著者
村上 威夫 大西 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.103-108, 1998-10-25 (Released:2018-04-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Coordination of local planning powers is important in a decentralized planning system. For this concer, we made a case study in Portland, Oregon, U.S., where a regional government called Metro was created over the jurisdiction of existing local governments for this coordination. We found that 1) the development of Metro was promoted by the existence of a strong central city and the state land use planning legislature; and 2) an advisory committee comprised of the local government officials plays an important role in the policy making process of Metro.
著者
服部 美樹 松尾 薫 武田 重昭 加我 宏之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.5-8, 2020 (Released:2020-07-25)
参考文献数
8

本研究では、尼崎中央公園の噴水広場にて着座設備を導入する社会実験を実施し、滞留者の交流行動にどのような影響があるのかを探った。 社会実験は、2019年10月〜11月に実施し、着座設備は、噴水に沿って配置した円弧型、1箇所に集中して配置する集中型の2通りで配置し、行動観察調査を通じて、交流行動(同行者・他者との交流行動)の発生状況を把握した。 その結果、着座設備を導入した社会実験時には、噴水周辺と比べて着座設備の方が単独行動の「飲食」、同行者交流行動の「話す」や他者交流行動の「見る」の割合が高く、特に、噴水周辺と着座設備との間での「見るー見られる」の関係、集中型では他者との会話の発生が確認でき、着座設備の導入が滞留者の交流行動を誘発させる可能性があることが分かった。
著者
佐野 浩祥 十代田 朗
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.385-390, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
6

本研究では、国土計画に位置づけられた大規模地域開発の代表例でありながら、現時点での評価は必ずしも芳しくない「むつ小川原開発(むつ開発)」と「苫小牧東部大規模工業基地開発(苫東開発)」を対象に、国と地方の計画の「計画内容」及びそれらにおける両開発計画の「位置づけ」の変遷を明らかにした。無論、事業化にあたっては、政治的、時代的背景等も大きく影響していると考えられるが、本研究では、今後の地域開発における計画策定手法に資する知見を得ることを第一義的に考え、関連する各種計画書等を主たる資料に計画内容及び計画策定段階にのみ着目した。その結果、苫東開発をめぐっては上位計画(全総)と下位計画(北海道総合開発計画)の乖離が、むつ開発をめぐっては国家的な事業を県が計画するといった計画意義と計画主体の矛盾がみられたことから、各セクターが責任を担保しうる事業のみを担当する必要性を述べた。また、むつ・苫東両開発において、構想レベルから計画の具体化の過程を明らかにし、公共投資としての計画の限界、空間操作技術の不足を指摘した。
著者
阿部 正美 田口 太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.878-884, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
12

本研究は、1.救護施設の立地条件からくる入所者の社会環境を考察した上で、2.居宅生活訓練事業の実施有無と地域生活移行状況の実態および、3.施設に関わる「組織の論理」と「個人の論理」の相違による現場での支援内容への影響を把握した上で、居宅生活支援事業の有無による地域生活移行支援の相違を明らかにすることを目的とする。
著者
岩本 敏彦 中村 文彦 岡村 敏之 矢部 努
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.2, pp.39-48, 2006-10-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
19

本研究は首都圏の都市鉄道において、駅の拠点性向上や駅周辺地区の活性化、にぎわいの向上という社会ニーズに対応するため、従来のように駅、駅前広場、駅の周辺地区という個別要素について議論するのではなく、それらを包括した総合空間を「駅まち空間」と定義し、その空間を研究対象として取り上げ、これまで明確化されていない個別施設の連携効果について着目した。はじめに、調査対象駅において駅、駅前広場、駅の周辺地区から空間構成に影響を与える要素を選定し、クラスター分析により駅まち空間の類型化を行った。次に、分類結果に基づき、利用者評価の分析を行う駅を選定し、利用者への意識調査を実施した。続いて、駅まち空間に対する利用者の評価構造を解明するため、重回帰分析を行うとともに、駅、駅前広場と一体的に整備するのが望ましいと利用者が考える範囲について整理し、空間の施設構成との関連性について考察した。
著者
嚴 先鏞 西堀 泰英 坪井 志朗
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1549-1555, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10

