著者
菰田 太郎 白石 慶子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.336-340, 1964-08-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

市販クン液18種について, 有害性成分であるフェノール類, メタノール, 重金属, ヒ素および有機酸について試験を行なった. フェノール類はフェノールとして, 国産品16種の場合は0.008~0.675%, 米国製品2種の場合は2.42, 15.88%と高い含量を示した. ホルムアルデヒドは0.6~450mg%, メタノールは0.007~1.600%の範囲であった. 亜鉛は17種の試料のうち15種に認められ, 鉛およびヒ素等に比べてその含量も高く, 最高値50ppm, 平均値14ppmを示した. 鉛は試料の半数に含まれ, 最高値14ppm平均値2ppm. ヒ素は18種の試料のうち14種に含まれ, 最高値4ppm, 平均値1ppmを示した. 有機酸は酢酸として0.1~6.3%であった. なお, 3, 4-ベンツピレン等の発がん性物質については目下試験中である.以上の試験結果により, 現在市販されているクン液にはフェノール類, メタノール, ホルムアルデヒド, ヒ素, 重金属類等が含まれているので, クン液について成分規格および使用基準の法的規制をすることが望ましい.
著者
笠原 義正 伊藤 健
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.167-172, 2009-08-25 (Released:2009-09-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3 15

LC/MS/MSを用いてツキヨタケおよびその食中毒原因食品に含まれるilludin Sの定量法を開発した.試料をメタノールで抽出し,Oasis HLBを用いて精製し,LCのカラムにはInertsil ODS-3を使用し,移動相には0.1%ギ酸-メタノール(7 : 3)を用いた.MS/MSの条件はESIポジティブモード,測定はMRMモードで行った.本法では他のキノコに添加した場合のilludin Sの回収率は84~94%で,検出限界は0.08~0.10 μg/gであった.食中毒原因食品からilludin Sの測定は可能であり,食中毒食品を想定したキノコ汁についてはilludin Sの回収率は74.8%であった.本法はツキヨタケおよび食中毒原因食品中のilludin Sの分析に有用な方法である.
著者
手島 玲子 穐山 浩 奥貫 晴代 佐久嶋 順一郎 合田 幸広 小野寺 博志 澤田 純一 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.188-193, 2000-06-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
14
被引用文献数
33 50

世界的に遺伝子組換え技術を利用して開発された農作物の実用化が進んでいるが, 実際の商品は組換え作物の後代交配種由来であることが多く, そのような作物における動物の免疫系への影響, 特にアレルギーとの関連について調べられた報告はない. 著者らは, 今回, アレルギー高感受性のB10Aマウス及びBNラットを使った実験において, 除草剤耐性遺伝子 (CP4-EPSPS) が導入された遺伝子組換え (GM) 大豆摂取が, 動物の免疫系に影響を及ぼすか否かの検討を行った. 同等の栄養成分を有する近親の非組換え (non-GM) 大豆を対照として用いた. GM, non-GM混餌飼料を摂取させたマウス, ラットとも両群の体重及び餌の摂取量に有意差はみられず, 15週投与後の各種主要免疫臓器の病理組織像においても, 両群とも異常は認められず, また大豆抽出物に対するIgE, IgG抗体価とも両群において差はみられなかった.
著者
植草 義徳 鍋師 裕美 堤 智昭 蜂須賀 暁子 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.177-182, 2014-08-25 (Released:2014-09-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 6

本研究では,食品を介した放射性物質の摂取量の実態を把握することを目的とし,マーケットバスケット(MB)試料(平成24∼25年)および陰膳試料(平成24年)を用いて,放射性セシウムの一日摂取量(Bq/day)および1年当たりの預託実効線量(mSv/year)を推定した.MB試料および陰膳試料から推定された放射性セシウムの年当たり預託実効線量の最大値は,それぞれ0.0094および0.027 mSv/yearであり,福島県近辺地域においてやや高い値を示す傾向が見られた.しかしながら,いずれの試料においても,放射性セシウムによる年当たり預託実効線量は,平成24年4月より施行された新基準値を定める根拠となった1 mSv/yearと比較して極めて小さい値であることが明らかとなった.
著者
小泉 美樹 風間 大吾 小林 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.121-126, 2013-04-25 (Released:2013-05-15)
参考文献数
10

