著者
野中 勝利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Journal of the City Planning Institute of Japan (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.72-83, 2017-04

本研究は近代の和歌山城址において、風致を破壊する計画とそれに反対する取り組みの経過を明らかにすることを目的とする。風致の破壊とは濠の埋め立てや石垣の取り壊しのことである。1910年に軌道整備に伴う濠の埋め立てがあった。1914年に和歌山市による道路整備に伴う濠の埋め立て計画では、市議会や新聞に反対する意見が出された。結局、和歌山市長はその計画を撤回した。1915年には風致の破壊を伴う和歌山城址の公園改修が計画され、賛否の意見があった。最終的に和歌山県知事はそれを許可しなかった。1922年から1923年にかけて、再び濠の埋め立て計画が浮上し、一部の埋め立ては実施された。
著者
森田 哲夫 塚田 伸也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.451-458, 2017

超高齢社会を迎え,死者数の増加により,墓地需要が増加すると予想されている.一方で,市営墓地の空き区画の減少している.近年の出生率の低下,高齢者世帯や独居の増加,生涯未婚率の上昇等により,承継者のいない墓地が増加すると予想されている.本研究は,地方都市の前橋市を対象に,墓地需要動向を把握するうえでの課題を整理し,死者数や埋葬場所等の基礎的なデータベースの必要性を示した.市民アンケート調査データを分析した結果,市営墓地の需要,樹林型の墓地等の需要が存在することを示した.次に,既存の墓地需要予測方法の課題を整理し,課題に対応した需要予測の適用方法を検討し,市営墓地の需要量を算出した.その結果,今後10年間の市営墓地の将来必要数が約2,000区画であり,樹林型の墓地の需要量を把握した.
著者
高梨 遼太朗 黒瀬 武史 窪田 亜矢 中島 伸 西村 幸夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1266-1272, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
25

人口減少時代において、インフラ撤退地区の将来像を描かず、空き地空き家を上手く利用しようとしているグラスルーツ活動と乖離しているコンパクトシティ計画やマスタープランの現状への問題意識から、デトロイト市にてグラスルーツ活動の支援を行っている慈善財団主導で計画されたDetroit Future Cityという全市的計画の分析を行った。 1)デトロイトの都市計画の長期展開と2)グラスルーツ活動の変遷を、文献とヒアリング調査から明らかにすることで、それまでの都市計画から地と図の反転があり、「地区単位の積極的非都市化」が行われていて、その転換が非営利セクターの相互作用によって成長したグラスルーツ活動から着想していたと考察した。
著者
山口 隆之 浅野 光行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.985-990, 1999-10-25 (Released:2018-03-01)
参考文献数
12

In recent years, concerns about a new bus service so called "Community Bus" are increasing in the aged society. Community Bus provides locals with various service in order to meet the needs of the old and the handicapped. The main subjects of this study are as follows: the first is to build a model to forecast the number of passengers based on the area characteristics and the route characteristics, such as service level and route data of the existing 54 bus routes, the second is to clarify the important factors in increasing the number of passengers, the third is to propose some methods to encourage Community Bus.
著者
土井 勉 三星 昭宏 北川 博巳 西井 和夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.565-570, 1994
被引用文献数
6

<p>THE PURPOSE OF THIS PAPER IS TO IDENTIFY IMAGES OF THREE PRIVATE RAILROAD LINE AREAS IN KANSAI; HANKYU, KINTETSU, AND NANKAI RAILS. WHILE IMAGE OF THE AREA IS DETERMINED BY A VARIETY OF COMPONENTS CONCERNING NOT ONLY NATURAL BEAUTY BUT ALSO SOCIO-ECONOMIC ACTIVITY, THESE RAILS ARE REGARDED TO PLAY AN IMPORTANT ROLE ON THE IMAGE FORMATION. IN THIS PAPER, FORCUSING ON THE IMAGES ASSOCIATED BY THE COMMON AND PROPER NOUNS, HOMOGENEITY AND HETEROGENEITY IN IMAGE AMONG THREE RAIL AREAS ARE EXAMINED EMPIRICALLY THROUGH THE IMAGE MAPPING. SEMETIC DIFFERENTIAL METHOD WILL BE ALSO APPLIED TO DESCRIBE THE FACTORS AFFECTING THE FORMATION OF THE AREA IMAGE.</p>
著者
飯田 マリ 大澤 義明 小林 隆史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.385-390, 2011-10-25
参考文献数
10

