著者
加藤肇彦 高野 忠 上杉 邦憲 周東晃四郎 山田 隆弘 金川 信康 井原 廣一 田中 俊之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1936-1948, 1994-09-15
参考文献数
23
被引用文献数
2

衛星搭載用高信頼コンピュータ開発と、その運用による実証について報告する。高い信頼性が要求される衛星搭載用コンピュータの構成要素として、高価で低集積度の宇宙用半導体に比較した地上用半導体の利点に着目し、その短所を補強しながら、高信頼の衛星搭載用コンピュータを構成する方法を検討した。宇宙線の入射による劣化と誤動作に加え、衝撃、振動、温度環境、重量・寸法・消費電カの制限は、いずれもソフトウェアとシステム構成への厳しい要求条件となる。そしてこれらのすぺてを満足するアプローチとして、フォールトトレランス方式を採用した。フォールトトレランス方式を空間ダイバーシティと時間ダイバーシティに大別し、空間ダイバーシティを部品内レベル、部品間レベル、システムレベルで実現した。特にシステムレベルでは処理ユニットを多重化し、緩い同期による出カの多数決をはかった。空間ダイバーシティに宿命的に付随するシングルポイント故障を回避するために、時間ダイバーシティ、具体的には出力フィードバックを採用し、空間・時間ダイバーシティを含めた診断アルゴリズムを創出した、さらに、各状況における最も正しい出力の選択のために、ステップワイズ・ネゴシエーティング・ボーティングの診断法を考案した。最後にこれらの各高信頼化技法を実機で実現し、軌道上で運用してその正当性を実証した、今後は実績をもとにさらなる拡張発展をはかる。
著者
神代剛典 佐藤寿倫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-53, 2004-01-15
参考文献数
35

コントレイルプロセッサは,エネルギー消費効率改善の目的でマルチスレッド技術を利用している.コントレイルプロセッサでは,アプリケーションプログラムは実行中に2 つの命令実行ストリームに分割される.1つは投機流(speculation stream)と呼ばれ,プログラムの主要部分を構成し,高速なパイプラインで実行される.投機流からは,トレースレベルの値予測を利用して,多くの命令実行列が削除されている.実行命令数が削減されているため,投機流でのエネルギー消費効率が改善されている.残りの命令実行ストリームは検証流(verification stream)と呼ばれ,投機流での値予測を検証してその実行をサポートしている.検証流は低速ではあるが電力消費の小さなパイプラインで実行される.したがって,エネルギー消費効率を改善できる.コントレイルプロセッサの鍵は,トレースレベルの値予測を利用することで元々はクリティカルであった命令列を非クリティカルに変え,それらを投機流から検証流に移動させることでエネルギー消費効率の改善を図っている点にある.本稿では,コントレイルプロセッサにおいて重要な役割を果すトレースレベルの値予測機構について検討する.Contrail processors utilize multithreading for improving energy efficiency. In Contrail, an execution of an application is divided into two streams. One is called the speculation stream. It consists of the main part of the execution and is dispatched into the fast functional units. However, several regions of the execution are skipped by utilizing trace-level value prediction. The other stream is called the verification stream. It supports the speculation stream by verifying each data prediction, and is dispatched into the slow units. The key idea is that the trace-level value prediction translates each critical path into non-critical one and moves it from the speculation stream into the verification stream, and then the non-critical instructions are executed on the slow units. In this paper, we investigate a trace-level value predictor for Contrail processors.
著者
神田 陽治 平岩 真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1855-1864, 1995-08-15
参考文献数
9

「場面に応じた音声情報空間」は、作業者の行動領域を分割した部分空間の集まりであり、各部分空間にはそれぞれ作業が割り当てられ、それぞれの作業の遂行に必要とされる音声情報が流される。場面に応じた音声情報空間は、共同作業用のアプリケーションの構築に生かせる次のような特徴を持っている。一人の作業者が音声情報空間を移動すれば、次々と異なる音声情報を聞くことになる。複数の作業者が同一の音声情報空間に入れば、同じ音声情報を聞くことになる。我々は、この特徴を生かす応用例として、議事録を会議の発言に遅れずに作成できる、議事録作成ツールを試作した。本議事録作成ツールでは、重要な発言はいったんボイスメモとして記録される。ついでボイスメモは、議事録作成者によりテキストメモに起こされ、議論の流れが議事録として、進行中の議論を追う形でまとめられる。ボイスメモの内容が明確である場合、ボイスメモは議事録作成者のみに聞こえれば十分である。しかしそうでない場合、ボイスメモの内容を全員が聞いて、内容を明確にする必要がある。本議事録作成ツールは、複数個の場面に応じた音声情報空間をうまく使い分けることにより、どちらの再生要求にも応じられる。試用結果を通じ、場面に応じた音声情報空間の助けにより、議事録作成者が会議の調整役として貢献できる可能性が示された。
著者
山本 眞也 村田 佳洋 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
巻号頁・発行日
2006-02-15

