著者
柏木 徹 末松 俊彦 房本 英之 鎌田 武信
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.149-155, 1974-03-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2

経皮的に脾内に99mTcO4-を注入し,シンチカメラにて観察する方法であるScintiphotosplenoportographyにRIデータ処理装置を用いることにより,肝硬変症等35例について門脈血流速度,脾肝循環時間の測定を行なった.門脈血流速度は,脾静脈あるいは門脈上に同時に2カ所関心領域を設定し,両者間の距離をRI bolusが両者間を通過するに要する時間で除して求めた.脾肝循環時間は,脾と肝右葉におけるRI希釈曲線のピークに達する時間差より求めた.門脈血流速度,脾肝循環時間は,対照群9.78cm/秒,2.67秒,慢性肝炎群7.80cm/秒,3.45秒,肝硬変群4.39cm/秒,4.72秒と肝硬変症では,対照群,慢性肝炎群に比し門脈血流速度は明らかに低下し,脾肝循環時間も延長していた.
著者
中村 昌人 清野 宗一郎 藤本 健太郎 小暮 禎祥 弓田 冴 小川 慶太 岩永 光巨 中川 美由貴 藤原 希彩子 神崎 洋彰 興梠 慧輔 井上 将法 小林 和史 叶川 直哉 近藤 孝行 小笠原 定久 中川 良 中本 晋吾 室山 良介 加藤 順 加藤 直也
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.517-520, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
5

A questionnaire survey of medical institutions Chiba Prefecture, Japan, specializing in liver diseases was conducted. This study aimed to provide an overview of the current hepatitis virus tests situations and measures taken to link test-positive individuals to specialists. The positivity rate in these institutions was high, with 2.2% for hepatitis C antibody (HCVAb) and 0.9% for hepatitis B surface antigen (HBsAg). Although many institutions (70%) had been employing linking measures, the consultation rate with hepatologists was low, with 7.6% and 14.3% for HCVAb- and for HBsAg-positive cases, respectively. Only half of the institutions disclosed that their measures were working well. These data suggested the importance of improving the system for determining test-positive individuals and promoting hepatologist consultation.
著者
藤原 美子 瓦谷 英人 藤井 智津子 和田 和美 岡田 世佳 久保 卓也 赤羽 たけみ 簗瀬 公嗣 仲川 喜之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.487-496, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
15

2019年から肝炎医療コーディネーター(肝Co)活動による肝炎ウイルス陽性者の拾い上げを開始した.2019年から2021年までは肝炎ウイルス(HBV,HCV)陽性者に対して検査依頼医へ電子カルテのアラート機能を用いたメッセージ記載による専門医への受診勧奨が主な取り組みであった.しかし,検査結果を伝えられていないHCV陽性者は2019年の52.5%(32/61)から2021年は26.7%(12/45)と減少したものの,0%とならず新たな対策が必要と考えた.2022年に多職種で構成された「肝炎対策チーム」を立ち上げ,肝炎ウイルス陽性者確認後の流れを明確にした「フローチャート」を作成し拾い上げ活動を強化した.その結果,HCV陽性者に検査結果が伝わっていない症例は,2022年には5.3%(3/57)と著減した.「フローチャート」を軸とした肝Co活動は,多職種連携により効果的に機能したと考える.
著者
庄司 裕佳子 千住 猛士 森田 祐輔 田中 ゆき 杉本 理恵
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.497-503, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
21

