著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.579-587, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

筆者は, 発酵食品を中心とした日本科学技術史を研究しており, 東アジア諸国へ出かけて行った日本人がその国の伝統的な酒をどの様に紹介しているか等, 日本人とアジアの酒の歴史的なかかわり方について興味深い調査を行っている。台湾の米酒は日本人の手でアミロ法が導入され近代的製造法に切り換えられた。筆者は, 本年春再度台湾を訪れて米を原料とする伝統的な地方酒づくりの現場を約1週間にわたり見学し, 詳細な説明を受け新しい知見を得た。本稿ではあまり知られていない台湾の酒造工業の現状について御紹介していただいた。読み物として興味があるばかりでなく, 我が国の製造にも有益なヒントが含まれており参考になると思われる。
著者
鈴木 昌治 小川 明宏 高橋 力也 米山 平 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.575-580, 1984-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21

紹興酒もろみ及び麦麹より分離した発酵性酵母12株の同定試験を行ない, 形態学的性質および生理学的性質の結果よりSacch. cerevisiaeと同定した。また, これら酵母はメレジトーズの資化性 (-), ビオチン欠培地での増殖 (+), イーストサイジンの抵抗性 (-), カリ欠培地での増殖 (+), 高泡形成能 (-), L.caseiによる凝集性 (+Weak), 対5番抗原活性 (-) であり, 本邦の焼酎酵母に類似していた。本研究の遂行にあたり, 試料の提供とともに有意義な御助言を賜わった鈴木明治博士ならびに懇切なる御指導をいただいた竹田正久博士, 中田久保氏に深謝する.
著者
平 宏和
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-373, 1967-04-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
100

発酵食品は原料成分-蛋白質, 糖質, 脂肪が主なもの-が酵素作用で加水分解をうけ, それら成分を構成する最終単位であるアミノ酸類, 単糖類, 脂肪酸類, グリセリンを生成し, それらが更に酸化や還元あるいはエステル化したりして風味を生ずるものであることは, われわれの常識になっているが, その加水分解の程度や更に進む反応については知らないことが多い。多年アミノ酸のバイオアッセイ分析法をてがけてきた筆者のとりまとめた本稿は, 大豆発酵食品の定型というものを分解という立場から解説した。
著者
岡本 隆典
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.704-709, 1994-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

バイオリアクターによるビ-ル連続醸造に関する研究は1970年代前半から始まり, 数多くの研究結果が発表されている。しかし, 商業べースでの実用化はほとんど例がなく (ビールの後発酵工程で7インランドのビール工場が実用化している), キリンビールがサイパンにおいて世界で初めて主発酵も含めたビール醸造を連続発酵法により成功させている。バイオリアクターを用いると酵母密度等が従来の回分式発酵と大きく異なるため, 品質や成分も大きく影響を受ける。これらの問題点をどのようにして解決し, 実用化に槽ぎつけたか。その興味ある経過を解説していたたいた。
著者
鈴木 崇
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.98-108, 2007-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
1

醸造用水は酵母やもろみ中の酵素作用, 緩衝作用及び酵母の生育と醗酵, 最終的には製成酒の色沢, 風味に多大なる影響を及ぼすことは古くから周知されていることであるが, 今回あらためて酒質に影響を与える成分や, 近年の経済発展にともない, 有害化学物質の水への汚染が懸念されていることから, それらの汚染物質の安全な水質基準についてもあわせて解説していただいた。
著者
伊藤 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.144-148, 1987-03-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
6

酒類のみならず食品全般がソフトでフルーティーな嗜好になってきている昨今, 吟醸酒の評価がますます高くなろうとしている。吟醸酒の研究はともすると吟醸香をいかに多く出すかという傾向にあった。著者は, 発想の転換をはかり, 生成した吟醸香がどのような条件で散逸するかを徹底的に究明した。吟醸香を逃さない製造管理について, そのポイントを平易に解説していただいた。
著者
窪田 譲 伊藤 公雄 望月 務
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.821-826, 1981-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

昔から味噌によって起きた食中毒事故の報告はなく, この面から安全な食品として高く評価され親しまれてきたが, 最近消費者の嗜好が多様化したこと, また保建上のことなどから味噌の食塩濃度が低くなる傾向にあるために, 一部の人々の間から味噌の菌学的安全性について心配する声は聞くようになった。食塩が安全匪保持のために果たしている意義は大きいとはいえ, 食塩によることが総べてではなく他に抑制因子の存在することが考えられるので検討した結果, 水素イオン濃度 (pH), 生成アルコール (量), 水分活性値 (Aw)の3事項が重要な鍵を握り, 単独か, また一部か全部が組合わされて, 衛生細菌の増殖抑制に働くものであって更にこれらに食塩が加わればその濃度に比例して抑制力が増強されることが明らかになった。稿を終るにあたり所員の皆様のご援助に感謝します。
著者
細井 知弘
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.830-839, 2003-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
61
被引用文献数
5 4

プロバイオティクス (probiotics) とは,「宿主の腸内菌叢のバランスを改善することにより, 宿主にとって有益な作用をもたらす生きた微生物, 並びにそれらを含む食贔」と定義される。プロバイオティクスの効果としては, 腸内菌叢の改善, 腸管感染症下痢症の改善, 便秘の解消, 免疫機能向上, 血圧低下などが報告されている。ここでは, 腸内菌叢と腸管免疫システムについての概説と, 大豆発酵食品である納豆に関与する納豆菌や納豆のプロバイオティクスとしての作用について, 解説していただいた。
著者
森 義忠
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.423-428, 1983-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
17

ホップの品種改良をすすめるとき, まずビールにとって望ましいホップとは如何なるものかということを考慮しなくてはならない。本稿はホップ以外の酒類原料の品種改良を実施するうえでも示唆される点が多い。
著者
小田 きく子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.204-208, 1980-03-15 (Released:2011-11-04)
被引用文献数
1

前回に引続き昭和時代に入ってからの駅売弁当の変遷について述べていただいた。
著者
谷本 亙
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.169-175, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)

地域と酒蔵との深い関係が忘れ去られようとしたことがある。ところが, 近年, 各地で「酒蔵 (酒造場)」の存在意味を問い直すような様々な事業活動, 支援運動が行われており, いま正に, 地域の中での酒蔵を再認識すべき時に来ている。そこで, 地域振興活動に詳しい筆者に, 21世紀に向けて酒蔵の維持・発展の方向性及び方策について提示願った。
著者
柳田 藤治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.134-141, 1990-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

酢の薬効については古くから伝えられているが, 科学のメスが加えられたのはごく最近のことといえる。黒酢や酢大豆に代表されるように, 健康食品としてマスコミに登場する機会も多い。酢の機能性とは何か, 数多くの研究結果を引用して解説していただいた。
著者
山田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.665-669, 2008-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

麹菌と近縁のA. flavusはカビ毒アフラトキシンを生産する。麹菌はアフラトキシンを生産しないことはすでに多くの研究により証明されているが, ゲノム解析に使用されたRIB40株には, アフラトキシン生合成に関与する遺伝子群が染色体上にクラスタを形成していることが報告された。そこで, 酒類総合研究所に保存されている多数の醸造用麹菌株について調べ, 麹菌がアフラトキシンを生産する能力を持たないことを分子生物学的に明らかにした。筆者らの研究は, 麹菌の安全性を示すとともに, 麹菌のルーツをさぐる糸口を与えるものである。