世界の観光地で活躍している2階建てオープンバスは、屋根がなく、視点が高い場所に位置する特徴から、歩行や自動車とは異なった景色を楽しむことができる。本研究では、様々な都市で適用できるように、数理的モデルを用いて、2階建てオープンバスからの景観評価を次の二つの観点を用いて行った:(1)街並み全体を「面」で眺め、その構成要素を徒歩の場合と比較することで、どれだけ「非日常的な景色」が見られるか。(2)東京スカイツリーなど街並みの中の「点」に注目し、バス移動に伴い変化する視線方向を分析することで、首振りによる「視対象の見やすさ」がどう変化するか。主要な分析結果は以下の2つである:(1)高い視点場を持つ2階建てオープンバスは走行車線を工夫することで、効果的な非日常的な景色を演出できる。(2)進行方向の決まっているシークエンス景観であることから、カーブでの首振りが観光スポットへの注目の妨げになる。以上より、複数車線を持つ、カーブの少ない観光都市は2階建てオープンバスの導入に適しているといえる。
著者
垣内 恵美子 林 岳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.1, pp.30-39, 2005-04-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
4

芸術的ガラスの販売と歴史的建造物保存を目的に1988年に設立された第3セクター(株)黒壁は、1995暦年産業連関表による経済波及効果推計により、黒壁目的の観光客によるガラス購入、近隣商店での消費、駐車場利用や宿泊で直接消費額約15億円、2次効果まで含めると約23億円を滋賀県全体にもたらしたと考えられる。一方、黒壁の財務分析の結果を見れば、利益率を向上させ、競争力を維持するためには、ガラスの芸術性を高めるためにより大きな投資が必要である。したがって、従来黒壁が行ってきたまちなみ建造物保存は、黒壁の活動で裨益する近隣商店街、地域コミュニティや、長浜市との連携、共同負担によって行われる必要がある。
著者
岩本 博幸 垣内 恵美子 氏家 清和
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.2, pp.18-24, 2006-10-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,高山市の重要伝統的建造物保存地区における文化的景観の公益的価値を定量的に評価することにある。高山市は,1979年より古い町並みを「重要伝統的建造物群保存地区」として保存しているが,この地区から非市場的便益としてもたらされる公益的価値は,地域住民のみならず,高山市以外の岐阜県内外の住民および観光客などにも裨益していると考える。本研究では,二段階二肢選択方式のCVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法)を高山市,岐阜県,東京都の住民および観光客に実施した結果,観光客には約318億円,全国の住民には約698億円の非市場的便益がもたらされていることが,推計結果から示された。
著者
太田 裕通 神吉 紀世子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1218-1225, 2015
被引用文献数
1

本研究は個人が都市への関心を通じて抱くその時空間的な拡がりを伴う自地域への価値付けに注目し、それを地域毎の将来シナリオの創造へと展開する情報として扱うために仮称的な概念『都市認識』を定義し、『ダイアログ』という深いコミュニケーションを通してその共有を目的とした手法の漸次的構造化による開発を行った。『ダイアログ』の中でスケッチや多様な地図を駆使して居住者の『都市認識』を引き出すよう働きかけるApproacherという役割を手法開発過程で提案し、その積極的な姿勢から改めて話者の覚醒が導かれ、共に自地域への価値付けを行うプロセスを状況的、内容的に記述化し、それらから地域ベースの日常的な議論に繋げる提案を行うところまで展開した。対象地の西陣は織物で有名な都市内産業地域であり、その一般的イメージの強さから地域に潜む多様な価値が引き出し難く、また都市空間の物理的な側面においても実は『都市認識』の中にある西陣らしさが共有化され辛いことから、都市空間の将来を考える上で困難さが多い地域である。こうした地域において居住者の『都市認識』へのアプローチによる都市・建築デザインの実装が必要である。
著者
鈴木 聡士
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.163-168, 2000
被引用文献数
1

The large-scale redevelopment project has been planned in the Sapporo City. However, the evaluation from viewpoint of the inhabitant for such plan has not sufficiently been done. It is necessary that we evaluate the project from viewpoint of the user in order to activate the central urban district, and analyze usefulness then, this study analyzes the evaluation of the inhabitant for the plan using AHP. In addition, the effect of redevelopment project is analyzed according to new potential model using the result.
著者
古山 周太郎 川澄 厚志 清野 隆 青柳 聡
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.901-906, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

