著者
太田 航 吉村 崇
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.251-257, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
21

四季の存在する地域に棲む動物は,季節の変化に応じて行動や生理機能を変えることで環境の変化に適応している.このとき動物たちは日照時間(光周期)を季節の指標としているため,このような性質は光周性と呼ばれる.ウズラやマウスを用いた最近の研究により,脊椎動物における光周性の制御機構が徐々に明らかとなりつつある.本稿では光周性研究の歴史から,我々の研究によって明らかとなった動物が「春」を感じるしくみ,及び光周性制御に重要な光情報を感知している「脳深部光受容器」の発見までを概説し,光情報をもとに引き起こされる動物の巧みな生存戦略を紹介する.
著者
仲谷 政剛 大窪 伸太郎 野々川 舞
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.159-167, 2018 (Released:2019-09-01)
参考文献数
18

本研究の目的は, 簡便に足部剛性を定量化する手法を提案すると共に, 走動作中の着地衝撃との関係を検討することである. 被験者は成人男性13名とし, 座位および立位における舟状骨高および鉛直方向地面反力を測定した. 両姿勢における荷重変化を舟状骨高変化率にて除した値を足部剛性とし, 体重の38.575% (足部および下腿部質量, ならびに大腿部質量および質量中心位置より算出) を舟状骨変化率で除した値を簡易足部剛性として, それぞれ算出した. その結果, 足部剛性と簡易足部剛性は良く一致することが確認できたと共に, 簡易足部剛性と着地衝撃との間に正の相関関係が確認できた (r=0.889, p<0.01). 本結果から, 足部の形状変化から得られる足部剛性の評価により, 走動作中の着地衝撃の大きさを予測可能であることが示された.
著者
佐々木 玲子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.73-78, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

我々は自身や他者の動きに伴って何らかの時間,空間的なリズムを感じ取ることができる.発達的にみると,自発的に内 在するリズムやテンポの発現は乳児の段階でも見られ,それが発話やのちの身体運動とも深くかかわっていることが推察される.また成長に伴い,外界からのリズムを読み取り自身の動きを適切に調節していくことも可能となり特に自己の抑制的な調節にその発達をみることができる.神経系機能の発達が著しい乳幼児から児童期にかけては,様々な動きを獲得しさらにそのスキルを高めていく可能性を持っている.動きの発達には,知覚,認知などの機能および環境が相乗的に作用し,そこに時間調整的要素をもつリズムは非常に関わりの深いものとなっている.
著者
小池 耕彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.179-187, 2019 (Released:2020-08-01)
参考文献数
51

ハイパースキャニングとは,コミュニケーション中の二者から同時に脳活動を計測し,二者間での脳活動相関といった 形でコミュニケーションを特徴づける脳活動のハイパーパラメータを計算することで,コミュニケーションの神経基盤を描出 することを目指す研究手法である.この研究手法は時折,非科学的であるとか意義を感じられないという反応に出くわす.本 研究では,筆者の過去の研究経験をもとに,ハイパースキャニング研究をおこなう意義,脳活動の二者間相関が発生する機序, さらには実験計画を立てる際の注意点などを紹介する.またこれまでに行われた幾つかのハイパースキャニング研究を紹介す るとともに,今後,さらなる検討が求められる点を議論する.
著者
田川 善彦 新田 益大 増山 智之 松瀬 博夫 志波 直人
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.225-236, 2014 (Released:2017-02-15)
参考文献数
55

