著者
山口 歓 浅野 純一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.118-124, 2016-04-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本研究は、地方都市における近年(線引き制度や開発許可制度を含む都市計画法改正のあった2000年以降)の逆線引き制度運用の実態を全国レベルの調査から把握し、その課題を考察したものである。逆線引き地区の把握については、道府県の担当部局や当該地区の市町へのアンケート調査で概要をつかんだ後、顕著な課題を示す特定の事例ついては、現地調査や当該市担当部局へのヒアリングを主としたケーススタディで詳細を分析した。その結果、逆線引き後の宅地化率は(1)物理的な開発困難地、(2)農振農用地区域の指定、(3)開発圧力の低さの3つを要因として比較的低いものの、逆線引き後に開発許可条例の適用地にする等、開発管理上問題のある事例が見られた。また複数の逆線引き地区を持つ都市計画区域では、保留人口フレームの減少や枯渇が逆線引きの動因となっている一方、持続的に逆線引き地区を捻出しつづけることの困難さや人口フレーム計算の非公表等、線引き運用の硬直性と密接な関係があることを明らかにした。
著者
斎藤 正俊 谷下 雅義 鹿島 茂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.505-510, 2004-10-25
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,著者が開発した鉄道駅における利用者の行動モデルの変数にエネルギー消費量を明示的に組み込む方法を提案し,モデルの説明力が大幅に向上することをケーススタディにおいて検証している.行動モデルは,移動円滑化の影響を評価する観点から,乗車駅の改札口から降車駅の改札口に至る行動を対象としており,この一連の行動を乗車駅における移動施設の選択行動,車両の選択行動,降車駅における移動施設の選択行動に階層化するとともに,効用関数(選択基準)を移動時間に加え,エネルギー消費量と移動形態の線形関数として仮定し,確率効用理論に基づく階層型の非集計行動モデルを用いて個人属性単位で定式化し,都営三田線の利用者を対象にケーススタディを行っている.
著者
清水 陽子 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.777-782, 2014
被引用文献数
1

本研究は、人口減少都市において地域改善の支援組織として活動する非営利組織、特にCommunity Development Corporationsという組織に着目した。その事例としてSalem Housingの活動実態を把握し、活動内容の変化、役割を明らかにすることを目的とした。(1)アメリカでは人口が減少している都市はまだ少なく、Salem Housingは人口減少都市で活動する数少ないCDCである。(2)その背景にはフリント市の人口減少がある。人口減少により、CDCの主な事業であった住宅の供給のニーズは低くなっており、替わって地域の質の向上への支援が求められている。(3)Salem Housingでは人材と財源の確保が大きな課題となっている。財源は企業や連邦政府などの補助金などを活用しているが、安定した財源が少ない。また、市の人口が減少している状態はCDCへの協力者も減少させている。人口減少は地域を支えるCDCにも影響を及ぼしている。
著者
柿本 竜治 溝上 章志
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.373-378, 2005
被引用文献数
1

平成14年の道路運送法の改正により、バス路線の需給調整規制の廃止とともに地方バス補助制度も改定された。これにより、これまでの内部補助を前提とした事業者への補助措置ではなく、生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた。補助金投入に際し、従来、路線を評価する指標として営業係数や輸送密度が用いられてきたが、これらの指標による評価には営業費用を最小にする投入や産出がなされているかという企業努力は不問としている。そこで本研究では、生産性と集客性で構成される「企業努力面」と、公共性と収支性で構成される「経営・環境面」とにより路線を分類し、さらに運行サービス水準等の路線の特性による主成分分析を行い、路線改善策の抽出する方法の提案を行った。この方法により、公的補助投入対象路線を効率的に絞り込むことが出来るとともに、補助対象外の路線を維持するための具体的な改善策を示すことが出来た。
著者
小浦 久子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.211-216, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
2
被引用文献数
2