近年,人口の急激な減少と高齢化を背景に,環境負荷,財政問題に対応しながら住民が公共交通により生活利便施設等にアクセスできるよう,「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」型の都市構造が推進されている.本研究では,近年の立地適正化計画の拠点のような都市機能の地理的な集約による複数の都市機能を持つ施設の集約と交通網を考慮した利便性の評価を行い,その優劣の要因について施設の分布と交通網の観点から明らかにすることを目的とする.第一に,自家用車,送迎,公共交通の3つの移動パターンにおいて,移動時間を最短にしながら複数の施設を巡回する際の利便性を評価する.第二に,自家用車および公共交通の両方において便利な地域は2割程度である一方,居住地の6割を占めている地域では公共交通の利用が不可能である.第三に,住民が公共交通によりアクセスできる施設集約地点は約4割のみである.第四に,公共交通が相対的に不便である地域は,居住地面積および人口の2割を占めており,「路線網による不便」と「施設分散による不便」に区分できる.
著者
北島 遼太郎 瀬田 史彦 城所 哲夫 片山 健介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.603-608, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は2011年のタイ大洪水後日系企業の立地動向の把握とその要因の解明を目的としており、調査方法としてはメールによるアンケート調査と日系企業の現地法人へのヒアリング調査によって研究を行った。調査の結果、多くの日系企業が洪水後も従来の立地場所へ留まる傾向があり、その要因としては取引先企業が留まること、入居工業団地によって洪水対策が行われていること、工場移転のための資金を確保できないこと、工場の製造形態によっては人材育成が求められ容易に労働力を手放せないこと、政府への不信感から工場移転による洪水回避に期待が持てないこと等が挙げられた。政府によって洪水後に発表された復興開発戦略をこの立地動向を踏まえて見てみると、長期的治水対策や洪水情報の提供、保険制度の改善等は企業も望んでいるのに対し、堤防や嵩上げ等の局所的治水対策や新経済圏の開発等の戦略を企業は望んでおらず、今後に対する両者の態度には違いがあることが明らかになった。また両者の今後の相乗的な関係性の構築のために、調査を通じて感じられた日系企業によるタイ政府への不信感とタイ政府の計画実現の不確実性は、改善していく必要があると考えられる。
著者
鹿内 京子 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.959-964, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
33

21世紀を迎え、都市において、オープンスペースと公共空間の創出は地球環境の維持、社会的環境の回復のために、重要な課題である。それに伴い、新しい都市空間として都市を再生するために、川と一体化したオープンスペースを創出し、公共空間を生み出す様々な取り組みが行われている。江戸時代に荷揚げ場として川沿いに設置された「河岸」は、明暦年間にはオープンスペースとして規定され、街と密接に関わりあいながら、時代の近代化に柔軟に対応させながら、今日まで継承されてきた。本研究では東京の下町の河川における「河岸」を対象として土地利用と土地所有の2つの視点から、土地利用ではオープンスペースに、土地所有では公有地に焦点をあてながら、明治維新、市区改正、帝都復興事業、戦災復興事業で5期に分けて、その歴史的変遷を分析する。本研究は、江戸期より400年の文化を継承してきた「河岸」を研究することで、オープンスペースの創出の原理原則を把握し、開発速度の速い現代社会においてオープンスペースを維持する方策を講じるための知見を得、これからの新しい公共空間をもった複合都市の再生に向けた政策提案に導くことが、目的である。
著者
成田 海波
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.645-651, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
16

宇野築港地区は歴史的市街地において新たに整備された港周辺の都市空間を生かした交流拠点、文化芸術拠点としての役割を新たに担っている。宇野築港地区での文化的活動を契機としたセクター間の新たな関与と展開、活動拠点の広がりは時期によって5つに分類される。2013年以降は歴史的市街地において、文化的活動がイベントのみならず日常の場で生まれており、商店街や宇野港周辺が以前に比べて創造的環境に変容しているといえる。また、同時に、活動に応じて足場となる拠点を選択したり、活動の補助となる支援策を選択することができ、社会や経済システムが市民の活動が実現しやすい形に再構築されつつあることが、宇野築港地区での取り組みの一助となっている。
著者
川西 光子 中岡 義介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.154, 2003 (Released:2003-12-11)

本稿は、ルシオ・コスタのコンペ当選案にみるブラジリアの都市計画のコンセプトを明らかにするために、近代都市計画理論がいかに当選案に使われているかの検証の意味も込めて、当選案の解説内容とル・コルビュジェの『ユルバニズム』との照合をおこなったものである。その結果、当選案の解説から191のキーセンテンスが抽出され、六つのカテゴリーに分けられ、≪基礎的な考え方≫の88%、≪全体の骨格≫の92%、≪機能構成≫の82%、≪技術・方式≫の56%、≪デザイン≫の87%、≪その他≫の89%が『ユルバニズム』と符合した。さらに、その符合する程度を三段階にわけると、≪基礎的な考え方≫では「全く同一」が最も多くなった。よって、ブラジリアの都市計画には『ユルバニズム』に示された都市計画の原理が随所にみられることが明らかとなった。
著者
秀島 栄三 小林 潔司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.397-402, 1997-10-25 (Released:2018-05-01)
参考文献数
10

