著者
高坂 康雅
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.338-347, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
28
被引用文献数
9 3

本研究の目的は, 青年の友人関係における“異質な存在にみられることに対する不安”(被異質視不安)と“異質な存在を拒否する傾向”(異質拒否傾向)について, 青年期における変化と, 友人関係満足度との関連を明らかにすることであった。中学生260名, 高校生212名, 大学生196名を対象に, 被異質視不安項目, 異質拒否傾向項目, 友人関係満足度項目について回答を求めた。被異質視不安項目と異質拒否傾向項目をあわせて因子分析を行ったところ, 「被異質視不安」と「異質拒否傾向」に相当する因子が抽出された。友人関係満足度を含めて, 青年期における変化を検討したところ, 異質拒否傾向は変化せず, 被異質視不安は減少し, 友人関係満足度は高校生女子が低いことが明らかとなった。さらに, 異質拒否傾向, 被異質視不安, 友人関係満足度の関連をパス解析にて検討した結果, 女子及び高校生男子において, 異質拒否傾向が友人関係満足度を低め, 大学生男子以外で, 異質拒否傾向が被異質視不安を高め, さらに, 高校生女子と大学生男子において, 被異質視不安が友人関係満足度を低めていることが明らかとなった。
著者
酒井 厚 菅原 ますみ 眞榮城 和美 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.12-22, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42
被引用文献数
9 9

本研究では, 中学生の学校適応の諸側面について, 親および親友との信頼関係との関連から検討した。学校適応は, 教室にいるときの気分 (反抗的・不安・リラックス) と学校での不適応傾向 (孤立傾向・反社会的傾向) について測定した。縦断研究に登録されている中学生270名 (13.7歳) とその両親 (母279名; 父241名) を対象に解析を行い以下の結果を得た。1) 親子相互の信頼感において, 子どもの学校適応に影響を与えているのは子が親に抱く信頼感の方であり, 親が子に抱く信頼感は関連が認められなかった。また, 子が親に抱く信頼感に関しては, 母親に対するものばかりではなく父親に対する信頼感も学校適応に重要な役割を担うことが示唆された。2) 親子間相互の信頼感得点の高低から分類した親子の信頼関係タイプによる結果では, 総じて親子相互信頼群の子どもの学校適応がほぼ良好であるのに対し, 親子相互不信群の子どもは学校に不適応な傾向が示された。3) 親友との信頼関係が学校適応に与える影響に関しては, 学校で不適応な傾向にある親子相互不信群において特徴が見られ,「孤立傾向」や「リラックスした気分」の変数では学校への適応を良くする防御要因として働く一方で,「反社会的傾向」の得点はより高めてしまうという促進要因ともなりうることが示された。
著者
後藤 由佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-12, 2014-03-30 (Released:2014-07-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

英単語のclimbは手足を使って自力で登ることを意味するが, 日本語訳の「のぼる」にはそのような限定はない。本研究は大学生を対象として, 英単語のこのような意味範囲の理解を扱った。実験1ではまずテスト群の大学生(n=44)のデータから, 基本動詞climb, memorize, borrow, teach, put onの意味範囲の理解が不十分であることを示し, 次に, 辞書の「語法」の記述を読む辞書群(n=101)では意味範囲の把握がある程度促進されることを示した。実験2では, 誤文指摘練習をする練習群(n=39), 意味範囲を間違って使用し現実にはあり得ないような意味になるエピソードを読むエピソード群(n=45)を設定し, 実験1の辞書群と比較して効果を検討した。その結果, 練習群とエピソード群では事後テストの正答率は約90%となり, 実験1の辞書群の75%を上回った。またエピソード群では学習者の動機づけも高めることができた。さらに, 英単語の学習方略と教授・学習方法の組み合わせによって動機づけに交互作用(ATI)が生じることが示唆された。
著者
数井 みゆき 遠藤 利彦 田中 亜希子 坂上 裕子 菅沼 真樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.323-332, 2000-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
5 20