微小重力下にある国際宇宙ステーション (International Space Station : ISS) では生体の筋骨格系が減弱する. このため種々の対策が実施されているが, 大掛かりな設備となっている. そこで簡便で効果的な訓練法が模索され, 我々のグループではヒトへの電気刺激によるハイブリッドトレーニング (hybrid training : HT) 法を提案し, 地上や微小重力模擬下で効果を検証してきた. 本論文ではHTのISS 内実施に伴い想定される以下の事項を取り上げた. まずシステムの電気刺激条件と含水性刺激電極, 刺激装置と人体通電時の電磁適合性 (electro-magnetic compatibility : EMC) について検討した. 次にHTと人体浮遊時の身体揺動, 日本実験モジュール (Japanese Experiment Module : JEM) に上体を固定した時のISSへの振動的加速度の影響について検討した.
著者
結城 匡啓 阿江 通良 浅見 高明
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.111-121, 1992-05-20 (Released:2016-12-05)
被引用文献数
6

Many researchers have attempted to measure the change in velocity of the center of gravity (CG) for speed skaters in stroking. However, there have been some difficulties in measuring the velocity change in speed skating; they include the very long stride length (about 10m) and the three-dimensional behavior of the skater's CG. The purposes of this study were to investigate the push-off technique for top-level Japanese speed skaters and the change in velocity during the push-off phase using 3D cinematography, and then to examine acceleration theory during the push-off phase in speed skating. Skaters participating in the 500m race of the All Japan student championship (1989) were videotaped (60 fields/s) by 10 VTR cameras over 20m at the crossing zone of the back straightaway. Twenty-two male skaters were selected as subjects and classified into two groups on the basis of the performance of the competition. 3D coordinates of the segment endpoints were obtained on five sub-areas (each 4m in length) using a DLT method. Displacement and velocity of the CG and the angles of the hip, knee and ankle joint were calculated. The results obtained are summarized as follows: 1) Push-off movement for the top group skaters placed the CG further forward than that of the second group. 2) The vector derived from the push-off movement for the top group skaters was directed forward, and accelerated the CG of the skaters effectively. 3) Increase in the velocity in skating direction for all subjects seemed to contribute more than expected to the acceleration of the CG. It has been proposed that acceleration in speed skating occurs by push-off of the leg in a direction perpendicular to the gliding direction of the skate, since the force applied to the opposite direction of gliding cannot contribute to acceleration of the CG due to very small frictional force. However, this theory cannot thoroughly explain the findings obtained for the top skaters in this investigation. Therefore, the acceleration theory should be modified to reflect the fact that the CG of the skater during speed skating is accelerated not only by the push-off perpendicular to the gliding direction but also by an increase in velocity vector in a gliding direction.
著者
小宮山 伴与志
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.66-72, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
28

ヒトにおける四肢によるリズミックな運動は多種多様であるが,最も基本的であり,生活を支える重要な基盤となる移動行動は歩行運動であろう.歩行運動は,大脳からの運動指令を受けて大脳基底核,小脳,脳幹,脊髄など様々な運動中枢が協調的に働くことにより実行される.特に,四足歩行動物では,上位運動中枢と末梢感覚入力なしに四肢の屈筋- 伸筋の活動交代を再現可能な中枢パターン発振器(central pattern generator, CPG) が存在することが確かめられている.また,CPG は,屈筋- 伸筋感のリズミックな活動交代を再現するだけではなく,歩行運動の円滑な遂行に必要な様々な反射の利得調整を行っている.ヒトにおけるCPG の存在とその機能的意義を証明することは実験的に困難であるが,現在まで様々な間接的な証拠が提出されている.本稿では,歩行運動,リハビリテーション,四肢の協調運動の基盤としてのCPG の神経機構ついて概観する.
著者
沼津 直樹 藤井 範久 森本 泰介 小池 関也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.21-32, 2020 (Released:2021-07-16)
参考文献数
14

