著者
丸山 冬彦 小川 宏高 松岡 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.39-50, 1999-12-15
被引用文献数
1 1

機械語命令列から同じ意味のソースプログラムを復元するデコンパイルという技術は古くから知られており 主に リバースエンジニアリングのための手段の一つとして利用されてきた.実際に Javaとそのバイトコードに関しても いくつかの処理系が提案されているが これまで提供されてきた処理系では Java言語には無いgotoを挿入するなど Java言語の文法を逸脱した結果を出力することがある.また デコンパイルのアルゴリズムがアドホックで 応用の利かないものであるため 我々のOpenJITコンパイラが要求するような 任意のバイトコードから正しいソース構造を復元するでコンパイラフロントエンドとして用いることができない.そこで 我々はJavaバイトコードから適切なJava言語の制御構造を復元するための効果的なアルゴリズムを新しく考案した.アルゴリズムの基本となる考え方は メソッドのコントロールフローグラフに対するドミネータツリーを用いるものである.これはブロック構造が完全な入れ子になる言語の場合 制御構造を表す任意のプログラム片はドミネータツリーにおいて ただ一つのサブツリーをなすという性質に基づいている.この一般性により アルゴリズムはJava以外の言語に適用することも可能である.OpenJITでの予備的な実装による評価では 他のデコンパイラが制御構造の復元に失敗するプログラムであっても 我々のアルゴリズムは適切にそれを復元し かつ 実行速度は同程度であることを示した.The technique called decompilation that reads sequences of machine code and generates the corresponding source program has been known for some time, and utilized primarily for reverse-engineering. For Java and its bytecode, although there have been several proposals of decompilers, most generate outputs that are inappropriately extend the Java language, such as insertion of gotos not present in Java. Moreover, the decompilation algorithms are somewhat ad-hoc and difficult to extend of verify its applicability, which is a hindrance to out OpenJIT compiler which requires a decompiler frontend to recover the correct source structure from arbitrary bytecode. Instead, we have devised a new and effective algorithm for decompilation, with emphasis on properly recovering control structures. The key idea is to base the algorithm around the dominator tree of the control flow graph of a method. This is based on the observation that, for a properly-nested block-structured language, each part of program representing a control structure corresponds to just a single subtree in the dominator tree. As such, the algorithm is general enough to be applied to other languages besides Java. The evaluation of our preliminary implementation in OpenJIT shows that our algorithm properly recovers control structures where other existing decompilers fail, and with relatively equivalent execution speeds.
著者
小林 紀之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3056-3063, 2002-10-15
被引用文献数
5

ブリッジは,他のプレイヤーのハンドが見えない不完全情報ゲームであるため,チェス,将棋などの完全情報ゲームとは異なる難しさがある.最近のコンピュータブリッジでは,モンテカルロシミュレーションを基本としたアルゴリズムが主流である.すなわち,見えていないカードの可能な配置(世界)を多数生成し,各世界でダブルダミーブリッジ(すべてのハンドを見て完全情報ゲームとしてプレイをする)として,ゲーム木におけるミニマックス値を求め,次に出すカードを選ぶ.現在,コンピュータブリッジの実力は中級者レベルにとどまっている.その原因の1つは,このアルゴリズムが,見えている自分Pのハンドと矛盾しない世界のみを対象としている点にある.本論文では,上級者のプレイテクニックの1つとして知られるディセプティブプレイを発見するアルゴリズムを提案する.敵を騙すプレイを可能にするためには,出されたカードを観察した敵がどのようなハンドを想定するかをモデル化する必要がある.著者らは,経験則に基づいて推論を行うエージェントAを敵のモデルとし,敵から見た世界を生成した.この世界は多くの場合,自分Pのハンドと矛盾する.ディセプティブプレイを発見する方法として,敵Aから見た世界では敵に有利であり,かつ,自分Pから見た世界では自分に有利なプレイを探索することを提案した.このアルゴリズムを実装して,典型的な例題でその機能を確認した.The Contract Bridge is an incomplete information game,that is, a player cannot look at the other player's hands.Its difficulty is different from that of complete information games such as Chess and Shogi.The Monte Carlo simulation is the most popular technique for modern Computer Bridges.Many random deals (worlds) are generated.The best card to play is selected according to minimax value of a complete information game-tree search as the double dummy Bridge in each world.Computer Bridges have never win the game against top players.It is partially because the algorithm does not generate a deal inconsistent with the hand of the player P.This paper proposes an algorithm to find a deceptive play that is one of the techniques used by top players.An opponent is modeled as an agent A who guesses P's hand by rule-based knowledge.Worlds generated by A may be inconsistent with the P's hand.The proposed algorithm finds a play line that is the best for opponent in the worlds generated by A and also good enough for P in the worlds generated by P.The algorithm is implemented and tested for some typical examples.
著者
山中 晋爾 古原和邦 今井 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.2025-2035, 2005-08-15
被引用文献数
2 1

