著者
植木 理恵
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.298-298, 2014 (Released:2014-12-24)

本論文は掲載取り消しとなりました。
著者
伊藤 貴昭 垣花 真一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.86-98, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
14 5

説明を生成することが理解を促進することはこれまでの研究でも数多く示されてきた。本研究では, 他者へ向けた説明生成によって, なぜ理解が促されるかを検討するため, 統計学の「散布度」を学習材料として, 大学生を対象に, 実際に対面で説明する群(対面群 : 13名), ビデオを通して説明する群(ビデオ群 : 14名), 上記2群の説明準備に相当する学習のみを行わせる群(統制群 : 14名)を設定し, 学習効果を比較した。その結果, 事後テストにおいて対面群が他の2群を上回っており, 対面で説明することが理解を促すことが示唆された。一方, ビデオ群と統制群には有意差は見られず, 単に説明を生成することのみの効果は見られないことが示された。プロトコル分析の結果, 「意味付与的説明」, またその「繰り返し」の発話頻度と事後テストの成績との間に有意な相関が見られ, 対面群ではビデオ群よりこの種の発話が多く生成されていた。対面群でそれらが生成された箇所に着目すると, これらの少なくとも一部は, 聞き手の頷きの有無や返事などの否定的フィードバックを契機に生成されていることが明らかとなった。本研究の結果は, 他者に説明すると理解が促されるという現象は, 聞き手がいる状況で生じやすい「意味付与的説明」, またそうした発話を繰り返すことに起因することを示唆している。
著者
福留 広大 藤田 尚文 戸谷 彰宏 小林 渚 古川 善也 森永 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.183-196, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
34
被引用文献数
3 6

本研究の目的は, 自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale; RSES)において, 逆転項目に対する否定的反応(Negative Self-Esteem; NSE)と順項目に対する肯定的反応(Positive Self-Esteem; PSE)がそれぞれ異なる心理的側面を持つことを提案することである。研究Iでは, 様々なサンプルの計5つのデータセットを分析した。確認的因子分析の結果, RSESにPSEとNSEの存在が示唆された。研究IIでは, 中学生に調査を行い, 因子構造の検証とそれらの弁別性について検討した。中学生においてもPSEとNSEの構造が支持され, NSEはPSEよりもストレス反応と強い負の相関関係にあった。つまり, RSESの否定的な項目に対して否定的な回答をするほどストレス反応が低い傾向にあった。研究IIIでは, 中学生を対象にして, RSES2因子の弁別性の基準として攻撃性尺度を検討した。その結果, NSEがPSEよりも敵意と強い負の相関関係にあった。これらの結果は, RSESに「肯定的自己像の受容」と「否定的自己像の拒否」の存在を認めるものであり, この解釈と可能性について議論した。
著者
垣花 真一郎 安藤 寿康 小山 麻紀 飯高 晶子 菅原 いづみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.295-308, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
16 7

3-4歳児55名を対象に, かな識字能力の4つの側面の認知的規定因を検討した。識字能力として, 文字音知識, 特殊表記(拗音, 長音, 促音)の読み, 長音単語の表記知識, 読みの流暢性を対象とし, 関わりを検討する認知的要因として, (1)モーラ意識, (2)数唱, (3)非単語復唱, (4)語彙, (5)視知覚技能を対象とした。文字音知識の上位群は, (1)-(5)すべてで下位群を有意に上回っていた。ただし, 文字音知識の群を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果, 独立した寄与をしていたのは, モーラ意識のみであった。特殊表記に関しては, 長音の読みの上位群は下位群に比べ, 非単語復唱の成績が高かったが, 促音, 拗音については関係性が見出せた認知的要因はなかった。長音単語の表記知識は, 語彙との間で相関がみられ, 長音部の表記違い(e.g., さとお)も正答とみなした場合, モーラ意識, 非単語復唱, 視知覚技能との相関が見出された。読みの流暢性に関しては, 数唱, 非単語復唱のほか, 長音単語の表記知識との相関が見出された。本研究の結果は, かな識字に対する各認知的要因の相対的重要性は, 識字の発達に伴い変化することを示唆している。
著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
57
被引用文献数
25 16

本研究は, 夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親, 母親および子ども (平均10.25歳) を対象に郵送による質問紙調査を実施し, 両親回答による夫婦関係と養育態度, および家庭の雰囲気と家族の凝集性, 子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが, 家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果, 両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが, また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に, 配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し, 相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし, こうした養育態度のうち, 子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは, 母親の養育の暖かさのみであり, 父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。
著者
島田 英昭 北島 宗雄
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.474-486, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
6 7