本論文では,ネットワークゲーム向け分散型イベント配送方式を提案する.本方式は,ロビーサーバを用いたHybrid P2P の環境で多人数参加型ネットワークゲームを実現することを目的としている.これを実現するため,ゲームで発生するイベントの登録・通知をゲーム領域の分割によってできた部分領域ごとにゲーム参加者の計算機に担当させ,分散処理させる.各領域のプレイヤ数が増加してイベント通知を担当する計算機の負荷が高くなると,複数の計算機からなる負荷分散木を動的に構築し,イベント通知を負荷分散木を経由して行うことで1台あたりの負荷を軽減する.また,負荷分散木上のノードの動的入れ替えによる,エンド・エンドのイベント配送遅延の短縮法,各プレイヤの視界が複数の部分領域にまたがる場合のイベント配送法を提案する.LAN環境で動作するプロトタイプシステムによる実験と,ns-2によるシミュレーション実験を行い,提案手法が現実のネットワークゲームを実現するうえで,実用的な性能を達成できることを確認した.In order to achieve multi-party networked games with lobby server in Hybrid P2P enviroments, we propose a publish/subscribe based distributed event delivery method. In our method, a shared game space is divided into multiple sub-areas and some nodes are selected from all players to deliver game events occurring in their responsible areas to player nodes. This method also includes a load balancing mechanism which allows each responsible node for the crowded area to dynamically construct a tree of multiple nodes and deliver events along the tree to reduce event forwarding overhead per node. We also propose techniques (1) to reduce end-to-end event delivery latency by dynamically replacing nodes in the tree, and (2) to efficiently deliver events to players who have visible areas over multiple sub-areas. Experiments in LAN using our prototype system and through simulations with ns-2, we have confirmed that the proposed method can achieve practical performance for MMORPG.
著者
熊本 忠彦 伊藤 昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.422-432, 1999-02-15
被引用文献数
1

対話は対話者同士による協同作業であるため 発話の形式や内容だけでなく 対話の進め方なども話し相手によって大きく異なる. しかしながら 機械である対話システムとの対話においてユーザがどのように振る舞うのか ヒューマンファクタに関する解析は十分とはいえず 頑健な対話システムを開発する際の妨げとなっている. 対話システムにユーザとの対話を通して何らかの課題を解かせ その課題を解くまでの対話量を競うというコンテスト(DiaLeague'97)がWWW (world-wide web)ページを介して行われた. 本稿では当コンテストで得られた対話(728対話)のうち 最も頑健であった対話システムとユーザとの対話(141対話)を中心に分析し 機械である対話システムとの対話においてユーザがどのように振る舞うのか 特に対話システムの頑健性に関する要因に焦点を当て調べた. その結果 (1)ユーザはデス・マス調で発話する (2)ユーザは間接的な発話形式を採用することがある (3)ユーザ発話数の増加にともない 異なり形態素数は対話の順番に関係なく増えているが 発話パターン数はユーザ先手のときの方がハイペースに増えている (4)ユーザはシステムの発話パターンをまったくそのままの形では再利用しない (5)ユーザは文脈から外れた予想外のシステム発話に対しても好意的に振る舞う (6)「わかりません」というシステム発話やシステム発話の反復に対して ユーザは 自分の発話を修正して言い直すことよりも 発話内容そのものを変え まったく別のことを発話する方を好む (7)発話理解や対話処理に失敗したときにはシステム発話の繰返しという対話戦略が有効であるといったことが分かった.A dialogue is a collaboration between dialogue participants. Therefore, identification of a conversational partner influences not only the form and contents of an utterance but also the context and expansion of a dialogue. The human factors in a man-machine dialogue, however, are not obvious enough to understand with regard to how people talk with a dialogue system. DiaLeague'97 was the second dialogue contest in which a natural language dialogue system engaged in a dialogue with a human to solve a specific problem. Each of the dialogue systems that participated in the contest obtained a score according to the amount of dialogue with a contest participant. this contest was held on the WWW (world-wide web) pages for one week, and the five dialogue systems had 728 dialogues with Internet users. We analyzed mainly the 141 dialgues between the users and the robustest dialgue system, and investigated the dialogues at the utterance and dialogue levels. As the results, we found the followings: (1) users talked to a dialogue system in a polite manner, (2) users did not always make a sentence using the direct speech, (3) the number of different words increased similarly either in user first or system first, and the sentence patterns observed in a dialgue were richer in variety when the dialogue began with a user question or request, (4) users were not influenced by system sentence patterns in making a sentence,(5) users did not ignore an unexpected system utterance, (6) users preferred to change the contents of their utterance rather than to express it differently when the dialogue system said "I don't understand," and repeated a system question, and (7) dialogue confusion which was caused by the failure of spoken language understanding and dialogue processing was often recovered by repeating a system question.
著者
平井 誠 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.240-249, 1987-03-15
被引用文献数
1

