著者
白石 公彦 伊藤 博道 沢田 征洋 白地 孝 溝口 実 川野 芳郎 松本 博 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.656-662, 1982-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20

69歳男性,上腸間膜動脈血栓症のため広範囲小腸切除術を受け約6ヵ月後退院したが,術後9ヵ月を経過した時点で体重減少および全身倦怠感を主訴として当科入院となった.入院時軽度の黄疸および下肢の浮腫を認め,圧痛を有する軟らかな肝を右肋骨弓下一横指触知した.臨床検査より消化吸収障害を示唆する所見が得られ,肝生検にて著明な脂肪肝が認められ,またMallory体も散見された.患者は約2年6ヵ月前より断酒しており,低栄養により脂肪肝を来たしたと思われた.入院後も患者の栄養状態は徐々に悪化し,12ヵ月後に嚥下性肺炎のため死亡した.剖検肝組織に於ては肝生検時に比して脂肪変性は軽減し,Mallory体は増加して見られた.
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.supl3, pp.A494-A499, 2000-10-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
20
著者
杉本 勝俊 森安 史典 安藤 真弓 佐野 隆友 宮田 祐樹 平良 淳一 小林 功幸 今井 康晴 中村 郁夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.290-292, 2014-05-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

We report a woman in her late 60s with hepatocellular carcinoma in whom the tumor was successfully treated by irreversible electroporation (IRE). Vascular-phase contrast-enhanced US (CEUS) with Sonazoid and dynamic CT at 1 day after treatment showed no tumor enhancement, but the safety margin of ablation appeared to be insufficient. On the other hand, in Kupffer-phase CEUS, the ablation zone showed a clear contrast defect with a sufficient ablation margin, indicating cell death of hepatocytes, cancer cells, and Kupffer cells in this area following IRE treatment. Very similar findings were observed in hepatobiliary-phase Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI at 7 days after treatment. These results suggest that both Kupffer-phase CEUS and hepatobiliary-phase Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI may be useful for assessing the ablation zone in patients who have undergone IRE.
著者
北原 拓也 久保 恭仁 吉澤 海 安部 宏 会澤 亮一 松岡 美佳 相澤 良夫 砂川 恵伸 高山 忠利 幕内 雅敏
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.229-237, 2009 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

Peliosis hepatis(肝紫斑病)は,類洞の拡張と肝内に多発する血液の貯留腔を認めるまれな疾患で,WHOの肝腫瘍の組織学的分類では腫瘍類似病変に分類されている.本邦では腫瘍との鑑別に苦慮した症例の報告が散見されるが,肝全域にわたってPeliosis hepatisが発生,進展し,致命的な転帰となった症例は,過去にわずか1例が報告されているのみである.今回我々は,特徴ある組織学的所見を呈し,経過観察中に突然病態が悪化し急速に致命的な経過をたどった,肝全域にわたる特発性Peliosis hepatisの極めてまれな1例を経験したので報告する.
著者
土居 忠 田中 信悟 佐藤 康裕 太田 英敏 南 伸弥 藤見 章仁 蟹澤 祐司 田村 文人 平川 昌宏 小野 薫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.501-507, 2010 (Released:2010-10-07)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

脂肪性肝疾患(FLD)の発生に及ぼすアルコール摂取の影響には不明な点が残されている.今回我々は2008年1月から12月までに腹部超音波検査を含む健康診断を受診した3185名を対象に脂肪肝の頻度に対するアルコール摂取の影響を多重ロジスティック回帰分析により解析した.内臓脂肪性肥満,空腹時高血糖,脂質異常症はいずれも脂肪肝頻度の増加と関連していた.1日アルコール摂取量20 g未満(少量飲酒群),20 g以上から40 g未満(軽度飲酒群)および40 g以上から60 g未満(中等度飲酒群)では脂肪肝のオッズ比は有意に低下した.男女別に飲酒の影響を検討したところ,男性では軽度飲酒群から中等度飲酒群におけるFLDの調整オッズ比は非飲酒群および1日アルコール摂取量60 g以上の多量飲酒群より低かった.一方,女性ではアルコール摂取の影響は明らかでなかった.以上の結果からFLDに及ぼす飲酒の影響には性差があり,男性では軽度ないし中等度までのアルコール摂取は過栄養性FLDの発生を抑制する可能性が示唆された.
著者
西原 利治 大西 三朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.541-545, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
西原 利治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.82-86, 2004-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
6 2
著者
川本 智章 井戸 健一 人見 規文 磯田 憲夫 大谷 雅彦 木村 健 望月 真 広田 紀男 近藤 雅雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.241-246, 1989-02-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