本研究ではキッカーにゴールのさまざまな地点へシュートさせ, ゴールキーパー (GK) が実際にダイビング動作によって対応した試技のシュート動作を対象に, GKがシュートの飛来する地点を予測する際に有用なキッカーやボールの動きについてバイオメカニクス的に検討することを目的とした. その結果, 右利きのキッカーが自身の左方向へシュートを行う際, 軸脚の足部や体幹の回旋角度が, 右方向へシュートする場合よりもより左方向へ向くことが明らかとなった. また, シュートがGKの近くまたは遠くに飛来するのかといったシュートの距離や飛来するシュートの高さについては, インパクト後のボールの軌道から素早く判断し, 対応しなければならないことが明らかとなった.
著者
金 承革 柴田 昌和 土田 将之 栗田 泰成 塚本 敏也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.151-165, 2020 (Released:2021-07-16)
参考文献数
39
被引用文献数
1

中殿筋は片脚立位保持や歩行において骨盤側方傾斜を制動して安定させる重要な筋である. 中殿筋の内部構造や筋出力や筋電波形特性を明確にすることは, 臨床での検査方法の適正改善や検査データのより良い解釈へつながり, ふらつきや転倒などの機能障害を改善・予防することに貢献できる. 肉眼解剖学的調査によって, 中殿筋内部には腱膜が存在し, 前部線維束と後部線維束に分かれることが明確になった. 股外転最大筋力発生時の筋断面積と筋電の測定では, 股伸展位で前部線維束が, 股屈曲位で後部線維束が主に寄与すると推測できるデータが観測された. 歩行中の中殿筋の両線維束の筋電位は, 被験者の個人特性があるが, 最大筋力発生時の特性を反映していた.
著者
岡本 淳
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.59-62, 2017 (Released:2018-05-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

手術室には多くのパッシブな装置が導入されている.手術中に機器を任意の位置に位置決めするニーズが多いこと,本質的に安全な装置で手術を行いたいこと,そもそもアクティブな装置を使うことが難しい特殊環境であることなどがその理由である.本解説では,手術室の機器としてパッシブなメカニズムが採用されている手術顕微鏡,機器の位置決め装置,定位脳手術・穿刺支援装置,執刀医の支援装置について紹介する.手術顕微鏡は微細な手術には必須の医療機器であり,顕微鏡本体はオーバーヘッド型のパッシブアームに吊り下げられている.また,汎用の位置決め装置や,内視鏡保持アームなども同様にパッシブアームが用いられている.精密な位置決めが必要な定位脳手術等でも,パッシブな位置決め装置が使われている.これは術前計画に合わせて機構の位置姿勢を調節する方法であり,近年はナビゲーション誘導で行うタイプも登場している.執刀医のサポートを行うパッシブアームも登場しており,iArmS® はスイッチレスでアームのロック・フリーを切り替える新規のインテリジェント手台装置である.「手術室で使われているパッシブな装置」という分野においては我が国の独特な技術が世界をリードしているといえる.
著者
赤松 友成
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 = Journal of the Society of Biomechanisms (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.134-137, 2007-08-01
参考文献数
12

イルカは哺乳類としての制約条件のもと,超音波の送受信で周辺を認知できるソナー能力を進化させてきた.イルカの有するソナーは高い空間分解能と高度な対象判別能力を持っている.これまでの魚群探知機がモノクロテレビであったとしたら,イルカ型ソナーはハイビジョンテレビと言えるだろう.イルカのような広帯域ソナーを漁業資源探査に応用すべく,私たちの研究チームではイルカソナーシミュレータを構築し,実証機開発に向けた準備が進んでいる.
著者
福井 信行
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-30, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

近年では,欧州を中心に自動車の内装質感に対するお客様の期待が高まり,自動車メーカーではどのように質感を向上 させるかが課題となっている.一方,以前のマツダ車の内装質感は,市場からの評価が低く厳しい状況であった.1999年より, 全社一体で「クラフトマンシップ」向上の取り組みをスタートさせ,評価の体系化や基準設定を行い,コンセプト,戦略作成 も含め活動してきた.その中で,感性工学を適用した質感の定量化や質感向上の技術開発を積み重ねてきている.それらの技 術をマツダ車へ織り込むことで,少しずつではあるが,お客様からの評価も向上してきた.実際の自動車の内装開発の現場で 行ってきた,感性工学の適用事例の一部を紹介する.
著者
高木 斗希夫 藤井 範久 小池 関也 阿江 通良
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.216-224, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
21
被引用文献数
10 1