ネットワークにおいて匿名通信を実現する手法は,これまでに数多く提案されている.しかしながら,ネットワーク構造が変化してしまうような非静的なネットワークを持つ通信基盤において匿名通信を実現する手法は,Peer to Peer(P2P)の基盤技術を用いた方法しか提案されていない.本論文ではP2P基盤技術を用いず,既存のオニオン・ルーティングをベースとした,新しい匿名通信方式Valkyrie を提案する.Valkyrieでは,オニオン・ルーティングに対して新しいオニオン:代替オニオンおよびバックトラックオニオン,を導入した.これらの新しいオニオンを利用すれば,メッセージ送信途中に分断された経路を迂回することが可能となる.この結果,Valkyrieを用いることで非静的ネットワークにおいて匿名通信を実現できる.This paper proposes new anonymous routing scheme Valkyrie. Although, previous works in the literature already addresses the question of anonymity in packet networks, these solutions usually cannot apply to unstable networks, where the network topology changes dynamically. Valkyrie is based multiple encryption scheme and routing technique that is adopted by Onion Routing scheme. Because of that, Valkyrie can transmit messages on (stable) network anonymously. In addition, Valkyrie has two new onions: Alternate Onion and Back Track Onion. These two onions can bypass disconnection on unstable network. Consequently, Valkyrie is anonymous routing scheme which can run on unstable network.
著者
藤原 克哉 中所 武司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.1202-1211, 2000-04-15
被引用文献数
6

近年,ワークステーションやパソコンの普及およびそれらをつなぐネッ トワークの普及とともに,業務の専門家が自ら情報システムを構築する 必要性が高まっている. また,今日の情報システム構築においては,フレームワークやデザイ ンパターン,コンポーネントウェアなどの構成要素からアプリケーショ ンを再帰的に構築していく技法が追求されている. 本研究では,業務の専門家が自らのアプリケーションの構築に利用で きるような窓口業務のアプリケーションフレームワークを開発した. 窓口業務の例題システムとして図書管理システムを構築し,窓口業務 に共通の部分と個々の窓口に依存する部分を明確に分離することによ り,窓口業務アプリケーションフレームワークを抽出した. さらに,そのフレームワークを利用して業務の専門家がアプリケーショ ンを構築する方法を確立し,実際に別のシステムに適用し,その評価 を行った.The number of end-users increases on the inside and outside ofoffices. This paper describes an application framework forwindow work in banks, city offices, travel agents, mail-ordercompanies, etc. based on the philosophy of ``All routine workboth at office and at home should be carried out bycomputers.''We developed the application framework of the window workwhich the business experts were able to use for buildingapplication.The window work application framework has been extracted fromthe library system which was developed as an example of thewindow work.Then, the framework was applied to another system, and wasevaluated.
著者
西村 恕彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.168-169, 1970-03-15
著者
進藤 達也 岩下 英俊 土肥 実久 萩原 純一 金城ショーン
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1560-1568, 1995-07-15
参考文献数
16