この調査では,農産品や地下水に存在するPb-214やBi-214の濃度状況や地域性,また,これらの濃度から計算される人への影響を求めることを目的とした。地下水中のPb-214やBi-214の検出濃度は土壌岩石組成により説明することができた。この結果から,地下水は地質の影響を反映していることが確認された。農産物への移行は,土壌岩石組成や種類,生育環境等,様々な要因が複雑に関与しており,地質要因を基に検出濃度を推定することはできないと考えられた。Pb-214やBi-214の検出濃度はいずれの試料も低く,年間の内部被ばくに対する影響は小さいと考えられる。
著者
Mohosena Begum TANU 野口 玉雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.426-430_1, 1999-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15
被引用文献数
9 26

1998年12月にバングラデシュで採集されたカブトガニ Carcinoscorpius rotundicauda の毒性とその毒成分を調べた. 卵巣, 精巣, 内臓に毒性が認められたが, その毒力はすべて10MU/g以下であった (卵巣において最高値7.4MU/g). 抽出した毒を限外ろ過並びに活性炭, Bio-Gel P-2, Bio-Rex70のクロマトグラフィーにより精製した. 部分精製毒をHPLC, TLC, 電気泳動, 1H-NMRで分析した結果, カブトガニの毒はテトロドトキシン (TTX) であることが明らかになった. これはバングラデシュ産カブトガニの毒性及び毒成分に関する初めての報告である.
著者
福渡 努 杉本 悦郎 柴田 克己
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.190-196, 2001-06-25 (Released:2009-03-25)
参考文献数
33
被引用文献数
3 5

ドクササコにはクリチジンと4-アミノキノリン酸が含まれている.両化合物ともにトリプトファン–ナイアシン代謝経路中間体の構造類似体である.そこで、ドクササコの投与が本代謝にどのような影響を与えるのかを調べた.ドクササコを混餌により24時間投与した(投与日=Day 0).本代謝経路の代謝産物量はDay 0~Day 1,Day 1~Day 2で有意に上昇した,血液中にトリプトファン含量とNAD含量もDay 1で有意に上昇した.したがって,ドクササコの摂取によって本転換経路が阻害されることは認められず,むしろ,代謝産物を増大させる化合物の存在を示唆する結果が得られた.
著者
松田 典彦 松本 直起 牛沢 早苗 掛川 洋子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.99-104_1, 1975-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
9

かん詰工場で用いている原料食肉に付着する細菌芽胞数を測定した. その結果, Clostridium 属細菌芽胞は大半のものが1個/g以下, Bacillus 属細菌芽胞は10~100個/gであることが分かった. また, 工場において解凍した食肉に付着する Bacillus 属細菌芽胞数は約10倍多かった.これらの Clostridium 属細菌 (140株) の中に毒素を生成するものは認められなかった.
著者
谷山 茂人 高谷 智裕 反町 太樹 相良 剛史 久保 弘文 大城 直雅 小野 要 肖 寧 橘 勝康 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.49-55, 2013-02-25 (Released:2013-03-08)
参考文献数
37
被引用文献数
1 5

2009年1~6月に沖縄県沿岸で採集した小型巻貝8科15種計64個体のうち,5種にマウス毒性が認められた.このうち,キンシバイの毒力は総じて高く,筋肉で最高461 MU/gに達した.その他の4種(サツマビナ,ヘコミマクラ,イボヨフバイ,カゲロウヨフバイ)の毒力はおおむね10 MU/g前後であった.LC-MS分析により,有毒個体の毒の主体はいずれもTTXで,キンシバイではこれに加えて4,9-anhydroTTX,4-epiTTX,11-oxoTTXを含むことが示された.また,アワムシロの可食部からもTTX(5.08 MU/g)が検出された.一方,残りの9種には,マウス毒性もTTXも全く認められなかった.
著者
岸 映里 油谷 藍子 尾崎 麻子 新矢 将尚 加田平 賢史 大嶋 智子 清水 充
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.111-116, 2013-04-25 (Released:2013-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」に基づき,ホウレンソウのウラン(U)含有量を定量した.はじめに,マイクロ波分解装置を用いる有効性を検討し,マニュアル法と同等の定量値が得られることを示した.短時間で試験溶液が調製できることから,緊急時に対応するためには非常に有効であると考えられた.また,ICP-MS測定の際に2種類の内標準元素(TlまたはBi)が示されているが,低濃度のUを定量する場合は,よりUに近い感度変化を示すTlを用いるほうが望ましいと考えられた.ただし,試料によっては微量のTlやBiを含有するものがあるため,あらかじめ試験溶液中のそれらの量を確認する必要があることがわかった.平成23年4~5月に購入したホウレンソウ9検体のU含有量を定量したところ,いずれも10μg/kg以下であった.
著者
塩田 寛子 佐藤 かな子 長井 二三子 大久保 智子 瀬戸 隆子 浜野 朋子 上村 尚 加納 いつ
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.203-207, 2003-08-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
5
被引用文献数
7 10

