著者
川村 幹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.232-236, 1964-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
2

教員養成制度の改善について近年諸案が発表され, 最近教育職員養成審議会からの答申も出ている。これに関し, 心理学および心理学関係科目が教員養成にどのような役割を与えられたかを, 内外の資料からとりまとやて紹介する。なお, この資料は主として中島 (1961) によつた。
著者
荘島 宏二郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.147-155, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
20

これまで統計学を用いた意思決定は, 仮説検定においてp値のみを参考にして仮説の採否を決定してきた。しかし, p値は, 標本サイズが大きいほど小さくなり, 標本サイズが極めて大きいときには効果の大小にかかわらず帰無仮説が棄却されるという欠点がある。近年, 統計的意思決定の過程において効果量を利用することが重要視されてきている。効果量は, 介入によってどれくらいの効果があるのかを定量的に示し, 標本サイズの大きさによらない統計量である。しかし, 一方で, 構造方程式モデリングでは, モデルのデータに対する当てはまり具合を多数の適合度指標によって診断するということをすでにやっている。そして, 仮説検定においてよく用いるt検定や分散分析は構造方程式モデリングの下位モデルである。したがって, t検定や分散分析においても多数の適合度指標を参照することで意思決定を行うことができる。本稿では, 被検者内1要因分散分析を例にとって, 適合度指標を用いたモデル選択について解説する。
著者
奈田 哲也 堀 憲一郎 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.324-334, 2012 (Released:2013-02-08)
参考文献数
26
被引用文献数
3 3

本研究の目的は, 奈田・丸野(2007)を基に, 知識獲得過程の一端を知り得る指標としてエラーバイアスを用い, 他者とのコラボレーションによって生起する課題活動に対するポジティブ感情が個の知識獲得過程に与える影響を明らかにすることであった。そのため, 小学3年生に, プレテスト(単独活動), 協同活動セッション, ポストテスト(単独活動)という流れで, 指定された品物を回り道せずに買いながら元の場所に戻る課題を行わせた。その際, 協同活動セッション前半の実験参加者の言動に対する実験者の反応の違いによって, 課題活動に対するポジティブ感情を生起させる条件(協応的肯定条件)とそうでない条件(表面的肯定条件)を設けた。その結果, 協応的肯定条件では, エラーバイアスが多く生起し, より短い距離で地図を回れるようになるとともに, やりとりにおいて, 自分の考えを柔軟に捉え直していた。これらのことから, 課題活動に対するポジティブ感情は, その活動に没頭させ, さらに, 相手の考えに対する柔軟な姿勢を作ることで, 新たな視点から自己の考えを捉え直させるといった認知的営みを促進させる働きを持つことが明らかとなった。
著者
下坂 剛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.305-313, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
5 6

本研究の目的は, 青年期における生活感情としての無気力感の各学校段階における特徴について検討することである。質問紙は, 無気力感, 学校適応感およびソーシャル・サポートなどにより構成された。また, 調査対象者は949名の中学生, 高校生および大学生であった。主な結果は以下の通りである。1) 因子分析の結果によると, 無気力感尺度には「自己不明瞭」「他者不信・不満足」「疲労感」の3つの因子が見出された。2) 分散分析の結果によると,「自己不明瞭」と「疲労感」は大学生段階で低下し,「他者不信・不満足」は男女で発達的様相が異なっていた。3) 中・高生においては, 学習意欲や友人関係についての学校適応感が, 無気力感と関連していた。また大学生女子よりも大学生男子において, 友人サポートが「他者不信・不満足」と強く関連していた。
著者
庭山 和貴
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.79-93, 2020-03-30 (Released:2020-05-01)
参考文献数
33
被引用文献数
10 6

本研究では,授業中の教師の言語賞賛回数の増加によって,生徒の授業参加行動が促進されることで,相対的に問題行動は減少するのかについて検証した。介入対象は公立中学校2年生の通常学級の教師8名と生徒122名(計4学級)であった。生徒指導上の問題発生率について,他学年を統制群として比較した。介入開始前のベースライン期では,言語賞賛が生徒の授業参加行動を伸ばすのに有効であることを教師に対して教示したが,その他は教室内での行動観察のみを行った。介入期では,教師が授業中に自身の言語賞賛回数を自己記録し,この回数を主幹教諭に報告した。主幹教諭は,言語賞賛回数が増えていれば教師を賞賛し,増えていなければ増やすよう奨励した。介入の結果,教師らの言語賞賛回数が増え,各学級の平均授業参加率が上昇した。さらに,生徒指導上の問題発生率は有意に減少した。介入を行わなかった他学年では,生徒指導上の問題発生率の減少は見られなかった。このような効果は,介入終了後のフォローアップにおいても,維持されていた。今後は,このような組織的な支援を学校規模で導入していく手順について,日本の学校教育システムに合わせたものを検討していく必要があると考えられる。
著者
藤井 義久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.455-463, 1995-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
75
被引用文献数
3 1