本研究では現在の親の愛着とそれが子の愛着にどのように影響を及ぼしているのかという愛着の世代間伝達を日本人母子において検討することが目的である。50組の母親と幼児に対して, 母親には成人愛着面接 (AAI) から愛着表象を, 子どもには愛着Qセット法 (AQS) により愛着行動を測定した。その結果, 自律・安定型の母親の子どもは, その他の不安定型の母親の子どもよりも, 愛着安定性が高いことと, 相互作用や情動制御において, ポジティブな傾向が高いことがわかった。また特に, 未解決型の母親の子は, 他のどのタイプの母親の子よりも安定性得点が低いだけでなく, 相互作用上でも情動制御上でも, 行動の整合性や組織化の程度が低く混乱した様子が, 家庭における日常的状況において観察された。ただし, 愛着軽視型ととらわれ型の母親の子どもは, 安定型と未解決型の母親の子どもらの中間に位置する以外, この両者間での差異は認められなかった。愛着の世代間伝達が非欧米圏において, 実証的に検証されたことは初めてであり本研究の意義は大きいだろう。しかし, さらなる問題点として, AAIやAQSの測定法としての課題と母子関係以外における社会文化的文脈の愛着形成への影響という課題の検討も今後必要であろう。
著者
芝崎 美和 山崎 晃
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.256-267, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 児童の謝罪が幼児と同様に罪悪感によって規定されるか否かを明らかにし, 違反発覚の有無という点で異なる約束違反場面と欺き場面での加害児の謝罪についての児童の予測が罪悪感認識の程度と関連するか否かについて明らかにすることであった。調査対象者は小学2年生87名, 4年生86名, 6年生79名であった。分析の結果, 以下の3点が明らかになった。第1に, 所有物の持ち去り場面で加害児の行動として謝罪を推測した者は罪悪感低群よりも高群で多く, 反対に自己中心的方略を推測した者は罪悪感高群よりも低群で多かった。第2に, 約束違反場面では加害児の行動予測に罪悪感認識の高低による違いはみられず, 加害児の罪悪感の程度にかかわらず謝罪が多く予測された。第3に, 欺き場面では, 罪悪感認識の高低によって謝罪を推測する程度には違いがみられなかったが, 罪悪感低群では自己中心的方略を推測した者が多く,他方,罪悪感高群では, 向社会的方略を推測した者が多かった。以上のことから, 児童の謝罪が罪悪感に規定される程度は違反の種類によって異なり, 所有物の持ち去り場面での児童の謝罪は罪悪感と関連するが, 約束違反場面での謝罪は罪悪感と関係しておらず, 違反が発覚しない欺き場面では, 罪悪感は謝罪ではなく向社会的方略を促すことが示された。
著者
一柳 智紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.373-384, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
21
被引用文献数
4 2

