著者
村尾 俊道 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治 本田 豊
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.645-651, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14

京都市の「らくなん進都」と京都駅を直結する新設路線として平成22年10月から運行を開始し、その後9年にわたりバス乗車人員が一貫して増加し続けてきた京都らくなんエクスプレス(R’EX)を取り上げ、乗車人員が増加し続けた経過を記録するとともに、平成28年経済センサス及び平成18年事業所・企業統計調査の2時点間の比較により、沿線企業がその間に従業者数を増加させてきた要因について考察を行った。その結果、輸送力の増強や定時性・速達性の確保、バス待ち環境の改善、車内モニター・バスロケーションシステム、優れたデザインの導入などバス交通を高度化し、あわせて地域地区や都市整備を適切に進めることで、輸送力の限られるバスであっても、まちを変え得る可能性があることを明らかにした。
著者
何 夢夢 高松 一哉 岸 邦宏 山中 康裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.631-636, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17

日本は少子高齢化社会を迎えており、中山間地域の公共交通機関空白地域において、運転せざるを得ない高齢者人数がだんだん増えていく。3年毎に全国の自治体は、介護保険事業計画を策定する際に、65歳以上の高齢者を対象とした「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」を実施している。本研究は、このニーズ調査が高齢者の運転状況に関する情報を提供する可能性を示した。ひとつは、ロジスティック回帰分析をもちいて、機能的健康状態等から運転しないと推定される運転している高齢者(注視運転者と呼ぶ)をスクリーングとして見出せることである。もう一つは、注視運転者の多くが「運転も同乗もする」ことに注目して、機能的健康状態の低下ともなう、(1)自ら運転するが同乗しない、(2)自ら運転もするが同乗もする、(3)運転しないが同乗する、(4)運転も同乗もしないという順序(移動者弱者指標と呼ぶ)を確認した。
著者
藤原 勇輝 橋本 成仁 海野 遥香
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.616-622, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

我が国において交通事故死者数は依然として多い。中でも交差点周辺部においてさらなる交通安全対策が求められており、無意識のうちに安全な走行速度で走ることが出来る空間の形成が重要である。このような状況を受け、特に左折車に対して、交差点曲線半径の縮小が行われている。そこで本研究では、岡山市内の15か所において合計316台の左折車走行速度を計測し、街路や交差点における空間要素との関係を明らかにした。その結果、左折後街路に進入した位置における自動車走行速度は空間要素によって決定されており、空間要素の改良により抑制できることが示唆された。また、交差点曲線半径の縮小による効果が定量的に明らかになった。
著者
森 貴規 横内 憲久 岡田 智秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.871-876, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
46

本研究は、通称地名を活用した谷戸の景観保全を促すために、通称地名の対象景観とその特徴を明らかにするものである。そのため、本調査では、横須賀市田浦・長浦地区において、文献調査、地域の歴史に詳しい方々へのヒアリング調査、現地踏査および図面分析を実施した。 その結果、現在でも継承されている 12箇所の対象景観を明らかにし、その構図的特徴と視覚構造を把握した。そして、それらを通じて対象景観の保全策を提示した。
著者
橋本 成仁 海野 遥香 新 仁司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.608-615, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

我が国の地方都市では自動車無しでは生活が困難、かつ公共交通の減便や廃止が進んでおり地域の移動に関する問題が山積みである。この問題を受け、DRT(Demand Responsive Transport)の導入事例が増えている。本研究では、既にDRTが導入されている地域で、利用者の意見を基に、DRT利用者が求める様々なサービス内容のバランスを明らかにする。結果として、運賃が安いこと、タクシーの補助券があること、予約がスマホからできること、予約時のイベントなどの情報提供サービスの順に利用者が魅力を感じることが明らかになった。また、年齢や性別、生活満足度の詳細な項目が、お金に関わらないサービスに魅力を感じる利用者の特徴として挙げられた。
著者
海野 遥香 友田 光子 橋本 成仁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.600-607, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

我が国における生活道路での交通死亡事故は安定した減少傾向になっておらず,多くの死亡事故は身近な道路で発生しているため,依然として生活道路での安全確保は重要な課題である.また,状態別に死亡事故を見てみると,歩行中及び自転車乗用中に事故に遭遇する割合が約半数を占めていることから,自動車運転者として生活道路を利用する場合,歩行者や自転車に配慮した運転を心掛ける必要がある.本研究では個人の公共の場面における行動基準に着目し,運転時の交通安全意識との関係性について分析を行った.まず,行動基準に基づいて運転者の類型化を行い,行動基準と個人属性,生活道路に対する意識や運転意識との関連を把握することで,類型化された個人の行動基準ごとの特徴を明らかにした.加えて,生活道路での安全意識として歩行者・自転車を優先した意識に着目し,行動基準と運転時の経験や運転意識等との因果関係について共分散モデルを作成することで,行動基準を起点とした個人の意識構造を推定した.
著者
大橋 幸子 小林 寛
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.592-599, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
8

