著者
片山 由美
出版者
広島大学
巻号頁・発行日
2012

博士論文
著者
青山 裕彦 坂本 信之 松井 浩二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

脊椎動物は分節的に構成されていると考えられるが,その発生的基本単位は体節である.体節自身から発生する骨格や筋はもとより,脊髄神経や交感神経系の分節的形成も体節によって支配されている.本研究では脊椎動物のボディプラン形成機構を考察するため,体節から中軸骨格が形成される機構,とくにその胸部を特徴づける肋骨の部域特異的形態形成機構を題材に取り上げた.1.肋骨形成の3区画:体節周囲組織の肋骨形成との関わりを調べ,椎骨と結合している短い部分(近位肋骨)は神経管の底板や脊索に,その遠位にある長い部分(遠位肋骨)は表皮外胚葉に依存して発生することを示した.遠位肋骨はさらに壁側板に進入する部分(遠位肋骨胸骨部)としない部分(遠位肋骨椎骨部)の2区画に分けられる.これは近年提唱された(Burk, A),abaxial, primaxial区画にそれぞれ対応する.2.遠位肋骨形成と体節分化:表皮外胚葉と体節との相互作用を物理的に阻害すると,皮筋板の外側部(Sim 1),皮筋板辺縁近傍の椎板(Scleroaxis)の形成不全が示された.これらの遺伝子発現領域が遠位肋骨の形成に関わるのであろう.3.体壁筋の部域特異的形態形成〜腹壁筋の発生的分節性(1)体節の発生運命:腹壁の筋はほぼ第27体節のみからできることを移植実験から示した.その他の腰部体節は,肋骨のみならず,体壁筋も形成しないのである.(2)神経支配:ところが腹壁筋の支配神経は胸神経であった.筋の発生由来と支配神経の由来する分節が異なっており,支配神経からは筋の発生由来をいうことはできない.4.四肢形成と肋骨形成:胸部に四肢を誘導すると遠位肋骨胸骨部ができなかった.abaxial区画については,体壁と四肢が相補的に形成されるのである.5.中軸骨格原基の部域特異性の決定:体節形成の最も初期,原始線条から陥入する直前に,すでに決定されていることを,当該部位の移植と,そのHox遺伝子群の発現,形態形成能から示した.
著者
磯部 直樹 沖田 美紀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

性ステロイドホルモンが乳腺免疫機能に及ぼす影響および体内の常在細菌が死ぬことにより放出される細菌成分によって乳房炎が発症する可能性について検証した。エストロジェン(E)を投与すると、乳量が顕著に減少した。また細菌成分を注入した時、E投与区の方がプロジェステロン(P)投与区に比べて抗菌因子の乳中濃度が高かった。また、血中に細菌成分を注入すると、乳腺においてその成分が検出されると同時に、炎症が誘起された。以上の結果から、Eは乳量を減少させることによって乳中抗菌因子濃度を高め、細菌感染に対応していることおよび、体の他の部分から細菌成分が移行することによっても乳房炎が起こり得ることを明らかにした。
著者
馬越 徹
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.135-155, 1977-03
著者
佐竹 昭
出版者
広島大学
雑誌
地誌研年報 (ISSN:09155449)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.59-76, 1996-03

<シンポジウム特集> 地誌学とエリアスタディ : 現状と課題 報告論文『広島市公文書館紀要』17号(1994年)に掲載されたものを発行者の許可を得て転載したもの
著者
福本 江利子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