本研究の目的は, 児童の聴くという行為および学習に対する教師のリヴォイシングの影響を明らかにすることである。小学5年生2学級の社会科を対象に, 直後再生課題と異なるタイプの問題からなる内容理解テストを行った。結果, 話し言葉ならびに板書を伴う教師のリヴォイシングが, 児童に発言を自分自身と結びつけて聴く機会を与え, 聴くという行為を支援していることが明らかとなった。さらに教師のリヴォイシングの違いが, 話し合いの中で1)何を, 2)どのように聴くかという, 聴くという行為の2つの側面に影響を与え, 児童の内容理解の仕方にも影響することが明らかとなった。リヴォイシングにより発言児が主題に沿って位置づけられる学級では, 児童が話し合いの流れを捉えて聴いており, 授業内容を授業の文脈に沿って統合的に理解していた。一方教師のリヴォイシングが位置づけの機能を持たないもう一方の学級では, リヴォイシングにより個々の発言内容が明確化されており, 児童は発言の「著者性」を維持したまま自らの言葉で捉えて発言を聴いていた。テストにおいても後者の学級の児童は授業内容を自らの言葉で積極的に捉え直せるように理解していた。
著者
藤田 尚文 福留 広大 古口 高志 小林 渚
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.12-25, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は自尊感情などのストレス防御因子と心理的ストレス反応の関係を説明することであった。ストレスの窓モデルと命名されたモデルは4つの仮定をもっている。(a)ひとはストレスを受け取る窓を1個以上もっており, ストレスはその窓を通して個人内に侵入してくる。(b)個々の窓の受け取るストレスの強度分布は, 認知的評価をした結果, 値が基準化され, 平均を0, 分散を1とする正規分布の右側半分である。(c)個々の窓は, それぞれ独立に機能し, 侵入してきたストレスを受け取り, ストレスの強度を2乗したものがストレス反応となり, 最終的に個人のストレス反応は各窓から受け取った総和となる。(d)ストレスの窓の個数は防御因子と密接に関連し, 防御因子が強ければストレスの窓が少なく, これが弱くなるにつれてストレスの窓が多くなる。これらの仮定の数学的帰結として, 防御因子の強弱によって層化された各群のストレス反応が, 窓の個数分の自由度をもつχ2分布となる。本モデルは防御因子として消極的自尊感情や楽観性を用いたときストレス反応の分布をよく近似できた。さらに素因ストレスモデルにおける交互作用は本モデルから数学的に導かれることが本論文で議論された。
著者
佐藤 淑子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.345-358, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
48
被引用文献数
6

本研究はワーク・ライフ・バランス(WLB)という点で対照的な日本とオランダの育児期家庭の生活の実態と心理を比較検討し, WLBが乳幼児を持つ父母の育児に与える影響を考察した。WLBとは「職業役割」と「家庭役割」をバランスよく担うことである。日本は母親の育児不安が高いが, その要因は父親の育児不在と母親が育児を1人で抱え込むことにある。対照的に, オランダは仕事と家事・育児をより男女平等に担い, 最もWLBの達成された国である。本稿では, 父母の生活時間, 育児行動等の生活の実態と, 育児感情, 自尊心, ストレスなど心理のかかわりを検討した。その結果, 次の4点が明らかになった。(1) 育児行動においては日本とオランダともに母親の方が父親より育児を多く行っていた。但し, 日本では父母間の差はオランダより著しい。(2) オランダの父親の労働時間は短く母親の就業率が高く, 父母のWLBがとれ, 育児の協同が顕著である。(3) 日本は父母のWLBが欠けており, ともに「育児への否定感」がオランダより高い。(4) オランダの父母は日本より自尊心が高くストレスも低い。
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.317-326, 2016-09-30 (Released:2016-10-31)
参考文献数
30
被引用文献数
10

