著者
澤村 一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果を主要なものに限って以下のようにまとめる.1.東洋の合理思想・論理を反映した議論の論理の研究4値テトラレンマに基づく議論の論理の対話的証明論と意味論を形式化した.それを用いた東洋的議論例を示し,この議論の論理の有効性を実証した.さらにJainaの7値論理やアラビア論理についても調べ,多文化間で合意可能な議論方式を与えた.これは多元的議論の方法論として意義ある結果である.2.対話の論理の形式化:議論から対話へ議論の論理の形式化をもとに,これを多値の対話モデルへと展開し,対話の証明論とその不動点意味論を与え,対話モデルも数学的意味論を持つことができることを示した.さらに,記号議論の弱点をニューラルネットによって補う研究を進め,記号議論とニューラルネット議論のハイブリッド方式による議論の方法を与えた.この結果は予想外の結果として,国際会議で高く評価された.3.議論するエージェントシステムの試作議論するエージェントシステムの利用をサポートするために,より豊かな統合議論環境(IAE)を構築し,かなり複雑な議論にも対応可能なことを確認した.さらに,議論結果から議論・対話シナリオを作成し,それを動画表示する方法も与えた.この他に議論で必要とされる知識ベースの準備を容易にするために,自然言語議論を我々の多値議論モデルの形式的議論へ変換する方法と,さらにその逆変換を行う研究を行ない,双方向変換の重要な部分が自動化できることを示した.
著者
泉池 敬司 羽鳥 理 真次 康夫 古谷 正 高木 啓行 林 実樹広
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

H^∞のイデアル構造とその上の作用素の研究が目的で、代表者は次の結果を得た。1)H^∞の極大イデアル空間の自明点の集合に関するはスアレスの問題の解決。2)素イデアルに関するゴルキンとモルチイーニの問題の解決。極小のκ-hullに関するゴルキンとモルチイーニの問題の解決。極大イデアルの共通部分で表せるイデアルの十分条件を与えた。3)互いに特異な測度の特異性、および測度の絶対連続性が極大イデアル空間に表現できることを示しH^∞+Cでの割算問題に応用した。4)表現測度の台が極大となるための十分条件を与えた。この証明の方法は応用範囲が広いことがゴルキン、モルチイーニ氏との共同研究で分かった。また可算性の研究の1つとして、QC-level集合、非解析集合を研究した。5)合成作用素の空間の本質ノルムによる連結成分を決定した。6)中路、瀬戸氏とトーラス上の逆シフト不変部分空間の研究を行ない、自然に得られる作用素が可換になるときの部分空間を決定した。7)Yang氏とはトーラス上で、逆シフト作用素が縮小的な部分空間を決定した。研究分担者の古谷氏は長氏とlog-hyponormal作用素を研究し、Riemann-Hilbert問題に1つの解を与えた。またω-hyponrmal作用素のkernelに関するAluthge-Wangの問題の解答を与えた。真次氏はn次元空間の単位球上の関数空間の研究を行い、荷重バーグマン・プリバロフ空間に対して、Yamashita-Stoll型の特徴付け及び等距離写像の決定を行った。羽鳥氏は可換Banach環上の環準同形写像の表現定理を与え、環準同形写像が線形写像となるための十分条件を与えた。高木氏は関数環上の荷重合成作用素の次の性質を明らかにした。1.閉値域 2.本質ノルム 3.Hyers-Ulam stability定数。
著者
鈴木 正朝 高木 浩光
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

