著者
高野 雅大 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.529-536, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

わが国では、人口減少に伴う税収の減少や社会インフラの老朽化に伴う維持更新費用の増大が見込まれることから、持続可能な都市経営が求められている。これを受けて、行政サービス効率化の観点から財政負担の軽減が期待される都市のコンパクト化が推進されている。都市のコンパクト化に向けては、市街地の撤退に際し巨額の費用負担の発生が見込まれる。そのため、行政サービスに関して、受益者負担の原則に基づき、居住地選択に応じた費用負担のあり方を再検討することで、都市のコンパクト化と財政負担軽減の両軸を図る必要性が問われているものの、そのあり方は明らかでない。そこで本研究は、持続可能な都市経営に向けた都市のコンパクト化施策のあり方を明らかにしたものである。結果として、受益者負担の原則に基づき費用負担のあり方を再検討することにより、都市のコンパクト化に向けたインセンティブの確保と財政負担の軽減の両立が可能であることが明らかとなった。
著者
渡辺 哲也 丸岡 陽 松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.490-497, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本研究では、立地適正化計画を策定した地方都市を対象に、規制の厳しい用途地域の場所を都市機能誘導区域とした経緯を明らかにし、今後の区域設定に示唆を与えることを目的とする。施設の立地現況を踏まえた詳細対象8都市への分析及びヒアリング調査の結果、規制の厳しい用途地域の場所を誘導区域としたのは、その用途地域に立地可能な施設を誘導施設としたためであることが明らかになった。それ以外にも、将来利用できる可能性のある場所であったため規制の厳しい用途地域の場所を誘導区域とした事例もあった。広域的な利用が考えられる施設が立地する場合や、将来的に利用が考えられる場合のみ、規制の厳しい用途地域の場所は誘導区域に含めるべきである。
著者
後藤 智香子 近藤 早映 林 和眞 小泉 秀樹 三木 裕子 辻 麻里子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.113-121, 2021
被引用文献数
2

<p>近年、保育施設の開設を巡って地域社会から反対の声があがっている状況を踏まえ、本稿では特に住宅市街地内の公園を活用して施設を整備した際に地域社会から反対の声があがった事例に着目する。そして、行政の保育施設整備担当者と住民へのインタビュー調査をもとに整備の実態を明らかにした上で、整備の手続きや要件について考察する。具体的には、各事例について、保育施設整備に関する自治体の計画、公園の状況(空間面・利用面)、施設計画、行政が当該公園を選択した理由と経緯、地域住民への計画公表から収束までの経緯、争点と対応、開設後の状況に着目して、整備の実態を明らかにした。最後に、地域住民参加型の計画プロセスの必要性、公園の利用実態や場所の価値の把握の必要性、残された公園の管理運営や代替公園の整備もあわせて計画する必要性という観点から整備の手続きと要件を考察した。</p>
著者
後藤 智香子 近藤 早映 林 和眞 小泉 秀樹 三木 裕子 辻 麻里子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1168-1175, 2019
被引用文献数
1

<p>近年、保育施設の開設を巡って地域社会から反対の声があがっている状況を踏まえ、本稿では特に住宅市街地内の民有地を活用して民間事業者が施設を整備した際に地域社会から反対の声があがった事例に着目し、複数主体(行政担当者、事業者、地域住民)へのインタビュー調査をもとに整備の実態を明らかにした上で、整備の方法について考察することを目的とした。具体的には、3事例について、保育施設整備に関する自治体の計画、事業者、当初計画地の立地状況(地域の空間状況、社会状況)と施設計画、事業者が当該敷地を選定した理由と経緯、地域住民への計画公表から収束までの経緯、争点と対応、開設後の状況に着目して、整備の実態を明らかにした。最後に、都市計画などと連携した立地計画の必要性、地域単位での敷地の検討の必要性、近隣住民の声と地域の公共性とのバランスという観点から整備の方法について考察した。</p>
著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.917-922, 2006

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
松浦 健治郎 二之湯 裕久 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.445-450, 2007-10-25
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は、近世城下町を基盤とする府県庁所在都市30を対象として、戦前の府県市庁舎が敷地内に保存された場合に、1) 城下町基盤を活用した都市デザインが影響を及ぼしているのか、2) 新庁舎をどのように増築しているのか、を明らかにするものである。明らかとなったのは、1) 「建築空間」の保存については、建築的条件(罹災が無いこと・耐火造・建築年が昭和以降)と立地的条件(敷地面積)が主要な要因となっていること、2) 「都市空間」の保存については、都市デザイン的条件(主要街路のアイキャッチ・堀沿い等)が主要な要因であること、3) 庁舎を保存するための工夫として、「新庁舎の高層化」・「重要な部分の保存」・「新庁舎を郊外に移転」の3つの手法が確認されたことである。
著者
田中 晃代
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.482-489, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