本論文では、分散メモリ型並列計算機のための新しいデータレイアウト法としてTwisted data layoutを提案する。データレイアウトは分散メモリ型並列計算機で並列プログラムを効果的に実行させる上での重要な要素である。配列デー一タの最適なデータレイアウトパターンは、プログラム全体を通して一つに決まらず、プログラムの部分ごとに異なる場合がある。Twisted data layoutは、最適なデータ分散法に関するこのようなコンフリクトの解消に用いることができる。並列計算機AP1000を用いた実験で、Twisted data layouの性能評価を行う。
著者
桑田 修平 上田 修功
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.15, pp.153-162, 2007-10-15
参考文献数
20

確率モデルに基づく新たな協調フィルタリング手法を提案する.提案法は,評点済みのデータから算出されるユーザごとの評点分布,アイテムごとの評点分布,および全評点に対する評点分布が,予測対象の未評点データに対して同様に算出されるそれぞれの評点分布と類似しているとの仮定に基づき,評点済みのデータに対する各評点分布と未評点データに対する各評点分布との間の KL ダイバージェンスを最小化することにより予測値を求める.評点予測を個別に独立で行う従来法と異なり,提案法は予測対象の評点に対する予測値を互いに依存させ,予測対象の評点を一括して予測できるという特長を持つ.映画に対する評価データを用いた実験の結果,予測精度は従来の代表的手法とほぼ同程度であるが,計算時間の面で顕著な優位性を確認した.We propose a new collaborative filtering method based on a probabilistic approach. In the proposed method, we assume that the empirical marginal distributions of the ratings over users and/or items are similar to these corresponding distributions of unrated data. Based on this assumption, we try to predict unobserved ratings by minimizing the Kullback-Leibler divergence between both the rated and unrated rating distributions. In contrast to the conventional methods, which predict unobserved ratings individually and independently, our method predicts all unobserved ratings simultaneously and with mutual dependence. We evaluate the prediction performance and the computational time of our method by using real movie rating data, and confirmed that the proposed method could provide prediction errors comparable to those provided by the conventional top-level methods, but could significantly reduce the computational time.
著者
香田徹 柿本 厚志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.289-296, 1986-03-15
被引用文献数
43 4

擬似乱数発生器として非線形写像で生成されるカオスを利用しようとする試みが行われている.この際 カオスが従来の擬似乱数と比較して 乱雑さに関する性質の良い乱数であるか否かがまず問題とされなければならないが これに関する検討は十分ではない.性質の良い乱数を定義することは容易ではなく また 実数値系列の乱雑さの度合いの測定も容易ではない与えられた実数値系列を闇値関数により2値系列に変換し 2値系列の乱雑さから実数値系列のそれを検討する方法が最近提案されている.本稿では 性質の良い乱数に関する一つの考え方を提案する.すなわち 変換して得られる2値系列がb閾値とは無関係に常にベルヌイ試行に十分近いとき もとの実数値系列を性質の良い乱数とみなすものである.このような考え方にたつと 従来の擬似乱数の検定法では 任意の閾値に対して得られる2値系列とベルヌイ試行との近さを議論していないので従来の検定法は十分ではない.本稿では ロジスティック写像で生成されるカオスの乱雑さと従来の擬似乱数発生法としての線形合同法 M系列 平方採中法による数列のそれとを比較検討した.なお 与えられた2値系列とベルヌイ試行との近さは連テストと組合せテストのχ^2検定により測った.その結果 従来の擬似乱数の方がカオスより性質の良い乱数であるとの結論を得た.
著者
小野 哲雄 今井 倫太 江谷 為之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.43-49, 1998-10-02
参考文献数
17

本稿では、人間とロボットの間に円滑なコミュニケーションを成立させるための方法について述べる。まず、擬人化エージェントを用いたロボットインタフェースを提案する。ユーザは、このエージェントと携帯端末上でインタラクトすることにより関係性を構築する。その後、必要に応じて、エージェントはロボットへ移動するが、この関係性は継承されるため、ユーザはロボットの指示にしたがってナビゲートされるようになる。ロボットに移動したエージェントは、ユーザの情報と要求モデルをすでにもつため、同様の内部状態をもつロボットを出会うと、惹き込み合いコミュニケーションを始める。これらのロボットにナビゲートされてきたユーザ同士もコミュニケーションを始めるため、マッチメイキングが促進される。さらに本稿では、今後の研究として、人間とロボットの役割行動などの、ロボットの社会性について考察する。
著者
加藤 伸子 奥野 智江 狩野 均 西原 清一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.1104-1112, 2000-04-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

