著者
児玉 健一郎 河岡 友和 相方 浩 若井 雅貴 寺岡 雄吏 稲垣 有希 盛生 慶 中原 隆志 平松 憲 柘植 雅貴 今村 道雄 川上 由育 岡田 友里 森本 恭子 織田 麻琴 木村 修士 有廣 光司 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.162-170, 2018-03-20 (Released:2018-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

63歳,男性.20年前,検診にて肝腫瘤を指摘されたが詳細不明であった.4年前の40×35 mmから60×50 mmと増大傾向となり,紹介入院となった.腹部超音波検査では肝S6/7に60×50 mm大の不整形,境界不明瞭,内部不均一,低エコー腫瘤を認めた.造影CT検査では肝S6/7に60×50 mm大の病変は共に単純CTで等吸収,造影早期相で濃染,後期相で淡い低吸収となった.ソナゾイド造影超音波検査では動脈優位相では全体が不均一に濃染された.門脈優位相ではhypo echoicとなりpost-vascular phase(Kupffer phase)ではdefectを呈した.病理組織検査では肝原発濾胞性リンパ腫と診断され,外科手術にて完全著効となり12カ月生存中である.肝原発濾胞性リンパ腫は非常に稀な疾患であり報告する.
著者
大平 弘正 田中 篤
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.653-654, 2018

<p>Azathioprine, a drug used in the treatment of autoimmune hepatitis (AIH), is now covered by health insurance in Japan. It has long been used in combination with steroids as a standard therapy for AIH in other countries, and its use is expected to increase in Japan. Side effects of azathioprine include cholestatic hepatitis, pancreatitis, and opportunistic infections. Periodic observation is important to ensure timely treatment of adverse effects. Recently, the <i>NUDT15</i> gene polymorphism, associated with severe leukopenia, has been reported as an adverse effect of azathioprine. Although it is covered by insurance, azathioprine is still not used frequently to treat AIH in Japan, and it is necessary to clarify the indications for and problems associated with azathioprine treatment in Japan.</p>
著者
河野 豊 吉田 純一 浅香 正博 原田 文也 舞田 建夫 川上 智史 江口 有一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.527-530, 2020-10-01 (Released:2020-10-08)
参考文献数
4
被引用文献数
1

We investigated the positive detection rates for hepatitis B surface antigens (HBsAg) and hepatitis C (HCV) antibodies as well as the elevation of AST and ALT in patients who were to undergo oral surgery. Our results revealed positive rates of 1.1% and 1.5% for HBsAgs and HCV antibodies, respectively. Patients older than 40 years had a higher proportion of positive HBsAg or HCV antibody results than did patients younger than 40 years. The rate of AST and ALT elevation was 7.3%. There were some missing data on viral infection in patient referral documents or interview sheets, suggesting a perception gap existed with respect to the seriousness of viral hepatitis among dental doctors and patients. These findings suggest that designating a hepatitis medical care coordinator might help not only in understanding patients' infection status but also in collaborating with hepatologists in the field of oral surgery.
著者
松本 修一 滝澤 直歩 金山 泰成 宮井 仁毅 児玉 亘弘 松林 直
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.530-536, 2014-09-19 (Released:2014-10-06)
参考文献数
25

目的:腹水を伴う肝硬変患者における特発性細菌性腹膜炎のリスクファクター(特にPPIとのかかわり)につき検討した.方法:2006年1月から2011年10月までの期間に診断的腹水穿刺を行った肝硬変に伴う腹水症例157例を対象とした.腹水中好中球数250/mm3以上または腹水培養陽性となったものをSBPと診断した.背景因子および腹水穿刺時の血液検査所見から多変量解析を用いてSBPのリスクファクターを抽出した.結果:対象157例のうち38例をSBPと診断した.多変量解析でSBPの危険因子は,肝細胞癌(OR=5.09, 95% CI 2.09-13.05;p<0.01),MELDスコア(20以上,OR=3.57, 95% CI 1.40-9.69, p<0.01),PPI内服(OR=2.60, 95% CI 1.13-6.12;p=0.02)であった.結語:PPI内服は,肝細胞癌,MELDスコア高値とともにSBPの独立した危険因子であった.PPIは様々な理由で頻用されているが,腹水を有する肝硬変症例に対するPPI投与は慎重に行うべきであり,漫然とした投与は避けるべきである.
著者
門倉 信 奥脇 徹也 今川 直人 島村 成樹 高田 ひとみ 雨宮 史武
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.229-236, 2019-07-01 (Released:2019-07-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1