計算機による日本語文解析には動詞の表層格構造が広く用いられているが その際の主要な問題点として 1)名詞句内の多様な助詞表現をいかに格構造記述に吸収し 文解析に利用するか 2)助動詞および補助用言によって惹起される表層格構造の変化にどう対応するか という2点が挙げられる.1)については 名詞句の構文的特性を一組の格助詞で表現された表層格と助詞列から一意的に決まる"格の強度"という2属性で表現した.格助詞を含まない名詞句に 格助詞で表現された表層格を与えるために 係助詞と副助詞に対してそれらが代行可能な格助詞を"潜在格"として付与した.これにより 表層格構造が格助詞だけで記述可能になるとともに 単文の形態的制限を格構造に反映することが可能になった.2)に関しては 助動詞「させる られる たい できる」 補助用言「もらう する おく やすい」等について格変化の様式を決定する構文的および意味的特性を整理し 各々に対応する格構造変換規則としてまとめるとともに一般的な用言句の表層格構造を自立語用言の格構造から生成する手続きを示した.格変化の様式を決定する要因は1)格構造に含まれる格の種類 2)意志性 3)「移動 変化 発生 消滅」という観点からみた動詞の概念的構造 4)動詞の格要素間の関係(因果関係 物理的関係 パラメータ的関係) 5)格要素の有生無生の別である.
著者
鶴田 節夫 鬼塚武郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.427-438, 1989-04-15
被引用文献数
7

産業分野におけるエキスパートシステムの開発が盛んであるが 1人の専門家を代行するエキスパートシテムが中心である.現実社会では複数専門家の協議の必要な大局判断が判断業務のネックとなる場合が多いが 目標や制約が複雑・不明確かつ競合するため その計算機化は難しい.例えば 列車タイヤ作成など列車(運行)スケジューリングでは 列車・旅客・運用など各関係の専門家間の利害調整や協議がネックになる.本論文では 列車スケジューりングを具体例に 大局判断ネックの軽減を目的として複数専門家の推論・協議を計算機と1人の人間(熟練者でなくても良い)により代行可能とする協調推論型知識情報処理の一方式を提案する提案方式は オブジェクト指向やアクタ理論をベースとするが 「オブジェクトの理論的表現であるアクタ理論のアクタとは異なり 1人の専門家に相当するオブジェクトをアクタ(俳優 登場人物.ただしユーザである1人の人間もアクタと考える)として 一般のオブジェクトと区別して概念化し 複数のアクタが互いに関連する要求や問題点をメッセージバッシングにより交信するための枠組としての協議劇」として スケジュール立案のための複数専門家の推論や協議すなわち協調推論をモデル化するものである.実験システムを開発し その有用性を示す.
著者
山本 大介 土井 美和子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.43-50, 2008-01-15
参考文献数
6
被引用文献数
1

本報告では,2007年7月に開催された,RoboCup世界大会サッカーシミュレーションリーグの参加報告を行う.まず,RoboCup世界大会の概要を紹介する.特に,サッカーシミュレーションについて詳しく紹介する.その中で,筆者が参加した2DリーグとPVリーグについて報告する.最後に,参加報告のまとめを行う.
著者
小野束 江川雄毅
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.880-890, 2004-03-15
参考文献数
7
被引用文献数
3