本研究の目的は, 楽観性と悲観性を独立に測定できる“子ども用楽観・悲観性尺度”を新たに作成し, それらの信頼性・妥当性を検討することであった。研究1より, “楽観性”と“悲観性”の下位尺度から構成される子ども用楽観・悲観性尺度10項目が作成された。また, 子ども用楽観・悲観性尺度の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と妥当性の一部(構造的な側面の証拠, 外的な側面の証拠)が確認された。さらに, 研究2より, 何らかのストレスフルな出来事を経験した後に, 楽観性が高い子どもはサポート希求や問題解決といった接近型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校適応につながりやすいことが示された。一方で, 悲観性が高い子どもは行動的回避といった回避型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校不適応や精神的不健康につながりやすことが示された。本研究の結果より, 楽観性と悲観性とでは独自の役割を担っていることが明らかになった。
著者
狩野 武道 津川 律子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.168-178, 2011-06-30 (Released:2011-10-21)
参考文献数
39
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 大学生が示す無気力が, スチューデント・アパシー的無気力と抑うつ的無気力に分類可能かどうかを検討し, それぞれの特徴について考察することであった。大学生155名を分析対象とし, 全3回の縦断的質問紙調査を行った。用いた尺度は, 意欲低下領域尺度, 抑うつ気分を測定する項目, 抑うつの反応スタイル尺度の否定的考え込みと分析的考え込みであった。その結果, 持続的に学業に対して無気力を呈する群は, 持続的に抑うつを伴う群(抑うつ的無気力群)と伴わない群(スチューデント・アパシー的無気力群)に分類できることが示唆された。また, 抑うつ的になったときに否定的に考え込む傾向, 分析的に考え込む傾向において, 抑うつ的無気力群はともに高く, スチューデント・アパシー的無気力群はともに低いことが示された。これらの結果から, 無気力研究においてスチューデント・アパシー的無気力と抑うつ的無気力を区別する必要性が論じられ, また, 大学生の無気力に対する予防, 援助に関して考察された。
著者
松本 明生
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.38-49, 2014 (Released:2014-07-16)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究の目的は, アクセプタンス方略を示す自己教示が体験の回避およびスピーチ不安に与える効果について検討することであった。FNE得点および聴衆不安尺度得点をもとに選ばれた30名のスピーチ不安の高い男女大学生の研究参加者を, アクセプタンス自己教示群, 対処的自己教示群, および統制群のいずれかに振り分けた。研究参加者に対してはスピーチ課題をベースラインとして1回, 介入期間中に3回, さらに介入終了から6か月後に1回実施した。アクセプタンス自己教示群と対処的自己教示群には, 介入期間中にそれぞれの群の自己教示を記憶して, それをリハーサルするという訓練を3回実施した。一方, 統制群には自己教示に関する訓練は行わなかった。その結果, ポストテストとフォローアップにおいて, アクセプタンス自己教示群のみに日本語版AAQ得点の増加が見られた。また, アクセプタンス自己教示群および対処的自己教示群では, スピーチ場面でのSUDと聴衆不安尺度得点がポストテストとフォローアップにおいて低減していた。これらの結果は, アクセプタンス方略を示す自己教示はアクセプタンスの増大とスピーチ不安の低減をもたらす有効な手段となりうることを示すものである。
著者
浜谷 直人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.85-94, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
43
被引用文献数
1 3

特別支援教育に関する最近の研究動向には, 二つのベクトルがあることを指摘した。一方は, 個への支援に力点を置き, 行動レベルで支援の成果を実証することを重視し, それに関わる手法・組織・制度などの整備拡充発展を志向する。発達障害児へのSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)による支援と成果の研究などが代表的であり, 論文数が多い。もう一方は, 学級内における関係性, 子どもの自己・人格の発達などに注目し, 今日的状況における学校や授業のあり方や教員の同僚関係などを再構築することを志向する。教育心理学会での発表論文を通覧すると, 通常学級での発達障害児への教育をテーマとするものが多く, その視点からの重要な論文(支援対象児への個別対応と集団・学級の経営について, 通常学級への外部の専門家からの支援, コーディネーターに関する研究, 移行に関する研究, ニューカマーへの支援)を概観した。今後の展望として, 通常学級での特別支援教育の発展のためには, 教育実践の現場から学ぶというスタイルの研究が生まれること, また, 論文において, 著者が, 教育実践における価値をどう考えるかを, 明確に示すことへの期待を述べた。
著者
西松 秀樹 千原 孝司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.436-444, 1995-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The purpose of this research was to consider the effectiveness of intra-individual evaluation (teacher's evaluation) on students' intrinsic motivation, and to compare the relative effectiveness of intra-individual evaluation, absolute evaluation, relative evaluation, and non-evaluation and to reconfirm the effect of the intra-individual evaluation and self-evaluation on intrinsic motivation. Two experiments were conducted in first grade classes of a junior high school. Experiment I demonstrated the effectiveness of the intra-individual evaluation on students' intrinsic motivation when compared with absolute evaluation, relative evaluation, and non-evaluation. Experiment II examined the effect of teacher evaluation, and student self-evaluation on intrinsic motivation. The results yielded significant main effects of teacher evaluation and student self-evaluation on students' intrinsic motivation. The results suggested that it was important to consider both teacher evaluation (intra-individual evaluation) and self-evaluation to enhance students' intrinsic motivation
著者
都筑 学
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.40-48, 1993-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
18 6

