著者
吉江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、鎌倉時代史の基本的文献である『平戸記』に関して、信頼に足るような新たな校訂本を作成し、研究の基盤整備を行うことにある。第3年度にあたる平成30年度には、前年度に終えた伏見宮家旧蔵本の校訂作業を基盤としながら、伏見宮家旧蔵本に含まれていない年次について、校訂作業を実施するとともに、人名・地名の比定作業および人名索引の作成、各記事を端的に要約して示すような標出の作成に着手した。これまで研究協力者などで構成される8人のメンバーで校訂会を開催し、伏見宮家旧蔵本の校訂を実施してきたが、それが一段落したことを受け、伏見宮家本以外の校訂、人名・地名の比定、標出の作成、といった3つの部門に分け、それぞれが担当の作業を行うこととした。そして、計4回の会合をもって、各担当部分の進捗状況の確認や、作業を遂行する上で発生した諸問題の検討などを行った。校訂作業については、日次記部分の全てにおいて、諸本の相違点を抽出した。その後、抽出した写本間の相違点について、どの文字を校訂注として示すか、または示さないかを検討し、校訂を確定させる作業に着手した。このような形で平成30年度中に校訂を確定し終えたのは、全体の半分程度である。人名・地名比定作業については、日次記全体から人名・地名を抽出し、比定作業を順次行った。平成30年度中に一通りの比定を終えることはできたものの、なお検討が必要な箇所が少なからず存在する。また、比定ができたものについても、実際にどの記載を新訂本で明示するかについては、これから検討することになる。標出作成作業については、全体の半分程度で標出を作成することができた。その際、すでに標出を行っている大日本史料の記述方法などを参考にした。
著者
元木 泰雄
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1995

論文博第275号
著者
松沢 哲郎 山本 真也 林 美里 平田 聡 足立 幾磨 森村 成樹
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

