著者
内田 澪子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

鎌倉時代説話集『十訓抄』の作品研究を深めるための基礎研究として、現存する写本・版本の調査および本文研究、明治期以降に於ける享受の様相について調査・研究を行った。片仮名・平仮名写本および版本については、可能な限り原本調査を行い、これを一覧する基礎資料を作成するとともに、それぞれの関係について考察を行った。更にその分析の最初として『十訓抄』序文の構造や編者の編纂意識を分析する論考を纏め、成立契機として京都六波羅探題府の設置を注視する口頭発表を行った。
著者
最上 善広
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

運動活性と酸素消費の同時測定を応用し、単細胞生物繊毛虫での「基礎代謝」を特定し、単細胞生物での、アロメトリー理論の生物界全般への普遍性の検証を行った。ゾウリムシに対して,コンピューター・トモグラフィーによる細胞重量の推定方法を適用することによって,細胞咽頭による餌の取り込みに依存するアイソメトリー関係と,細胞表面からの酸素の流入に依存するアロメトリー関係のふたつの基礎理論が導入された。測定精度を向上し,より精密な理論予測の検証を行うことで、アロメトリー理論の普遍性が検証される方向性が確立された。
著者
近藤 和雄 飯田 薫子 谷 真理子 岸本 良美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

健常成人を対象に、高脂質食、高糖質食を摂取させた試験において、血清脂質、血糖値の変動とともに、一過性の血管内皮機能の低下や、高感度CRP等の炎症指標の上昇が認められた。果実由来のポリフェノールを同時摂取させた場合、いくつかの指標において改善が認められた。培養細胞を用いて、脂肪酸やグルコース、LPS刺激下でポリフェノールを作用させた場合、炎症性サイトカイン等の発現が抑制され、NF-κBやPKC経路の関与が示唆された。本研究より、食後の血糖や血清脂質の増加により惹起される炎症に関して、食品に含まれるポリフェノールが予防的に働く可能性が示された。
著者
大木 直子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

調査1年目として主に、選挙区定数ごとの女性の政治参加の実態を調査し、定数の増減と女性の立候補、当選の状況を考察した。また、調査2年目として主に、女性候補者リクルートメントに関する聞き取り調査を実施した。それらの調査の結果、①定数が大きければ大きいほど、女性の当選率は上昇傾向にあること、②選挙区定数が5以上の場合、全候補者に占める女性割合はほとんど変化がないこと、③政令指定都市と東京23区ではその他の自治体と比べて全候補者に占める女性割合が高いものの、当選率はより低いこと、④都道府県議選への立候補には所属政党の有無や選挙区内の候補者選考過程におけるジェンダー・バイアスが影響することを確認した。
著者
奥村 剛
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ソフトマターの先駆的研究でノーベル物理学賞を受賞した故de Gennes教授は、枝葉末節に目をつぶる独特の手法により、様々なテーマの研究を行い、シンプルな物理的本質を鮮やかにえぐりだした。そして、この研究手法を絵画における印象派主義にたとえ、物理学における印象派の精神を提唱した。本研究は、この精神に基づき、2次元バブルなどの濡れ・表面張力現象と、ソフトフォーム固体(クッション材)などの構造を持つ物質の破壊・強度、さらに、粉粒体について研究し、周辺異分野・化学工業・製品開発現場にも成果を還元され得るシンプルで直感的な理解を示した。その成果の一部は新聞・子供向け雑誌を通して一般社会にも還元された。
著者
山川 明子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.135-143, 2005