2004年に制定された景観法にもとづく景観計画が各地で策定されてきている。半年以上運用実績のある景観計画を対象にその構成と運用実態について調査分析した。その結果、景観計画の構成は地域の景観課題に応じて多様な使い方が見られた。定性的となりやすい形態意匠に関する景観形成基準については数値基準との組み合わせなどが試みられているが、基準表現の解釈の幅に応じて適合性判断が難しいと考えているところが半数近い。景観法だけでは地域の景観課題に十分対応できず、より良い景観形成にむけて事前協議と自主条例の必要性が多くの自治体で認識されていた。
著者
野中 健志郎 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.457-463, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究の目的は,住環境評価の視点から判別分析を用いて居住誘導区域が設定された場所の要件を明らかにすることにある.はじめに,線引き都市を対象に居住誘導区域の設定状況を市街化区域の人口密度と居住誘導区域に対する市街化区域の縮小率を用いて分析し,クラスター分析により6つのtypeに分類した.その上で,そのtypeを基に代表都市として土浦市,鶴岡市,箕面市,熊本市を選出した.さらに,住環境評価の視点から居住誘導区域の設定の有無を識別するための判別モデルを構築した.最後に,構築した判別モデルを縮小率の異なる他都市に適用した.結果として,判別モデルにより縮小率の高低を住環境指標の観点から一定程度説明することができた.
著者
朝倉 真一 永橋 為介 野嶋 政和
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.103-108, 2001-10-25 (Released:2017-12-01)
参考文献数
65

The purpose of this paper is to figure out historically and theoretically the character of public retail and wholesale center in around the 1920s in Kyoto by focusing on the context of modern commercial and distributive policy change and the context of modern city management and planning. It could be concluded as follows; (1)Public retail was set first as the one of social work programs for the poor in down town, but the character was getting pilot of a good modern retail, and was set strategically around developing suburb in Kyoto. (2)Particularly, after wholesale center was set in 1927, not only public retail but also private retail and wholesale places were all organized and governed in modern hierarchical system of both modern commercial and distributive policy and city management. (3)This change of commercial and distributive policy was related to and supported by the modern city management policy and new city planning in Kyoto.
著者
四衢 深 小林 隆史 石井 儀光 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1483-1489, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
19

日本国内の仏教寺院数は7万を超え,極めてありふれた施設である.しかし,地方を中心に寺院を支えてきた檀家数が減少し,かつ葬儀形態の変容によって,寺院経営は困難な状況となっており,ストックの未利用化すら進行している.本研究の目的は,僧侶による檀家の見守り機能と,寺院を地域の拠点として利用することによって,寺院維持とストック活用を検討することである.先ず,僧侶による檀家の見守りサービスについて,岐阜県の不遠寺を事例に分析した.寺院と檀家の距離は年々増加しているものの,寺院と同一市内の檀家については概ね2km以下の距離となっていること.また,1日あたり3,4軒程度の檀家を巡回して読経を行っており,移動時間を含めて概ね午前中には巡回が終了することより,僧侶にとって過大な負担とはならずに,僧侶による見守り機能が実現可能であることを示した.次に,寺院の地域拠点化について,埼玉県において,面積と施設のジニ係数,及び施設と人口との距離分布の分析を行った.面積あたりで寺院が小学校やコンビニエンスストアよりも均一に分布していること,宗派による協力で小さくなる距離分布を数量的に表し,地域拠点としての活用可能性を示した.
著者
竹下 博之 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.463-468, 2009-10-25
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究は、鉄軌道線廃止後の代替交通網整備の検討方法について示唆を得ることを目的としている。2006年10月に廃止となった桃花台新交通桃花台線(愛知県小牧市)を対象として、その廃線前後の沿線における交通利便性変化を、土地利用を考慮した評価が可能なポテンシャル型アクセシビリティ指標を用いて評価した。その結果、代替公共交通網により名古屋市方面への交通利便性は維持されているものの、小牧市内へのそれは大きく低下していることが明らかとなった。この結果と、独自に実施した廃止に伴う住民の交通行動変化に関するアンケート調査結果とを比較したところ、おおむね合致していることがわかった。このことから、鉄軌道廃止後の公共交通網検討のための評価指標として、アクセシビリティ指標を用いることが可能であると考えられる。
著者
保立 透 エルファディング スザンネ 阿部 成治 前川 和彦 橋本 政史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.547-552, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
16