人間を特徴づける認知機能の特性を知るうえで、それらが「どのように進化してきたか」という理解が必要不可欠である。本研究は、言語と利他性こそが人間の子育てや教育や社会といった本性の理解に不可欠だという視点から、①人間にとって最も近縁なチンパンジー属2種(チンパンジーとボノボ)とその外群としてのオランウータン、さらにその外群としてのウマやイヌを研究対象に、②野外研究と実験研究を組み合わせ、③知識や技術や価値とその社会的伝播や生涯発達に焦点をあてることで、人間の本性の進化的起源を明らかにすることを目的とした。チンパンジーの野外研究はギニアのボッソウの1群7個体、実験研究は霊長類研究所の1群13個体と京大熊本サンクチュアリの58個体が主な対象だ。ボノボの野外研究はコンゴの1群27個体、実験研究は熊本サンクチュアリに導入した1群6個体が対象だ。これに、母子だけで暮らす社会を営むオランウータンを外群とし、ボルネオのダナムバレイの野生群、マレー半島のオランウータン島で研究をおこなった。ポルトガルの野生ウマの研究が軌道に乗った。新しい研究手法の開発として、ドローンを利用した空撮で野生チンパンジーや野生ウマの研究を始めた。実験研究のトピックスは、研究代表者らが世界に先駆けて発見したチンパンジー特有の超短期記憶の研究、アイトラッカーによる視線検出、色の命名課題にみるシンボルの形成、チンパンジーには困難といわれる循環的関係の理解、感覚間一致、共感性の基礎にある同期行動などである。個体レベルでの認知機能の研究を基盤に、比較認知科学大型ケージを活用した集団場面での行動の解析を手がけた。野外研究では、チンパンジー、ボノボ、オランウータン、キンシコウ、野生ウマを対象として、毛づくろいや近接関係など社会交渉の解析を通じて社会的知性の研究を推進した。
著者
植田 弘師 塚原 完 金子 周司 崔 翼龍 酒井 佑宜 藤田 和歌子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では慢性疼痛における「痛みメモリー」のフィードフォワード機構がCentralized Pain(可塑的上位脳性疼痛)を形成するという新しい概念を提唱し、その検証研究を行うことが目的である。しかも最も重要な視点は、研究代表者が2004年に発見したリゾホスファチジン酸(LPA)とその受容体シグナルが全てに共通しているという事実にある。本研究ではこの目的を遂行するために、より多くの異なる種類の慢性疼痛動物モデルを開発・利用することから始めている。2017年度では独創的慢性疼痛病態としてEmpathy誘発型の線維筋痛症モデルと安定した脳卒中後性慢性疼痛モデルの作成に成功し、前者は論文報告とし、後者は投稿中である。LPAシグナルがこうした多くの慢性疼痛モデルの形成に関与する事は遺伝子改変マウスを用いて明らかにできているが、これに加えていったん形成した慢性疼痛に対して受容体拮抗薬などが「痛みメモリー」を消去できることも見出し、慢性疼痛の維持期にも鍵としての役割を有することが解明された。こうした「痛みメモリー」は脳のみならず末梢免疫系ともリンクしていることが次第に明らかとなりつつある。脳における責任領域と各種脳組織や末梢組織における責任細胞や責任分子の同定にはRNA解析を基礎とした遺伝子解析から上流と下流シグナルを同定する研究準備を行っている。特に脳における責任領域の同定のために、Imaging-MS解析とPET解析、光遺伝学を用いた分子レベルでの機能検証研究を実施している。
著者
吉本 道雅
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.A33-A83, 2006-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
中川 尚史 川本 芳 村山 美穂 中道 正之 半谷 吾郎 山田 一憲 松村 秀一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ニホンザルは順位序列が明確な専制型と分類されてきた。しかし、野生群は乳母行動から、餌付け群は給餌実験時の攻撃性から評価した結果、勝山、小豆島は専制型、屋久島、淡路島は寛容型と個体群間変異があった。他方、モノアミン酸化酵素A遺伝子およびアンドロゲン受容体遺伝子の頻度に個体群間変異があり、屋久島では前者の短いアリル、淡路島では後者の長いアリルが高頻度で見られた。これはアカゲザルやヒトの攻撃性と遺伝子型の関連と一致する傾向であった。また、ミトコンドリアDNAによる分子系統関係も、屋久島と淡路島は比較的近縁であることを示し、社会様式の違いに遺伝的背景があることを示唆する結果となった。
著者
青木 深
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.65-74, 2015-12-01

Hitotsubashi University, which specializes in the humanities and social sciences, has provided both academic and professional career support to graduate students since April 2011. This article discusses the content, characteristics, and problems associated with academic career support, particularly with regards to the school's academic career seminars, which are held approximately seven times yearly. These seminars cover topics such as the submission of articles, publication of dissertations, applying for research grants and academic jobs, academic career and life events, tips for teaching undergraduates, and overseas education and research. Speakers at the seminars are generally young faculty members and postdoctorates who earned a Ph.D. at Hitotsubashi University. A variety of graduate students attend the seminars, wherein lecturers impart attendees with knowledge concerning academic job-hunting, while also addressing study skills, the diversity of career paths in academia, and the mental preparation required to write persuasive job applications and grant proposals. These academic career seminars are managed by a "young researcher, " who attempts to internalize the viewpoints of graduate students and postdoctorates. The support system facilitating this, however, is complex given that the aforementioned young researcher, who is in charge of academic career support, is also applying for tenure status in a manner similar to "supported" graduate students and postdoctorates.
著者
今中 哲二 川野 徳幸 竹峰 誠一郎 進藤 眞人 鈴木 真奈美 真下 俊樹 平林 今日子 高橋 博子 振津 かつみ 木村 真三 七沢 潔 玉山 ともよ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