In this paper, the conservation benefits of rural landscape are investigated. The conservation benefits can be derived from two distinct properties of rural landscape: use value and existence value. These benefits can be attributed to both the farmers and the urban residents. The existence value of rural landscape can be derived from altruistic as well as paternalistic motives. It is shown that the existence value based upon altruistic motives is vanished in the cost-benefit calculation. The income transfer from urban residents to rural residents can be justified in terms of use value and existence value based upon paternalistic motives.
著者
松浦 きらら 藤井 さやか 有田 智一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.285-290, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では都区部におけるUR賃貸住宅団地が有する団地屋外空間を取り上げ、URによる団地屋外空間設計手法が持ちうる課題を抽出することと、団地屋外空間が地域内で活用される実態の把握を通じて今後の団地屋外空間への設計指針への示唆を得ることを目的としている。団地屋外空間の設計内容と活用実態について、地区内の複数の遊び場と対象地を比較すること、対象団地における設計内容と活用実態の比較検討をする際に団地敷地内における配置計画に着目することによって、団地屋外空間が団地居住の児童のみならず周辺地域児童にとっても活用できる遊び場である可能性を検討する。調査結果からは、都区部におけるUR賃貸住宅団地には公的機能・配置を有する屋外空間が豊富に存在し、地域資源として貢献できる可能性があることを把握した。活用実態としては、UR所有の屋外空間であったとしても団地全体の配置計画上団地外居住児童による利用が活発となる場合があり、そのために設計時の利用構想内容と活用実態に齟齬が生じうることが明らかになった。
著者
矢﨑 有理 栗田 治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1504-1511, 2019
被引用文献数
1

<p>図書館は都市やコミュニティにとって不可欠な存在であり,身近で使いやすいものでなければならない.しかしながら、図書館の運営を担当する多くの地方自治体は財政的困難に直面している.したがって、図書館を運営するための予算が削減される可能性がある.そこで,図書館には限られた資源の中で良いサービスを提供するための効率的な管理が必要である.そのために本論文では,立地点の優位性と所蔵資料の数という2つの魅力からなる図書館サービスの評価法を提案する.特に湿地の優位性の方は"図書館デザート"によって評価する.これは,人々が図書館から非常に遠くに住んでいる地域であり,人々が図書館を容易に使用することが難しい地域を意味している.</p>
著者
大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.307-312, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年、土地区画整理事業が保有する換地手法と任意の土地先買いを最大限に活用した市街地整備が多く見られるようになった。この方策がどの時点から用いられるようになっていたのか過去を遡り調査した結果、関東大震災復興土地区画整理事業で、当時の鉄道省が土地先買いし内務省及び東京市の土地区画整理事業により先買い地を鉄道用地へ換地し鉄道用地を確保していたことが判明した。そこで本研究は、関東大震災復興土地区画整理事業における鉄道省による土地先買いと土地区画整理事業による鉄道敷への鉄道用地換地実態を明らかにすると同時に、鉄道省が本方法を採用するに至った背景と土地区画整理の技術的方針を解明することを目的とする。その結果、鉄道復興計画を明らかにし、鉄道省の土地の先買い状況を土地所有者名簿から詳細に把握した上で、土地区画整理事業を活用した鉄道用地創出状況を解明した。また土地の先買いと換地方法は法に定めず、任意の運用レベルで行っていたことが判明した。本手法採用の背景として、鉄道省は都市復興をチャンスと捉え、さらに鉄道用地確保に土地区画整理事業を活用する方策が良策であると認識していたことがわかった。
著者
森田 紘圭 稲永 哲 藤森 幹人 村山 顕人 延藤 安弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.709-714, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

現在、日本では自動車需要の頭打ちや歩行環境改善のニーズの高まりから、道路空間の見直しの議論が進んでいる。特に近年では、歩行者や滞留者にとってより快適な空間形成やその運営方法への着目が高まりつつある。本研究は、名古屋市中区錦二丁目地区における歩道拡幅社会実験における交通実態調査を実施し、自動車交通への影響を分析するとともに、温熱環境や天候、歩行空間への木材活用による歩行空間の快適性や歩行者行動の分析を行うものである。分析の結果、1)歩道拡幅による車道狭窄は通過交通の走行速度低減に効果があること、2)季節変化による屋外気温や天候の変化は歩行行動と密接な関係があり、温熱環境のコントロールが歩行空間の快適性向上に寄与する可能性があること、3)歩行空間への木材の使用は都心部において自然や景観の代替として捉えられ、歩行環境の改善に大きく寄与する可能性があることが明らかとなった。
著者
坂本 邦宏 高橋 洋二 久保田 尚
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.199-204, 1998-10-25 (Released:2018-04-01)
参考文献数
5