本論文では仮想都市生成の第1段階である道路網生成をL-systemで行う手法を提案する.ここ?linebreakでは実際の道路網が自己相似性を持つことから,自己相似図形の表現に適したL-systemを用いて道路網を生成する.すなわち,道路網の交差点の形状をL-systemの書き換え規則で表現し,確率L-systemを適用する.この際,その特徴の違いから,幹線道路網では枝分かれ型L-systemを,区画道路網では領域分割型L-systemを用いる.ここでは,道路網の生成手法と実際に道路網を生成した例について述べ,自動的に多様な道路網が生成できること,幹線道路網,区画道路網の2つの生成手法により,自然発生的で不規則なパターンの道路網と計画的で規則的なパターンの道路網が各々生成できることを示す.This paper proposes a novel method that enables automatic modeling of road networks that provides the basic structure of the virtual cities. We show a set of rewriting rules of an L-system works very well to produce realistic road networks including road shapes, block shapes, and graphical topology. The road networks are composed of two types of roads -- arterial roads which are generated by using the Tree L-system and access roads which are generated by using the Map L-system. The fundamental structure of real road networks and generation procedures for road networks are described. Examples of road networks verify following: various type of road networks can be generated, and both of the irregular pattern and regular pattern of the road networks are generated successfully by using Tree L-system and Map L-system respectively.
著者
渡辺 富夫 大久保 雅史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.670-676, 1999-02-15
参考文献数
20
被引用文献数
13

身体的コミュニケーション解析のためのバーチャルコミュニケーションシステムのコンセプトを提案し そのプロトタイプを開発してシステムの有効性を示している. 本システムは 対話者のノンバーバル情報と生体情報に基づいて対話者の化身であるバーチャルアクター(VA)のノンバーバル行動を生成し 仮想の対話場面で自己を含めた対話者相互のVAのインタラクションを観察しながら コミュニケーションできるシステムである. 対話者に対応したVAの音声やノンバーバル行動を加工してコミュニケーションを解析することができる. 12組24人の対話者を対象に VAの身体動作として頭部の動きのみに限定したコミュニケーション実験の結果 対話での自己と他者のインクラクションが分かる場面が好まれるとともに 対話者の呼吸の引き込み現象の存在が確認され 本システムによる新たなコミュニケーション場の伝達の可能性が示されている. 本システムを用いれば 対話者は対話の観察者であると同時に対話情報の操作者にもなり 自己中心的に場所をとらえ また場所から自己を位置づける内的観点に立った実験系を組むことが可能である.A new concept of a virtual communication system for human interaction analysis is proposed, and the prototype of the system is developed where two avatars corresponding to their talkers, referred to as "virtual actors (VAs)", act on the basis of the talkers' nonverbal behavior and physiological measurements. Two remote talkers can communicate by observing their VAs including his or her own VA in a virtual face-to-face environment from any view point. At the same time, the human interaction is analyzed and synthesized by the data of the nonverbal behavior of the VAs and the talker's physiological measurements. As the results of the experiment in 12 pairs of 24 male talkers under condition that only the head movements of the VAs are communicated together with the talkers' voices, the effectiveness of the system is demonstrated. In particular, the existence of respiratory entrainment between talkers, which is biologically essential to human interaction, is confirmed in the virtual communication which includes both his own VA and the other. The possibility of a new transmission of interaction awareness in communication is also disussed.
著者
Yasushi Hibino Kazufumi Watanabe Ikuo Takeuchi
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情処学論 (ISSN:18826652)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.156-164, 1990-08-25
被引用文献数
3