進行肝細胞癌に対するアテゾリズマブ(Atezo)+ベバシズマブ(Bev)併用療法開始直後に発症した腫瘍の胆囊穿破による胆道出血の1例を報告する.症例は70代男性.進行肝細胞癌に対して,day1に一次薬物療法としてAtezo+Bev併用療法を導入したところ,day2に心窩部痛が出現した.Day3に腫瘍の胆囊穿破による胆道出血から胆管閉塞を来したと判断し,緊急ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)で胆道ドレナージを行った.腫瘍からの出血に対しては,day6に腫瘍血管A6に対してTAE(肝動脈塞栓療法)を施行した.Bevが胆道出血に関与したと考えられ,Atezo+Bev併用療法は中止し,レンバチニブ(Len)を導入し,その後のCTでは腫瘍の縮小を認めた.
著者
磯田 広史 榎本 大 高橋 宏和 大野 高嗣 井上 泰輔 池上 正 井出 達也 德本 良雄 小川 浩司 瀬戸山 博子 内田 義人 橋本 まさみ 廣田 健一 柿崎 暁 立木 佐知子 井上 貴子 遠藤 美月 島上 哲朗 荒生 祥尚 井上 淳 末次 淳 永田 賢治 是永 匡紹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.510-513, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
5

Hepatitis medical care coordinators (HMCCs) in Japan are trained by local governments and regional core centers, and are expected to play an active role in various aspects of hepatitis countermeasures. A 2019 survey revealed varied activity statuses of HMCCs among facilities. This study surveyed the present status of HMCCs in 21 of the 72 regional core centers in the fiscal year 2021.A total of 951 HMCCs were trained at these 21 facilities. The 17 participating centers of the 2019 survey indicated a slight increase in the proportion of HMCCs who actively contributed to hepatitis patient care, from 84.2% to 85.8%.Despite the COVID-19 pandemic, HMCCs remained active in many facilities.
著者
仲須 千春 山田 眞一郎 寺奥 大貴 齋藤 裕 池本 哲也 森根 裕二 島田 光生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.504-509, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
18

患者は50代女性.検診の腹部超音波検査で肝S3に16×14 mm大の腫瘤を指摘され精査加療目的に当科紹介となった.既往歴・生肉食歴なし.術前の血液検査で異常なく,末梢好酸球も正常.造影CTの動脈・門脈相では辺縁に造影効果を認めるが,平衡相では造影されず,MRI T1強調像で低信号,T2強調像で低~等信号,拡散強調像でやや高信号であった.PET-CTで肝臓への集積は認めなった.悪性腫瘍の可能性を完全に否定できず,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理組織学的には腫瘤全体に凝固壊死像が見られ,辺縁に線維増生を伴い,組織球が柵状に配列したpalisading granulomaであった.原因特定のために複数の染色を行ったが,病原体は同定できなかった.palisading granulomaは術前診断が困難であり,診断的治療として腹腔鏡下肝切除術は有用であると考えられた.
著者
萩原 智 上嶋 一臣 西田 直生志 工藤 正俊
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.514-516, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
5

We report a case of hepatocellular carcinoma with high mesenchymal-epithelial transition (MET) gene amplification demonstrating significant tumor shrinkage after cabozantinib treatment. A male patient in his fifties had far-advanced hepatocellular carcinoma and had previously been treated with combination therapy of lenvatinib or atezolizumab plus bevacizumab but had experienced progressive disease. We conducted FoundationOne® CDx, which is a comprehensive genomic profiling test, considering the next-line efficacious treatment options, and we confirmed high copy MET gene amplification. Hence, we administered cabozantinib, which caused a significant reduction in the tumor size. This case highlights the potential of comprehensive genomic profiling in identifying efficacious drugs and emphasizes the importance of actively conducting genomic testing to improve treatment outcomes.
著者
倉橋 知英 法水 淳 三宅 崇之 早田 菜保子 岡本 明之 青地 一樹 平尾 元宏 山田 拓哉 平松 直樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.437-444, 2023-09-01 (Released:2023-09-11)
参考文献数
13