研究者をとりまく環境変化の中で、研究評価において研究生産性の尺度として普及している論文数や引用数等の量的指標は、必ずしも研究の創造性や革新性を加味していない。本研究では、量的研究評価指標のみに拠らず、研究や科学の営為の根幹である研究生産性の意味そのものに立ち返り探究を進める。本研究では、①研究者にとっての研究生産性の内実、②パブリケーション戦略、そして③研究評価や大学組織を含む研究者をとりまく環境・制度・文化の①②への影響、に着目し、大学の研究者対象のサーベイ調査及び事例研究を実施する。研究を通じて、研究政策や大学経営、科学技術論等への学術的貢献に加え、大学や政策の現場への示唆を示す。
著者
佐久川 弘 竹田 一彦 山崎 秀夫 チドヤ ラッセル サンデー マイケル アデシナ アデニュイ ダーバラー アリー アブデルダム シェリフ モハメド モハメド アリ カオンガ チクムブスコ チジワ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

瀬戸内海において海水、堆積物、生物試料を採取し、海域による農薬汚染の進行度の評価を行い、瀬戸内海全域にわたる汚染の歴史的変遷を明らかにした。生物試料中の農薬濃度の測定から、食用魚等の食品としての安全性を評価し、水生生物へのリスクアセスメントを行った。さらに、瀬戸内海の海水等の農薬濃度、農地等での農薬使用量、船底塗料の出荷量から、過去の農薬の物質収支の変遷に関して解析を行った。その結果、測定した8種類の農薬のうちで、陸地で使用されるダイアジノン(有機リン系殺虫剤)がすべての試料において、比較的高濃度で存在し、水産食品としての安全性への懸念や水生生物に対する負の影響が認められることを明らかにした。
著者
藤原 祺多夫
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

天然水等の試料を対象にして, ホウ酸やケイ酸を簡便に測定する方法を開発する目的で, ホウ酸及びケイ酸を気体状化合物に定量的に変化させる方法, 及び気体状ホウ素化合物とケイ素化合物の酸化反応にらる化学発光の測定を試みた. まずホウ素については, ホウ酸トリナチルをチッ素気流中に打込みこれを発光させる方法を検討した. まずオゾンとの混合を試みたが, パラジウム, パラジウム/炭素等の触媒を利用しても気相では発光を生じなかった. そこで内径2mmの毛細石英管の外壁をニクロム線で加熱するミクロファーネスを自作し, ここにチッ素気流に混合したホウ酸トリメチルを導入したところ, 500〜600mm付近の波長領域に見かけ上緑色の発光が, 毛細管末端で観測できた. これはBOに由来するものと思われるが, この発光を定量するため, シリコニットで外側を被覆したミクロファーネスをステンレスT字管(内径2cm程度)に入れ, 腕の部分に干渉フィルターを入れた後光電子増倍管に直結するシステムを作成した. この装置を用い, かつフィルターを500nmに変えて, ケイ素の誘導体(トリエチルシラン)も同様に測定できた.一方ホウ酸及びケイ酸から水素化物を含む気体状化合物への定量的変換法は現在まず確立することができなかった. まずホウ酸については, メチルアルコールとの還流によるメチル化を行ったが, これは一試料をメチル化するのに30分程度必要であり, かつ試料スケールを大きくしなければならずミクロ分析として不適当と考えた. 従って内径1.5cm長さ20〜30cmの石英管を100〜400°Cに加熱した反応管内での, ホウ酸のメチル化もしくは還元を検討した. 還元剤として, 水素化ジイソブチルアルミニウム, トリクロルシラン, トリエチルシラン等を検討したが, 現在固形ホウ酸塩を粉末状水素化リチウムアルミニウムとよく混合させた後300°Cに加熱した場合のみ, ホウ素に由来する気相化学発光が観測できた.
著者
土肥 敏博 森田 克也 森岡 徳光 仲田 義啓 北山 滋雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