St. Augustine says in his early work "De Ordine" that liberal arts serve as the ladder of philosophical dialectic. By philosophical dialectic, man can enter the order of universe. This view of St. Augustine can be traced back to Plato. In "Republic", Book 6〜7, Plato explains how to educate a man to be a philosopher by simile of Line and Cave. According to the simile, philosophical dialectic is the final step of education, and liberal arts are preparatory training for philosophy, because they are systematic and have logical coherence like the world of ideas, reached only by philosophical dialectic. The world of idea's system isn't based on the visible world, so it is almost impossible to learn philosophical dialect without having learned liberal arts. Liberal arts help to appreciate the order of the universe and to reach the ultimate wisdom. St. Augustine doesn't state definitely in his work, but we can read and understand his view of liberal arts by comparing with Plato.
著者
赤松 利恵
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,行動科学の観点を取入れた子どもの食育の確立と普及を目指し,発達段階に応じた子どもの食行動の検討と食育の教育内容および教材の開発を目的に研究を進めてきた。特に,本研究の主目的である行動科学を取り入れた食育プログラムについては,幼児を対象とした偏食の改善プログラムと小学生を対象とした給食の食べ残しに関するプログラムを教材と共に開発し,研修会等を通じ,教材およびプログラムの普及啓発も行った。
著者
熊谷 圭知 石塚 道子 大城 直樹 福田 珠己 森本 泉 森 正人 寄藤 晶子 倉光 ミナ子 関村 オリエ
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、欧米中心に展開してきたジェンダー地理学を再構築し、日本からの発信とグローバルなネットワーク構築をめざした。具体的には、1)2013年8月の京都国際地理学会において、「ジェンダーと地理学」研究委員会と共同し、プレ会議(奈良)を開催。2)海外の主導的なフェミニスト地理学者(2012年年1月にDivya Tolia-Kelly氏、2013年3月にDoreen Massey氏)を招聘。学会での議論の場を創出した。研究成果は、2014年,英文報告書(Building Global Networks through Local Sensitivities )に刊行し、内外に発信した。
著者
冨永 典子 島田 淳子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

仙草は台湾に自生するシソ科の一年生草本で、乾燥品を加熱抽出した液にデンプンを加えて冷却すると独特の風味とテクスチャ-を持つゼリ-となる。台湾では夏期のデザ-トとしてシロップをかけて食され、夏バテ、睡眠不足や腎臓疾患に有効であると民間で云われている。しかし、その調製法は口伝えによっており、調製条件とゲル化特性との関連は明確にはとらえられていない。そこで、ゲル化の条件を検討し、ゼリ-の粘弾性的特徴を明かにすることを目的とした。仙草は乾燥品を台湾から直接入手し、20℃と60%RHで貯蔵し、ゲル化能力がほとんどみられなかった茎を取り除き、一般成分(水分,粗蛋白質粗脂肪、粗灰分,炭水化物)を測定した。葉1,5,10%,K_2CO_30.1,0.3,0.5,0.7%、抽出時間3,6,9時間の条件で加熱 溶出固形分量を経時的に求め検討し、また葉1.5%、K_2CO_30.1,0.5%、3時間抽出液に1.5%サツマイモデンプン,トウモロコシデンプン,バレイショデンプンを添加し、4℃24時間放置後のゲルの状態を観察した。ゼリ-の物性(離水量,クリ-プ測定、みかけの弾性率)を測定、組織構造を走査型電子顕微鏡により観察、以下の結果を得た。(1)一般成分は水分7.9%,粗蛋白質15.7%,粗脂肪1.1%,粗灰分10.0%炭水化物65.3%であった。(2)仙草抽出物がゲル化するには、0.3%以上の抽出固形分と1%以上のデンプンが必要であり、抽出固形分が0.7%以上になると1%デンプンで凝固するためにはpHを9.0以上にする必要があった。(3)仙草抽出物のゼリ-はフック体歪が大きく、ニュ-トン粘性が小さいという特徴を有した。(4)仙草抽出物のゼリ-は網状構造をしており、抽出固形分濃度、デンプン濃度を高めると、骨格が太くなると同時に網状構造が密であった。
著者
平野 恵子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.203-212, 2005

This paper poses a problem of Javanese "traditional" gender ideology, ibuism in Indonesia. Under Suharto era (1966-1998), the state mobilizes social organizations for the economic development under the slogan of 'stability' and 'development,' which were in turn used to legitimize the regime. Two themes have drawn scholarly attention to analyze the New Order Regime: "bureaucracy" and "family". In the Family part, women and men played a role as "Ibu (mother)" and "Bapak (father)". Ibu played important role within the theme of "Family" state. Under this era, all women were seemed to be along with Ibuism in which they were assumed as housewife. However what does it mean "traditional" Javanese pyiyayi (aristocracy) norm? Then I examine the process of dominant discourse about the 1937 debate on Monogamy toward maternal and companionate women within colonial Indonesia in 1930s. The article demonstrates that in response to ongoing processes of modernization or Westernization, Javanese gender perceptions were voiced in an Indonesian idiom of a moral character. By focusing discourse about Marriage Law (1974) and the Draft of Marriage Law (1937), this gender idiom was infused with the idea of harmony: harmony between Indonesian men and women and Islam within colonial context toward new political goal.
著者
真島 秀行
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