症例は80代男性.発熱・咳嗽を主訴に前医を受診,肺炎と診断され抗菌薬投与を開始されたが,肝酵素上昇を認め紹介となった.血液検査でMPO-ANCA陽性であった.腹部エコー検査で肝動脈内血栓を認め,肝動脈虚血による急性肝障害と診断した.第7病日に収縮期血圧70 mmHg台と急激な低下を認め,造影CTで肝周囲に血腫,多発肝動脈瘤,右肝動脈瘤周囲の高吸収域の出現から,肝動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断した.腹部血管造影で明らかな出血源は同定できず経過観察とした.第30病日,喀血と呼吸状態の増悪があり,胸部CTで肺胞出血によるびまん性のすりガラス影を認め,ANCA関連血管炎(AAV)と診断した.ステロイドパルス療法にて症状は改善し,肝動脈瘤及び肺胞からの出血の再発なく退院となった.AAVは主に小血管を障害するが,肝動脈等の中型血管も障害をおこすことがあり,稀に肝動脈瘤の原因となりうるため注意を要すると考えられた.
著者
山本 英里子 村田 美樹 山敷 宣代 山科 雅央 諏訪 兼彦 露無 景子 吉矢 和久 中森 靖 島谷 昌明 関 寿人 長沼 誠
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.445-451, 2023-09-01 (Released:2023-09-11)
参考文献数
17

症例は神経脱髄性疾患に対し加療中の10代後半女性.2週間前より薬疹を認め,被疑薬中止により改善した.1週間前より発熱,嘔気嘔吐が出現,AST 1708 U/L,ALT 1238 U/L,T-Bil 3.5 mg/dlと肝酵素著増を認め,急性肝炎の診断で入院となった.血清学的検査ではウイルス性は否定的であり,薬物性肝障害を念頭に,服用中のステロイドとアザチオプリンを継続した.入院第8病日,PT-INR 2.32,肝性脳症II度を認め,急性肝不全昏睡型(ALF)と診断,ステロイドパルス,血漿交換,高流量持続血液濾過透析と肝移植適応評価を開始したが脳症の改善なく,第10病日に脳浮腫を来した.後に血清中EBV-DNA陽性(3.3 LogIU/mL)が判明した.EBVは成人ALFの成因の約1%と稀だが予後は厳しく,成因不明ALFではEBV再活性化の関与も念頭に置く必要性が示唆された.
著者
宮里 賢 豊見山 麻未 名富 久義 城間 裕子 與那嶺 圭輔 西澤 万貴 馬渕 仁志 金城 譲 仲地 紀哉 島尻 博人 豊見山 良作
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.117-126, 2019-04-01 (Released:2019-04-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3 3

感染性肝囊胞は比較的稀な疾患とされているが画像診断の進歩により診断する機会が増加しており,当院では2009年から2018年の間に23例を経験した.今回は画像検査の所見と囊胞液の検査結果,治療経過について検討した.腹部超音波検査では22例に囊胞内のスラッジエコーを認め,腹部造影CT検査では5例に囊胞壁の造影効果を認めた.腹部MRI検査を14例に行い全例でT2強調画像での囊胞内部の信号低下を認め,拡散強調画像を追加した12例では囊胞内部や囊胞辺縁の拡散低下を認めた.囊胞液の培養は12例が陽性で血液培養も10例で陽性であり,起因菌はKlebsiella pneumoniaeが最多であった.治療は全例に抗菌薬投与と囊胞内容液の穿刺吸引または持続ドレナージを施行して11例は塩酸ミノサイクリンによる硬化療法を追加した.1例はドレナージにて改善が得られず外科手術に至ったが,最終的に全例が軽快退院した.
著者
岩井 啓一郎 辻 博 鈴木 統久 東 晃一 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.919-923, 1998-12-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
10

