著者
宮沢 孝幸 上田 真保子 入江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ネコ白血病ウイルス(feline leukemia virus:FeLV)は猫に免疫不全や白血病を引き起こす。猫はFeLV感染後数年でほとんどが死に至るため、FeLV感染症は獣医臨床上大きな問題となっている。FeLVに対するワクチンは90年代から市販されているものの感染防御能は低い。感染防御能の低さは、ワクチンが中和抗体を誘導しにくいことによるが、その原因はFeLVの外被糖タンパク質のグリカン(糖鎖)にある。本研究ではグリカンによって隠されていた中和エピトープを露出させたシュードタイプウイルスを作製することに成功した。本研究により、感染防御能の高いFeLVワクチンの開発に道を拓いた。
著者
岩倉 具忠
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.139_a-61_a, 1987-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
河原 達也 奥田 統己
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

アイヌ民話(ウウェペケレ)の音声認識の研究に取り組んだ。2つの博物館から提供されたアイヌ語アーカイブのデータを元に、沙流方言を対象としたアイヌ語音声コーパスを構築した。このコーパスを用いてEnd-to-Endモデルに基づく音声認識システムを構成した。音素・音節・ワードピース・単語の4つの認識単位について検討し、音節単位が最もよいことを示した。音声認識精度が話者オープン条件において大幅に低下する問題に対して、CycleGANを用いた教師なし話者適応を提案した。さらに、日本語とアイヌ語が混合した音声に対して、音素認識と単語認識を組み合わせることで、アイヌ語の区間の検出(言語識別)を実現した。
著者
大野 徹
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.347-377, 1970-12

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
生駒 晃彦
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

健常被験者延べ30名に参加していただき、前年度の実験からわかった、かゆみ過敏を最も生じやすい波長、周波数の皮膚電気刺激を用いてかゆみ過敏を生じさせ、そこにヒスタミン、セロトニン、ブラディキニンを投与した際の反応を調べた。その結果、かゆみ過敏状態下においては、ヒスタミンにより通常よりも強いかゆみが生じた。セロトニン、ブラディキニンにもその傾向があったが有意差には到らなかった。このことは、3物質の全てによって有意にかゆみが強く生じたアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態のほうが電気刺激によるかゆみ過敏よりも程度が強いことを示唆する。また、抗ヒスタミン薬内服によりヒスタミンのかゆみはかゆみ過敏状態下であろうとなかろうと完全に抑制できたが、セロトニン、ブラディキニンのかゆみは影響を受けなかった。これはアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態と同じであった。また、ステロイド外用薬の塗布はいずれのかゆみにも影響を与えなかった。これは、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏と異なる点であり、電気刺激のかゆみ過敏が末梢の炎症と無関係に生じていることを示唆している。また、ヒスタミン、セロトニンで生じる軸索反射性紅斑の大きさには、かゆみ過敏状態下とそれ以前の状態とで有意差は見られなかった。これは電気刺激のかゆみ過敏が末梢神経の閾値低下よりもむしろ中枢性であることを示唆している。これらを総括すると、電気刺激誘発性のかゆみ過敏も炎症性メディエーターによるかゆみの程度を増強させるが、その程度はアトピー性皮膚炎の場合よりは弱く、その理由は、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏には炎症による末梢神経の閾値低下が含まれるのに対して、電気刺激のかゆみ過敏にそれが含まれないからであると考えられた。
著者
大野 徹
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.218-251, 1970-09

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
内田 次信
出版者
京都大学
雑誌
西洋古典論集 (ISSN:02897113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.62-80, 1994-03-30

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。In the first half of the Odyssey, both the hero's longing for his wife and her attachment to her absent husband are emphasized. This could suggest to the audience that the poet would reproduce the original naive world of the homecomer, but in the second part the hero manifests mistrust of women in general, and would not confide his true self or intention of revenge to his wife. It is only after he successfully fights off the suitors that Penelope acknowledges him as her husband. She was excluded from the fighting but, in the underworld the ghost of a suitor tells of Penelope's assistance to her husband with the plot. Thereupon, Agamemnon praises Odysseus for having Penelope as his wife, which again reminds us of the romantic world of the folk tale. It would have been easier and his victory more certain, if Odysseus had really gotten Penelope's aid, as may have occurred in the original tale. But to Odysseus, who represents the modern man, such a world was alien. The discrepancy between the two worlds creates irony.
著者
宮下 英明
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,昨年度に新たに発見した産地の1つ(産地Y)から,地権者の許可を得て「天狗の麦飯」を採取し,これまで研究に用いてきた産地Kのサンプルと,1)光学顕微鏡による微生物の形態多様性と主たる微生物の形態の比較,および2)真正細菌の16S rRNA遺伝子を標的としたクローンライブラリ法によって得られる真正細菌群集構造の比較を行うことにより,両サンプルに共通する特徴を調べ,主要な微生物の代謝情報から形成・維持機構について考察した。その結果,どちらの産地のサンプルにも,カプセル状の莢膜をもつ細菌が,微生物塊を構造的に維持する細菌として観察された。細菌群集構造解析では,両産地のライブラリのそれぞれ87.0%,74.7%が4つの系統群(Ktedonobacteria綱Ktedonobacterales目,γ-proteobacteria綱Ellin307/WD2124, α-proteobacteria綱Beijerinckiaceae/Methylocystaceae, Acidobacteria門subdiv.1)の生物で占められていた。この群集構造は,産地周囲の土壌にみられたものと全く異なっていたことから,「天狗の麦飯」の共通の特徴と考えられた。さらに,両産地に共通して検出されたKtedonobacteriaとγ-proteobacteriaの総計が,各ライブラリの43.0%,27.3%を占めた。このことから,この両生物群が主たる微生物である可能性が高くなった。これまで「天狗の麦飯」は独立栄養的生育をしている細菌を中心に増殖する微生物塊であると考えられてきが,本研究によって検出された真正細菌はほぼすべて従属栄養生育するものと考えられた。今後,「天狗の麦飯」に供給される物質の情報や,下層を含めた周囲の微生物群集構造の特徴について精査しすることによって形成・維持機構の解明がはかれるものと期待できる。
著者
宮沢 孝幸
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

