- 著者
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安永 明智
谷口 幸一
徳永 幹雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
- 雑誌
- 体育学研究 (ISSN:04846710)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.2, pp.173-183, 2002-03-10 (Released:2017-09-27)
- 被引用文献数
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9
6
本研究では,地域の高齢者209名を対象に,QOLの重要な構成要素である主観的幸福感に運動習慣が及ぼす影響について,心理社会的変数を加えて,その関係性を明らかにしていくことが目的であった.以下のような結果が得られた.1)運動習慣は,特に後期高齢者において,社会的自立因子,健康度自己評価,家族サポート,主観的幸福感で有意に肯定的な影響を及ぼすこと.2)運動習慣はADLを維持すること,そしてADLを維持していくことは,健康度自己評価やソーシャルサポートを高め,そのことが主観的幸福感に影響すること.3)これらの結果から,運動習慣が主観的幸福感に及ぼす影響は,ADLやソーシャルサポート,健康度自己評価を通した間接的な影響であることが推察された.なお,本研究は,地方小都市である一地域を対象に実施したものである.したがって,地域的なバイアスが諸変数に及ぼす影響も考えられる.今後,都市部などを含んだ様々な地域を対象に同様な調査を繰り返し,共通性を明らかにしていく必要があるであろう.また,横断的な分析であるために,因果関係までは言及することができなかった.今後は,縦断的な調査方法を用いて,因果関係を明らかにしていくことを課題としたい.