経過中に抗核抗体が消失, 再出現しステロイド治療が無効であったautoimmune cholangiopathy (AIC) の1症例を経験したので報告する. 症例は38歳, 女性. 1990年5月に全身倦怠感が出現. 初めて肝機能障害を指摘され, 精査目的で8月13日当科入院. 入院時, アルカリフォスファターゼ1686 IU/l, γ-GTP 1135 IU/lと胆汁うっ滞を認め, 抗核抗体は初診時のみ陽性で, 入院時には陰性化していた. また, 抗ミトコンドリア抗体, 肝炎ウイルスマーカーは全て陰性であった. 1991年より掻痒感が出現. 1992年より抗核抗体が再出現しプレドニゾロンを投与したが肝機能検査に変化はみられなかった. 1994年にも再びプレドニゾロンを投与したが, 肝機能検査に変化はみられなかった. 本症例では, 肝生検組織で小葉間胆管が消失し, 胆管病変が進行したAICであったためステロイド治療が無効であったと考えられた.
著者
稲垣 優 田辺 俊介 吉田 亮介 有木 則文 常光 洋輔 大塚 眞哉 三好 和也 大崎 俊英 淵本 定儀 湯村 正仁 堀 圭介 友田 純
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.653-657, 2005 (Released:2006-11-24)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

患者は67歳女性. 主訴は呼吸困難. C型肝硬変症にて当院内科にて治療中, 胸腹水貯留にて入院. 胸水に対し胸腔ドレーンを挿入したが, 1.5l/dayの胸水を認め, ドレーンクランプにて呼吸困難を生じ, 胸水コントロールのため, 当科紹介となった. Child-Pugh score9点Bであった. CTにて右胸腔内に著明な胸水貯留を認め, 肺実質は虚脱していたが, 腹水は少量であった. 以上より, 胸腔静脈シャントの手術を行った. 手術は腹腔静脈シャント用のDenver shuntシステムを用いた. 術後経過は当初300回/dayでポンプを押していたが, 胸水の改善が見られず, 回数を増やすと共に胸水穿刺を適時行うことにより, 胸腔内で肺の再膨張が見られるようになり, 患者の呼吸状態も改善し, 現在ポンプのみにて平衡状態が保たれている. 末期肝硬変患者で腹水が少量で, 難治性胸水を認める症例では積極的に胸腔静脈シャントを留置することにより, 患者の状態が改善できると考えられた.
著者
角田 圭雄 木本 慧 坂本 和賢 大橋 知彦 中出 幸臣 伊藤 清顕 豊田 秀徳 冨田 栄一 熊田 卓 米田 政志
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.496-503, 2020-10-01 (Released:2020-10-08)
参考文献数
60
被引用文献数
1 2

世界的パンデミックとなった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は特に重症例で肝酵素上昇を引き起こす.機序としてはウイルスによる直接的な障害よりも,投与薬剤やサイトカインストーム,低酸素などの関与が示唆される.COVID-19で肝酵素上昇を認めた際は他疾患の有無を評価し,厳重な肝酵素のフォローが必要である.慢性肝疾患に合併したCOVID-19例では,基礎疾患の治療が中断されることのないよう遠隔診療や電話診療を活用し,不要不急な外来受診を控え,感染拡大防止に努める.代謝性脂肪肝疾患では肥満,糖尿病,高血圧の合併が多く,重症化のリスク要因となる可能性が示唆されている.国際学会からはガイダンスも提言されており,COVID-19と肝障害,COVID-19パンデミック下での慢性肝疾患患者のマネジメントに関してこれまでのエビデンスを概説する.
著者
小林 聖幸 野村 貴子 赤岩 譲 扇喜 智寛 扇喜 真紀 石川 賀代 小野 正文 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.194-200, 2023-04-01 (Released:2023-04-13)
参考文献数
22