レトロウイルスはゲノムに組み込まれるという性質をもっており、ほ乳類のゲノムには意味のある遺伝子の何倍もの分量の「レトロウイルス」が生まれながらにして組み込まれている。この宿主のゲノムに入り込み宿主と同化したウイルスのことを内在性レトロウイルスと呼ぶ。ほ乳類のゲノムでは、遺伝子の占める割合がわずか2%程度である一方で、内在性レトロウイルスの配列が占める割合は約10%と非常に高い。最近の研究により、内在性レトロウイルスが、胎盤の形成や病原性ウイルスの防御に関わっていることが明らかになってきた。このことは、ほ乳類は生理学的機能の進化のためにレトロウイルスを積極的に取り込み(内在化)、利用してきたことを意味する。ところがコアラレトロウイルス(KoRV)は内在性レトロウイルスでありながら、病原性を保持しており、白血病や免疫不全などを引き起こしている。本研究では、KoRVを遺伝学的ならびに生物学的に解析し、病原性をもつ型(サブタイプ)を明らかにするとともに、KoRVの増殖を抑える抗ウイルス薬の探索を行うことを目的とした。本年度はこれまでの研究結果をもとに性質の異なるKoRVの感染性遺伝子クローンを作出した。それぞれの型に特異的なプライマーを設計し、忠実度の高いPCR用ポリメラーゼを用いてKoRV全長のcDNAを得た。得られたcDNAの塩基配列を決定しPCRによるエラーがないことを確認した後、ゲノムの両側にLTRをもつ感染性遺伝子クローンの形に組み直した。感染性遺伝子クローンのプラスミドをKoRVに感受性の細胞にトランスフェクトし、逆転写酵素活性、LacZマーカーレスキューアッセイ、イムノブロット法にて感染性を確認したところ、野生株と同様の感染性が確認できた。興味深いことにクローニングした感染性クローン由来のウイルスは、HEK293細胞では増殖したが、TE671細胞では増殖しなかった。
著者
吉江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、鎌倉時代史研究には欠かせない『平戸記』(有識の貴族として宮廷社会で重んじられた平経高の日記)について、信頼するに足る新たな校訂本を作成し、同時代史研究の新たな発展を目指すものである。また、『平戸記』のもつ史料的価値に鑑み、作成した新訂本を用いながら内容の考察をすすめ、それを論文集としてまとめることで、鎌倉時代史研究の進展の可能性を提起したいと考える。
著者
鎌田 大資
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.2, pp.97-113, 1994-12-25

In the sociology of mental health, the ex-patients' rehabilitation has been long thought to be impossible. But this proved to be wrong in the light of the results of mental-health-policy reforms in U. S. A., U. K., Canada, Italy and other nations. In Japanese notorious mental health care, medical practice was said to be the same as farmers' management business to keep domestic animals (patients) in order to make profits in the meadow of health-insurance systems. But, by many people's efforts, the support for the rehabilitation of the mentally disabled are at last burgeoning. In this paper, I examined the earliest trial-and-error case. The protagonist could successfully "rehabilitate" after 15 years' efforts. For the frame of interpretations, I made use of N. K. Denzin's concept of Epiphany; the "moment of problematic experience that illuminates personal character, and often signifies a turning point in a person's life". This biography was written by a Psychiatric Social Worker, and may be not wholly qualified as a good exemplar of "thick description" labelled as "relational-interactional" or "descriptive-contextual". But, we can still look it over for some rarely mentioned facts. The main Epiphanies for the protagonist was that he could not work in town as a normal person because of the sub-effects of medication and hospitalization. Facing total loss of confidence, he could not stay out of hospital without other encouraging Epiphanies. Various social resources were no use for him to regain the will to autonomous living. The best remedy was neither medications nor professional care, but self-help-groups like gatherings of his hospital fellows. Under the total denial of mental patients' human rights, the PSWs, if having a good ear, were the only hope for systems reform which enhance ex-patients' group formation. Their Interpretations of biographies were vital in that vein.
著者
吉川 真司 POLETTO ALESSANDRO
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-11-13

日本中世前期の貴族社会の知識体系と、その生活文化上の意義を考えるため、古記録における僧侶・陰陽師・医師の活動を検討する。とりわけ、医師による病気の認識と呪術的・儀礼的行為を含んだ治療、陰陽師による地震を中心とした災異の認識とその対策、陰陽師と僧侶による占い・占星術について、網羅的な史料収集と現地調査を行ない、考察を進める。このことによって日本文化史・思想史に新たな方向性を与えたい。
著者
山田 晶
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-95, 1971-09-20

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。