代表者の今中は以前よりチェルノブイリ原発事故の調査を行ってきた。福島原発事故の長期的問題を考えるため、広島・長崎原爆被害やセミパラチンスク核実験被害の調査を行っている川野徳幸、マーシャル諸島での核実験被害調査を行っている竹峰誠一郎らとともに、原子力開発がはじまって以来世界中で発生した様々な核災害の後始末について調査を行った。核災害は、放射線被曝や放射能汚染といった問題にとどまらず、社会的に幅広い被害をもたらしており、その多くは災害が起きてから50年以上たっても解決されないことが示された。得られた成果は2017年11月12日に東京で開催した報告会で発表し、12編の報告を含むレポートにまとめた。
著者
藤井 讓治
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-37, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
近森 高明
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.7, pp.193-208, 1999-12-25

This article deals with two epidemics, "shinkeisuijaku (neurasthenia)" and "noiroze (neuroses)", the former spread over Japan from early years of this century (c. 1905-1930s), and the latter after World War II (c. 1955-1980s). By focusing on the difference between two views of the apparently same disease, I attempt to demonstrate how the humanistic=psychological perspective, which prepared for "mental problems" of today, has prevailed among lay figures after World War II. Citing a lot of discourses concerning "shinkeisuijaku" and "noiroze", I try to show how the two diseases were understood by lay figures. "Shinkeisuijaku" was thought to result from the strain of nerves, caused by the high pressure of civilization. It attacked especially on "brain workers", and on men more than women. It was considered not as a mental process but a physiological process that caused such symptoms as headache, insomnia and depressing mental state. In contrast, "noiroze" was understood as a mental or psychological process, so that symptoms similar to "shinkeisuijaku" are considered to result from some kind of mental conflict. The cases of "noiroze" were described with such humanistic terms as "personality", "human relationships", "life history", etc. What distinguishes the view on "noiroze" can be called humanistic=psychological perspective, which prevailed with the epidemic of the disease. From this perspective, our sufferings are always interpreted as mental one. Today we notice people suffering from "mental problem" more than ever, which shows us how wide and deep the perspective has prevailed over us.
著者
高橋 秀直
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.一-九三, 2004-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
高橋 秀直
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.二九-一二五, 2003-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
FEDOROVA ANASTASIA (2013) フィオードロワ アナスタシア (2011-2012)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度、申請者はこれまでのリーサーチを通して収集された一次資料の整理作業を行い、その分析をもとに"Japan's Quest for Cinematic Realism frorm the Perspective of Cultural Dialogue between Japan and Soviet Russia, 1925-1955"(和訳 : 「ソビエト・ロシアとの文化対話から見た日本映画史におけるリアリズムの追求、1925-19551」)というタイトルの博士論文を執筆した。本博士論文において、申請者は当初計画されていた研究課題を大幅に拡充した。即ち、本論文は、ソビエト・ロシアに留学し、そこで育んできたリアリズム観やモンタージュに対する知識を自らの作品のなかで応用してみせた日本を代表するドキュメンタリー映画監督である亀井文夫の作風ばかりでなく、1925年から1955年までの日本映画における、より広い意味での「リアリズム追求の歴史」を、日本とソビエト・ロシアとの映画交流を軸に論じているのである。申請者の博士論文は、1925年から1955年までの間におこった日ソ間の映画交流(相互間における映画作品や映画理論の受容、留学体験を通しての映画知識の共有、合作映画の製作など)を詳細に分析することで、これらの交流を促進させていたのが、日本とソビエト・ロシア両者におけるリアリズムに対する強い感心であったことを明らかにしている。結論部分では、日ソ両映画界に共通していたこの強い感心が、ハリウッド映画の世界的影響力への対抗心から来るものであったと主張され、日ソの映画人が目指していたリアリズムという芸術潮流は、メインストリーム(ハリウッド映画)に対するイデオロギー的及び美学的アルターナティヴの追求として定義付けられている。
著者
井上 武史
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2008-03-24

新制・課程博士
著者
矢野 暢
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, 1968-06

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。