交通安全に寄与する屈曲部(シケイン)の活用の幅を広げることを目的に、本研究では、一般的な幅員の歩車共存道路に設置が可能で、速度抑制効果を有する屈曲部の形状を示すことを目指した。研究では、屈曲間隔や横断面構成の異なる複数の屈曲部を試験用走路で被験者に走行させ、速度抑制効果、運転の安定性、車両の走行位置を調査した。それらの結果をもとに、速度抑制効果を有し、低速での運転が困難ではなく、走行位置にも特段問題のない屈曲部の形状を示した。併せて、白線より駒止のほうが心理的な速度抑制効果が高いことを示した。また、屈曲間隔が狭いほうが速度抑制につながることなど、屈曲部を構成する各要素が車両の速度抑制に与える影響を確認した。
著者
泉 あかり 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.584-591, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
28

近年、日本の地方自治体は、財政状況の悪化に直面し、限られた財源での公共施設の有効利用が必要とされている。特に、学校のスポーツ施設は一般開放が可能なため、官民連携による活用により、維持更新に係る財政負担の軽減と地域住民への公共サービスの向上が期待されている。しかし、学校スポーツ施設の効率的な活用に向けて、どのように官民連携を導入すべきかは明らかでない。本研究の目的は、学校スポーツ施設の活用に向けた官民連携のあり方を明らかにすることである。本研究では、学校プールの屋内化に合わせ、収益型の民間スポーツジムの一体整備を検討する。その結果、学校立地を考慮した民間との施設のタイムシェアは、学校プールの維持更新における公共の費用負担軽減に有効と明らかになった。
著者
静 純穂 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.577-583, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

我が国の多くの地方公共団体は、公共施設の老朽化と限られた財源を背景に、公共施設の有効活用の検討が必要とされている。なかでも小学校は各地域に立地する一方で、施設稼働率が低く、集会施設等の他の公共施設との機能重複が問題とされている。そこで本研究は、大田区における小学校の有効活用を検討し、更新時期を迎えた小学校と集会施設の機能集約・複合化のあり方を明らかにする。本研究では、まず小学校と集会施設の現状を把握し、次に公共の財政負担軽減に効果的な整備・更新のあり方を検討した。その結果、小学校の有効活用を検討する際は、将来の人口推計と施設の更新時期を考慮する必要があること、集約整備に伴う施設配置の決定にあたっては住民のアクセシビリティの慎重な検討が必要であることが明らかになった。
著者
福留 邦洋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.913-918, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
6 2

災害により集落移転する際、どのような要因で円滑に移転できるのか新潟県中越地震において唯一の全戸移転の防災集団移転促進事業を行った小千谷市十二平集落を対象として,集団移転するまでの過程から明らかにすることを目的とした。調査の結果、集落リーダーは地震発生直後に強い意志を持つとともに集落関係者へ配慮し,集落住民から信頼されていたこと.住民間には血縁,親族関係の繋がりが多く,相互の協力体制が日常で機能していたこと.行政よりも先行して集落側で集団移転に関する議論,検討が行われたこと.過去に近隣集落で実施された防災集団移転促進事業の内容を知っている世帯が存在したこと.高齢化とともにいずれ離村せざるを得ないと考えていた世帯が複数存在したこと.被災した住宅に関して全世帯で債務がなかったこと.義援金に加えて,自助として全世帯が加入していた住宅損害保険(建物更正共済)からの補償が行われるなどにより,新たに預貯金の取り崩しや債務の発生を行わずに一定規模の住宅を再建することができたこと.などがわかった。
著者
一井 啓介 御手洗 陽 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.569-576, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
34