100例の肝細胞癌終末期患者を対象に,予後予測モデルの週単位(3週生存)の精度について後ろ向きに検討した.Receiver operating characteristic(ROC)解析とArea Under the Curve(AUC)より3週生存における各モデルのcut off値を選定し,予測能を感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正診率を用いて評価した.Palliative Prognostic Index(PPI)がAUC 0.89,正診率80%・Biological Prognostic Score(BPS)2がAUC 0.72,正診率72%・BPS3がAUC 0.82,正診率79%・Model for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアがAUC 0.71,正診率70%と優秀な予測能を示し,これらの組み合わせで予後予測の層別化が可能であった.
著者
畑 耕治郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.1210-1217, 1990-10-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

肝細胞癌21例を対象として,超微形態学的ならびに第VIII因子関連抗原,OKM5,IV型コラーゲン,ラミニンに対する抗体を用いた免疫組織化学的観察を行い,肝細胞癌血洞壁の特徴および特異性を検討した.血洞内皮細胞は胞体のfenestraeの形成は乏しく細胞間はtight junctionにて接合し,Weibel-Palade体が認められ,内皮細胞下のDisse腔様腔には基底膜構造が認められた.血洞内皮細胞の第VIII因子関連抗原陽性例では,OKM5は陰性であり,また腫瘍径の大きい例に多く,血洞壁にはラミニンの沈着や基底膜様構造の出現が有意に高く,ラミニンの細胞内産生像や細胞外への放出像が認められた.一方,血洞内皮細胞がOKM5陽性を示す例は比較的腫瘍径の小さい例に多い傾向にあった.早期の肝細胞癌では血洞壁は既存の類洞内皮細胞により被覆されているが,肝細胞癌の発育過程で血洞壁は毛細血管としての特徴を有し,これには基底膜形成も関与していると示唆された.
著者
竹井 謙之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.305-311, 2018-07-20 (Released:2018-07-27)
参考文献数
7
著者
古河 隆二 佐藤 彬 川原 健次郎 楠本 征夫 棟久 龍夫 長瀧 重信 石井 伸子 小路 敏彦 土屋 凉一 大津留 晶 松尾 彰 後藤 誠 原田 良策 田島 平一郎 中田 恵輔 河野 健次 室 豊吉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.753-758, 1985

3回の摘出術と2回の肝動脈塞栓術(TAE)により10年8カ月生存している肝細胞癌の1例を報告した.症例は62歳の女性,1971年肝生検で肝硬変と診断.1973年10月血中AFP上昇のため当科入院.HBs抗原,HBe抗原ともに陽性.血管造影で腫瘍膿染像をみとめ,摘出術施行,右葉後上区域の3.5cm大の肝癌を摘出した.非癌部は乙型肝硬変であった.6年10カ月後に肝癌の再発がみられ,やはり右葉後上区域にて2.0cm大の肝癌を摘出.さらに10カ月後に肝癌が出現,右葉後下区域より1.0cm大の肝癌を摘出した.組織学的には,3回ともtrabeculartypeであった.さらに1年8カ月後肝癌が出現,TAEを2回施行し外来通院中である.本例の肝癌発生様式は,多中心性と思われるが,血中AFPの厳重なfollowにより3回もの肝癌摘出術に成功し,10年以上の生存をみているため報告した.
著者
道堯 浩二郎 平岡 淳 鶴田 美帆 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 岩﨑 竜一朗 壷内 栄治 渡辺 崇夫 吉田 理 阿部 雅則 二宮 朋之 日浅 陽一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.641-646, 2018-11-20 (Released:2018-11-28)
参考文献数
16

