著者
福井 博
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.84-93, 2002-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
88
著者
木村 睦海 小関 至 狩野 吉康 荒川 智宏 中島 知明 桑田 靖昭 大村 卓味 佐藤 隆啓 髭 修平 豊田 成司 佐藤 繁樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.607-613, 2013-09-20 (Released:2013-10-22)
参考文献数
22

症例は65歳,女性.1996年にHBV陽性を指摘されIFN治療を受けるも改善無く,その後肝硬変に進展した.2001年よりLamivudineを開始し,その後LamivudineとAdefovirの併用,更にEntecavirとAdefovirの併用へと切り替え,ALTは正常範囲内を維持するに至り,HBV-DNA量も低下した.2009年8月,AFPが26.5 ng/ml,従来法AFP-L3分画が48.0%と上昇を認め,翌9月のMRI検査にて肝S3に径10 mmの典型的な肝細胞癌を認めた.2010年2月に肝外側区切除を施行し,組織診断は高分化型肝細胞癌であった.保存血清を用いて2010年より測定可能となった高感度AFP-L3分画をretrospectiveに再測定したところ,肝細胞癌が臨床診断される3年前,2006年から高感度AFP-L3分画が上昇し続け,切除後に正常化していたことが確認された.高感度AFP-L3分画は,AFPの上昇と肝細胞癌の臨床診断に先行して異常高値となる症例もあり,肝細胞癌のhigh riskグループを抽出する腫瘍マーカーとして有用と考えられた.
著者
西口 修平
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.310-324, 2014-06-20 (Released:2014-07-11)
参考文献数
93
被引用文献数
1 3
著者
与芝 真 半田 宏一 樋口 大介 井上 和明 関山 和彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.460-465, 1999-08-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
16

症例は21歳男性のHBVキャリア. 急性発症し近医入院, 1カ月間肝庇護療法を受けたが改善せず, 劇症化を疑われて当院入院した. HBe抗原陽性でプレコア領域にも YMDD 領域にも変異は認められなかった. インターフェロン (IFN), ラミブジン (3TC), ステロイドパルス療法, サイクロスポリン投与と33回にわたる人工肝補助療法により肝不全を脱した. その後ウイルスの再増殖と共に再燃, PT50%に低下したため再入院, 初回と同様の投薬を受け, 劇症化せずに退院した. しかし, HBe 抗原高値, 血中の HBV 量も大量であり, IFN, 3TC 併用投与に全く反応しなかった. そのため, ファムシクロビルを投与したところ, 3カ月の治療後HBe抗原系のセロコンバージョンと血中ウイルス量の低下が見られ, 治療を脱することができた. HBV キャリアの劇症化例では IFN, 3TC のみならずファムシクロビル投与が必要な症例が存在する事が明らかにされた.
著者
河田 則文 久保井 広志 申 東桓 筒井 ひろ子 溝口 靖紘 小林 絢三 近藤 洋子 森澤 成司 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.855-859, 1989-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

マウスKupffer細胞から産生遊離するPGE2量に及ぼすinterleukin 1(以下,IL1)とtumor necrosis factor(以下,TNF)の影響について検討した.マウスKupffer細胞を培養すると,spontaneousにもPGE2の遊離がみられ,培養上清中のPGE2量は培養開始後24時間まで経時的に増加したが,TNFを添加するとTNF1, 10ng/ml添加時にさらに有意に増加した.また,Kupffer細胞をzymosanで刺激するとPGE2産生量は約5倍にも増幅し,TNF存在下ではさらに増強された.さらに,Kupffer細胞をあらかじめTNFで24時間処理したのちzymosanで刺激を加えて産生されるPGE2量もやはり有意に増加した.このように,種々の条件下においてTNFはKupffer細胞からのPGE2産生を増加させることが明らかとなった.しかしながら,IL1にはこのような効果は見られなかった.以上の結果から,Kupffer細胞自身が産生するとされるTNFがKupffer細胞機能を調節する機構が存在する可能性が示唆された.
著者
中田 哲也 河合 文平 永山 和男 田中 照二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.233-238, 1996-04-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 7