アロエ属植物は,医薬品や民間薬のほか,食品にも用いられている.しかし,アロエ種および部位により,食品として使用することは,禁じられているため,食品の原料として使用されているアロエ種を判別する必要がある.そこで,生育時における外的要因の影響を受けない DNA を分析対象とした random amplified polymorphic DNA (RAPD) 法を種の判別方法として用いた.部位により食品利用が禁止されているAloe vera, A. ferox, A. africana および全葉を食品に利用することが許可されているA. arborescens の4種新鮮葉についての判別を試みた.5種類の10merプライマーを用いたPCRの結果を総合的に解析し,4種を判別できることが明らかになった.本法の加工食品における有用性について報告する.
著者
梅垣 敬三 山田 浩 千葉 剛 中西 朋子 佐藤 陽子 福山 哲
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.282-289, 2013-08-25 (Released:2013-09-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1 13

健康食品による健康被害の因果関係評価を視点に,3つの情報源(保健所情報,PIO-NET情報,企業情報)で収集された事例の実態を調べた.保健所情報は約20件/年が収集されており,約40%が医療関係者からの通報で医学的データが含まれていた.PIO-NET情報は約370件/年が収集されており,8割程度が利用者からの通報で,製品名や利用状況などの具体的内容が少なかった.企業情報は利用者からの通報が9割以上で,大部分が苦情に相当する内容であった.保健所情報とPIO-NET情報を,2つの因果関係評価法に試行的に適用したところ,因果関係が確からしいと判断できた事例は少なかった.収集されている被害事例を安全性確保に効果的に活用するためには,健康被害の症状に関して共通の考え方を持ち,収集事例の質と件数を高める取り組みが必要である.
著者
谷口 香織 高尾 秀樹 新名 真也 山中 祐二 岡田 幸長 中島 梨花 王 俊杰 辰野 竜平 阪倉 良孝 高谷 智裕 荒川 修 野口 玉雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.277-281, 2013-08-25 (Released:2013-09-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

トラフグ肝臓につき,滑らかな面を表側,肝門脈との結合部を上部として10分割し,マウス毒性試験で各部位の毒力を測定したところ,生肝臓58個体中16個体と凍結肝臓13個体中9個体ですべての部位が毒性を示した.毒の主体はテトロドトキシンであった.これらにつき,個体の平均毒力に対する各部位の相対毒力を求めて二元配置分散分析を行ったところ,凍結肝臓では毒の分布に有意な偏りは見られなかったが,生肝臓では右側中央下寄りの毒性が有意に高いことが分かった.肝臓の毒性評価に際しては,本部位を用いた個別検査の実施が望ましいと判断した.
著者
原田 誠也 古川 真斗 徳岡 英亮 松本 一俊 八尋 俊輔 宮坂 次郎 斉藤 守弘 鎌田 洋一 渡辺 麻衣子 入倉 大祐 松本 博 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2013-06-25 (Released:2013-07-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3 16

熊本県では,馬刺しを共通食とする原因不明の一過性嘔吐下痢症事例が最近3年間で毎年27件以上発生していた.同事例の原因はSarcocystis fayeri住肉胞子虫で,本研究では一定時間の冷凍処理で住肉胞子虫のシストがペプシンにより消化されその毒性を失うことを見いだした.同胞子虫シストを含んだ馬肉を-20℃で48時間以上冷凍したところ,シスト由来の毒性タンパク質の消失も確認された.本研究で確立した冷凍条件を用いての冷凍処理の普及により,平成23年10月以降,馬刺しが原因と考えられる食中毒の発生報告はなく,この冷凍処理基準が,馬刺しによる食中毒防止対策として有効であることが示唆された.
著者
小川 幸男 関田 清司 梅村 隆志 斎藤 実 小野 敦 川崎 靖 内田 雄幸 松島 裕子 井上 達 菅野 純
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.8-18, 2004-02-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
29
被引用文献数
4 11

雌雄のWistarラットに,0.00, 0.01, 0.10および1.00%の割合でギムネマ・シルベスタ葉の抽出粉末(GS)を基礎飼料に添加した餌を52週間与えた.試験期間中,GS投与に関連する動物の死亡はなく,体重,摂餌量,血液学,血液生化学および病理組織学的検査における変化は認められなかった.52週間のGS 1.00% 添加飼料(一日平均摂取量,雄504 mg/kg/day, 雌563 mg/kg/day)の摂取量は,ラットにおいて毒性変化の認められない用量(NOAEL)であると推論した.