HBs抗原の測定法が改良され検出感度が高くなっているが,HBs抗原低値陽性例では偽陽性が危惧される.偽陽性の疑われる例を判定困難例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を明らかにすることを目的とした.41,186検体を対象にHBs抗原を化学発光免疫測定法で測定し,後方視的に検討した.判定困難例の基準をHBc抗体,HBe抗原・抗体,HBV-DNAすべて陰性,後日採血された検体でHBs抗原が陰性,の全条件を満たす例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を検討した.HBs抗原は1,147検体(2.8%)で陽性であった.判定困難例は6検体で,HBs抗原濃度(IU/ml)は,全例0.05以上0.20未満であり,0.20以上例には基準を満たす例はなかった.以上より,HBs抗原低値陽性例は偽陽性の可能性に留意する必要があることが示唆された.
著者
土屋 雅春 石井 裕正 宮本 京 荒井 正夫 奥野 府夫 山内 浩 海老原 洋子 高木 俊和 神谷 知至 陶山 匡一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1606-1613, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2

肝細胞固有の機能の一つとして重要視されている糖新生能を,糖原性アミノ酸であるL-Alanine (以下Ala)を負荷したときの血糖上昇度および糖代謝調節諸因子の動態を観察することにより判定し,本検査の肝細胞予備能判定法としての有用性につき検討した.対象は慶大内科において確診した肝硬変症17例(代償期8例,非代償期9例)および健常対照例6例の計23例である.15時間絶食後に10% Ala溶液300mlを30分間で静注し経時的に180分まで血糖, IRI,乳酸,アラニン,IRG値を測定した.Ala負荷後,対照群では,点滴終了直後に約10mg/dlの血糖上昇を認め,以後速やかに下降したが肝硬変代償期群では血糖上昇度は7mg/dlと低下傾向をみたが有意差はなかった.これに対して非代償期群では血糖上昇度は全くみられず,むしろ低血糖傾向すら示した.この非代償期群ではAla負荷後の血中乳酸・アラニン値も停滞しAlaの利用障害が示唆された.Ala負荷後血糖上昇のみられなかった群の予後は不良であり,本試験は肝細胞予備能判定の手段として有用であることが示唆された.
著者
田口 昌延 俵藤 正信 森嶋 計 清水 敦 佐田 尚宏 福嶋 敬宜 安田 是和
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.479-485, 2013 (Released:2013-07-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

症例は50歳女性.検診の腹部エコー検査で肝腫瘤を指摘され,精査目的に当院へ紹介となった.HBs抗原とHCV抗体は陰性,HBs抗体とHBc抗体が陽性で肝機能は正常であった.腹部エコー検査では肝S4表面に24×15 mm大の低エコー腫瘤を認めた.造影エコー検査(ソナゾイド)では早期動脈相で強く全体が濃染され,肝静脈への還流像が描出された.Kupffer相では欠損像を呈した.腹部造影CT,Gd-EOB-DTPA造影MRIでは動脈相で濃染され,門脈相でwash outされた.画像所見とoccult HBV感染から肝細胞癌が否定できず,肝S4亜区域切除術を施行した.病理組織学的には上皮様の紡錘形細胞と豊富な血管成分を中心とした腫瘍で脂肪成分はわずかであった.免疫染色でHMB-45,MelanA,αSMAが陽性で肝血管筋脂肪腫と診断した.肝血管筋脂肪腫は時に肝細胞癌との鑑別が困難である.
著者
大西 久仁彦 岩間 章介 飯田 真司 後藤 信昭 隆 元英 河野 邦彦 三島 昭彦 野村 文夫 木村 邦夫 武者 広隆 小藤田 和郎 奥田 邦雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1647-1654, 1980-12-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

158名の肝硬変症と79名の原発性肝細胞癌患者を血清中HBs抗原の存否,日本酒1日1合以上10年間以上の飲酒歴の有無によりI群:HBsAg(+),飲酒歴(-),II群:HBsAg(+),飲酒歴(+),II群:HBsAg(-),飲酒歴(-),IV群:HBsAg(-),飲酒歴(+)の4群に分け,それら患者の診断確定時の年齢を比較した.肝硬変に関しては飲酒歴を有するII群,IV群の年齢が飲酒歴のないI群,III群に比して共に8歳若く,II群の年齢が39歳で一番若かった.又1日日本酒にして1合以上の飲酒歴のある者では飲酒量の程度は肝硬変の診断時期の年齢に影響せず,1日1合以上3合未満の飲酒でも肝硬変と診断される時期は有意に早かった.原発性肝細胞癌については,HBs抗原保有者において,1日1合以上の飲酒歴がある患者ではその原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は有意に9年若かった.HBs抗原陰性の者において,1日5合以上の飲酒歴がある患者では,原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は飲酒歴のない者に比して有意に9年若かった.以上の結果から,長期間にわたる飲酒は肝硬変の進展の重要な促進因子の1つとなっている可能性が考えられる.又原発性肝細胞癌の発生に関しても,長期間の飲酒が1つの促進因子となっている可能性があり,HBs抗原保有者においては軽度の飲酒(1日1合以上3合未満)もつつしむべきである.又HBs抗原陰性者においては大量の飲酒(1日5合以上)をひかえるべきである.
著者
金 守良
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.150-158, 2011 (Released:2011-03-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2
著者
井上 啓
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.329-335, 2012 (Released:2012-07-04)
参考文献数
44
著者
平川 淳一 木村 和夫 山内 眞義 中山 一 中原 正雄 藤沢 洌 亀田 治男 大畑 充 佐藤 泰雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1726-1730, 1989-12-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
14

