組み込む方法を発展させ,自動修復画像やマスク,電子透かしへの応用等を与えた.(4)逆畳み込みはトモグラフィの反転公式と同様,代表的な非適切問題である.ある種の正則化計算を導入して逆畳み込みを計算することにより,焦点のずれた実写写真の焦点補正を行い,この手法の実用性を確認した.本研究は,適切な逆畳み込みのパラメータを自動検出するところまで進めてから発表予定である.
著者
森下 はるみ 黒田 善雄 田畑 泉
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

【目的】本研究の目的は(1)勤労中高年女性の食生活を評価すること,(2)近年、社会問題となりつつある骨粗鬆症との関連で、本対象者の腰椎および大腿骨頸部の骨密度の概要を明らかにすること,(3)身体運動トレーニング(スイミング及び水中運動)が勤労中年女性の持久性体力及び血中脂質に与える影響を明らかにすることであった。【結果】各年代とも、エネルギー摂取量はそれぞれの年代の所要量とほぼ同水準であった。栄養素は、それぞれの年代の女性の所要量を上回る摂取量であった。たんぱく質は所要量より30%多く、脂質も所要量より約10%多めであった。カルシウムはの摂取量は所要量より16%多かった。次にアルコール摂取量はビールをコップ1杯程度であったため、アルコールのエネルギー比率はわずか2%であった。腰椎及び大腿骨頸部の骨密度は年齢とともに低下した。骨密度には個人差が大きかったが、平均的には一般人女性よりも、僅かに高い価であった。水泳トレーニングへの平均出席回数が週当たり1.5回以上の群では、持久性体力の指標である乳酸性作業閾値は24.2±2.2ml/kg/minから26.4±2.4ml/kg/minへ1.6±2.8ml/kg/min有意に増加した(p<0.05)。一方、平均出席回数が週当たり1回以上の群では乳酸性作業閾値とも有意な変化は見られなかった。血中脂質濃度の変化をみると、いずれのグループともトレーニング前後で血中トリグリセリド濃度に変化はみられなかった。また、総コレステロール、LDL-コレステロール濃度はいずれのグループとも上昇する傾向が認められたが、とくに水泳トレーニングにほとんど出席しなかったCグループの被検者の上昇が顕著であった。しかし、いずれのグループもHDL-コレステロール濃度には大きな変化がみられなかった。【まとめ】本研究の結果より、週1.5回以上身体トレーニングを行うと、持久性体力が向上し、さらに血中脂質プロフィールが改善されることが明らかになった。
著者
内田 澪子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では近世初頭前後の説話・縁起関係資料の禁裏伝来状況を調査し、以下等の結論を得た。・近世初頭の禁裏には畿内を中心とした社寺の、ある程度数の縁起が伝来した。但しその頃に伝えられていたものと現在に伝わるものとは、種類が異なる。万治四年(1661)焼亡後の文庫再建方針に起因すると思われた。・説話類も当該期には『古事談』『撰集抄』など、若干数が伝えられていたことが確認できる。但し12の例外を除いて現在には伝わらない。・当該期に禁裏伝来が確認できる『十一面観音縁起』『古事談』『十訓抄』等の個別作品研究を進めた。
著者
耳塚 寛明 牧野 カツコ 酒井 朗 小玉 重夫 冨士原 紀絵 内藤 俊史 堀 有喜衣
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

青少年の学力および進路形成過程を総合的に把握するため、東北地方1都市(2004年調査、以下Cエリア)と、比較対象地域である関東地方1都市(2003年調査、以下Aエリア)における生徒、保護者、担任調査の統合データを用い細分析を行った。学力、キャリア展望、学校適応等と家庭的背景、ジェンダー、学校的背景、地域的背景などとの関連を明らかにした。また、学級による学力差に注目した分析を行った。主な知見は以下の通りである。Cエリア小学校における学力の学級差について基礎的な分析を行ったところ、小学校6年生に学力の学級差が大きいこと、学力が高く学級による差異が小さいグット・プラクティスの学校が存在することが明らかになった。このような学級差に関して、都市部、稲作地域、兼業畑作地域といった地域的な要因、学校内の生徒集団、生徒集団の引継といった複数の要因が関連している可能性があり、今後の分析課題とした。高校生の職業イメージとジェンダーの関連について、親の仕事に対する捉え方に注目し分析を行ったところ、これまでの分析Aエリアに比べ業績主義的な特徴を持つことが明らかになってきたCエリアにおいても、パート、主婦・家事という仕事に対するイメージや、距離感に男女で違いがあることが明らかになった。高校生の学校適応について、小さい頃本を読んでもらったことがある、博物館に連れて行ってもらった、食事を大切にしている、近所づきあいを大切にしているといった家族関係、家庭環境と関連していることが明らかになった。一方、両親の学歴や勉強部屋の有無といった物理的な教育環境は影響していなかった。生徒、担任、保護者調査の統合データを用いることで、職業や所得、教育環境、家族関係といったより複雑な家庭的背景について分析、教育実践をも視野に入れた学力形成の要因分析を行うことが可能となった。(766字)
著者
笹本 明子 (山崎 明子)
出版者
お茶の水女子大学
巻号頁・発行日
2006