デジタルコンテンツの著作権保護手段として電子透かしが用いられている.しかし,最近は不正コピーの形態も変化しつつある.デジタルデータを不正にコピーする問題以外に書店などでカメラ付き携帯電話により書籍のコンテンツを無断撮影することが社会問題となっている.本論文ではこのような印刷物からの画像撮影に対して抑止力として電子透かしが利用できるか否かを主眼に,印刷耐性のある電子透かしの提案と問題点について検討した.A digital watermark is used as a copyright protection of digital contents. However, illegal copy tools are changing and developing recently. These becomes such a social problem as taking a picture of the book without permission by using the cellular phone with the camera in the bookstore. In this study, a digital watermarking scheme which is robust against such pictures is proposed. Moreover, the watermark is examined for the robustness when the scheme is applied to the image of printed media.
著者
渡辺 知恵美 増永 良文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.65-77, 2003-06-15
被引用文献数
13

我々が開発を行っている仮想世界データベースシステムversion2 (VWDB2 )では,協調作業支援の視点からデータベース機能を備えたネットワークバーチャルリアリティ(NVR )システムの実現を目指している.VWDB2 はデータベース機能によってNVR システムをサポートすることにより,NVR システムで共有された仮想世界に対し高い信頼性および同期性を保障することを目的とする.我々はまずNVR システムで共有される仮想環境の信頼性を保障するために,複数のVR システムと1 台のバックエンドデータベースシステムによるクライアントサーバ形式のシステム構成をとり,仮想環境で行われるすべての更新操作をデータベースへのトランザクションとしてデータベースサーバで管理するためのトランザクションモデルを導入してきた17) .本稿では,仮想環境の同期性を保障するための仮想世界同期法を提案し,その有効性を検証する.VWDB2 では移動などの連続的な操作を行う場合,一定時間ごとに更新要求を行うことによって各クライアントとサーバとの同期を行う.この更新要求を発行する間隔を縮めることによって同期性を高めることができるが,その一方でサーバへのアクセス集中がおこり,全体のパフォーマンス低下を引き起こす可能性がある.そこで,「共有ゴーストオブジェクト」という同期法を新たに導入した.共有ゴーストオブジェクトの導入によりサーバへの同期間隔にかかわらずクライアント間で一定に高い同期性を保つことができる.実験では本同期法の有効性を確認し,サーバへのアクセス集中を大幅に軽減できることを示した.In this paper, the VWDB2, a network virtual reality system with a database function, is investigated particularly from the cooperative work support point of view. In order to realize the database function in the VWDB2, a set of virtual reality systems are system-integrated with a single back-end database system. A novel transaction model is introduced where three types of transactions are introduced, namely primitive transactions, group transactions, and continuous transactions. In the shared work environment provided by the VWDB2, more than one worker may issue continuous transactions concurrently. In that case, some abnormal phenomena are observed mainly due to the inconsistency of database states among virtual reality front-end systems. In order to resolve these phenomena, the neighboring ghost objects are introduced. The ghost objects are effective at eliminating the above difficulties. Based on the neighboring ghost objects, a novel synchronization model is implemented on the VWDB2 to realize a shared work environment. To verify the effectiveness of our approach, some experiments are done by using a new game named the block composition game created for this purpose. It is shown that the approach proposed in this paper ensures both high reliability and high synchronism which are known as the essential features for realizing an efficient shared work environment.
著者
HAMADA HOZUMI
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
Journal of information processing (ISSN:03876101)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-6, 1987-03-31

A new internal representation is proposed for real numbers. It has been named URR for Universal Representation of Real numbers. This approach is based on a bisection method which is applied to real number intervals. With this method, the point of division increases or decreases in a double exponential manner in the globalrange. The main characteristics of the method are as follows. First, overflow/underflow does not, in practice, occur. Second, since the data format does not depend on the length but on the value of the data, a transformation operation is virtually not needed between systems of long and short data. Finally, only one bit of resolution is lost compared with the fixed point form. In addition, arithmetic operations are slightly complicated compared with conventional representation, but they present no special difficulties. This new method is thus the most suitable internal form as an interface not only between computers but also between computers and digital systems which deal with real numbers or physical (scalar) values.
著者
上田 勝彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.8, pp.27-34, 2008-01-25