本研究は, 挿絵が文章理解を促進する効果に対して, 動機づけを高める効果と精緻化を促進する効果の2つがあるとする認知モデル, 2段階モデルを提案した。そして, 既存の防災マニュアルを事例として実験を実施し, 2つの効果を確認した。実験1 (N=34) では, 実験参加者に対して, マニュアル中のページを2秒間見ることを求め, その直後に動機づけに関する質問に答えることを求めた。その結果, 挿絵がマニュアルの読解に対する動機づけを高めることを示した。実験2 (N=23) では, 実験参加者に対して10分間でマニュアルを理解することを求め, 挿絵が注視され, 記憶されていることを明らかにした。さらに, 挿絵の記憶が関連するテキストの記憶を促進することを明らかにした。つまり, 挿絵が精緻化を促進することを示した。
著者
依田 明 深津 千賀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.239-246,256, 1963-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2 5

子どもの出生順位と性格特性の関係を明らかにするた. にめ, 2人きようだいの親子145組 (子どもは小学校4年~中学校2年に在学) を対象に質問紙によつて調査を行なつた。性格特性に関する (資料は,約50項目の行動に関する記述が, きようだいのどちらによりよくあてはまるかの相対的な判断を求めることによつて得た。その結果つぎのようなことが見出された。1. 長子は自制的, ひかえめ, 親切など, 次子は快活, 甘つたれ, 依存的などの性格特性を持つ。子どもの出生順位によつて親の役割り期待・子どもの役割認知が異なつている結果であることを暗示している。同時にに男子的性格, 女子的性格というものも存在している。2. きょうだいの年令差が2才~4才であるときに, きようだいの性格的差異はもつとも顕著にあらわれる。3. 日常生活において, きようだい同士が固有名詞で呼びあつている場合は, 次子が長子を普通名詞で呼んでいる場合よりも, 性格的差異の現われかたは有意に少ない。
著者
堀田 美保
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.412-424, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
53
被引用文献数
3 3

本研究ではアサーティブネス・トレーニング(Assertiveness Training : AT)の効果研究における2つの混乱, (1)ATがアサーティブネス習得そのものに与える効果とアサーティブネスがもたらす波及的効果との混乱と, (2)アサーティブネスと攻撃的コミュニケーションとの混乱を取り上げた。AT実践の場で伝えられている諸概念の位置づけやスキル内容に依拠しつつ,これらを検討し, AT研究が取り組むべき課題を探ることを目的とした。第1に, アサーティブネスの定義が曖昧であるという指摘がある中, アサーティブネスとは「自己尊重」と「他者尊重」の両者を軸とするコミュニケーションとして明確に定義すべきであることを改めて提唱した。第2に, 「他者尊重」を欠く自己主張は攻撃的コミュニケーションであり, アサーティブなコミュニケーションとは排他的類型として明確に区別されるものであることを明らかにした。今後, 「自他尊重」を土台として, 攻撃型を含まない形でのアサーティブネスの測定が必要であり, その上でアサーティブネスが「関係構築」「課題遂行の促進」「社会変革」へ与える効果が検討されることが今後の課題であると提唱した。
著者
佐藤 純
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.367-376, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
9 15

本研究は, 学習方略に対する有効性の認知, コストの認知, 好みが, 学習方略の使用に及ぼす影響について調べた。426名の小・中学生が, 学習方略の認知及び使用を評定する質問紙に回答した。その結果, 学習方略の有効性を認知し, 好んでいる学習者ほど使用が多く, コストを高く認知するほど使用が少ないことが明らかとなった。また, メタ認知的方略は, 他の方略よりもコストを高く認知され, 使用が少ないことが示された。さらに, メタ認知的方略を多く使用する学習者は, 学習方略のコストの認知が使用に与える影響が少ないことも明らかとなった。
著者
長南 浩人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.417-426, 2001-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

本研究は, ろう学校高等部の生徒35人を被験者として日本手話・中間型手話・日本語対応手話の構造の違いが手話表現の理解に与える影響を, 被験者の手話能力と日本語能力という2つの要因から検討したものである。理解テストは, 被験者が, 日本手話, 中間型手話, 日本語対応手話を見て, それぞれと意味的に等価な絵をワークシートから選択するという方法で行われた。その結果, 手話能力と日本語能力が共に高いGG群は, 理解テストにおいて日本手話, 日本語対応手話のどちらでも高い得点を示し, 手話能力が高く日本語能力が低いGP群は, 日本手話でのみ高い得点を示し, 手話能力が低く日本語能力が高いPG群は, 日本語対応手話でのみ高い得点を示し, 手話能力と日本語能力が共に低いPP群は, いずれの手話表現でも低い得点を示したというものであった。このことから, ろう学校高等部の生徒が理解しやすい手話の種類には個人差があることが分かった。また, 中間型手話はどの被験者にとっても理解が難しい表現方法であることが分かった。
著者
犬塚 美輪
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.162-172, 2013 (Released:2013-10-30)
参考文献数
56
被引用文献数
2 3