アロディニアは,本来痛みを伝えない触角,冷覚など非侵害性の刺激によって痛みを生じる現象であり,神経因性疼痛neuropathic painの主症状として知られている.その発症機構は十分に解明されていない.血小板活性化因子(PAF)は炎症のメディエーターとして,とくに強力な浮腫誘発物質として知られる.しかし,痛覚伝導における役割は知られていない.本件研究は脊髄での痛覚伝導におけるPAFの役割について検討し,以下の結果を得た.1.PAFのマウス脊髄腔内投与は10fg〜1pgにおいてアロディニアを誘発した.PAF誘発アロディニアはPAF受容体拮抗薬TCV-309,WEB2086,BN50739およびATP P2X受容体拮抗薬pyridoxalphosphate-6-azophenyl-2,4-disulfonic acid(PPADS),NMDA受容体MK801および7-NI,morphine,QYNAD,minocyclineにより抑制された.2.PAF, NO donors, glutamate誘発アロディニアはNOスカベンジャー,guanylate cyclase inhibitor,G kinase inhibitorにより抑制され,cGMP誘導体によるアロディニアはG kinase inhibitorのみによって抑制された.3.PAFは培養後根神経節細胞からATPの遊離を引き起こした。PAF受容体mRNAはDRG,脊髄,ミクログリアにRT-PCRにより発現が確認された.4.PAFの脊髄腔内投与により脊髄背側表層にOX-42陽性ミクログリアが観察された.5.アモザピンの静脈内投与はPAF並びにcGMP誘発アロディニアを用量依存的に抑制した.これらの結果よりPAFは強いアロディニアを誘発し,その機序にATP P2X受容体,NMDA受容体,NOならびcyclic GMP/G-cyclaseカスケードが関与することが示唆された.この過程にミクログリアが関与することが示唆された.また,グリシントランスポーター遮断薬の抗アロディニア薬としての有用性が示唆された.また,Interleukin-1は疼痛伝達に係わりの深いP/Q type Ca2+ channelの発現を抑制すること,NSAIDsの一部はMDRを抑制して神経毒性を高める作用を有する事を認めた.以上,本研究で得られた知見より,PAF誘発アロディニアは神経因性疼痛の発症機序および新規治療薬開発のための有益なモデルとなることが示唆されその応用が期待される.
著者
工田 昌也
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究計画に従い内耳障害の基本的機序にはフリーラジカルとアポトーシスが関係していること、耳毒性薬剤による障害が、抗酸化剤、NOS抑制剤、ニューロトロフィン、アポトーシス抑制剤により軽減されることを、in vitroの実験系を用いて明らかにした。さらに、これらの感覚細胞障害軽減作用には各種薬剤によりフリーラジカルの産生が制御され、それによりアポトーシスが抑制されたことが強く関わっていることが明らかとなった。続いて、各種薬剤の併用効果を検討した結果、抗酸化剤+ニューロトロフィンというような作用機序の異なる薬剤の組み合わせで相乗効果が得られることが確認された。また、感覚細胞障害予防の観点から、HSPに注目しその内耳での働きを検討した結果、テプレノンの投与により、内耳に安全にHSPが誘導され、それにより感覚細胞障害の予防効果が発現することが明らかとなった。また、ラット感染モデルを用いた実験で抗酸化剤が聴力障害を予防する効果があること、抗酸化剤は鼓室内投与、全身投与のいずれでも有効であることが明らかとなった。一方、内耳障害の機序の一つとして中耳からLPSが効率に内耳に移行すること、移行経路には様々な経路があることを明らかにした。さらに、実際の臨床レベルでメニエール病のめまい、難聴に関して抗酸化剤を投与して治療効果を検討した結果良好な成績が得られた。加えて老人性難聴に対しても抗酸化剤による治療が有効であることを臨床的に確認した。これらの成果は40th Workshop on Inner Ear Biology、第13、14回日本耳科学会、第62、63回日本めまい平衡医学会で発表されると共に10編の論文にまとめられた。
著者
片柳 克夫 堀 貫治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は今まで構造研究が着手されていなかった新しいレクチンファミリーに属する海藻レクチンに属するいくつかのレクチンに着目して構造学的研究を進めたものである。このレクチンは多くのレクチンと異なり単糖には結合せず高マンノースのみに結合する特異的な性質を持ち,また近年,強力な抗HIVウィルス作用を持つことがわかってきた。本研究ではその分子構造をX線解析による詳細に解明し,この新規レクチンファミリーの構造的基盤を構築した
著者
宇山 太郎
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