柴苓湯による薬物性肝障害の1例を報告する.症例は57歳女性.慢性滲出性中耳炎の治療のため近医から柴苓湯を処方され服用していたところ,10ヵ月後に皮膚黄染が出現したため他病院を受診,血清GOT 931, GPT 1,077,総ビリルビン8.5と肝障害が認められ,同病院に入院となった.その後肝障害は順調に改善し,第24病日精査のため当院に転院した.各virusmarkerはいずれも陰性で輸血歴,飲酒歴はなかった.入院中好酸球増多を認めたが,柴苓湯によるリンパ球刺激試験は疑陽性であり,確定診断には至らなかった.退院後3年間の経過観察中,慢性中耳炎に対し近医から2回柴苓湯を再処方され,その度に肝障害を繰り返したことから,同剤による薬物性肝障害と診断した.近年漢方薬による薬物性肝障害の報告が散見されるが,本症例のように長期服用後に発症したり,典型的なアレルギー症状を呈さない例が少なくなく,診断の際に留意すべきである.
著者
細沼 賢一 湯浅 圭一朗 山田 昇司 高木 均 森 昌朋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.32-36, 2003-01-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は42歳, 女性. 3種類の異なる漢方薬, 柴胡桂枝乾姜湯, 喜谷実母散, 女神散をそれぞれ異なる時期に内服し, その都度肝障害がみられた. これら3剤の構成成分は類似しており, 3剤共通は3種類であったが, 特に喜谷実母散と女神散では9種類が合致していた. この3剤の内服によりその都度肝障害を起こしたことは, チャレンジテストによる肝障害発現に相当すると考えられ, これらの漢方薬による薬物性肝障害が強く疑われた. 漢方薬の投与時にも肝障害の発現には充分注意し, 肝障害出現時には, 合剤としてだけでなくその構成成分も考慮して対処する必要があると思われた.
著者
矢田 豊 竝川 昌司 神田 大輔 畑中 健 大山 達也 長島 多聞 久保田 潤 高木 均 吉永 輝夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.523-529, 2012 (Released:2012-08-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は56歳,男性.C型肝硬変に腹膜播種を伴う進行肝細胞癌(HCC)を併発し,ペグインターフェロンα併用5FU全身化学療法(PEG-IFN/5FU全身療法)を施行したところ,化学療法開始直後に出血性ショック状態となった.腹部CT検査で腹腔内出血を確認し,化学療法に伴う肝癌破裂と診断した.保存的加療にて軽快し,かつPEG-IFN/5FU全身療法によりHCCは腹膜播種巣を含め著明に縮小した.このため,PEG-IFN/5FU全身療法を計5コース施行したところ,同療法は奏功した.化学療法に伴うHCC破裂は化学療法が有効であるがゆえに生じる可能性があり,循環動態の安定が得られた後に,同療法を繰り返すことで著効が期待できる.腹膜播種を伴う進行HCCにPEG-IFN/5FU全身療法は考慮すべき治療法と考えられた.
著者
後藤 貴史 石川 博基 佐伯 哲 猪狩 成彦 福田 麻里子 田浦 直太 西村 大介 市川 辰樹 濱崎 圭輔 中尾 一彦 江口 勝美
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.298-303, 2006 (Released:2006-11-28)
参考文献数
20