近年,分散型電源の活用に向けてスマートタウンの検討が行われているが,それらの多くは街で不足する電力を系統電力から賄っているという課題がある.そこで本研究では,街から離れた分散型電源から不足する電力を賄う「サテライト型スマートタウン」の実現に向けて,分散型電源から街までの電力輸送に自営線に代わって電気自動車を用いることで,電力輸送にかかるコストを削減できる可能性を検証している.その結果,以下のことが示された.1) 分散型電源から8km程度離れ,かつ世帯数が100世帯未満の街で導入可能性が高いこと,2)直流電力の活用など技術革新によって導入可能性は大きく向上すること,3)蓄電容量の大きい電力輸送EVよりも低コストの電力輸送EVの方が活用可能性は高いこと.
著者
石原 凌河
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.859-865, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

本研究では、雲仙普賢岳噴火災害被災地保存されている災害遺構を事例として、アンケート調査により災害遺構に対する地域住民の評価を明らかにし、災害遺構の保存や維持管理に関する知見を得ることを目的とした。その結果、長崎県南島原市深江町で寄付金の支払可能性のある世帯からの寄付金の総額は、年間あたり約243万円となった。また、災害遺構の保存に対する支払意志額の要因分析を行ったところ、年齢、居住地域、年収、利用頻度、保存意向、被災経験が影響を与えていることが示唆された。年齢や年収といった支払余裕性に加えて、日常的な災害遺構との関わりが支払いに影響を与えていることが確認できた。そのため、地域住民が日常的に災害遺構に関わることができる施策の構築が必要となることが示唆された。
著者
佐藤 徹治 原 祐樹 名越 綾香
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.561-568, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本稿では、全国の立地適正化計画を作成・公表済みの自治体に対するアンケート調査から計画に基づく具体的な人口誘導施策の検討・実施の有無、内容等を把握するとともに、立地適正化計画制度ができる以前の2005年から都心部等への人口誘導施策を実施してきた富山市を対象として、傾向スコアマッチングと差分の差分法を組み合わせたDID-PSMにより施策の人口誘導効果を統計的に検証した。アンケート調査結果から、誘導区域内に人口を誘導する施策を検討している都市は3割程度であること、誘導区域外に対する施策を検討している都市は少ないこと、現時点で実際に人口誘導施策を実施している都市は極めて少なく全国で10都市程度に留まることなどが明らかとなった。また、DID-PSMによる分析結果から、富山市の施策は実施後14年間経ても統計的に有意な人口誘導効果をもたらしていないことが示された。また、アンケート調査結果と検証結果を踏まえて、今後の居住誘導施策の方向性について考察した。
著者
清水 宏樹 伊藤 将希 岡野 圭吾 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.553-560, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1

近年,我が国では人口減少・少子高齢化社会の進行に伴って空き家問題や財政悪化などの新たな都市問題が進行している.このような都市問題は実際,各自治体の枠を超えた広域的な問題であるが,問題進行の程度には地域差があり,広域的な連携による問題対応の足並みは揃わない.本研究ではこうした問題進行の地域差を明らかにするため,大都市雇用圏に着目して人口減少・少子高齢化社会の都市問題の進行実態と近年の傾向を把握した.その結果,対象とした都市問題の進行はどの自治体も順次悪化が進むカスケード化の様相を呈しており,圏域内で特定の小自治体が一人勝ちとなる傾向も明らかとなった.
著者
岩本 敏彦 中村 文彦 岡村 敏之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-10, 2009-04-25
被引用文献数
1

本研究は首都圏の都市鉄道において、駅、駅前広場の交通結節点と周辺のまちづくりが連携して整備された先進的な事例を採り上げ、現在の時間軸に焦点をあて、利用者評価の視点から事後評価分析を行った。はじめに、駅まち空間(駅、駅前広場、駅の周辺地区を包括した空間)の連携整備事例を抽出し、整備主体に基づき分類を行った。次に分類結果に基づき、事例数の多い鉄道主導と行政主導の両グループにおける代表駅をケーススタディとして選定し、利用者による事業目的の達成度評価、整備施策メニューの評価について考察を行った。続いて、駅まち空間の総合評価と整備施策評価との関連性について共分散構造分析により、利用者意識モデルを構築し比較分析することで、整備施策評価の構造及び連携整備推進にあたっての課題を明らかにした。
著者
齊藤 充弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.505-512, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本研究は,東日本大震災による原発事故の発生により原発立地地域からの避難者の受け入れ等に伴い,人口が増加した福島県いわき市を対象として,事業所数の変化を明らかにすることを目的とするものである。人口変化と同様に事業所総数が大震災後に増加に転じるなかで,産業大分類別にみると特に建設業や宿泊・飲食業が増加したことがわかった。このことを小地域単位でみると,第一種低層住居専用地域に指定される住宅地や国道6号をはじめとする幹線道路沿線に位置する既成市街地,さらには調整区域や都市計画区域外において,産業によっては増加を示す小地域があることがわかった。総数でみると,大字平と大字小名浜のいわき市内で都心拠点と広域拠点に位置づけられる地区の中心市街地を含む小地域において,増加と減少という対照的な変化が明らかとなった。人口は増加するものの日常生活に必要な小売業などの事業所数が減少しており,中心市街地を構成する街区内では低未利用地化の進行を確認することができた。両地域は,立地適正化計画の居住および都市機能を誘導する対象地域となることより,人口の変化と相補関係を構築した都市機能や住宅の誘導を図っていく必要がある。
著者
本村 恵大 丸岡 陽 松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.521-528, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