本研究では,野球における速度の異なるボールに対する打撃動作に影響を及ぼす力学的要因を明らかにすることを目的とした.速度の異なるボール(75-80km/h,100-105km/h,125-130km/h)を被験者に打撃させ,3 次元自動動作分析システムを用いて動作を計測するとともに,2 台のフォースプラットフォームを用いて両足下の地面反力を計測した.下肢及び体幹部に作用する関節力および関節トルク,さらに股関節トルクを下胴の長軸周りの軸へ投影した成分(下胴回転成分)などを算出した.その結果,ボール速度の大きい条件では,投手方向への身体の移動に関与する力積が小さく,この要因として踏出足接地から身体重心速度が最大値に到達する時点までの動作時間の短さが大きく影響を及ぼしていた.また,ボール速度の大きい条件では,軸足側では股関節外転トルクの下胴回転成分,踏出足側では股関節屈曲トルクの下胴回転成分が大きく作用していた.
著者
西崎 友規子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.229-234, 2019 (Released:2020-11-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

ユーザ視点に立つ製品開発場面では,個々のユーザに合致した製品やサービスの提供がのぞまれ,ユーザ特性の分析と 分類が必要とされている.本稿は,自動車運転者を主体とした車載機器や搭載システム,運転支援システムの開発や評価場面 で必要とされる,運転者特性の分類方法を紹介し,運転行動の個人差を特徴づけると想定される心理特性(不安傾向,リスク 回避-志向傾向,認知的熟慮性-衝動性,自尊感情,相互独立性-相互協調的自己感,規範意識),ならびに認知機能特性(ワー キングメモリ,注意機能,距離把握力,大局的処理-局所的処理傾向,社会的認知力)を概観する.
著者
森 仁 八島 建樹 小助川 博之 出江 紳一 高木 敏行
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.79-88, 2018 (Released:2019-09-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

現在, 多くの脳血管障害患者や高齢者が, 嚥下障害により食物の経口摂取に困難を抱えている. 著者らは, 末梢神経磁気刺激により舌骨上筋群を反復的に収縮させることが, 嚥下機能の回復につながると考えている. 現在, 市販されている磁気刺激コイルは, 刺激範囲が広範なため, 舌骨上筋群刺激時に下歯槽神経などの不要な部位まで刺激してしまう問題がある. そこで, 著者らは, 磁性体コアを用いた構造を採用することにより, 磁気刺激時に局所的な渦電流分布が得られる狭い範囲の刺激に最適化したコイルの設計・試作を行った. また, 試作されたコイルを用いた磁気刺激により, 下歯槽神経を刺激することなく大きな舌骨上筋群の収縮が得られることを確認した.
著者
高木 斗希夫 藤井 範久 小池 関也 阿江 通良
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.158-166, 2008 (Released:2010-12-13)
参考文献数
22
被引用文献数
16 5

本研究では,球速の異なるボールに対する野球の打撃動作の特徴を明らかにすることで,打撃の正確性に影響を及ぼす動作要因について検討することを目的とした.球速の異なるボール( 75km/h,100km/h,125km/h)を被験者に打撃させ, 3次元自動動作分析システムを用いて動作を計測した.打撃の正確性を評価する指標としてインパクト角を用いて,身体の並進および回転動作と打撃の正確性との関連について検討を加えた.その結果,ボール速度が大きい条件( 125km/h)においては,身体重心の並進移動距離を小さくするとともに,上胴部およびバットの回転動作範囲を小さくすることが打撃の正確性を高める動作であると考えられた.さらに,体幹の捻り角度および捻り戻しの角速度の最大値にはボール速度条件による有意な差は認められなかったため,これらの動作はボール速度に関わらずスイングに必要な動作であると考えられた.