著者
小松 孝徳 森川 幸治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.71-78, 2004-10-28
参考文献数
7

円滑なコミュニケーションを行っている二者間には,自ら表出した情報が相手のそれに対して相互的に同調していく「引き込み現象」がよく観察される.そこで本研究では,人間が簡便に表出できる音声の「発話速度(話速)」に注目し,人間同士の対話状況において話速に関する引き込み現象が観察されるのか,また,インタラクションの相手が人工物となった場合で観察されるのかを確認する実験を行った.まず,人間同士の対話における話遠の引き込み現象の有無を観察するために,英会話の教材のような10種類の原稿を10人の被験者同士で交互に読みあっている際の話遠を計測した.その結果,録音された計90発話の約63%にあたる57発話において,相手の話速に自分の話速を合わせようという『話遠の引き込み現象』が観察された.続いて,あらかじめ録音された様々な話速の音声を再生する自動応答システムと被験者とが同様の対話文を読みあう実験を行った結果,27人の被験者の計243発話のうち約76%における186対話において,話速の引き込み現象が観察された.
著者
岩野 公司 関 高浩 古井 貞熙
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. SLP, 音声言語情報処理 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.55-60, 2003-05-27
参考文献数
6

本論文では,韻律情報を利用した雑音に頑健な音声認識手法について述べる。韻律特徴量として,時間-ケプストラム平面のハフ変換から得られる対数基本周波数の傾き(△log F_0)と最大累積投票値を利用し,通常の音声認識で用いられる音響特徴量と結合して用いる.音韻と韻律の融合モデルは,音節単位のマルチストリームHMMで構築する.融合モデルの様々な雑音環境における頑健性を確認するため,不特定話者の連続数字発声を対象とした音声認識実験を行った.実験の結果,本手法によって様々な雑音環境において数字正解精度の改善が確認され,△log F_0と最大累積投票値が相補的に認識性能の向上に貢献することがわかった.また,基本周波数情報を音声認識に用いることで,雑音環境下における数字境界の推定精度が向上し,それによって,数字正解精度の改善と,頑健な挿入ぺナルティーの設定が実現されることが確認された.
著者
戸倉 毅 鈴木 隆子 中村 浩子 牧野 優子 高倉 穂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-28, 1988-01-15
被引用文献数
5

本論文では ワードプロセッサ等のOA機器に個性的で美しい日本語出力を実現することを目的とした 毛筆体文字の計算機による生成方式について論じる.毛筆体文字は ストロークごとに生成する.各ストロークは骨格線上の3?7点のx y座標と太さ情報をパラメータとし それらを3次スプライン補間し輪郭情報を得る.ストロークの起筆・収筆部は 12角形の筆触形をあてはめることにより筆らしさを表現する.文字をストローク単位に生成しているため 文字の変形が可能であり ひらがなに対してつづけ字を実現している.また 各ストロークのパラメータを半自動的に抽出し文字データを容易に作成できるエディタ 外字を簡単に作成できるエディタも同時に実現した.JIS第1水準の漢字およびひらがな 片仮名計3148字の行書体文字を作成し 実用レベルの出力品質が得られていることを確認した.データ量は 平均的な11画の漢字について約150バイト 作成した3148文字に対し432kバイトであり 実用上妥当な量である.
著者
馬渕 充啓 高田 真吾 小沢 健史 豊岡 拓 松井 慧悟 佐藤 聡 新城 靖 加藤 和彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.974-988, 2010-03-15
被引用文献数
1