症例は50歳代男性.全身倦怠感,皮膚掻痒感,褐色尿を主訴に受診し血液検査で総ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であった.第5病日に入院時はみられていなかった皮疹が四肢体幹に出現し,入院時の梅毒反応定性が陽性であったため,再度詳細に病歴を聴取したところ,入院2カ月前の性風俗産業利用歴が判明した.早期梅毒第2期及び早期梅毒性肝炎と診断したが,患者が近日中に転居予定で長期入院や頻回な外来通院は困難であったことから,2022年1月から本邦で使用可能となった早期梅毒には単回投与での治療が認められているベンジルペニシリンベンザチン水和物(BPB)筋注を用いた.皮疹や肝障害は速やかに改善し,梅毒は治癒した.本邦において早期梅毒性肝炎の治療にBPB筋注が用いられた報告はみられず,有効な治療法と考えられたため,文献学的考察を加えて報告する.
著者
岩澤 絵里子 宮川 浩 菊池 健太郎 新見 晶子 原 まさ子 鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.210-218, 2007 (Released:2007-05-29)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

原発性胆汁性肝硬変(PBC)は,自己免疫異常に基づく肝疾患で,各種膠原病を少なからず合併する.しかしながら,各種膠原病におけるPBCの合併については不明な点も少なくない.そこで今回,各種膠原病を対象として,PBCの血清診断に必須の抗ミトコンドリア抗体(AMA)を検索し,その臨床的意義を検討した.各種膠原病と診断された302例を対象として,間接蛍光抗体法とELISA法にてAMAをスクリーニングし,さらにWestern blot法にてAMAの解析を行った.AMAは302例中14例(4.6%)と比較的高率に検出され,疾患別には,強皮症で4例,全身性エリテマトーデスで3例,慢性関節リウマチと血管炎で各2例に検出された.PDC-E2抗体(74kDa)は6例に検出されたに過ぎなかったが,BCOADC-E2抗体(50kDa)は10例と多数に検出された.この14例のうち6例に,抗セントロメア抗体が検出された.さらに,14例中9例は経過中PBCの合併は疑われておらず,今回の検討で初めてAMA陽性と判明した症例であった.膠原病の診療においてもPBCの合併を念頭に入れていく必要があると結論された.
著者
中村 正治 平良 勝也 大野 惇 平良 雅克 佐久川 廣 高橋 和明 三代 俊治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.161-162, 2006 (Released:2006-11-24)
参考文献数
6
被引用文献数
9 9

We investigated for HEV-RNA in serum samples obtained from 15 wild boars in the Iriomote Island of Okinawa Prefecture, and 2 of 15 (13.3%) were positive for HEV-RNA. Sequence analysis of a part of ORF1 region (326 nt) indicated that the 2 isolates from the Iriomote's boars (wbOK126 and wbOK128) were fairly remote from known strains: none of known sequences showed a nucleotide similarity greater than 90%. In phylogenetic tree analyses, however, the wbOK126 and wbOK128 isolates segregated to genotype 4, and formed a cluster with Chinese strains, rather than with Japanese ones interestingly. Regarding the geographical situation of the Iriomote Island (i.e., nearer to China than to Japan's main lands), our present results provide a clue to the origin of Japan-indigenous HEV strains.
著者
山崎 潔 鈴木 一幸 佐藤 公彦 大内 健 吉成 仁 磯崎 一太 中舘 一郎 班目 健夫 吉田 俊巳 柏原 紀文 佐藤 俊一 村上 晶彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.724-729, 1991-07-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
9 6

漢方薬が原因と推定された劇症肝炎の1例を経験した.症例は62歳男性.痔核治療のため漢方薬(金鵄丸)の服用を開始したところ,6週間後に倦怠感と尿濃染が出現した.服用中止により一旦症状の消失をみたが,服薬再開後5週間で上記症状が再出現,黄疸の出現をみ入院となった.凝固能低下が著明で(PT 28%, HPT 19%),種々の治療にもかかわらず,4週間後多臓器不全の状態で死亡した.剖検肝は495gと萎縮著明で,肝組織像は広範性肝壊死を示した.金鵄丸による薬剤性肝炎は本例を含め9例が報告されている.その特徴は,金鵄丸が原因との認識が遅れたため反復服用により肝炎の繰り返しをみる例が多いこと,発疹,好酸球増多がみられないことであった.本例は,漢方薬により劇症肝炎を来した初めての報告である.漢方薬の使用が増加しているおり,漢方薬によっても本例のごとき重症肝障害が惹起されうることに注意すべきである.
著者
安永 満 松田 彰史 村田 誠 荻野 昌昭 門 祐二 新開 泰司 名和田 浩 半田 哲郎 野田 健一 福本 陽平 沖田 極 竹本 忠良
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.493-499, 1985-04-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