本稿では,まず,読解方略の定義とその効果に関する知見を整理した。その上で,読解方略の指導実践および読解方略指導の研究について,国内外の現状をまとめた。国内の研究においては,読解方略指導に関する研究自体が少ないこと,中でも客観的な効果の測定を行った実践研究があまりなされていないことが大きな課題であると言えた。また,学校現場での指導の実態について見てみると,有効性が指摘される方略の一部はよく指導されているものの,指導が不足している方略もあることや,明示的な方略指導が行われにくいことが示唆された。最後に,読解方略指導における新たな課題として,マルチメディア題材の読解や批判的読解における方略の検討とその指導を取り上げた。
著者
森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
井上 正明 小林 利宣
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.253-260, 1985-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
28 58

This paper presents a survey of the research domain and scale construction of adjective-pairs in a Semantic Differential Method in Japan. 233 papers or articles using Semantic Differential to measure the meanings or images of the concepts were collected. Among the collected articles 99 papers using factor analysis on scales were examined. From the point of factor analysis on the adjective-scales 382 pairs were collected. Also 68 effective scales having high frequencies in the Semantic Differential study were examined. On the bases of these results, 68 proper scales fitting to measure the meanings or images of self-concepts, ideas of children, and personality cognition were hypothetically constructed.
著者
尾之上 高哉 井口 豊 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.132-144, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
33
被引用文献数
5 5

本研究では, 計算スキルの流暢性を形成するための指導法として, タイムトライアルに目標設定と成績のグラフ化を組み合わせた指導(実験条件)に着目し, その効果を, タイムトライアルによる指導(統制条件)の効果と比較した。比較は, 2つの実験計画, (a)3年生の2学級を対象にした統制群法, (b)4年生の1学級を対象にした基準変更デザイン法, で行った。標的スキルは掛け算九九に設定し, 従属変数は2分間のタイムトライアルにおける正答数とした。各実験計画の分析結果は, 実験条件が, 統制条件よりも, 効果が高いことを示した。つまり, (a)では, 事前事後の得点を共分散分析で検定した結果, 実験条件の方が, 事後得点が有意に高かった。(b)では, 実験条件下の成績を, 統制条件下の最高値からの変化量として, 線形混合モデルで分析した結果, 実験条件下の成績は, 統制条件下の最高値よりも, 有意に高い状態で保たれていた。最後に, 各指導による流暢性の伸びと, 社会的妥当性の各得点との関連をSpearmanの順位相関を用いて検定した結果, どちらの実験計画でも, 実験条件においてのみ, 流暢性の伸びと, 成長実感得点の間に, 有意な正の相関が認められた。
著者
松原 達哉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.18-28,62, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

乗法九九学習を成功させるためには, 児童の心身の発達および経験内容から考察して, 何才何か月ごろから開始するのが, 最も適当であるかを研究すること。さらに, 算数学習のレディネスに影響を与える要因についての分析的研究をすることの2つを目的とした。実験方法は, アメリカの「算数の学年配当7人委員会」の方法を改善し, 4つの実験群を設けた。この各実験群に, 第1基礎テスト, 第2基礎テスト, 予備テスト, 終末テスト, 把持テスト, 知能検査, 記憶実験, ゲス・フー・テストその他の調査を実施した。被験者は, 大, 中都市, 農村の8小学校2年, 3年生1,046名を対象に22名の教師が, 同一指導案によって指導した。本実験の基準に従って整理した結果では, 乗法九九学習の指導開始は, 8才1か月 (2年2学期) から行なっても可能であることが実証された。現在, 8才7か月 (3年1学期) から開始しているが, さらに, 6か月早めても, わが国児童の場合は, 可能であると考えられる。これは, アメリカのC. Washburneらの実験に比べ, 2才1か月早い。また, 算数学習のレディネスの要因としては,(1) 算数学習に必要な知能,(2) 反応の速さ,(3) 視聴覚および視聴覚器官の障害の有無,(4) 健康, 栄養, 疲労の条件, 15) 家庭的背景,(6) 情緒の安定性,(7) 根気の強さ,(8) 自主性,(9) 数の視聴覚記憶,(10) 語の視聴覚記憶,(11) 算数に対する興味,(12) 算数的経験などが重要なものであることが実証された。
著者
竹内 朋香 犬上 牧 石原 金由 福田 一彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.294-304, 2000-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
37
被引用文献数
1 7