兵庫県の特別指定区域制度を活用している13自治体の区域指定の状況と開発許可や建築許可の実態から,市街化調整区域における土地利用規制緩和にともなう区域指定制度の評価について明らかにした。その結果,1)特別指定区域制度ができる以前は,市街化調整区域内の土地の所有者のみ住宅を建築できるとされていたが,制度ができてから,区域内への転入者が増加した,2)特別指定区域制度は,地縁者の住宅区域や新規居住者の住宅区域などUターンのみならず,IJターンも視野に入れた幅広いメニューの制度であるといえるが,実際の建築許可の件数は,圧倒的に「地縁者の住宅区域」が多く,「新規居住者の住宅区域」の建築許可件数はきわめて少ない,3)立地適正化計画を策定することによって,市街化調整区域に居住するための環境改善の必要性が再認識されたといえる,4)地縁者の住宅区域の建築許可件数は増加したといえるが,「区画形質の変更」や「田畑の宅地化」など開発許可の件数は限られており,大きな農村集落景観の変化には至っていない,などがわかった。
著者
田中 智朗 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-32, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
8

本研究では、コミュニティ型暫定利用を対象に、空地活用の実態を把握した。 以上から、①事業の目的、用途、面積、期間は、運営形態によって傾向が異なること、②暫定利用終了後は対象地 や運営主体の変更が生じるなど新たな展開の契機となる可能性があること③暫定利用を通して場を共有することに よって形成されたコミュニティが、利用終了後も継続的なまちづくり活動として展開されている可能性があること、 が明らかとなった。コミュニティ型暫定利用は終了を前提とした事業であり、いずれ人々の拠点としての場は消滅するが、地域のコ ミュニティ形成に及ぼした影響には持続性を持つ可能性があると考えられる。
著者
丹野 一輝 田中 健一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.467-474, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本稿では,ネットワーク上の移動者が経路途中で施設に立ち寄る行動に着目し,集客数が最大になるように施設を配置する問題を提案する.施設における利用者数が増加することによる混雑コストを考慮する点がモデルの大きな特徴である.提案モデルでは,移動者が (1)施設までの移動時間と施設の利用時間の和が最小となる施設を利用する,(2)総所要時間がすべての施設において一定以上となる場合にはどの施設も利用しない,と仮定する.提案モデルは,ある所与の施設配置における施設の総利用者数の算出に最適化問題を解く必要が生じるため,最適化問題を内包した最適化問題 (二段階最適化問題) として定式化される.そのため,局所最適解を求めるヒューリスティックな解法も併せて提案する.提案モデルを実際の道路網に適用したところ,施設で発生する混雑の度合いにより施設配置が大きく変化する様子が確認できた.
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.727-732, 2012

戦前の公園緑地計画における軍用地の位置づけを整理したうえで、戦災復興緑地計画において、旧軍用地にどのような位置づけが与えられたのかについて、戦前の公園緑地計画での位置づけとの関連も含めて考察するとともに、その後の見直し状況にも触れ、戦災復興期における東京の公園緑地計画に対する旧軍用地の影響を明らかにすることを目的とする。戦前は、使用中の軍用地も公園緑地系統の中に組み込もうとしていた点、戦災復興緑地計画では旧軍用地が積極的に緑地として決定されたが、戦前計画の影響が大きい点、1度の見直しを経てもなお、戦前計画を継承したものは大規模な公園としての位置づけが保持された点が指摘できる。
著者
田端 祥太 新井 崇俊 本間 健太郎 今井 公太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.459-466, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

本研究は重み付きシュタイナー問題の発見的解法を開発する.重み付きシュタイナー問題は平面上の与点を連結するグラフの辺の総コストを最小化する問題である.本研究で構築する解法は,ランダムドロネー網を用いて連続平面を離散化し,与点のボロノイ図の双対グラフに含まれる全域木を探索する.木の辺は,ランダムドロネー網上の重み付き最短路で与えられる.近似解の形状と解の総コストの観点から,本手法が既往の重み付きシュタイナー木の発見的解法より厳密解に近い解が得られることを示す.さらに,重みの変化に対する木の形状の不連続な変化を把握する.最後に本手法を,新たな旅客,貨物輸送手段として期待されている大型ドローンの航空路網に適用し,本手法の実用性を検証する.
著者
谷口 綾子 藤井 聡
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.115-120, 2006-10-25
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