This paper describes a 32-bit LISP processor chip developed for the AI workstation ELIS with the multiple programming paradigm language TAO. The objective of this microprocessor is to realize an S-expression machine that can match the speed of conventional machines for compiled code execution. Architectural features are a repetitive structure for VLSI implementation of the tagged architecture and a dedicated datapath for list manipulation. All the processor functions are realized on a single VLSI chip that uses a 2-micron CMOS process. ELIS supports not only LISP but also multiple programming paradigms. The ELIS interpreter has a higher performance than that of any other dedicated machine on the market.This paper describes a 32-bit LISP processor chip developed for the AI workstation ELIS with the multiple programming paradigm language TAO. The objective of this microprocessor is to realize an S-expression machine that can match the speed of conventional machines for compiled code execution. Architectural features are a repetitive structure for VLSI implementation of the tagged architecture and a dedicated datapath for list manipulation. All the processor functions are realized on a single VLSI chip that uses a 2-micron CMOS process. ELIS supports not only LISP but also multiple programming paradigms. The ELIS interpreter has a higher performance than that of any other dedicated machine on the market.
著者
吉開 範章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. マルチメディア通信と分散処理研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.61, pp.19-24, 2006-06-05
参考文献数
9
被引用文献数
1

人々が情報ネットワークから得られる理論的な価値について、Sarnoff, Metcalfe, Reedの3法則を基礎に、ネットコミュニティの数と構成、ヒトの脳の処理能力などの観点から考察し、そのモデルが一般式で与えられることを示す。また、そのモデルを用いた応用例として、社会関係を踏まえた情報ネットワーク制御設計法について説明し、ケーススタディとしてMPLSを用いた企業専用網設計への適用例を示す。その結果、社会ネットワークの分析結果を情報ネットワークの設計に活用することにより、ネットワーク全体の信頼度やサービス品質改善に有効となることを示す。
著者
矢野 絵美 北野 有亮 末吉 恵美 篠原 勲 ピンヤポンシニーナット 加藤俊一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.46-54, 2003-06-15
参考文献数
7
被引用文献数
8

現状のレコメンデーションシステムでは,購入履歴をレコメンドの基準として利用しているため,消費者は満足のいく情報を受け取ることができない.我々は商品の物理的特徴に基づいて各消費者の主観的な商品の評価基準をモデル化する.そして,各消費者の評価基準に合う商品情報を提供するレコメンデーションシステムを,(1)イメージ語ネット,(2)感性レコメンデーションシステム,(3)匿名感性データベースという構成で構築する.Consumer cannot receive suitable recommendations by the present system because the system uses purchased logs as the criteria. Our research is aiming at modeling each consumer's evaluation process on the specific features of the items. And we have developed the matchmaking and recommendation system of items whose feature matches with the criteria of each consumer's. For this purpose the system is composed of following functions; (i) the taxonomy of impression words, (ii) matchmaking and recommendation systems, (iii) anonymous Kansei database.
著者
飛田 博章 暦本純一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.245-255, 2003-02-15
参考文献数
20
被引用文献数
2 5

Flat3Dはクリエーションが可能な3次元共有仮想空間システムである.ユーザは3次元空間に2次元キャンバスを設定し,そのキャンバスに対して描画を行うことにより2.5次元的なシーンを構築する.キャンバスをベースとした2.5次元シーンは,既存の3次元シーンに比べシンプルであるが,操作はすべて2次元のスケッチの操作で行えるため,だれでも簡単に3次元空間内にオブジェクトを構築することができる.ユーザは3次元空間内の好きな場所に自由にオブジェクトを構築できるので,あらかじめ用意された3次元シーンをブラウジングするだけの既存のシステムとは異なる.また,共有仮想空間に参加する他のユーザと,キャンバスやシーンを共有することができるので,ユーザはクリエーションを通じてコミュニケーションやコラボレーションを行うことができる.クリエーションを介したコミュニケーションやコラボレーションでは,共同作業での面白さや,様々な表現が生まれると考えられる.本論文では,クリエーションが可能な3次元共有仮想空間システムFlat3Dと,その応用について述べる.Flat3D is a shared 3D virtual world system enabling creative activities andcommunication over a network. Scenes in the Flat3D system are constructedby combining 2D canvases in a 3D scene, thus allowing users to apply 2Dmanipulations and 2D contents in a 3D world. In previous shared virtualworld system, users sharing a virtual 3D world communicated with eachother by text-based chatting through avators, so the communicationcapabilities were quite limited. In contrast, the Flat3D system allowsusers to crete and extend 3D scenes, so they can communicate or collaborateon creative activites. In this paper, we describe the Flat3D system andits capabilities as demonstrated by user experiments.
著者
小磯 知之 阿部 洋丈 池嶋 俊 石川 宗寿 リチャードポッター 加藤 和彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.13-26, 2007-02-15
被引用文献数
4