肝炎後再生不良性貧血の2例を経験した.症例1は35歳男性,2003年4月中旬より全身倦怠感出現し,4月20日にT-Bil 6.2mg/dl, AST 1900IU/L, ALT 3020IU/Lと肝機能異常を認めPT 68%と低下していた.A∼E型の肝炎ウイルスは陰性で各種自己抗体陰性,薬剤の関与も否定的であった.徐々に肝機能は正常化したが,同年7月14日にWBC 3000/mm3, Plt 7.4万/mm3と2系統の血球減少が出現し,7月25日に再入院となった.骨髄は低形成性を呈しCD4/CD8比は0.207と低下していた.症例2は26歳男性,2003年6月下旬より全身倦怠感出現し,7月1日にT-Bil 13.2mg/dl, AST 1748IU/L, ALT 2924IU/Lと肝機能異常を認めPT 62%と低下していた.各種ウィルスマーカーは陰性で肝炎の原因は不明であった.徐々に肝機能異常は改善したが,7月中旬より血球減少が出現した.骨髄は低形成性でありCD4/CD8比は0.335と低下していた.2症例とも免疫抑制剤等の治療により汎血球減少は改善した.若年者の原因不明の肝炎後に再生不良性貧血を合併する事があり注意が必要と思われた.
著者
鈴木 義之 瀬崎 ひとみ 芥田 憲夫 鈴木 文孝 瀬古 裕也 今井 則博 平川 美晴 川村 祐介 保坂 哲也 小林 正宏 斎藤 聡 荒瀬 康司 池田 健次 小林 万利子 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.147-149, 2011 (Released:2011-03-22)
参考文献数
4

To further improve therapeutic effect on chronic hepatitis C, we have administered NS3 inhibitor and NS5A inhibitor together, and examined effects of early antiviral agent therapy. The subjects were five cases where interferon is ineffective (null responders). The NS5A and NS3 inhibitors are oral drugs and were daily administered for 24 weeks. Figure 1 shows time-dependent change of the number of viruses after the therapy started, and rapid decrease of viruses is recognized. Within 12 hours, HCV-RNA decreased by more than 2 log IU/ml in every patient. Two patients became negative for the virus by the 15th day after the therapy started. Furthermore, 80% of cases by the 28th day and all the cases by the 56th day became negative. The new therapy has manifested excellent early antiviral effect.
著者
中山 晴夫 小島 敏明 草野 昌男 遠藤 和則 高橋 雅春 須貝 吉樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.550-557, 2006 (Released:2007-03-02)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

IFN治療著効後に血中HCV RNAが再陽性化したC型慢性肝炎の2例を経験した.症例1は54才男性,HCV genotype 2a. 1992年にIFNα2bの26週投与で著効と判定された.以後肝機能は正常であったが,12年後に肝機能の増悪と共にHCV RNAが陽性化した.HCV RNAは1カ月後に陰性化し肝機能も正常化したが,9カ月後に再度HCV RNAが陽転した.症例2は68才男性,HCV genotype 1b. 2003年にIFNβ2週後α2b/Ribavirin併用療法22週治療で著効と判定された.治療終了後2年2カ月目に,肝機能は正常のままHCV RNAが陽性化し持続した.治療前後におけるHCV NS5B領域の塩基配列の検討より,残存したHCVの再燃であると考えられた.以上のようにIFN著効例であってもHCV RNAが再出現する症例があり,注意深い経過観察が必要であると考えられた.
著者
芥田 憲夫 鈴木 文孝 川村 祐介 八辻 寛美 瀬崎 ひとみ 鈴木 義之 保坂 哲也 小林 正宏 小林 万利子 荒瀬 康司 池田 健次 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.450-451, 2006 (Released:2007-01-18)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