本研究では,商店街における自動車流入規制に反対意向を表明している商店主は,「商店街活性化に対して自動車規制が肯定的な効果を持ちうる」」という事実を十分に認知しておらず,それ故,その事実を認知すれば自動車流入規制,あるいは,歩行者天国施策に対する態度が肯定的な方向に変容する可能性が存在しうるものと考えた.そこで,本研究では,他の文献により報告されている実証データを商店主に提供することで,商店主の歩行者天国への賛否における態度変容がおきるか否かを検証することを目的とした調査,分析を行った.その結果、本研究の仮説が支持されるという結果を得ることができた。本研究で活用した歩行者意識を計測するための歩行者調査,あるいは,そこで見いだされた実証的知見を商店街に提供していくという取り組みは,商店街における歩行者天国の導入,あるいは,見直しにむけた様々な取り組み一つとして,一定の有効性があるものと考えられる。
著者
鳥海 重喜 大森 紘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.443-450, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年,生鮮食料品店にアクセスすることが難しい買い物弱者が増えている.この問題はフードデザート問題と呼ばれている.フードデザート問題を解決する方法の一つに移動スーパーがある.本研究では,まず茨城県日立市で実施されている移動スーパーの実施調査を行う.次に,道路勾配を考慮した代謝的換算距離を用いてフードデザート地域を分析する.そして,移動スーパーの効率的な巡回経路を数理モデルによって求める.計算した結果,1週間で総移動距離を30km弱短縮できることが明らかになった.本研究の成果は,移動スーパー事業継続への施策や,営業場所を検討する際に活用することができ,高齢者にとっての豊かな生活環境の構築に貢献できると考える.
著者
山田 育穂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.435-442, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
16

本研究では、空間解析において標本調査により収集された空間データを用いることが及ぼす影響を明らかにすることを目的として、統計的シミュレーションに基づく検証を行った。分析対象地域内に他より高い属性値を持つ空間単位のクラスターが存在する様々な空間パターンを確率的に発生させて、そのクラスターを検出する空間解析を、母集団全体を用いて行った場合と特定の抽出率で得た標本に基づき行った場合とで、結果がどのように変化するかを分析した。空間解析に使用したのは、空間的自己相関の分析に広く用いられるローカルMoran統計量である。分析の結果、第一種の過誤については、その発生回数・空間分布共に母集団に基づく解析と標本に基づく解析の間に大きな差はないことが分かった。一方、クラスターの検出力は、標本の抽出率が低下すると共に低下すること、その傾向は特にクラスターの辺縁部で顕著であることなどが明らかとなった。今後は、一定の検出力を保つために必要な抽出率あるいは標本数などについて、他の空間解析手法も含めた包括的な検証が望まれる。
著者
吉武 俊一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.415-421, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

都市縮減時代における、地域特性を反映した都市・地域再生の方向性・プランを検討する上で、小地域単位の将来人口推計手法をその根拠を構築するために活用することが考えられる。代表的な手法であるコーホート要因法・コーホート変化率法による小地域単位での推計は、国土交通省国土技術政策総合研究所が作成したプログラムで行うことができる。しかし、小地域単位での推計にはパラメータの不安定さという問題がある。本研究では首都圏1都3県と縮減が進んでいる郊外都市での分析を通して、将来人口推計の信頼性を確保するためには、人口規模・増減と住宅 所有関係・建て方から、対象とする小地域を絞ることが有効であるということを抽出した。また、人口減少・高齢化の進む地域において、今後の空き家・空き地の増加を予測し、対応を検討する上で将来世帯数推計が重要であるが、各小地域における世帯数の動向と住宅ストックの特性に関連性があり、従来のパラメータをあてはめる推計方法を小地域で適用することは難しい。本研究では、将来人口推計による人口減少と高齢化進行をもとにした、世帯人員・世帯数減少の推計による、空き家・空き地増加を予測する手法を提示した。
著者
下津 大輔 石井 儀光 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.400-406, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