本研究は、道路と建物とを立体的に整備した多くの事例を持つドイツを対象に、実例を検討した上で制度面を明らかにすることにより、今後の我が国で「立体道路制度」を発展させる方向を考えることを目的としている。ドイツでは、幹線道路による市街地の分断や交通騒音を解消するなどの目的で、道路と建物の立体化が行われている。我が国の「立体道路制度」に比べ、市町村が街づくりの観点から個別事情に応じた柔軟な対応をしていることが特徴的である。そのための法制度としては、道路の計画確定、特別利用許可(又は契約)などとともに、特に Bプランで各種利害を衡量した上で立体的な用途指定を行えることが重要な役割を果たしている。
著者
青木 留美子 多治見 左近
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.553-558, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
3

高度経済成長期を中心に大量に開発された郊外住宅地の中には、居住者の高齢化問題あるいは空地・空家化等空洞化問題に直面している地域も多い。これらの問題はコミュニティ形成や治安維持に困難を来す可能性がある。非婚・晩婚化によるファミリー世帯の減少や都心回帰現象など郊外型住宅の需要減少が予想される中で郊外住宅地の現状を把握し、今後の動向を探ることは重要である。郊外住宅地の問題構造を解明するためには、各地域特性を把握し全体的系統的な認識をすることが必要である。本稿では大阪府の郊外一戸建て住宅地を対象に、都市の中での各住宅地の位置づけを明確にし、居住者高齢化や空洞化に対する今後の方策を検討するための基礎的資料を得ることを目的として、町丁字別分析を行った。住宅地の性格を特徴づけると考えられた開発時期、立地条件によるグループ化を行い、グループの空地状況と高齢化状況による特性を調べた。結果、開発時期が初期であるほど高齢化率が高くなる傾向があること、高齢化率は居住者の加齢による高齢化と若年層の離脱により急速化すること、初期開発の住宅地のなかでも条件によっては高齢化が抑制されていることが明らかになった
著者
村上 威夫 大西 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.103-108, 1998
被引用文献数
1

Coordination of local planning powers is important in a decentralized planning system. For this concer, we made a case study in Portland, Oregon, U.S., where a regional government called Metro was created over the jurisdiction of existing local governments for this coordination. We found that 1) the development of Metro was promoted by the existence of a strong central city and the state land use planning legislature; and 2) an advisory committee comprised of the local government officials plays an important role in the policy making process of Metro.
著者
車戸 高介 後藤 春彦 馬場 健誠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.650-655, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
4

現在文化活動としてのストリートダンスは計画者の意図と異なり、都市空間を私的に利用する形で表出している。公共空間を私的利用しているストリートダンサーはしばしば「不良」のように問題視されてしまっている。しかし、このような状況下においてもストリートダンスは都市空間のいたる所で出没し活動を続けている。これは成熟した都市である東京首都圏が、新たな文化活動としてのストリートダンスを空間的・社会的に何らかの形で受容していると考えられる。本研究ではストリートダンスにおいて象徴的な活動場所である損保ジャパンビルを中心に利用しているダンサーを対象に、二次・三次的な活動場所の利用実態の分析を通して、首都圏において持続して活動を行う為の空間的・社会的要素について明らかする。これにより現代のような空間管理社会における文化活動が根付く為の公共空間のあり方について新しい視座を与える。
著者
加嶋 章博
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.859-864, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
20

本考察はスペイン・ルネサンス期の都市計画思潮に関する研究の一環である。1573年に公布された「探索,新入植,平定に関する勅令」(以下「フェリーペ2世の勅令」という)は植民地の都市計画に対する考え方を示した代表的なスペイン植民地法である。同勅令については、その思想を特に『建築十書』に示されたウィトルーウィウスの考え方に強く依拠している点がこれまでも指摘されているが、共通点にのみ重点をおいた概括的な比較考察という既往研究の偏りがその背景にある。これには「フェリーペ2世の勅令」がもつ特異性を却って不透明にしてきた側面があると考えられる。本稿ではこの点に留意し、広く都市計画の考え方において、両者の相違に留意した相対的な比較検討を行い、「フェリーペ2世の勅令」の位置付けに役立てたい。結果として、勅令は『建築十書』に示されたウィトルーウィウスの都市計画に対する考え方を継承する部分が多い点は確認されたが、その一方で、特に都市形態、都市計画手順、都市核の計画手法といった都市計画の根幹部分に明らかな差異が認められた。
著者
篠部 裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.625-630, 2012
被引用文献数
2