症例は49歳,男性.昭和58年,肝機能障害を指摘された.昭和62年4月,当科を受診し,多発性の高エコー病変を指摘され入院.既往歴として25歳時,輸血歴がある.39歳より糖尿病を指摘され,Glibenclamideを内服している.飲酒歴はビール1本/日,30年間.入院時,皮膚症状はなく,軽度の肝機能障害を認めた.腹腔鏡検査では軽度の白色紋理と小陥凹を認め,多数の円形~地図状の暗紫青色病変がみられた.超音波腹腔鏡にて同病変は高エコーに描出された.紫外線照射により,生検標本の暗紫青色部に,淡い赤色蛍光がみられた.生検組織像はchronic persistent hepatitisであり,暗紫青色部には脂肪変性を認めた.ポルフィリン体の分析では,尿中ウロポルフィリン,及び7-カルボキシルポルフィリンの増加を認め,皮膚症状を欠く晩発性皮膚ポルフィリン症と診断された.本症例の確定診断には,腹腔鏡検査,及び超音波腹腔鏡画像誘導下の狙撃生検法が極めて有効であった.
著者
千住 猛士 増本 陽秀 小柳 年正 田尻 博敬 矢田 雅佳 本村 健太
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.417-424, 2012 (Released:2012-08-09)
参考文献数
18

肝細胞癌の肺転移巣が自然退縮した2例を報告する.症例1は65歳男性.肝細胞癌に対して肝動脈塞栓術(TACE)による治療を繰り返していたが,初発から1年7カ月後に多発肺転移が出現した.積極的治療を行わず経過観察したところ,2カ月後に肺転移巣はほぼ消失した.症例2は78歳女性.肝細胞癌に対する肝切除術後の多発再発に対してTACEによる治療を繰り返していたが,初発から5年後に多発肺転移が出現した.積極的治療を行わず経過観察したところ,6カ月後に肺転移巣は著明に退縮した.肺転移巣自然退縮の機序は不明であるが,症例1は飲酒喫煙を止め,NSAIDを頻回に服用しており,症例2は健康食品の核酸を摂取していた.
著者
前山 史朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.58-65, 2004-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.578-599, 1973-10-30 (Released:2009-07-09)
被引用文献数
1
著者
石黒 晴哉 木村 貴純 二上 敏樹 吉澤 海 安部 宏 須藤 訓 相澤 良夫 酒田 昭彦 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.679-686, 2011 (Released:2011-10-27)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1

症例は80歳,女性.2008年9月に肝障害で当科紹介となり,肝生検を含めた精査にて原発性胆汁性肝硬変(PBC)と診断した.その後,経過観察中の2009年9月まで徐々に汎血球減少が進行し,心嚢水貯留が出現した.抗核抗体が高値で,2本鎖抗DNA抗体が陽性であり,米国リウマチ学会の全身性エリテマトーデス(SLE)診断基準の11項目中4項目に合致し,SLEと診断した.さらに,2009年10月の腹部CTで肝S2に径22 mm大の肝細胞癌(HCC)を認めたため,SLEの加療として経口プレドニン20 mgを開始し汎血球減少症,心膜炎の改善を得た後,2010年1月に肝動脈塞栓術およびラジオ波焼灼療法を施行した.術後経過良好で現在経過観察中である.今回,我々はPBCの経過観察中にSLEを発症し,さらにHCCの発生も認めた,稀少かつ示唆に富む高齢のPBC症例を経験したので報告する.
著者
近藤 寿郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.591-599, 1992-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