海産無脊椎動物のホヤは、遷移金属元素のバナジウムを高濃度かつ高選択的に濃縮している。ホヤのバナジウム濃縮細胞(バナドサイト)には、海水濃度の1000万倍に相当する350mM濃度のバナジウムが含まれている。しかし、このような極端な濃度勾配に逆らって金属元素を濃縮する際に必要なエネルギーをどこから得ているのかはまだ不明であった。われわれは、バナドサイトの液胞内が、pH1.9〜2.4という強い硫酸酸性を示し、そこにバナジウムが低酸化状態の3価に還元されて濃縮されていることを明らかにしてきた。このことは、バナジウムの濃縮に液胞内外のプロトンの濃度勾配が関与している可能性を強く示唆している。本研究では、バナドサイトにプロトンポンプが存在するかどうか、クロマフィン顆粒由来の液胞型H^+-ATPaseの72kDaと57kDaのサブユニットに特異的な2種の抗血清を用いて免疫細胞学的に検討した。その結果、酵素の触媒部位を構成し、植物や昆虫にも共通している72kDaと57kDaサブユニットの存在が、原索動物のホヤでも初めて確認された。次に、バナドサイトの液胞内の低pHが実際に液胞型H^+-ATPaseの働きに依っているかどうかを確かめた。バナドサイトをアクリジンオレンジで生体染色すると、液胞は朱色の蛍光を発して低pHであることが分かる。一方、バナドサイトを液胞型H^+-ATPaseの特異的阻害剤であるバフィロマイシンA_1で処理すると、バナドサイトの液胞は緑色の蛍光を発していた。このことは、バナドサイトの液胞で実際に液胞型H^+-ATPaseが働いて低pHを維持しており、この酵素が阻害されると液胞内外のプロトンの濃度勾配が解消されてしまうことを示している。今後は、この液胞型H^+-ATPaseによって形成されたプロトンの濃度勾配がバナジウムの濃縮とエネルギー的に共役していることを明らかにしていきたい。
著者
曽余田 浩史
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

(1)学校づくり(学校経営)の営みをデザイン行為として捉えるための基礎作業として、デザイン学(方法論)を意識して組織デザインを論じるK.Visscherらの見解を手掛りに、古典的なデザインアプローチと開発的なデザインアプローチの原理や特徴を対比的に考察した。古典的なデザインアプローチは「合理的な問題解決」としてのデザイン観であり、近年の学校経営やスクールリーダー教育の理論と実践に色濃く反映されている。このデザイン観は、デザインする主体とデザインされる客体の分離を前提とし、人々の行動・取組み(組織行動)をコントロールするための「青写真」をつくることをデザイン行為と捉える。デザインの対象は、目に見えるフォーマル構造や計画(青写真)である。デザインのプロセスは、①問題の分析→②解決策のデザイン→③実行→④評価という段階モデルにもとづいており、①の段階において複雑性を排除する。開発的なデザインアプローチは、「状況との省察的な対話」としてのデザイン観である。デザインする主体とデザインされる客体の分離を否定し、両者をトランスアクション(相互形成)的な関係で捉える。デザインの対象は、人々が自分で自身の仕事をデザインしたり変えたりする動きの創造をねらった変化や動きである。デザインのプロセスは集合的な学習であり、状況との省察的な対話である。そして、組織づくりのプロセス全体をデザイン行為と捉える。(2)デザインの視点から斎藤喜博の「学校づくり」論を考察し、そのデザイン的な原理を試論的に考察した。相手が変革することによって自分が変革するというトランスアクション(相互形成)的な関係、「固定しない」という実践の在り方、「典型」創造などがデザイン行為としての学校づくりにおいて重要であることを言及した。