問題となる文書中の筆跡からその筆者を特定する,いわゆる筆跡鑑定,筆者照合,筆者識別などの研究は,個々の筆者は他人の筆跡とは異なる安定した筆跡(筆跡個性)を持っているという仮説に基づいている.この仮説は,長年にわたる多数の事例研究をとおして経験的に広く認められている.しかし鑑定結果の法科学的証拠としての信頼性を高めるためには,科学的・定量的に厳密に検証されなければならない.著者らは先にこのような立場から日本字署名を対照として,変動エントロピーと呼ばれる量と筆者照合実験によって筆跡個性の存在を検証する方法を提案した.本報告では,この手法を日本字の通常筆跡に適用した結果について述べる.さらに,この結果と先の署名筆跡に対する結果とを比較して,筆跡個性の表れ方の字種依存性と筆者依存性について検討し,筆跡個性に関する仮説の成立要件を考察する.The handwriting analysis to determine the writer, such as so-called handwriting examination, writer verification and writer identification is based on the hypothesis that each individual person has consistent handwriting that is distinct from the handwriting of other individuals. This hypothesis has been accepted subjectively through many case studies. However this hypothesis must be established with scientific and quantitative rigor in order to raise its admissibility as forensic evidence. From this point of view, the author proposed a method to validate individuality of Japanese signature by variation entropy and a writer verification experiment previously. This report describes the result that applied this method to normal Japanese handwriting. The author discusses on difference of a property of individuality expression between normal handwriting and signatures. The author discusses also a condition to which the hypothesis about handwriting individuality is accepted.
著者
吉川 隆英 近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.78-86, 2000-11-15
被引用文献数
2

世代GC方式は,データ割付領域を生成後間もないデータを配置する新世代領域と長寿命データを配置する旧世代領域とに分割することにより,長寿命データが何度もGCを経験するのを防ぐとともに,データ局所性の向上を図るメモリ管理方式である.世代GC方式においては,新世代領域から旧世代領域への移動(殿堂入り)時期の適切な選択が性能を大きく左右する.通常,殿堂入り時期はデータのGC経験回数によって決定される.そして,GCは新世代領域を使いきった時点で発生する.したがって,新世代領域サイズを動的に変更すれば,殿堂入り時期は動的に変更できる.本稿では,GC時に回収されるゴミの比率のモデルに基づきデータの平均余命を推定,その結果に沿って新世代領域サイズを動的に変更することによって,殿堂入り時期を適切に調節する世代GC方式を提案する.また,この方式を並行並列論理型言語処理系KLICに実装し評価を行った結果も述べる.A generational garbage collection segregates heap objects into multiple areas by their age, and garbage-collects areas containing older objects less often than those of younger ones. In a version of this scheme using two areas, new heap objects are allocated to the younger generation area, and advanced to the older generation area after a while. With an appropriate advancement policy, it can avoid repeated inspections of long-lived objects and improve reference locality. When to advance objects to the older generation is usually decided by the number of GCs that the object experienced. A GC occurs when the younger generation area is filled up. So the advancement policy can be dynamically modified by adjusting the new generation area size. In this paper, we propose an adjustment scheme based on {エit garbage ratios}, by which one can estimate life expectancy of short-lived objects. And we also report the evaluation results of this sheme when applied to an implementation of a concurrent and parallel logic programming language, KLIC.
著者
田村 晃裕 高村 大也 奥村 学
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1954-1962, 2006-06-15
参考文献数
12

既存の質問応答システムは,複数文で構成される質問には答えられない.そこで,我々はそのような複数文質問にも対応できる質問応答システムの構築を目指す.その第1 段階として,複数文質問の質問タイプを同定する手法を提案する.具体的には,まず最初に,入力として与えられた複数文質問から質問タイプを決める際に最も重要な1 文を抽出する.そして,その抽出された1 文を用いて質問タイプを同定するという手法をとる.また,本論文では,質問タイプを同定する際に有効な情報となる名詞を特定するルールも提案する.複数文質問を含んだ実験データに対して,これらの情報と手法を用いて質問タイプを同定することで,F 値が8.8%,正解率が4.4%改善できた.Conventional QA systems cannot answer to the questions composed of two or more sentences. Therefore, we aim to construct a QA system that can answer such multiple-sentence questions. As the first stage, we propose a method for classifying multiple-sentence questions into question types. Specifically, we first extract the core sentence from a given question text. Then, we use the core sentence in question classification. We also propose a rule for extracting the effective noun in question classification. The result of experiments with the dataset including multiple-sentence questions shows that the proposed method improves F-measure by 8.8% and accuracy by 4.4%.
著者
石井 徹哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.24, pp.37-42, 1999-03-05
被引用文献数
1