IFN療法を行ったC型慢性肝炎例より,血清ALTが1年以上持続的に正常化した症例と正常化しなかった症例を各々14例ずつ無作為に選び,血清中のHCV-RNAの推移ならに,C100-3抗体,KCL-163抗体,CP-9抗体およびCP-10抗体を定量的に測定し,その推移を検討した.HCV-RNAが投与終了12ヵ月後以降陰性であったのは有効例の8例のみであった.有効例では投与終了12から18ヵ月後に,C100-3抗体価は投与前陽性の11例中10例で,KCL-163抗体価は13例中12例で投与前値の25%以下に低下した.さらに,HCV-RNA陰性化例では8例中7例でCP-9抗体価とCP-10抗体価がともに投与前値の25%以下に低下したが,HCV-RNA非陰性化例のcore抗体の推移には有意な変化は認めなかった.一方,無効例の各抗体価には有意な変化は認めなかった.この成績はcore抗体の推移がHCV-RNAの消長を密接に反映することを示しており,IFNの抗ウイルス効果の指標として有用と考えられた.
著者
平岡 淳 畔元 信明 白石 明子 今井 祐輔 達川 はるか 山子 泰加 二宮 朋之 河崎 秀樹 広岡 昌史 日浅 陽一 道堯 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.563-566, 2013 (Released:2013-09-02)
参考文献数
5

Aim/background: Prognosis of hepatocellular carcinoma with extrahepatic metastasis (IVb) was reported less than 6 months. Sorafenib (NEX) is an only established therapy for IVb. We evaluated the clinical factors of IVb treated with NEX for prolonging prognosis. Method/Patients: Clinical backgrounds of 23 IVb were investigated (Average age; 66.4 years old), retrospectively. Results: All were Child-Pugh A. In 8 cases, NEX was continued after progressive disease (PD). One year survival rate of them were 58% and average period of treating with NEX beyond PD was 327 days. There was a tendency that NEX was abandoned in IVb with portal vein tumor thrombosis (PVTT) at early timing. Conclusion: Continuing NEX after becoming beyond PD can be a therapeutic option to improve the prognosis in IVb without PVTT.
著者
有井 滋樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.473-483, 2007 (Released:2007-11-01)
参考文献数
93
被引用文献数
2 3
著者
日本肝癌研究会追跡調査委員会
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.460-484, 2010 (Released:2010-09-02)
参考文献数
50
被引用文献数
42 32

第18回全国原発性肝癌追跡調査においては,544施設から2004年1月1日から2005年12月31日までの2年間の20,753例の新規症例と30,677例の追跡症例が集計された.追跡症例の有効回答率は74.2%であった.基礎統計は,第18回新規登録症例を対象として死因,既往歴,臨床診断,画像診断,治療法別の各因子,病理診断,再発,剖検についてまとめた.第17回調査と比較し,肝細胞癌における臨床診断時の高齢化,女性の増加,HBs抗原,HCV抗体陽性率の減少,腫瘍径の縮小の傾向が,治療においては局所療法におけるラジオ波焼灼療法の増加が認められた.1994年から2005年まで新規登録症例の中で最終予後が生存または死亡となった症例(不明を除く)について肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌の治療法別,背景因子別累積生存率を算出した.肝細胞癌については腫瘍個数,腫瘍径,肝障害度を組み合わせることにより背景因子を揃えて,治療法別(肝切除,局所療法,肝動脈塞栓療法)の累積生存率を算出し,また,1978年から2005年までの新規登録症例を3期に分け,累積生存率を算出した.新規登録症例数は経時的に増加し,肝細胞癌の予後の改善が著しいことが明らかとなった.本追跡調査が原発性肝癌の研究および診療の進歩に役立つことを期待する.