The purpose of this paper is to review the advances and issues in test anxiety research from the point of educational psychology. According to Mandler and Sarason (1952), test anxiety considered a very important concept in educational practice is defined as “a task-irrelevant reaction debilitating in a task-oriented focus”. But as some researchers have already suggested, the concept of test anxiety is so ambiguous that it is very difficult to measure. Specially, there are main issues resulting differantly through the method of measurement. In the future, a study of the structure and developmental mechanism of test anxiety is to be emphasized, examining current test environments from the point of test anxiety level.
著者
倉八 順子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.227-239, 1994-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
79

This article is broadly concerned with the individual differences among language learners. In terms of particular content areas of Individual Differences (ID) research, it surveys developments in foreign language aptitude, motivation and affective factors, and interaction of learners' aptitudes and teaching methods which is called Aptitude Treatment Interaction (ATI). A brief review of theory of second language acquisition is presented, followed by discussions of research on aptitude. Motivation research is reviewed partly with regard to Gardner's research, followed by other researches including those in Japan. Finally, the review of ATI research are presented to emphasize attempts to investigate adaptive education to individual differences. The article concludes with a section on future issues in ID research in Japan.
著者
吉田 寿夫 古城 和敬 加来 秀俊
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.120-127, 1982-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
49 52

The purpose of the present study was to investigate the developmental process of self-presentation in children on the basis of its relation to the development of cognition of evaluation (which the target person of the self-presentation (TP) held toward the presenter) and to the development of social approval need.Ss were second, third, and fifth grade elementary school children. In order to investigate the above problem, the following four studies were conducted.In study I, we investigated the development of cognition concerning the way in which the TP evaluated the presenters with different kinds of self-presentation.In study II, from the standpoint of age and sex, the dominance of ability aspects and personality aspects in social approval need were investigated.In study III and IV, we investigated the developmental process of self-presentation on one's actual ability. In study III, TPs were classmates who most frequently made contact with the Ss, and in study IV, TPs were university students who did not know the Ss at all.According to the results from study I-IV, we inferred the following developmental process concerning self-presentation in children.1) Because even second grade children recognized that a self-deprecating presenter's personality was evaluated more highly than a self-enhancing presenter's personality, they could present themselves deprecatingly (modestly).2) With an increase in the number of TPs whom third grade children were conscious of, they would learn to present themselves deprecatingly, not only to known TPs, but also to newly met TPs as well.3) Moreover in the case of fifth grade girls, codnition which influenced self-presentation differentiated depending on the TP. That is, in case the TP knew them well they based their self-presentation on the TP's cognition about them, and in case the TP did not know them at all they presented themselves enhancingly in a way they could conceal their negative points.
著者
松沼 光泰
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.414-425, 2007-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

本研究では, 学校現場で指摘される現在完了形の学習の問題点を踏まえ, 教育心理学で得られた知見を生かした授業方法を考案しその効果を検討した。高校1年生の生徒が現在完了について2種類の授業方法で学習した。実験群の授業は,「(1) 現在完了の学習内容を教師の側からあらかじめ体制化して教授する」,「(2) 現在完了の課題を行う際に, 図を用いるという学習方略を教授する」という2点で統制群の授業と異なっていた。また, 補足的に, 教授した学習方略の遂行と学習方略の有効性及びコストの認知の関連性, 介入授業が学習意欲に及ぼす影響, 介入授業に対する生徒の興味という点についても調査した。分析の結果,「(1) 授業直後においても約1ヵ月後においても, 実験群のテスト成績は, 統制群を上回った」「(2) 教授された方略を遂行する生徒は, 遂行しない生徒に比べて, 方略を有効であると認知しており, また, 前者は, 後者に比べて, テスト成績が良かった」「(3) 実験群は統制群に比べ介入後に学習意欲が高まり, 授業に対する興味も高かった」ということが示唆された。
著者
北尾 倫彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.1-5,76, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1

1 ひらがな文と漢字まじり文の読みやすさを比較するために3つの実験を行なつた。2 実験Iにおいては, 読みの速さが比較されたところ, 漢字まじり文の方がひらがな文より3試行を通じて速く読まれたが, 読みの回数を重ねるにつれてその差は小さくなつた。3 実験IIにおいては, 読書時のeye-voice spanが比較されたところ, 文字数を指標とするとこの両文間に差がなかった。4実験IIIにおいては, この両文にクローズ法を適用したところ, 漢字まじり文の方がひらがな文より高い正答率を示した。5 3実験の結果から, ひらがな文と漢字まじり文の読みやすさの差は言語経験の差によつて意味性がことなるためであることが示唆された。
著者
平林 ルミ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.113-121, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
47
被引用文献数
2 2