The purpose of this study was to clarify how Marcia's four ego identity status groups differed in regard to the affective (cognitive-motivational) aspect of time perspective. Subjects were 150 male and 135 female undergraduates. They were administered the following three questionnaires: 1) Time attitude scale, composed of 20 pairs of adjectives to measure attitude toward personal past, present and future; 2) Circles Test, measuring relation among personal past, present and future; 3) Kato's (1983) identity status questionnaire, made of 12 questions concerning present commitment, past crisis and future pursuit. The main results were as follows: 1) Attainment and Moratorium drew three circles more integrated patterns than on Foreclosure and Diffusion; 2) Diffusion had the most negative attitude toward their personal past, present and future. Foreclosure was found the most positive, while Attainment and Moratorium ranked intermediate. From the above results, it was suggested that Attainment had the most realistic and planned attitude toward the future.
著者
山口 一大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.143-164, 2023-03-30 (Released:2023-11-11)
参考文献数
108

本稿では,『教育心理学研究』第69巻3号から第70巻2号に掲載された実証的な論文28本を対象に,事前登録やオープンサイエンスフレームワークの利用およびベイズ統計学的方法を含む最近の統計的分析方法の利用の実態について概観した。結果として,事前登録や研究マテリアルのオープンサイエンスフレームワークでの公開は十分に普及していなかった。さらに,こうした研究実践と統計的方法について,厳格なテストという観点から考察を行った。また,統計的仮説検定の結果を図示する方法として,信頼曲線を紹介した。最後に,こうした新しい研究実践を推進するための方策について議論した。
著者
外山 美樹 長峯 聖人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.178-191, 2022-06-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下において,正常性バイアスが生じているかどうかを検討すること,および新型コロナウイルス感染症に関する認知(自身の感染可能性,感染者増加可能性,終息の予期,感染予防の自覚,自粛の自覚)が非自粛行動,感染者への怒り,ストレスならびに抑うつと関連するのかどうかを検討することであった。調査対象者は,東京都に在住の20歳代から60歳代の710名で,2つの時点でweb調査を実施した。本研究の結果より,新型コロナウイルス感染症拡大の状況のような慢性的,長期的な事象においても正常性バイアスが見られることが確認された。また,新型コロナウイルス感染症に関する認知の内容(自身の感染可能性の認知,外界のリスク認知,安全性に関する認知)によって,どの側面と関連するのかが異なることも明らかとなった。さらに,感染予防の自覚と自粛の自覚においては,2ヶ月後の非自粛行動を予測することが示された。今後は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下における正常性バイアスのより長期的な影響を検討するとともに,正常性バイアスの規定要因を検討することの必要性が議論された。
著者
岡田 涼 中谷 素之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-11, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
25 4

本研究の目的は, 自己決定理論において概念化されている複数の動機づけから個人を動機づけスタイルとして表し, その動機づけスタイルによって, 実際の課題解決場面において課題に対する興味にどのような相違が見られるかを検討することであった。研究1では, 大学生の学習活動に対する動機づけを尋ねる質問紙を作成し, それらの得点から, 4つの動機づけスタイル (高動機づけ, 自律, 取り入れ・外的, 低動機づけ) を見出した。研究2では, 従来の自己決定理論研究において用いられることの少なかった実験的な手法を用いて, 動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響を検討した。その結果, 非統制的な教示条件下において, 取り入れ・外的スタイルは高動機づけスタイルよりも課題に対する事後の興味得点が低くなっていた。また, 高動機づけスタイルと取り入れ・外的スタイルは, ともに低動機づけスタイルよりも課題遂行中の不安・強制感が高かった。以上のように, 動機づけスタイルによって課題への興味のあり方や課題遂行中の不安が異なるという結果は, 個人の動機づけを動機づけスタイルとして多面的に捉える枠組みの有用性を示すものであると考えられる。