本研究では、人的支援の先進的な事例である中越地域の地域復興支援員制度を対象に、活動日誌をもとに支援員の活動内容を整理することを第一の目的とした。さらに、活動量といった量的な視点から、その活動の傾向と推移を把握すると共に、住民、集落、地域といった支援対象と各種活動の関係をみて、今後の中山間地域の人的支援の取り組みのありかたについても検討を加えた。本研究で明らかになったのは以下の通りである。(1)支援員の活動内容は、観光交流活動、住民支援活動、集落再生支援から、情報発信や外部対応まで多岐にわたっており、活動量をみても特化したものはなかった。(2)各活動の量や内容は年次により変化しており、特に住民や集落との関わりが増加していた。人的な支援が時間の経過により推移している点が明らかになった。(3)観光交流活動や集落再生支援においては、支援員は主体的な役割と補完的な役割の双方を担っている。支援対象も住民個人から地域全体まで広がっており、活動の全般性と支援対象の重層性がその特徴であるといえる。
著者
高橋 諒 奥村 蒼 谷口 守 藤井 さやか
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1113-1120, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
34

日本における国内の総人口は減少を辿る一方,外国人人口は増加を続けており,その影響力は無視できない局面に至っている.近年,外国人人口による人口の維持や減少の緩和について関心が高まっているが,それに影響を与える外国人支援策について定量的に分析した研究はない.そこで本研究では外国人人口による人口の維持や減少の緩和を考える際に有効な施策を検討するために,外国人人口に影響を与える要因や外国人支援策を定量的に分析した.その結果,市区町村の所得水準や雇用環境に関する変数の影響が大きいこと.外国人の医療福祉や外国人労働者に関する支援策を実施した自治体の外国人人口割合が実施前よりも大きくなる傾向があることが明らかになった.
著者
田中 健一 古田 壮宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.145-150, 2010-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
2

Hodgsonによって提案された捕捉フロー最大化問題は、移動経路上で施設を利用可能な需要を最大化するように定められた個数の施設を配置する問題である。本稿では鉄道利用者に着目し、意思決定者が需要獲得力と設置コストの異なる二種類の施設を配置可能な状況を仮定し、総資金制約のもとで各施設の組み合わせとその配置を同時に決定する問題を提案する。鉄道利用者にとって、起点駅と終点駅にある施設はアクセルが容易であるが、途中通過駅にある施設を利用するためには途中下車が必要であるため大きなコストが発生する。これを抽象的に捉え、小施設は配置された駅を起点駅または終点駅とするフローのみを捕捉可能であり、大施設は配置された駅を移動経路に含むフローを捕捉可能であると仮定する。提案モデルを現実の山手線上の流動データに適用し、最適配置結果を詳しく分析する。また山手線上のOD表を用いて捕捉フローを可視化し解の特徴を分析する。さらに両者を組み合わせて配置可能な場合には、同一資金で一方のみを最適に配置する場合よりも多くのフローを捕捉可能なケースを示す。
著者
三輪 律江 藤岡 泰寛 田村 明弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.38.3, pp.127-132, 2003-10-25 (Released:2017-10-01)
参考文献数
11

本研究は横浜市保土ヶ谷区内の既成市街地における子ども活動環境調査により、活動相手別、平日・土曜日の子どもの活動環境の実態把握および子どもの活動環境の受け皿になるべき都市計画的な在り方について考察を行った。子どもの活動環境は平日は友達と「公園」を中心に分散的に、土曜日は友達と「公園」「学校」、大人(親)と「商店街やお店」「その他」での買い物などに集中していることが明らかになった。いわゆる「あそび場」とはほど遠いとされる「商店街やお店」のような空間での子どもの活動環境が浮き彫りにされたことは、地域での子どもの活動を大人全体で見守りそれを許容するまちづくりや地域施設整備を目指す上で、重要な知見が得られたものといえる。
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1318-1325, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
70

本研究は,満州国都市計画制度における,土地経営,集団住区,容積率規制に着目し,制度の起源,特徴,新規市街地への特化との関係,戦戦後日本制度との比較等の視点から検討した。土地経営は,ドイツの土地公有化政策を直接の起源とはしていなかった。集団住区は外国の理論の輸入であったが,人間的スケールの都市空間の創造よりも,人口配分の管理統制手段として利用された。容積率規制は,内地で見送られた制度であったが,高さ制限への翻訳を要するなど規制手段として発展途上であった。都邑計画法(1942)は,その時代の日本の都市計画技術を以て,既成市街地の存在を度外視して理想型を追求するとどうなるか,という実験と見ることもできるが,本格適用に至っていないことから,実験計画と呼ぶのが妥当であろう。
著者
久保 勝裕 安達 友広 木曾 悠峻
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1288-1295, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
33