アセトアミノフェンの大量服用により,急性肝障害の発症をみることは,よく知られた事実である.最近,教室では,少量のアセトアミノフェンの服用にもかかわらず,重症肝障害を生じた2例を経験したので報告した.患者は38歳の男性と31歳の女性である.アセトアミノフェン服用量は,それぞれ,3.7gと6.4gで,いずれも嘔吐,腹痛,全身倦怠感を訴えて入院した.本剤服用時,前者はアルコールを摂取し,後者は絶食状態であった.検査上,前者は著明な血清トランスアミナーゼの上昇,軽度の黄疸を認め,心内膜炎,腎障害,急性膵炎を併発し,肝組織では小葉内に巣状壊死が散在し,中心静脈周囲にも壊死が認められた.後者でも重篤な肝障害と血小板減少がみられ,肝組織像はbridging necrosisを示していた.アルコール摂取と絶食のために,少量のアセトアミノフェン服用にもかかわらず,予想以上に肝障害が重症化したと考えられ,本剤の使用にあたり,注意が必要である.
著者
北村 宏 松村 任泰 中川 幹 松下 明正 荒井 正幸 小池 祥一郎 大谷 真紀 中澤 功
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

症例は66歳男性.大腸癌に対する5-FUをベースとした全身化学療法中(FOLFILI+パニツムマブ)に食欲不振,倦怠感と急激な腹水の貯留を認めた.血液生化学所見では肝逸脱酵素の上昇と低アルブミン血症,PTの低下を認めた.画像診断では著明な脂肪肝を認め薬物性の肝障害,脂肪肝と考えられた.薬物の中断,利尿剤の投与等を行ったところすみやかに症状,肝機能の改善,腹水の消失,画像上の脂肪肝の消失を認めた.発症1年前の肝切除標本においては背景肝に脂肪化,肝細胞障害,線維化,炎症所見等は認めなかった.発症2カ月前のCTにおいても肝臓に異常所見を認めなかった.3回の肝切除後の肝容積の回復は良好で5年9カ月の全経過の後,間質性肺炎で死亡するまで肝転移の再発は認めなかった.臨床経過からイリノテカンを被疑薬とする薬物性急性脂肪肝と考えられた.
著者
石崎 有澄美 正木 尚彦 秋山 純一 松川 雅也 松枝 啓 新野 史 林 茂樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.727-735, 2000-10-25 (Released:2010-11-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

自己免疫性肝炎 (AIH) に肝細胞癌 (HCC) を合併した2例 (ともに女性) を経験した. 症例1は62歳時肝機能障害を指摘. 原発性胆汁性肝硬変疑いにてウルソデオキシコール酸を投与されたが無効. 73歳時後下区に径1.5cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術を施行するも肝内多発転移を来し, 約8カ月目に腹腔内破裂のため死亡. 剖検所見 (慢性活動性肝炎: A2, F3) を加えたAIH scoreは17点で, AIHと最終診断した. 症例2は64歳時肝機能障害を指摘. AIHが疑われプレドニゾロン内服で不完全寛解したが, 肝生検では肝硬変 (A3, F3-4) であった (現行score 17点). 71歳時外側区に径2cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術が有効であったが, 腎不全のため約1年10カ月目に死亡. 両症例において抗核抗体価の上昇ないし陽転化がHCCの進展に並行していたことから, 自己免疫反応がHCC発症に関与する可能性が示唆された.