警察庁および郵政省は「不正アクセス」を禁止・処罰する素案を提示し、今国会において法案を提出する予定である。しかし、そこで問題とされるサーバへの「不正アクセス」行為はその内容が不明確であり、その規制は実質的な処罰根拠を欠くうえ、規制効果の点でも問題がある。むしろ個人の情報コントロール権に基づく情報セキュリティの侵害、情報のインテグリティの侵害として無権限アクセスを位置づけ、データに対する無権限アクセスの規制および処罰が必要であり、それが情報処理の信頼性の確保につながるものといえる。Last year, each of NPA and MPT made their proposal of the act against "Irregular access" to a computer system, and they will be present the legilative bill together. But "irregular access" to a computer system, which is issued there, is vaguely, its criminalization has no essential reasonable reason, and I have some doubt about the deterrant to crime by "irregular access". It is necessary for a better deterrant to criminalize unauthorized access to data in computer system and transfered data with the reason, why it violates Data Security or Dara Integrity depended on personal right of contraling our own information. This way of lagislation leads to securing reliability of information processing.
著者
北井 克佳 吉澤 聡 マシエルフレデリコ 鍵政 豊彦 稲上 泰弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.3044-3053, 1998-11-15
参考文献数
20
被引用文献数
2

並列計算機のスケーラビリティを活かした並列ネットワーキング方式について検討した.複数のネットワーク・インタフェースを用いて同一クライアントと双方向通信を可能とするOSの機能拡張により,並列通信による通信性能の向上とインタフェース間の負荷の均一化によるシステム性能の向上を図った.32ノード構成の研究用並列計算機Paradise (Parallel and Data?way Oriented Information Server)を用いて評価した結果,6並列通信で転送量50MB以上の場合には通信性能が5.6倍に向上した.This paper discusses the parallel networking feature that supports performance scalability to the number of network interfaces.On our experimental parallel processor,Paradise(Parallel and Data-way Oriented Information Server),we have developed a new IP routing feature that allows every network interface to communicate to and from the same client processor,thus providing scalable high-performance communication not only for a single session by using multiple network interfaces,but also for total system throughput by balancing the sessions among the network interfaces.The results of performance evaluation,using six Ethernet nodes on Paradise,ATM-LAN and three workstations,has demonstrated the effectiveness of this parallel networking feature.
著者
三井 信雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.1017-1023, 1975-11-15
著者
沖野 正宗 加藤聰彦 牛島 準一 伊藤秀一 飯作俊一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2557-2565, 2004-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
4

近年,その場に集まったノード間が無線インタフェースを用いて簡易にネットワークを構築するアドホックネットワークが注目されている.それにともない,多くのノードが使用されるまたは無線の到達距離が長いなどの理由で,無線伝播範囲に多数のノードが存在する高密度なアドホックネットワークに対する考慮が必要となる.このようなネットワーク環境では,特に経路を発見または伝達するための制御メッセージの転送オーバヘッドが増大するという問題点が生ずる.本稿では,オンデマンド型のAODV ルーチングプロトコルを拡張し,無線伝播範囲の離れたノードのみに経路要求メッセージを中継させる方式を提案する.この方式は,追加のメッセージ交換のオーバヘッドがなく,必要なノードのみにメッセージの中継を行わせ,さらにネットワークの動的な変化にも対応できることを特徴にしている.さらに本稿では,ネットワークシミュレータを用いて提案方式を評価し,AODV に対する優位性を明らかにしている.Recently, ad hoc networks come to be actually used in sensor networks and in network construction in case of disaster. Accordingly, it is required to study the routing in high density ad hoc networks, where multiple nodes exist within radio propagation area. In such a network environment, it is important to decrease the overhead of route request messages flooded into the whole network. In this paper, we propose a modified AODV protocol adapted to high density ad hoc network. Its feature includes that it does not introduce any additional message overhead, that it enables necessary and sufficient nodes to relay route request messages and that it copes with network configuration change. This paper also shows the performance evaluation indicating that our protocol can reduce the total number of route request messages compared with the original AODV.
著者
渡邊 坦 久島伊知郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.756-760, 1992-05-15
参考文献数
6

中間語をテンプレートと構文解析手法でパタン照合し オブジェクトコードに変換する方法は コード生成の有力な一方法である中間語の構文規則は暖昧性が高いので その場合 パタン照合の競合解消が重要課題となる本論文では 還元条件を各生成規則に対して指定できるボトムアップ型構文解析系において 部分パタンを還元してコードに変換する際 そのコードに固有の標識を付け その部分パタンを先頭とするより長いパタンが検出された時 その標識まで遡ってコードを生成し直す方法を示す これはある種のシフト/還元競合を誤りの恐れなく解消する簡易な方法であり 効率の良いオブジェクトの生成に使える