物流分野における労働力不足が懸念される中,ドローン配送は離島や山間部などの過疎地を中心に有効な輸送手段として期待されている.ドローン配送普及のためには,民法により土地所有者の権利が及ぶ個人敷地上の空域における通行許可が不可欠であり,土地所有者に支払われる上空利用料に焦点を当てている.本研究の目的は,ドローンが個人の敷地上空を通過する回数と距離に着目し,ドローン配送のための上空利用料の基本システムを確立することである.積分幾何学のランダムラインの知見を用い,ドローンの飛行ルートが格子状敷地を通過する回数及び通過長の予測に,対象敷地の面積比と敷地形状が与える影響を調べた.特に,通過数と通過長間の相関係数の解析解を求めることで,都心部・地方部における固定料金と可変料金の使い分けの有用性を提案した.
著者
岡村 祐 中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.941-946, 2006

我が国の国会議事堂は永田町の高台に位置し、遠くは桜田門外から正面の広幅員直線道路を介したヴィスタが形成されている。このヴィスタは、お雇い外国人ベックマンによって1886(明治19)年によって初めて見出されたものである。それ以後、1936(昭和11)年の議事堂という眺望対象の出現を経て、1964(昭和39)年の正面道路の整備をもって完成に至る。そこで、本研究はこの約80年間にわたるヴィスタの構想と形成の過程、そして構想・計画図に描かれたヴィスタの具体的デザインを明らかにすることを目的とする。その結果、以下のことが明らかになった。1)ヴィスタの構想と形成の過程は4つの時代に区分される。2)その背景には、国会議事堂の建設という一つの揺るぎない軸と、明治期や東京五輪直前期にみられる首都東京としての顔づくり、または震災や戦災からの復興都市づくりというものが存在した。3)現在のヴィスタに較べて、道路の概形や視点場としての広場など、はるかに壮大で華麗なヴィスタが構想されていた。
著者
渡司 悠人 佐野 雅人 鈴木 勉 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.393-399, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

オフグリッド(独立電源)を導入するにあたり,配電網維持管理コストと,切り離された住民へ電力を供給する独立電源コストとの間にトレードオフが生じる.ここでのオフグリッドとは,電力会社の配電網から完全に分離した電力システムを意味している.本研究の目的は,このトレードオフを二目的最適化問題として定式化し,配電網の電源位置の影響も含めオフグリッド政策を分析することである.第一に,単純な地理条件を想定し,直線モデルを用いて,電源と建物の位置関係からオフグリッドの基本的構造を分析した.第二に,ネットワークモデルを用いて,高速処理の算法を提案するとともに,最適なオフグリッド領域は入れ子構造になることを明らかにした.さらに,現実の電柱と建物データを使用し,この算法をつくば市へ適用して,モデルで得られた知見を解釈した.
著者
山根 万由子 雨宮 護 白川 真裕 大山 智也 島田 貴仁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.385-392, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

都道府県警察が公開する犯罪発生マップでは,カーネル密度地図(KD図)の活用が推奨されている.KD図においては,その配色パターンと階級区分の組み合わせで地図の印象は異なるが,適切な組み合わせは明らかになっていない.本研究では,犯罪発生マップの地図表現の実態調査と,2つの実験により,KD図の配色・分類手法(階級区分)が犯罪多発地域の位置推定と犯罪発生頻度の見積もりに与える影響を明らかにした.実験の結果,等量分類が犯罪多発地域の位置推定を不正確にし,また犯罪発生頻度を多く見積もらせることなどが明らかになった.結果に基づき,犯罪発生マップをKD図で表現する際に留意すべき事項などについて議論した.
著者
柴田 立 室町 泰徳 曹 雪慧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.377-384, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本研究では,撮影対象までの距離が20m以下という限界はあるものの,写真撮影の際に,撮影者の位置,撮影方向と共に,撮影対象までの距離,すなわち撮影対象の位置情報が得られるスマートフォンカメラアプリを開発し,アプリを使用した写真投影法による調査を実施して,機能の確認を行った.また,撮影された写真の撮影者の位置,撮影対象の位置,撮影方向をArcGIS上にプロットし,アプリで得られた情報が地図上に容易に表現できることを示した.最後に,撮影対象の位置情報とモデルの活用により,実測を伴わなくても,異なる撮影対象に対する評価が混在することをある程度避けることが可能となり,撮影対象とその評価データをより良く関係付けられ,撮影対象の位置情報が得られるアプリの有用性の一部が示された.