明治期に建設された北海道の市街地の多くは、市街地区画図に基づいて極めて計画的に建設された。しかし、その後の市街地拡大の状況はそれぞれ固有性を持ち、それに対する市街地再編の中で寺院敷地の再配置が象徴的に行われた。つまり北海道では、市街地拡大の過程で「2度目のデザイン」が施されたのではないか。本研究では、市街地拡大に応じた寺院の再配置の方法を解明し、市街地固有の景観を創出してきた実態を明らかにした。例えば、余市では、近世市街地に接して市街地を増設した際に、従前からの寺院群を開拓使の意向で新市街地外側の道路端部に移転させた。寿都では、大火を契機に近世市街地を再編した際に、新規の道路開削と一体的に寺町を建設した。これらでは、①市街地区画地外に配置する、②市街地端部の道路の軸線上に配置する、③寺院敷地を連続させる等の手法が用いられた。以上、北海道の市街地では、設計手法を徐々に蓄積し、時代に応じた宗教統制が行われ、やがて両者が接点を見つけていった。その過程では、各々の時代背景や制度的背景、市街地拡大の状況に応じて、それぞれ特徴的な寺院の再配置が行われ、固有の景観を今日に継承してきた。
著者
木曾 悠峻 久保 勝裕 安達 友広
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1280-1287, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

北海道の市街地は、多くが農業地帯に対して都市的サービスを提供するために、計画的に建設された。地方都市の建設は明治20年代から本格化したが、特に内陸都市では、原野区画が先行し、一定程度の入植が進展した後に市街地が区画されるのが一般的であった。従って、市街地の区画は、原野区画に埋め込むように建設され、その方向は強く規定された。本研究では、北海道殖民都市のグリッド市街地を分析対象として、①市街地範囲の設定方法と、②街区・宅地計画の方法(市街地区画道路の割り付け方法)の詳細を明らかにする。分析の結果、①原野区画の中に市街地区画を計画する場合、小規模市街地の範囲は、市街地用地の買収時の農地単位で規定された。300間四方の原野区画(中画)の内側に収め、100間×150間の「小画」の境界線を市街地の外枠とした。②具体の街区・宅地計画は、原野区画道路を基準線として設計された。一部の例外を除き、原野区画道路は付け替えや線形の変更をされることなく、原野の基本寸法の枠内で、市街地区画道路と街区の寸法が割りつけられた。この原野区画道路によって、市街地と周囲の農村部が空間的に連続化された。
著者
山田 歩美 加藤 雅大 有賀 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1159-1164, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

本研究は「過疎地域神社活性化推進施策」を受け、氏子と神社が地域運営を担う一員同士の繋がりであるという視点の上で祭礼運営を行うことが重要であるという背景を受け、社会的紐帯と祭礼形式の変容の相互関係を解明し、祭礼形式が変容しながらもそれが持続していく上での課題を、氏子側の祭礼に対する意識を踏まえ考察することを目的としている。⑴祭礼内容の歴史的変容、⑵祭礼を実行する組織運営、⑶祭礼に対する住民意識、以上3点について調査の結果、⑴対象神社の祭礼は福井地震を契機として祭礼内容が変容し、現在も人口減少に合わせて一部内容を変化しながら継続している。⑵氏子は町内会を介して祭礼に参加している。⑶氏子の祭礼に対する意識は各町内の人口特性や祭礼への参加形式の多様性によって各町内で差異が生まれている。以上より対象神社における社会的紐帯は町内会を介した間接的且つ段階的な繋がりの上に成り立つ事が明らかになった。また、各町内毎は祭礼形式に利点や課題を持ちつつも、全体としての枠組みは全地区で一貫されている事が地域運営の課題といえ、各町内の組織が有する祭礼形式の変容の方向性や課題を共有する事が重要であると考えられる。
著者
落合 知帆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1151-1158, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

熊野川沿い集落は古来より洪水常襲地域であったため,伝統的な水防建築の一様である「アガリヤ」を建て,水害時に備えた.本研究では,和歌山県田辺市,新宮市,三重県紀宝町の熊野川沿い集落での調査により,アガリヤの分布を確認し10の集落において現存を確認した.また,田辺市本宮町を対象とした詳細調査において,アガリヤは住居式,倉庫式,住居倉庫式に分類され,地区によって倉庫式または住居倉庫式が多数を占める違いがあった.また,その配置は,住宅の裏に石段を築き整地した上に建てられた敷地内盛土型と,住宅のある敷地から離れた高台に建てられた敷地外高台型に分類した.アガリヤの減少または消失の要因は, 昭和28年以降大規模な水害の減少,公共事業や治水対策の実施,二階建住宅の普及に伴う住民の水害危機感の減少,公的避難所の整備による自己対策から避難所避難への意識変化が挙げられる.現代社会において地域に残る伝統的な水害対策の知恵の継承が重要である.