2014年1月,日本は国連の「障害者の権利に関する条約(通称, 障害者権利条約)」を批准した。その中にある合理的配慮(reasonable accommodation)とは,「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」と定義されている。本稿では,学習障害(LD)のある子どもへの合理的配慮としてのICT活用に焦点をあてる。まず目に見えない障害と言われるLDのある子どもへの合理的配慮とプライバシーに関する最新の知見を展望する。次に合理的配慮の対象を判断するための評価研究の動向についてRTI研究及び学業スキルの流暢性評価に焦点をあてる。さらに,LDのある子どもへのICT導入の次の段階としての指導法研究を紹介し,LDのある子どもへの合理的配慮としてのICT活用の動向を整理する。
著者
伊藤 拓 竹中 晃二 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.162-171, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
47
被引用文献数
11 2

多くの抑うつの心理的要因が提唱される中, 抑うつの心理的要因の共通点や抑うつを引き起こす共通要素についての検討はほとんどなされていない。本研究では, この点に着目し, 従来の代表的な抑うっの心理的要因である完全主義, 執着性格, 非機能的態度とネガティブな反すうの関連を明らかにするとともに, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度からうつ状態が引き起こされる上で, ネガティブな反すうが重要な共通要素として機能しているかを検討した。大学生 (N=191) を対象とした8ヶ月間の予測的研究を行った。その結果,(1) 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因は, 共通してネガティブな反すう傾向と正の相関があること,(2) これらの心理的要因が高くても, うつ状態が直接的に引き起こされるわけではなく, ネガティブな反すう傾向が高い場合にうつ状態が引き起こされることなどが示された。以上のことから, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因からうつ状態が引き起こされるメカニズムには, ネガティブな反すう傾向が共通要素として介在していることが示唆された。
著者
内藤 俊史
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.60-67, 1977-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
56
被引用文献数
1
著者
深谷 達史
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.236-251, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
64
被引用文献数
7 4

学習中のモニタリングについて, 学習した複数のテキストに対し, 各テキストの学習の度合いを評定させ(学習判断), 学習判断値と実際のテスト成績との間の個人内連関を算出することで検討がなされてきた。本研究では, 独立の研究における統計的分析の結果をデータとして統合的分析を行うメタ分析を用いて, 学習したテキストに対してなされる学習判断(メタ理解)の正確さに影響を与える要因を検討した。39編の論文における63研究から収集された161統計値を対象に分析を行ったところ, 中央値.270(四分位偏差.101)という値が示され, 読み手が必ずしも十分なモニタリング能力を保持していない可能性が示唆された。また, テキストの困難度, 表象レベル, 学習判断の指標, 課題の実施順序という4つの要因の影響を調べたところ, テキスト困難度では「困難」よりも「標準」の方が, 学習判断の指標では「理解の容易度」よりも「テキスト理解度」の方が高いという結果が得られた。一方, 課題の実施順序と表象レベルに有意な差は見られなかった。最後に, メタ分析の一般的問題に関する本研究の位置づけを示すとともに, 本研究の限界と今後の研究への示唆を考察した。
著者
岡本 祐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.295-306, 1985-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
7 1

The purposes of this study were to clarify the characteristics of psychological changes in middle age from the viewpoints of eight stages of ego identity in Erikson's Epigenetic Scheme (1950), and to specify the reconfirmation process of ego identity and identity status. Method: a sentence completion test (SCT) was carried out by 49 subjects between 40 and 56 years old, and an interview was done to 22 of them. Results: (1) There were positive and negative aspects in the psychological changes in middle age.(2) The process of ego identity reconfirmation in middle age had the following four stages: a) The crisis period with the awareness of the changes of somatic sensation; b) The period of the psychological moratorium; c) The period of modification or turnabout of the life track; and d) The period of ego identity reconfirmed.(3) Four Identity Statuses were specified by the analysis from the viewpoint of Marcia (1964)'s identity status. These findings suggested that middle age was one of the transitional period in life cycle playing an important role for identity achievement.
著者
中間 玲子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.374-386, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
44
被引用文献数
8 3

本研究は, 恩恵享受的自己感との比較を通して, 自尊感情と心理的健康との関連を再考することを目的とした。恩恵享受的自己感とは自己の周りの環境や関係性に対する肯定的感情から付随的に経験されるであろう自己への肯定的感情である。心理的健康としては幸福感および主体性の側面をとりあげた。大学生306名を対象とした質問紙調査(研究1)において、幸福感・内的統制感は自尊感情・恩恵享受的自己感の両方と有意な関係にあることが示され、自尊感情と共に恩恵享受的自己感も心理的健康に関連する重要な概念であると考えられた。大学生173名を対象としたネット調査(研究2)の結果からもその見解は支持された。また、女性は男性よりも自尊感情の得点が低いが恩恵享受的自己感の得点は男性よりも高いこと(研究1)、相互協調性は自尊感情とは負の関係にあるが恩恵享受的自己感とは正の関係にあること(研究2)から、恩恵享受的自己感は、性役割や文化的価値による抑制を受けない自己への肯定的感情であると考えられた。一方、自律性・人生の目的意識との関連(研究1)から、他者との対立を凌駕するような強い主体性とは自尊感情のみが関連することが明らかとなった。