多くの大学では,情報コンセントや無線LANをいたるところから利用することができるようになりつつある.利用者がすべてのネットワークに対して接続するための権限(接続権限)を持っているとは限らないため,ネットワークを利用できないことがある.それらを利用できる利用者が接続権限を信頼できる他の利用者に手軽に渡すことができれば,他の利用者も手軽にそれらを利用することができる.本論文では,接続権限を利用者間で受け渡し可能なネットワーク制御機構CaNectorについて述べる.我々は,ケーパビリティに基づくアクセス制御を用いてCaNectorを実現している.CaNectorで扱うケーパビリティは,管理権限(接続権限を管理するための権限)ありのケーパビリティと接続権限のみのケーパビリティに分類される.管理権限ありのケーパビリティを保持している利用者は,そのケーパビリティを元に手軽に新しいケーパビリティを作成し,信頼できる他の利用者に渡すことができる.CaNectorは,筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻所属のソフトウェア研究室内で約6カ月間問題なく稼働している.Information outlets and wireless LANs are becoming available everywhere in many universities. Since a user doesn't always have access rights for all the networks, the user sometimes cannot use a network. If a user who can use them can pass his or her access rights to other trusted users easily, other users can use them readily. This paper describes CaNector, which enables passing access rights among users. We realize CaNector by using capability-based access control. Capabilities in CaNector are classified into two types: the first one is a capability that includes both management rights and access rights, and the second one is a capability that includes only access rights. A user who has a capability that includes management rights can create new capabilities based on his or her own capability and then pass them to another trusted user easily. CaNector has been working for 6 months in Software laboratory in Department of Computer Science, Graduate School of Systems and Information Engineering, University of Tsukuba.
著者
井上 亮文 吉田 竜二 平石 絢子 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.212-221, 2004-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究では,映画の映像理論に基づく対面会議シーンの自動撮影方式を提案する.対面会議シーンの撮影には複数のカメラを用いる必要があるが,位置的に離れたカメラの映像でスイッチングを行うと急激な変化が生じ,視聴者が参加者の位置関係の認識に混乱を来たす.提案手法では,人物の位置関係を明確にする映像理論であるイマジナリーラインを設定および解除する方法と,参加者の対話シーンを強調する三角形配置に従った撮影用カメラの決定方法を定義している.実験では正確なイマジナリーラインを冗長な部分があるものの70¥%の確率で設定でき,映像表現に影響を与えるような検出ロスは少なかった.アンケートによる比較実験では,人手でスイッチングしたものと比べて位置関係の見やすい映像を自動生成できたことが確認された.In this paper,an automatic shooting method for face-to-face meeting scene based on grammar of the film language is proposed.Shooting a meeting scene requires multiple video cam- eras,however,viewers may get confused in case of switching shot between spatially distant cameras.To shoot participants effectively,we introduce two filming theory into automatic shooting method.The dectection of the メimaginary line モmakes spatial relationships of the participants clear.The determination of the メcamera triangle モfigures out the conversation of the participants.Although there remains some redundancies,the detection ratio of the ideal imaginary line was 70%,the loss of which had less effects on the video image.The comparative experimental result indicated the availability.
著者
斉藤 康彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 人文科学とコンピュータ研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.25-32, 2009-01-16
参考文献数
6
被引用文献数
2

歌集中に一定の回数以上出現する,一定の長さ以上の文字列を抽出し,これらの文字列に基づいて歌集を比較する分析方法を示す.古今和歌集と新古今和歌集の比較分析に本方法を適用した結果,抽出された文字列について,次のようなことが確認された.古今和歌集では,作者の心情を表出する表現が多く,恋歌の部立では,「こひもするかな」「ひとのこころの」がよく使われている.新古今和歌集では,自然の景物を指し示す表現が多く,特に秋や月に関わる「あきかぜぞふく」「あきのはつかぜ」「あきのゆふぐれ」「あきのよのつき」「あきはきにけり」「ありあけのつき」「はるのよのつき」などを含む歌は,歌集中の特定の箇所に集中して出現する.
著者
神里 晃 河野 真治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. OS,[システムソフトウェアとオペレーティング・システム] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.61-67, 2006-05-12
参考文献数
5

我々は状態遷移記述に向いたCの下位言語であるContinuation based C(CbC)を提案,実装している.CbCはデバイスドライバやOSの記述,または最適化自体を記述するのに向いているが,ハードウェアの記述自体も可能である.ここではPS3に内蔵されたCell Chipの記述を行い,その有効性を示す.これにより,CbCで記述されたCellは,実機やエミュレータ抜きで性能を評価することが可能となる.
著者
美濃導彦 岡崎 洋 坂井 利之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.513-522, 1991-04-15
被引用文献数
18