The purpose of this study is to investigate traffic problems in historical area in Kamakura-City. Kamakura-city is famous as tourist city where about twenty million tourists visit every year. But serious traffic problems such as heavy traffic congestion, residents' safety and accessibility occurred on every holiday. The citizen committees for TDM in Kamakura conducted residents' preference surveys and detailed traffic surveys. It was made clear that streets in Kamakura are paralyzed mainly by visitor's private vehicles. It was found that about 19% residents support the idea of introducing road pricing, where about 16% are against to it.
著者
山本 聡 松永 安光 徳田 光弘 漆原 弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.989-994, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
9

本論は、1990年代初頭イギリス政府都市再生政策「シティチャレンジ」の対象地域に選定されたマンチェスター市ヒューム地区を評価とモニタリングのシステムを適用したもっとも典型的な事例としてとりあげ考察したものである。このシステムはこのプロジェクトに当初から組み込まれていたものであり、現在に至るまで機能している。1997年と2002年当プロジェクトの節目には広範にわたる評価報告がなされている。現地の関係機関を通して入手された資料などを検討した結果、この継続的なプロセスの利点が明らかにされた。このシステムによればプロジェクト当初に策定された目標そのものも、その後の変化に対応して変更することが可能になることが判明した。これがわが国の、特に長期にわたる都市再生事業の評価システムに貢献することを期待する。
著者
栗本 開 飯田 晶子 倉田 貴文 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.529-536, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
17

本研究は,人口減少基調にある東京都八王子市を対象に,生産緑地所有者への悉皆的なアンケート調査を通じ,所有者の生産緑地の維持・貸与意向と意向に影響を及ぼすと推察される因子,およびこれら意向の空間的傾向の把握を行い,今後の都市縮小時代における都市農地の維持方策の方向性を考察した.その結果,既往研究で指摘されていた個人属性とは別に,立地属性である地価と周辺農地率が独立して生産緑地の維持意向と正の関係にあることが示された.日本では集約型都市構造が志向されているという点に着目すると,特に都市農地が失われる危険性が高い,地価と周辺農地率がともに低いエリアにおいて,生産緑地の貸借の推進による農地維持が求められることが示された.反対に,都市農家の生産緑地の維持意向が高い傾向にある,地価と周辺農地率がともに高いエリアでは,画一的な居住誘導を進めるだけでなく,都市の構成要素として都市農地を認め,農地と住宅地の共存による良好な住環境の形成を図ることが今後の可能性の一つとして示された.
著者
藤垣 洋平 高見 淳史 トロンコソ パラディ ジアンカルロス 原田 昇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.833-840, 2017
被引用文献数
2

本論文では、大都市圏向け統合モビリティサービスMetro-MaaSを提案し、利用意向調査によりMetro-MaaSの需要の特性を評価した。Mobility as a Service(略称MaaS)は、利用者が適材適所で交通サービスを組み合わせて使いやすくすることで、自家用車を保有し運転することの代替となりうるサービスを目指す概念であり、世界の各都市で導入に向けた検討が進んでいる。本研究ではMaaSの大都市圏への導入方法として、対象事業者数を抑制しつつ利用者の日常生活をカバーできる設計手法Metro-MaaSを提案し、その需要の特徴を評価した。Metro-MaaSは自動運転とは独立した概念だが、自動運転車を使用したオンデマンドバス等のサービスと既存公共交通を一体的に提供する方法としても活用可能である。調査結果の分析から、利用意向に影響がある個人属性や居住地、移動等の特徴を抽出し、その影響を評価した。その結果、「運転に対して少し不安がある人」「駅から自宅までの徒歩の所要時間が20分以上の人」「自家用車を2台保有している人」などが、サービスを利用したいと考える傾向が示された。
著者
籾山 真人 十代田 朗
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.49-57, 2020-04-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

事例として取り上げる、JR 中央線高架下での一連の取り組み(以降「中央線高架下プロジェクト」)は、地域住民を巻き込んだ「メディア運営」と、高架下遊休スペースの活用による「拠点開発」を連携させたもので、民間鉄道会社が地域を巻き込みながら、自らコミ ュニティスペースの設置、維持管理を行うなど、先駆的だったといえる。そこで本研究では、「中央線高架下プロジェクト」の事例分析を通じ、地域コミュニティの巻き込み及び、拠点開発を通じた地域コミュニティづくりの過程を明らかにした上で、マーケティング理論などを援用することで、地域コミュニティづくりにおける方法論及び有効な知見を得ることを目指した。その結果、地域コミュニティづくりにおいては、ターゲットに応じた段階的かつ、戦術的なアプローチが効果的であることが明らかとなった。