本研究は、居住誘導区域を指定した線引き地方都市を対象に、主に居住誘導区域外とした区域に着目する。そして、策定経緯を明らかにすることで、今後の居住誘導区域の指定の在り方に示唆を与えることを目的とする。当初市街化区域と拡大市街化区域それぞれに対する居住誘導区域内外の割合を用いて対象都市を類型化した。そして、公共交通・基盤整備・人口密度の視点から空間特性を把握し、詳細対象都市を6市選定した。分析・ヒアリング調査より、1つの指標を軸に様々な視点から取捨選択を図った上で居住誘導区域を指定すべきである。線引き都市で除外基準以外の市街化区域全てを居住誘導区域に指定することは、区域区分制度と大差がなく誘導効果は薄い。また、災害の危険性が高い箇所を含むべきではなく、既成市街地の位置や土地利用の状況を踏まえた指定が望ましい。
著者
野村 直人 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.603-610, 2016
被引用文献数
1

イタリアは日本同様地震頻発国であり、戦後の度重なる震災の中で歴史・文化の復興を目的とした復元的復興を軸として被災地の地域性に応じた多様な復興計画手法を試みてきた。2012年エミリアロマーニャ地震からの復興においてはこれまでの経験をもとにした歴史文化の復興への取り組みと同時に、震災前から抱えていた人口流出や高齢化、都市環境の悪化など多様な課題への対応が求められており、社会経済の再生、都市環境の再編に向けて綿密な調査に基づく計画策定と、その間の長期避難生活を支える住環境の構築が同時並行的に行われている。本研究では、都市形成史、長期避難生活を支える住環境の計画手法、歴史地区における復興計画手法、を明らかにすることで復興計画手法を明らかにした。いずれの都市においてもこれまでの歴史的文脈を踏まえた上で、多様な応急建設による長期的な復興を見据えた仮設市街地の構築と、復興計画による従前の都市が抱えていた課題への対応とを両立させることで、都市再生としての震災復興を意図していることが明らかになった。
著者
谷本 圭志 土屋 哲 長曽我部 まどか
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.513-520, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日常生活を支えるための生活サービスには様々な種類があり,公共交通,買い物など多岐に及ぶ.今後は人口減少や高齢化の進行に伴い,小規模な自治体では生活サービスの消費者のみならず供給する人材の減少に直面することが予想される.そのためこれらの自治体では,サービス施設の集約や複合化など,生活サービスを維持するための政策立案が必要となる.その際,どれだけの人口規模ならびに地域特性のもとで存続可能性が危うくなるかを事前に把握できれば,生活サービスを維持するために,政策立案の適切な時期を検討する上で有用である.そこで本研究では,地方の小規模自治体における生活サービスの存続可能性をいくつかの観点から評価する.具体的には,サービスを供給する事業所数を一般化線形モデルにより推計するとともに,その推計結果に基づいて,存続可能性に影響を及ぼす要因,業種ごとの特性,消滅と存続の境界にある人口規模を実証的に検討する.
著者
戸塚 理紗 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.498-504, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
33

東京都における中小ビル街区は、中小企業等が集積する業務集積地であることから、非常時の業務機能継続に資するエネルギー面での対策が求められている。これを受けて国は、自立分散型電源の整備を推進しているものの、中小ビル街区における整備のあり方は明らかでない。そこで本研究は、市街地更新を考慮した中小ビル街区における自立分散型電源の整備のあり方を明らかにする。市街地更新に合わせた自立分散型電源の整備を検討し、防災性と事業性の観点からその有効性を評価した結果、中小ビル街区における自立分散型電源整備は供給時間により一定の業務停止回避効果があること、事業性確保のためには経済的な支援施策が必要であることが明らかとなった。