画像データベースにおいて 各画像に検索のためのインデックスを自動的に付ける方法は 検索方法と関わる重要な問題である我々は 人間に親和性のある検索方法を実現するためには画像を認識することが必要であるとの立場から 画像を認識し その属性特徴をキーとして 画像を検索できるシステムを風景画像中の山を対象として作成したまず 入力された画像に存在する山は 前処理 領域分割処理などの構造化処理を経て認識されるこれにより システムは山の領域を判別できるので 山の属性特徴としての 色 形 大きさ 頂上の位置の4つの属性特徴を計興し これを画像検索のためのインデックスとする検索方法は システム主導型の検索方法であるすなわち システムが山の属性特徴をメニュ形式で提示し 利用者はそれを対話的に選択していくことにより検索をすすめるこの方法は 他の方法(スケッチによる類似検索法など)よりも柔軟性にかける場合もあるが 記憶が暖昧なときでも画像が検索できるという大きな利点がある実際にシステムを作成し デモンストレーションにより評価した結果 対象物の属性特徴を用いた画像検索法の有効性が確認できた
著者
橋田 浩一 長尾 確 宮田 高志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 人工知能研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.95, no.23, pp.133-140, 1995-03-06

コミュニケーションにおいては、メッセージの送り手も受け手も、送り手の意図した意味内容を受け手が正しく理解することを望むから、コミュニケーションは必然的に協調的な作業となる。本稿では、利己的に効用最大化を図る行為者がメッセージとその内容との間の最適な対応関係の共有を行ない、コミュニケーションの頑健性を高める様子をゲーム理論的に解析する。2個の行為者の間での1個のメッセージの送受信は、一般に、n人非協力ゲームとして定式化でき、そのゲームにおけるNash均衡解のうち両方の行為者の何らかの共同効用の期待値を最大にするものが最適な対応関係を与える。自然言語における照応現象の一部はこの理論によって一般的に説明できる。
著者
石井 直樹 平石 智宣 延澤 志保 斎藤 博昭 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. SLP, 音声言語情報処理 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.23-30, 2000-06-02
参考文献数
8

日本語略語を復元するシステムについて報告する。このシステムは、任意の日本語略語に対して、新聞記事コーパス中の語句および辞書中の語句のうちから、いくつかの復元規則を用いて、元の語になると考えられるものを順位を付けて出力するものである。復元規則として、「元の語が略語内の文字を全て、同じ順で含むこと」、「略語と元の語を構成する字種が等しいこと」、「元の語の文字数が略語を構成する字数の4倍以内であること」、「略語内の文字が元の語の中で不連続的に含まれていること」といったことを定めた。用いる復元規則の数を変えながら404の略語に対して実験を行い、7割以上の確からしさで復元に成功した。
著者
中尾 恵 黒田 知宏 小山博史 小森 優 松田 哲也 高橋 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2255-2265, 2003-08-15
参考文献数
29
被引用文献数
8

本稿では,高度な手術シミュレーションへの適用を目的とした軟組織切開フレームワークを提案する.最初に,質点系における各ノード間に生じる張力によって,軟組織の緊張状態をモデル化する.また,質点系のリモデリングと適応型の四面体分割手法によって,複数の四面体によって構成される3次元仮想オブジェクトに対する切開をシミュレートする.本手法は,組織切開後のトポロジーの変化とリアルタイムな変形に関する一貫した記述を与え,組織の物理的特性を反映した切開創を導出する.さらに,オブジェクト構成要素の階層構造を用いた力学計算の局所化によって,大規模なオブジェクトに対する広範囲でかつ対話的な操作を実現する.ノード階層を用いたリフレッシュレート管理機構は計算精度と計算コストの制御を可能とし,安定なシミュレーションを提供する.上記手法を1台の力覚デバイスをともなった実験システムに実装し,成人男性から取得した胸部MRIデータを適用した.導出される切開創の形状と計算時間に関する定量的な検証の結果,提案フレームワークが高精度かつ対話的な組織切開シミュレーションを提供することを確認した.This paper proposes a framework to simulate soft tissue cutting for advanced surgery simulation.A strained status of soft tissues is modeled as tension between neighboring vertices in a particle-based model.Both remodeling particle systems and adaptive tetrahedral subdivision achieve cutting simulation of tetrahedral objects.These methods deal with topological change and real-time deformation after soft tissue cutting consistently,and present volumetric cuts based on physical characteristics.Local calculation using dynamic elements hierarchy enables interactive and global cutting into large objects.Management structure of refresh rate performs stable simulation by controlling real time performance and simulation quality.3D MRI dataset acquired from an adult man was applied to simulation system with a force feedback device.Quantitative evaluation of calculation time and quality of cuts confirmed that our framework contributes to accurate and interactive tissue cutting.
著者
渡辺 義明 渡辺 健次 江藤博文 只木 進一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.2802-2809, 2001-12-15
参考文献数
12
被引用文献数
19