本論文では,大規模障害を含めた様々な障害を自律的に乗り越えて持続可能な(サステーナブルな)サービスを実現するための基盤ツールキットの設計について述べる.本方式は,多数の計算機を連合させ,それらにサービスの実行とサーバ機能の状態保存を自律的に分担させることでサービスのサステーナブル化を実現する.また,本提案方式は,仮想計算機を用いることで,既存のサービスを容易にサステーナブルにすることを可能にしている.In this paper, we describe our design of an infrastructure toolkit for realizing sustainable services, which can surmount various kinds of failures, including catastrophe. Our system consists of many federating computers. It enables the service to be sustained by making some of the computers run server functions, and the others share storing states of the service. And also our method is designed to be applicable for existing services by using virtual machines.
著者
平野 昌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.348-354, 1995-04-15

「ジュラシックパーク」は実現可能か?遺伝子に記憶された情報の種類と質、さらにその流れについて解説する。
著者
田辺 利文 吉村 賢治 首藤 公昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 自然言語処理研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.188, pp.65-72, 2008-11-19
参考文献数
15

本論文では、深層格の種類が比較的多いとされる格助詞「に」を対象にし、格助詞「に」を介した係り受け関係にある名詞と述部によって深層格を推定する1モデルを提案する。予備的実験の結果、設定した深層格は43種と多種であるにもかかわらず、再現率は約95%に達し、提案する格助詞「に」の深層格推定モデルはおおむね妥当であることが示された。
著者
中西 英之 Katherine Isbister
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.250-256, 2007-03-15

ビデオゲームとエージェント技術の典型的な接点はノンプレイヤーキャラクタである.そこで,本稿の前半ではAI的側面,すなわちキャラクタの動作生成について,後半では心理的側面,すなわちキャラクタのデザインについて述べる.キャラクタの動作生成は,インタラクティブなストーリーの生成と,移動・動作・対話などの行動の制御の2階層に分けられる.前半では各階層に関する既存研究を紹介する.キャラクタのデザインにおいては,キャラクタ間の社会的インタラクションやキャラクタの社会的アイデンティティを上手くデザインする必要がある.後半では心理学をベースにこれを議論する.
著者
杉本 祐介 佐藤 太一 土井 千章 中川 智尋 太田 賢 稲村 浩 内藤 克浩 水野 忠則 菱田 隆彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. UBI, [ユビキタスコンピューティングシステム] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.50, pp.1-6, 2015-02-23

近年,インターネット上では,Facebook や Twitter における日記や amazon.com や食べログにおけるレビューなど,ユーザからの投稿を利用したサービスが数多く普及している.これらのサービスに寄せられる投稿の中には,楽しい,きれいといった感情を示す感情語が数多く含まれており,先行研究では,そういった感情語を利用した観光地のレコメンド手法の提案を行った.その際,喜びや楽しみ,好みなどのポジティブな感情語が 1 つのカテゴリに集中してしまうという問題があり,詳細な分類を行うためにはこの問題を解決する必要があった.そこで本研究では,ポジティブな感情語が 1 つのカテゴリに固まってしまう問題を解決し,レコメンドに適した感情語の分類方法の提案を行う.