不眠, 不充分な睡眠や付随する疲労は, 行動問題や情動障害に関連し, 二次的な学業問題, 集中力欠如, 成績悪化などに結びつく。そこで本研究では, 睡眠問題発現の予防学的側面をふまえ第1に, 睡眠習慣調査の因子分析により大学生の睡眠生活パタンを総合的に把握する尺度を構成した。第2に, 尺度得点のクラスター分析により睡眠習慣を分類し, 大学生の睡眠衛生上の潜在的問題点を検討した。因子分析により睡眠に関する3尺度一位相関連 (朝型・夜型と規則・不規則関連9項目), 質関連 (熟眠度関連6項目), 量関連 (睡眠の長さと傾眠性関連6項目) 一を抽出し, 通学など社会的要因との関連を示唆した。分類した6群のうち4群は, 睡眠不足, 睡眠状態誤認, 睡眠相後退など睡眠障害と共通点を示し, 時間的拘束の緩い大学生活から規則的な就業態勢への移行時に睡眠問題が生じる危険性を示唆した。また本研究のような調査票による, 医学的見地からみた健常範囲内での睡眠習慣類型化の可能性を示唆した。分類結果に性差を認め, 短時間睡眠で高傾眠群, 睡眠の質が悪いが朝型, 規則的で平均睡眠量の群で女子の, 夜型, 不規則, 睡眠過多な群, 夜型, 不規則で睡眠の質が悪い群では男子の割合が高かった。従来の知見をふまえ生物学的要因の関与を推測した。
著者
割澤 靖子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-58, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本研究では, 臨床心理士指定大学院における学生の学習プロセスの個人差を捉えることを目的に, 臨床心理士指定大学院修了後3カ月以内の初学者, 計19名を対象にインタビュー調査を実施し, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ, 及び, ケース・マトリックスを援用して分析した。その結果, 『初学者の学習プロセス』は, 『知識や助言に依拠する学び』と『自身の感覚や判断に依拠する学び』を両輪として, 【1捉えどころの分からなさ】, 【2「専門家として未熟な自分」の感覚や判断の信頼できなさ】, 【3 「現時点での自分」の感覚や判断の信頼と活用】, 【4個々の気づきや学びの「つなぎの視点」の獲得】の4つのカテゴリを, 行きつ戻りつしながら進行することが明らかとなった。本研究では, この『初学者の学習プロセス』の進行状況を基準に, 調査協力者らを4つのグループに分類し, 『初学者の学習プロセス』の多様性を整理した。考察では, 初学者の教育・訓練に際して, (1) 自分で感じ考えることをサポートすること, (2)“揺れ戻りの経路”の多様性に注意すること, (3) 初学者の主体的な試行錯誤をサポートすること, (4) 学習対象の選択と限定化に注意すること, の重要性を指摘した。
著者
豊田 秀樹 村石 幸正
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.255-261, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

双生児と一般児のデータを同時に分析する遺伝因子分析モデルが, Y-G性格検査の研究に適用される。構造方程式モデルの1つであるこのモデルによって, 187組の一卵性双生児と43組の二卵性双生児と1309 人の一般児の標本を分析した。一般児のデータは, 因子の共分散構造を安定させるために利用することができる。遺伝的影響・共有環境・非共有環境は, 適応性因子の分散を, それぞれ2.5%, 32.5%, 65.0% 説明していた。またそれらは, 外向性因子の分散を, それぞれ49.8%, 10.3%, 39.9%説明していた。外向性よりもむしろ適応性の因子の分散に対して, 環境がより大きく影響することを遺伝因子分析の結果は示した。
著者
小野 雄大 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.438-452, 2015-12-30 (Released:2016-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
6 5

本研究の目的は, 中学校と高校の部活動における先輩後輩関係の構造を明らかにし, また学年や性別, 部活動のタイプやレベルによって先輩後輩関係にどのような違いが生じているのか, さらに先輩後輩関係が, 部活動の活動内容や特徴によってどの程度予測されるのか明らかにすることであった。そのため, 全国の中学生と高校生711名を対象に質問紙調査を実施した。その結果, 中学生・高校生ともに1年生が最も先輩後輩関係を感じやすい立場にあり, 中学生では男子よりも女子の方が先輩後輩関係を厳しく捉える傾向にあることが明らかになった。また, 部活動のレベルやタイプ別の検討では, 競技・コンクール等で高いレベルで活躍する部活動や, 文化部よりも運動部において, 先輩後輩関係が明確になることが明らかになった。さらに, 部活動の方針や性格等が, 先輩後輩関係の各側面を高く予測することが明らかになった。