大学の教育と研究を支援するため、キャンパス全域に公開端末や情報コンセント、無線LAN等の配備が進んでいる。我々は、このような不特定多数が多様な端末を接続して利用するネットワーク環境に適用可能な、利用者認証と利用記録を行うためのゲートウェイシステムOpengateを開発した。本システムは、閉鎖状態の端末からゲートウェイを通過するWebアクセスと行うと認証画面が表示される平易なインタフェースを持つ。認証にはPOPやFTPサーバが利用できる。認証後には端末へJava Appletを送って利用終了を監視する。このような方法により、ゲートウェイシステムの設定だけで、個人持参のPCから固定設置のWeb専用端末まで、多様な端末群を利用者の事前設定なしに制御できる。本システムはすでに、学内において約9ヶ月にわたり支障なく稼働している。To Support educational and research activities,a lot of "terminals for public use,""network sockets" and "wireless LAN" are implemented in the whole area of the campus. We have developed a gateway system named "Opegate" to authenticate and record users in such an open network environment.When an user accesses from a terminal in closed state to any web site through the gateway system,the system returns the page for authentication.To authenticate the user,POP and FTP servers are applicable.After the authentication,the system sends Java Applet to the terminal and watchs the usage.The setup procedure is needed only for gateway System.Without any setup of each terminal, the system controls wide variety of terminals,from web specific terminals for public use to personal PCs connected to network socket or wireless LAN.The system has been working for 9 months in our campus.
著者
宮村 勲 榎本 肇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.614-621, 1983-09-15

本論文は プログラムの生産 理解 修正を容易にするような新しい並列処理言語について述べている.この目的を達成するため プログラムに人工的な制約を課さず プログラムの構造が問題の論理構造を静的に反映できなければならない.プログラム・テキスト中に問題の階層構造を表現するため process resource procedure function という4種類のモジュールを用意し それらの任意の入れ子を可能にした.共有変数に起因するデッドロック問題を避けるため 変数のスコープはそれが宣言されたモジュールだけに制限する.モジュール間の相互作用はパラメータ転送 メッセージ交換 resource を用いて行われる.process の動作は 通常動作と例外的事象に対する動作に分けて記述される.例外的事象とは他モジュールから緊急メッセージを受信することである.そのようなメッセージは常時受信可能である.また メッセージ交換の相手は静的と動的の両方で制限される.resourceは共有objectに対するアクセスを制御する.resource procedure 間の並列動作の可能性は 個々の手続きとは分離して静的に記述する.個々の手続きが呼び出されるときの前提条件も分離して静的に記述される.非決定的表現として if文 do文 while文の三つを用意する.これらはDijkstraの提案したgarded commandに基づくが guard に入出力文のどちらでも書けるように拡張されている.本言語の有効性を明らかにするため フィボナッチ数列を計算するprocedureと Readers/Writers問題のプログラム例を示している.
著者
中本 昌由 南原 英生 荒木 勇一朗 雛元 孝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.42, no.14, pp.64-72, 2001-12-15
被引用文献数
2