約1年の間に5人の覚醒剤乱用者グループの全員にみられた非A非B型急性肝炎例を経験した.これらの症例は注射器を共用し覚醒剤の静脈注射するといういわゆる“回し打ち”を行い,いずれも急性肝炎の発症を認めた.覚醒剤乱用と肝炎発症の関連について検討した結果,通常のB型,非B型急性肝炎に比べ潜伏期の長いことが推察された.回復期に行った肝生検像は,慢性活動性肝炎の所見であった,覚醒剤による弊害は現在大きな社会問題となっており,これによるB型肝炎の報告は散見されるが,非A非B型肝炎の報告は本邦では文献上みあたらず興味ある集団発症例と思われる.
著者
前田 淳 林 直諒 小幡 裕 竹本 忠良 関根 暉彬 西岡 久寿弥 松野 堅 上地 六男 山内 大三 山下 克子 横山 泉 市岡 四象 本池 洋二 藤原 純江
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.907-913, 1976

東京女子医大,成人医学センターの定期検診受診者1,391名および同消化器内科に肝疾患のため入院した発端者20名(急性肝炎8名,慢性肝炎6名,肝硬変3名,肝癌3名)の家族90名を対象としHBs抗原およびHBs抗体についてsubtypeを中心に検討を加えた.<BR>定期検診受診者の抗原陽性看は1.4%,抗体陽性者は27.4%であり,肝疾患患看家系では抗原陽性者は41.1%,抗体陽性者は34.4%で定期検診受診者より明らかに高率であり,特に抗原の陽性率が高い.<BR>subtypeでは定期検診受診者,肝疾患患者家系とも抗原はadr,抗体はRが優位であり,定期検診受診者で6ヵ月間隔で2度施行できたものでsubtypeの変動したものはなかった.肝疾患患者家系では肝硬変,肝癌群に兄弟,子供に抗原,抗体の集積がみられ,subtypeでは抗原がadwの家系は急性肝炎の1例のみで,他は抗原はadr,抗体はRであり,同一家族内でsubtypeの異なるものはなかった.
著者
斎藤 広信 高橋 敦史 阿部 和道 物江 恭子 菅野 有紀子 横川 順子 大平 弘正
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.65-69, 2011 (Released:2011-02-18)
参考文献数
14

症例は65歳,男性.両肩関節痛を認め,近医整形外科で受診し,変形性肩関節症と診断された.1カ月後から両膝・両手首の関節痛も出現し,肝機能異常と貧血も認めたため入院した.免疫グロブリンの低下およびカルシウム値の増加から血液疾患を疑い,骨髄穿刺検査を施行した.骨髄検査ではCD138陽性の異型形質細胞がびまん性に増生し,造血細胞巣の70%以上を占め,頭部レントゲン検査での打ち抜き像,尿中Bence Jones蛋白陽性,血清蛋白免疫電気泳動と併せ,Bence Jones型の多発性骨髄腫と診断した.肝機能異常については,経過から薬物性肝障害は考え難く,自己抗体も陰性で画像所見においても異常所見が無いことから,肝生検を施行した.肝組織所見では,類洞内に骨髄と同様に多数のCD138陽性の異型形質細胞が浸潤し,肝細胞壊死を伴っていた.以上のことから,本例の肝障害の原因は多発性骨髄腫によるものと判断した.肝生検にて骨髄腫が肝障害の原因として診断された症例は稀であり報告する.