戦前までの中等教育における美術教育は基本的に男女別に行なわれ、その目的・方法・内容等に渡って男女の美術教育は差異が設けられていた。このことは男女別学教育による必然的結果であると言える。その中で、女子教育では美術教育は「美術」という教科だけでなく包括的な女性の表現活動を想定した教科の連関が図られていたと考えられる。戦後の教科編成において「家庭科」が教科として成立し、「美術」は基本的に男女共学を想定した教科となり、手芸的表現活動は女子の美術から家庭科へと移行する。以上の問題について、本研究は美術と家庭科という教科の枠組みを通して、「手芸」という女性の表現活動をめぐる政治学を明らかにすることによって、近現代の教育システムに内在するジェンダー規範を顕在化することを目指すものである。今年度の研究活動の中心は、戦前までの女子の美術教育の枠組みを明確にすることにあり、二つの点で大きな成果があがった。第一に、学校教育と並行して行われた家庭における美術教育として、女子のための洋画塾を例にとりこれまでの調査結果をまとめ、論文として刊行した。第二に、学校教育における図画教育で中心的教材となる教科書、特に戦前まで存在していた女子用図画教科書の調査を行い、その成果を学会にて報告の上、論文として刊行した。これらの調査研究は、これまで学会内においてもほとんど論じられることのなかった女子の美術教育に関する基礎的な研究としての意義を持ち、男女両方に関する歴史史料の蓄積の必要性と先行研究におけるジェンダーの視点の欠如を指摘した点において美術教育史・美術史両領域において重要であると考える。
著者
久保田 紀久枝
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食品の風味を増強し嗜好性を高める効果を持つ匂い物質を探索した。風味増強のために使われる香辛料のにおい成分やかつお節とコンブを使う合わせだしにおけるコンブのにおい成分に着目した。コブミカン葉を加えたチキンスープではコブミカンの加熱生成香気成分が風味増強に大きく関与することが示され、またバジルの香りには、トマトスープの風味に影響する成分が存在することを確認した。合わせだしでは、味成分のうまみ相乗効果だけでなくコンブの香りも風味増強に関与することが分かった。
著者
新井 由紀夫
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、中世後期イングランド社会の具体的諸相を、ジェントリ(十地保有階層)の視点から明らかにするという全体構想のもと、ジェントリの関係する史資料の全貌を体系的に明らかにした。比較的まとまった史料群でありながら、公文書とは違うため英国史料データ化プロジェクトには載らないような中世後期ジェントリの家系文書史料であるイングランド北部のヨークシァ、リーズ市文書館所蔵のプランプトン家文書を、まるごとデジタル画像ファイル化しその史料類型と内容のあらましを整理分析した。
著者
冨永 典子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

体内の内分泌撹乱化学物質(ビスフェノールAや4-ノニルフェノール、フタル酸エステル類)の大半は食品からの摂取によると言われているが、日常食品中の濃度については現在までのところ測定例が少ない。そこで近年ますます購買層が拡大し、容器ごと温めることの多いプラスチック容器入りの総菜に着目し、購入時および電子レンジ加熱後の濃度を測定した。1)フタル酸エステル類:抽出・精製は日本環境科学会の定めた方法を一部改変して行った。同定はGCMS、測定は逆相HPLCで行った。6種類のフタル酸化合物について測定したが、実際の試料中からは常にフタル酸ジプチル(DBP)とフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)のみが検出され、現在の我が国での生産量を反映していた。含有量は加熱の有無によってほとんど変わらないか、加熱後の値の方が低い場合が多かった。これはフタル酸化合物の揮発性が高いためと考えられた。密閉度を上げて食品をラップで包み加熱すると、一旦揮発した物質がまた蒸気の凝縮とともに戻る傾向が見られた。2)ビスフェノールA : Tsuda, T.et al., J.Chromatogr.B, 723, 273(1999)の方法で抽出・精製後、同定・測定ともにGCMSで行った。食用油脂を使用した総菜と使用しないものを比較すると、明らかに油脂を用いて調理したものの方が高濃度であった。したがって、この物質が油脂および脂肪性食品に移行することが示唆された。加熱により含有量の増加傾向が見られたが、加熱による変動よりも加熱前総菜別の差の方が大きいことから、低温〜常温条件下でも容器から食品へ移行が起こると思われた。3)4-ノニルフェノール:ビスフェノールAと同時に抽出、精製段階で分離しGCMSで測定したが、夾雑物質が取りきれずピークの同定に至らなかった。抽出効率や精製度を高めるため別法での調製を試みたが、著しい結果は得られなかった。
著者
大塚 譲 上田 悦子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ヒト肝癌細胞Hep-G2あるいはヒト正常細胞HUCF2などを用いて、食品抽出物が遺伝子発現にどのような影響をもたらすのかを検討するため、DNAマイクロアレイにて網羅的な遺伝子発現を解析し、食品の機能性を明らかにすることにした。さらに、パスウェイ解析やリアルタイム-PCRにより詳細な遺伝子発現への影響を検討した。