本論文では,非ガウス性の確率過程におけるピーク値分布評価法について論じている.ここでは,まず,ガウス過程のピーク値分布評価式により2 つの重み関数を定義し,重み関数の線形結合に基づいてピーク値分布をモデル化している.提案モデルは,帯域情報から求められるパラメータ(帯域パラメータ)に基づいて2 つ重み関数を調節することにより,確率過程のピーク値分布を表現するものである.そして,これを非ガウス過程に適用することにより,非ガウス過程における新しいピーク値分布評価式を導出している.さらに,我々がすでに提案している非ガウス過程に対応した拡張帯域パラメータを使用した場合のピーク値分布評価式も提案している.これらの評価式は,ガウス過程や狭帯域過程のようなスペシャルケースでは,近似をともなわないピーク値分布評価式と一致する.計算機シミュレーションでは,非常に良好な結果が得られており,提案手法の有効性が確認されている.In this paper,we consider an approximate evaluation of the peak values distribution (PVD) for a non-Gaussian random process.We define two weighting functions from the PVD evaluation formula for a Gaussian random process,and model the PVD by a linear combination of weighting functions.The weighting functions are adjusted by a parameter which is related to frequency band information (band-parameter).Furthermore,we derive a novel formula for the PVD approximation of a non-Gaussian random process by applying the proposed model.We also propose a formula with an expanded band-parameter in which a non-Gaussian random process is assumed.This formula agrees with formulas derived without the approximation in the cases of a narrow-band random process and normal Gaussian random process.Results of computer simulations show this methodhas a goodperformance on the PVD evaluation of non-Gaussian random signal,and confirms the effectiveness of the proposed model.
著者
竹内 理 レ ・モアルダミエン 坂東 忠秋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1680-1694, 2003-07-15
参考文献数
15
被引用文献数
2

高速アクセス網の普及にともない,高品質なストリームデータの有料配信サービスが注目されてきている.このサービスの実用化には,高い配信能力,配信品質の保証機能,既存の市販ストリームサーバとの機能互換性のすべてを兼ね備えたストリームサーバが必要である.本研究では,上記ストリームサーバの実現を目指し,外付けI/Oエンジン方式と呼ぶストリームサーバの構成方式を新規に提案する.外付けI/Oエンジン方式では,市販のストリームサーバと専用OS搭載サーバを連動させることで,上記要件を同時に充足するストリームサーバを少ない開発工数で実現する.さらに,Darwinストリームサーバと,HiTactix(著者らが開発したストリームサーバ向け専用OS)を搭載したサーバを実際に連動させ,外付けI/Oエンジン方式の定量的な評価を行った.評価の結果,外付けI/Oエンジン方式を用いることで,サーバに9K行程度のコードを追加するだけで,機能互換性を維持しながらも,HiTactixが提供する配信性能を保持するストリームサーバが実現できること等が明らかになった.With broadband networks expansion, charged streaming services of highquality stream data are likely to become common. In order toefficiently implement such services, streaming servers providing highdata throughput performance, mechanisms to ensure streaming qualityand compatibility with existing streaming servers are desirable.In this paper, we propose the external I/O engine architecture, whichimplements a streaming server as described above using both aconventional streaming server running on a general-purpose OS and anI/O engine server implemented over a special-purpose OS. With thiscombination, we can lower the necessary coding amount in order toimplement the services provided. We implemented the server using theDarwin Streaming Server and HiTactix I/O engine server and evaluatedthe performances. We confirmed that the modified server can achieveHiTactix I/O performances without losing compatibility, with only 9Klines of code added.
著者
芦原 評 清水 謙多郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1379-1388, 1997-07-15
参考文献数
9

特定の故障箇所が存在しないにもかかわらずシステムの永久停止をもたらすデッドロックは計算機システムにおける重要な問題である.デッドロック検出問題は,排他的に使用可能な資源群とそれを要求するプロセス群からなる一般資源システムの状態グラフ還元問題としてモデル化されるが,使用すると消滅する消費資源を含むシステムでのデッドロック検出問題は一般にはNP完全であり,その重要性にもかかわらず注目されることが少なかった.本論文では,消費資源を含むシステムに一定の制限を加えることで,3つのクラスにおいて多項式時間内でのデッドロック検出が可能であることを示す.Deadlock detection in computer systems can be modeled as a graph reduction problem of general resource systems,which consist of processes,reusable resources and consumable resources.Deadlock detection in reusable resource systems is well known.If all resources in the system are released after use,the problem has polynomial-time solutions.However,the problem is NP-complete in general resource systems with consumable resources,units of which vanish after use.This paper provides three special cases of systmes with consumable resources for which polynomial-time deadlock detection algorithms exist.It is shown that those three factors,(1) consumable resources with non-trivial selections in the allocation of currently available units,(2) processes which request more than one unit and (3) resources which wait for more than one process,are all necessary for the problem to be NP-complete.
著者
水上 直紀 中張 遼太郎 浦 晃 三輪 誠 鶴岡 慶雅 近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2410-2420, 2014-11-15

