- 著者
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黄 孔良
- 出版者
- 新潟大学
- 雑誌
- 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
- 巻号頁・発行日
- vol.117, no.12, pp.744-750, 2003-12-10
黙読には,視覚的に呈示された情報を音情報に変換し,音声言語と融合する過程が含まれる.本研究の目的は,黙読時に行われる音韻変換の脳内過程を,意味判断などの他のプロセスをなるべく介在させない状態で,事象関連電位と反応時間の計測により明らかにすることである.読めないハングル文字を注意して見る課題をコントロール課題とし,意味を持たない平仮名3文字を黙読する黙読課題を行って,事象関連電位を記録した.反応時間の計測は事象関連電位と別のブロックで行い,1文字目と3文字目を黙読する時点を,それぞれ,黙読開始時刻の指標となるRT1と黙読終了時刻の指標となるRT2として計測した.この結果,RT1が673±169msで,RT2が1376±238msであった.事象関連電位の結果では,黙読課題で頂点潜時を約590msとする持続的な陰性電位が,後側頭部から後頭部にかけて左半球優位に観測された.この陰性電位はコントロール課題では観測されず,また,反応時間から推測された黙読の時間帯にほぼ一致して観測されたことから,黙読時の音韻変換過程に関連した脳活動を反映したものと推定した.