We evaluated 130 consecutive Japanese adults of HCV genotype 1b who received treatment with peginterferon (PEG-IFN) plus ribavirin (RBV) for 48 weeks, to investigate the pretreatment predictive factors of early virologic response (EVR) and sustained virological response (SVR). 75% of patients could achieve EVR, and 45% were SVR. Multivariate analysis identified low density lipoprotein cholesterol (LDL-C) (≥86mg/dl) and amino acid (aa) substitutions in HCV core region (Double wild type; arginine at aa 70 and leucine at aa 91) as independent and significant determinants of EVR. Furthermore, multivariate analysis identified LDL-C (≥86mg/dl), aa substitutions in core region (Double wild type), gender (male), ICG R15 (<10%), AST (<60IU/l) as determinants of SVR. In conclusion, LDL-C and aa substitutions in core region are important pretreatment predictors of response to treatment with PEG-IFN plus RBV in Japanese patients infected with genotype 1b.
著者
菊地 勝一 近藤 寿郎 生田 真一 飯田 洋也 相原 司 安井 智明 柳 秀憲 光信 正夫 覚野 綾子 中正 恵二 山中 若樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.626-633, 2009 (Released:2009-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景肝とした肝細胞癌(HCC)の発癌病態を検討するため,当施設で治療を行ったHCC症例中,非B非C型で,背景肝がNASHと診断された10例についてその臨床病理像や背景因子を検討した.【対象.方法】当施設で肝切除(173例)又はablation(216例)を行ったHCC 389症例中,HBs抗原・HCV抗体ともに陰性であったのは29例(7.5%)であった.そのうち臨床病理学的にNASHと診断された症例10例(2.6%)を対象とし,宿主因子,背景肝病理組織,血液検査所見,背景肝機能,腫瘍因子について検討した.【成績】(1)性・年齢は,男性7例,女性3例,平均年齢70.9±8.1歳であった.(2)Body Mass Index(BMI)が25 Kg/m2以上の肥満者は6例(60%)であったが,生活習慣病の合併率は,糖尿病6例(60%),高脂血症2例(20%),高血圧7例(70%)であった.(3)背景肝病理組織は10例中4例(40%)が肝硬変,6例(60%)が脂肪肝炎であった.また脂肪肝炎のstageはBruntの分類でS1:2:3=1:2:3と,線維化の程度が軽度から中等度の例が半数を占めた.(4)肝予備能を反映する血清アルブミン(Alb)値とプロトロンビン(PT)活性は肝硬変群においても,それぞれ4.1±0.5 g/dl,79.0±8.2%と正常であった.さらに肝硬変群をChild-Pughで分類するとAが3例,Bが1例であった.一方ICG R15は肝硬変群が31.8±25.0%であったが,慢性肝炎群においても20.5±16.5%と高値であった.(5)腫瘍因子に関しては2個以上の多結節病変を有する症例が9例(90%)で,このうちいずれかの結節が高分化型HCCであった多中心性発生は6例(67%)であった.【まとめ】NASH由来と診断されたHCCは,高齢で生活習慣病の合併率が高頻度であった.背景肝組織は肝硬変を合併しない脂肪肝炎からの発癌が多く,多中心性発生が高頻度であった.【結語】NASHに合併したHCCの背景肝は60%が脂肪肝炎であり,67%が多中心性発癌であった.また,脂肪肝炎例においては線維化が軽度の症例も認められ,HCCの合併を考慮した厳重なフォローが必要と考えられた.
著者
宮崎 将之 樋口 野日斗 田中 正剛 上田 哲弘 加藤 正樹 辻 裕二 古藤 和浩 高柳 涼一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.514-519, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
13

症例は49歳男性.1999年よりB型慢性肝炎に対してラミブジン治療が行われていた.2004年に肝炎増悪を伴ったHBV DNAのYVDD変異が出現したため,ラミブジン・アデフォビル併用療法が開始された.2008年7月よりウイルス量が増大し,肝炎の再増悪が出現した.アデフォビル耐性株によるbreakthrouh hepatitisを疑い,エンテカビル・アデフォビル併用療法に変更し,ウイルス量の低下とともに肝炎改善が得られた.HBV DNA塩基配列の解析にてA181V/T変異,N236T変異が確認され,アデフォビル耐性株によるbreakthrouh hepatitisと診断した.ラミブジン耐性ウイルスに対するアデフォビル併用療法の経過中に,アデフォビル耐性ウイルスによるbreakthrouh hepatitisを発症した報告は極めて稀少であり,文献的考察を加え報告する.