都市における高層建築物の林立に伴い都心に残る庭園からも多くの高層建築物が眺望されるようになった。本研究は、わが国の主要な5庭園(偕楽園、兼六園、後楽園、六義園、縮景園)を対象に庭園の周辺景観を保全するための施策を調査し、これらを比較・考察することで、都市部の庭園の景観保全施策の主要な枠組みとその要点を明らかにし、縮景園の周辺景観の保全のあり方を検討した。具体的には、5庭園における景観保全のための制度(風致地区、高度地区、地区計画の有無、庭園周辺の用途地域、景観保全のための目的と基準の概要、事前届出の対象行為、眺望点の有無など)を調査し、これらを比較・考察した。今後の縮景園における周辺景観の保全の諸課題は、(1)事前届出の対象となる建築物の高さの見直し、(2)周辺景観の保全のための地区設定の見直し、(3)庭園の眺望景観を考慮した眺望点の設定、(4)建築物の最高高さ制限の設定、が挙げられる。
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.193-198, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
7

本研究では、『旧軍港市国有財産処理審議会決定事項総覧』を用い、旧軍港市である横須賀、呉、佐世保、舞鶴における、1950~1976年度までの旧軍用地の転用実態を明らかにしている。旧軍港市4都市では、旧軍用地を如何に活用するかが都市づくりの大きなテーマとなっていた。4都市で合計1,784haという大量の旧軍用地が、工場、公園、学校、水道、公営住宅などへと転用されることとなった。処分上の特徴としては、1970年代前半まで継続的に旧軍用地の転用がなされていたこと、旧軍用地の利用者は民間が過半を占めたこと、旧軍用地の処分方法として民間には譲渡が、公共団体には譲与が実施されたこと、従前用途を継承した旧軍用地の転用が見られたことが挙げられる。
著者
鈴木 雅智
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.58-66, 2020-04-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
20

本稿では、20年近くにわたる、首都圏新築マンション購入者へのアンケート調査データを用い、①様々な地域を比較検討している広域からの転入者が、郊外において、近年一層重視し決め手とするようになっている住環境要素や、②それら住環境要素の首都圏内での空間分布、住環境価値の安定性を分析した。まず、近年首都圏全体で、生活環境・教育環境・周辺環境・最寄り駅からの時間が重視される傾向が明らかとなった。とりわけ、商業・公共・医療施設等の生活環境は、郊外部(都心から20km圏外)への広域からの転入者が重視する傾向、重視項目から決め手に至る傾向が強まっており、一貫して妥協されにくい構造を有する。また、各距離帯の中でも駅毎に各住環境項目の比較優位の程度は異なっており、教育環境・周辺環境としての魅力は一度ブランドを確立したら長く持続するが、相対的に、生活環境や最寄り駅からの時間としての魅力は次第に評価が低減しうる傾向が明らかとなった。
著者
坪原 紳二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.89-100, 2015-04-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
31

本稿は自転車利用者の交通ルール順守を促す手段の一つとして、小学校での交通安全教育に着目する。そしてそのオランダにおける実態を、交通安全教育の小学校教育における位置づけ、そうした位置づけの背景、及び近年進められている交通安全教育の体系化の、大きく3つの視点から明らかにすることを目的とする。第1の交通安全教育の位置づけについては、オランダの小学校の多くが、少なくとも2週間に1回は交通安全教育を実施していることが分かった。その背景については、難易度の高い全国交通テストが直接的背景としてあり、また間接的背景として、実践的交通教育を可能とする教授法、及び質の高い交通教育の継続的実施を促す州の制度、交通安全ラベルがあった。最後に交通安全教育の体系化については、小学校を含む全生涯の各年齢階層に対して学習目標が設定されており、それに照らして教材を評価するツールキット、及びチェックリストが開発されていた。