本論文では,牌譜を用いた教師付き学習による麻雀プログラムの作成法について述べる.まず,上級者の牌譜を用いたパーセプトロン学習によって1人麻雀プレイヤを作成し,それを拡張することによって4人麻雀への適用を行う.拡張は,1人麻雀プレイヤに「降り」と「鳴き」の機能を教師付き学習によって導入することで行った.オンライン麻雀サイト「天鳳」で作成されたプログラムの実力を評価した結果,レーティングとして,平均的な人間プレイヤーの実力を大きく上回る1,651点が得られた.This paper describes a supervised machine learning approach for building a mahjong program. We start with building a one-player mahjong program by Perceptron learning with game records of expert human players,and adapt it to four-player mahjong. The adaptation is achieved by incorporating the "folding" and "calling" functionalities that are separately learned from game records. We have evaluated the playing strength of the resulting program on a large online mahjong site "Tenhou". The program has achieved a rating of 1,651, which is considerably higher than that of the average human player.
著者
大島 芳樹 脇田 建 佐々 政孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.62-77, 2000-11-15
参考文献数
16

高機能なSmalltalk処理系であるSqueakを携帯情報端末Zaurusに移植し,Zaurusの持つ独自のハードウェアにあわせて拡張を施したので,システムの実現方法,性能,可用性の評価について報告する.我々の行った実装作業は大きく2つに分類される.まず,基本的な機能の性能を向上させるために,Zaurus上でのイベント処理方式やビットマップ変換方式の性能について定量的評価を行い,それに基づいて最適化を行った.さらに,Zaurus独自の拡張を施すことによって,ペン入力,音声機能,デジタルカメラ,TCP/IPネットワーク,シリアル・IrDAポート,電力消費制御,およびフラッシュメモリファイルシステムのようなPDA独自のハードウェアをSqueakから操作可能とした.この移植および拡張はZaurus依存の部分を記述した4000行程度のC記述および600行ほどのSqueak記述によって達成された.我々は大小各種のベンチマークによる性能評価およびいくつかのアプリケーションによる可用性評価を行った.Zaurusシリーズの最上位機種であるMI-EX1上のSqueakは,400MHz G3 Macに対して最高1/8程度の性能を示した.このベンチマークの数字および実際の使用テストから,このシステムは十分実用に耐える性能を持つことが分かった.我々の実装によって,さまざまな周辺機器を操作できる実用的なプログラミング環境を手のひらサイズの機器上で運用できることが示された.This paper reports our effort to implement Squeak Smalltalk on a family of personal digital assistant ({エit PDAエ/}) devices called Zaurus. The Squeak on Zaurus ({エit Squeak/Zaurusエ/}) offers programmable interfaces to various Zaurus specific devices. The system is evaluated in terms of its usability and performance. Two important issues in implementation of Squeak/Zaurus are as follows. Firstly, we measured performance of several implementation strategies for event-handling and bitmap conversion, which are dominant performance issues, and adopted the best ones in Squeak/Zaurus. Secondly, we have extended Squeak to support PDA specific hardware such as pen input, audio, digital camera, TCP/IP network, serial and IrDA communication, power consumption control, and file I/O on flash memory. These PDA specific devices are made directly accessible to the programmer. Those Zaurus specific functions are written in 4,000 lines of C code and 600 lines of Squeak code. The performance of Squeak/Zaurus has been evaluated by various micro- and macro-benchmarks and its usability has been tested by applications. MI-EX1, the highest model of Zaurus family, marked 1/8 of the performance of Squeak running on 400エ,MHz G3 Mac at best. This result and the usability tests indicate that it performs sufficiently well for practical use. The Squeak/Zaurus implementation demonstrates feasibility of practical programming environment on palm size devices that can operate PDA specific hardware.
著者
立川 敬二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2001-01-15

情報処理学会はコンピュータが日本に入ってから間もない時期に設立されたと伺いますが,今や隆盛のコンピュータの世界を思いますとき,皆様は先見の明をお持ちでいらしたと申し上げられます.このコンピュータパワーを我々,移動通信の方でも大いに活用させていただこうと思っておりますし,現実に最近はもっぱらコンピュータ関連のビジネスが盛んになっているといえると思います.