西田明則は江戸時代後期、若い頃に関流の数学の勉強をし、明治時代に国防のために尽くし、その和算蔵書がお茶の水女子大学にある。それらの本、関孝和の伝記と業績の研究を行った。関孝和は江戸初期の日本の数学者で、世界で初めて所謂「終結式と行列式」を研究したことで知られている。関の死後300周年の機会に、筆者は関家、特に養父や最初の仕官に関する重要な記録と事実を発見し、関孝和の履歴書を書けるようになった。関の円周率の計算、行列式についても新たな見解を提示した。
著者
李 〓
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.93-101, 2006

1980年代、中国の文壇では、様々な文学ジャンルが相次いで勢いを見せたが、それに比べると、90年代初期の文壇は間違いなく寂しいものであった。だが、都市文学の再興によってこれらの状況は一変した。「都市文学」を研究するには、まずその定義を定めなければならない。しかし目下の所、評論家や学者らの間に「都市文学」についての定義は存在せず、学者の中には「都市文学」の概念を厳密に定義する必要はないと主張する者すらいる。それゆえ都市文学というこの特定の概念について議論・研究する場合も、それぞれが考える意味内容は決して同じではない。しかし、都市文学の概念や定義をあまりにも拡げすぎると、それを対象とする研究に支障をもたらすことになるだろう。したがって、本研究では「都市文学」を次のように定義する。都市住民・都会生活を描くことを主とし、都会の雰囲気・都会意識を表現する作品をすべて都市文学と呼ぶ。特に指摘しておく必要があるのは、本研究は90年代後期に現れた都市文学の分析に重点を置くが、その中でも小説という文学ジャンルを研究範囲としているということである。中国の文壇にとって「都市文学」は突然降って湧いたものではなく、3、40年代には都市文学の創作が大いに盛んで、劉吶鴎・穆時英・施〓存・張愛玲などの作家が都市の情景や都市住民の生活を描いて大いにもてはやされた。しかし1949年以降は都市文学の創作は低迷期に入る。80年代後半になり、10年間の改革開放政策が大陸の都市部に大きな変化をもたらし、人々の生活や思想・観念も都市化の進展に伴って大いに変化し、都市文学も次第に作家や読者に注目されはじめた。1994年、中国広東省深〓市の『特区文学』という雑誌が「都市文学」創作の烽火を上げて以来、そのブームは今日にまで至っている。今日、都市文学の創作ブームによって、多くの著名な作家が現れた。張欣もその中の一人である。張欣は中国作家協会全国委員会委員・広州市作家協会主席であり、1978年の小説デビュー以来、すでに中篇小説集12作、文集3作、長編小説9作と多数のエッセイ集を出版している。そのうち、『〓星〓案』や『浮華背後』など10作以上の都市文学作品が中国大陸にてテレビドラマとして放送されたおかげで、張欣の都市文学作品の認知度がさらに上がった。張欣は都市を熟知しているばかりでなくその表現にも優れているが、かつてインタビューの中で自らが都市にアイデンティティーを持つことを告白している。彼女の作品の中で最も魅了されるのは、彼女が描く一連の都市の女性像である。それらの女性像を通して、張欣の作品は、90年代以降、女性たちが複雑な都会生活の中で経験した苦悩と矛盾を描き出すと共に、都市という環境が女性の思想や価値観に与える影響を探究し、都市女性に特有な女性意識を表現した。都市に生きる女性の洞察と描写が、張欣作品最大の魅力であろう。本研究の骨子は次の通りである。まず90年代以降、中国において都市文学が再び盛んとなったその原因を考察し、次に90年代以降の都市文学の中国における発展状況及び都市文学の創作ブームの中に現れた著名作家と彼らの作品を紹介する。その中でも張欣の都市文学作品と彼女が描く女性像について重点的に分析する。
著者
西澤 奈津子 大隅 清陽 藤森 健太郎 稲田 奈津子 金子 修一 石見 清裕 桑野 栄治 野田 有紀子 安田 次郎 和田 英信 松岡 智之 末松 剛 吉永 匡史 武井 紀子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

古代日本においては、律令制の導入に続いて、8世紀になってから礼の本格的な導入が始まり、9世紀には儀式書の成立という形に結実する。その後9世紀から12世紀にかけての古代から中世の変革期において、中国の礼を受容して形成された儀式が支配構造との関係でどのように変容したかを、中国の賓礼や軍礼、凶礼などに該当する儀式を検討することによって明らかにした。また、同時期の中国や朝鮮半島諸国の礼や儀式の変化と比較することによって、日本の儀式の変化の特徴に迫った。その結果、中国において当該期に礼や儀礼が庶民化すること、皇帝権力の伸長により変化があることなどが確認された。