特定個人の識別情報(PII)該当性は、情報プライバシー規制で最も中心概念の1つである。個人データ保護法の範囲はPIIに該当するかどうかによって決定される。さらに情報科学は多くの状況では、非PIIであっても特定個人を識別し得ることがあることを示す。PIIは特定個人の識別情報と特定個人の識別可能情報に区分できるが、その区分の有用性を再検討し、新たにPIIを再構成していかなければならない。この理論を検討する一つの素材としてIDに着目し、PIIの従前の考え方が新たな問題にどう対応できるか、立法的検討を行い提案した。
著者
芳井 研一 井村 哲郎 広川 佐保 児嶋 俊郎 塚瀬 進 小林 元弘
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日中戦争期とアジア太平洋戦争期の南満州鉄道沿線の社会変容に関する資料調査研究を行うことであった。そのため交付期間中を通して遼寧省档案館や吉林省社会科学院満鉄資料館、社会科学院近代史研究所図書室、北京市档案館などでの調査を実施し、資料の収集を実施し得たことは計画通りの成果であった。収集したいくつかの重要史料については、不二出版社から5冊の史料集として刊行し得たことは、本研究をめぐる成果の一環である。他方、一連の資料の収集を踏まえて研究をとりまとめ、研究期間中の毎年度に国際ワークショップを共催して成果を発表したことは主な実績である。
著者
黄 孔良
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.117, no.12, pp.744-750, 2003-12-10

黙読には,視覚的に呈示された情報を音情報に変換し,音声言語と融合する過程が含まれる.本研究の目的は,黙読時に行われる音韻変換の脳内過程を,意味判断などの他のプロセスをなるべく介在させない状態で,事象関連電位と反応時間の計測により明らかにすることである.読めないハングル文字を注意して見る課題をコントロール課題とし,意味を持たない平仮名3文字を黙読する黙読課題を行って,事象関連電位を記録した.反応時間の計測は事象関連電位と別のブロックで行い,1文字目と3文字目を黙読する時点を,それぞれ,黙読開始時刻の指標となるRT1と黙読終了時刻の指標となるRT2として計測した.この結果,RT1が673±169msで,RT2が1376±238msであった.事象関連電位の結果では,黙読課題で頂点潜時を約590msとする持続的な陰性電位が,後側頭部から後頭部にかけて左半球優位に観測された.この陰性電位はコントロール課題では観測されず,また,反応時間から推測された黙読の時間帯にほぼ一致して観測されたことから,黙読時の音韻変換過程に関連した脳活動を反映したものと推定した.
著者
福留 邦洋
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、災害時における中山間地域の脆弱性を明らかにしながら、どのような点に考慮すれば持続的な復興につながるのか考察することを目的とした。具体的には、新潟県中越地震における被害傾向、復興過程を整理、分析しながら、集落移転や復興基金、義援金など地域再建のためのしくみに着目した。そして復興の概念、策定方法等について考察し、地域特性に応じた復興計画について検討を行った。
著者
松原 要一
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.25-29, 2008-01

医療崩壊が地方の病院で進んでいる.これは医師不足により医師確保が困難で,かつ勤務医が過重労働で病院を辞め,残った医師に負担が増えて更に医師が辞める悪循環による.なかなか改善されない医療制度の欠陥と医療費抑制政策など医療行政に大きな問題があるが,その抜本的な改善・改革は今後も当分の間期待できない.医療崩壊が大きな社会問題となって国民の医療に対する意識が変わらない限り難しいであろう.それまでは,それぞれの地域と病院でできることを積み重ねるしか方法はない.与えられた条件の中で姑息的ではあるがやるべきことは少なからずあり,早急に実行すべきである.医師の確保は容易でないが,勤務している医師が過重労働で病院を辞めないで長く勤務できるように先ず働きやすい環境を整備することであろう.例えば統合医療情報システムによるチーム医療の推進,業務の見直し,業務の外部委託,そして地域医療機関の役割・機能分担による医療連携の推進である.これらに対する当院の取り組みを紹介する.
著者
中西 久味
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、唐末から北宋の慶暦年間(1041-1048)ころまでの仏教の動向について、儒教との交渉から考察したものである。具体的には、北宋時代に仏教の立場から儒教を摂取し儒仏一致を説いたとされている、天台宗山外派の智円『閑居編』および禅宗雲門宗の契嵩『鐸津文集』『來註輔教編』を取りあげた。ただし前者の智円では、それほど体系的な議論が展開されていないため、主として契嵩の護法思想について考察した。契嵩の議論も首尾一貫しているわけではないが、第一に仏教は勧善によって「治政」に寄与すること、第二に仏教は「性命の深奥」を示して死生の超越へと導くことを説き、この二点によって仏教の擁護をはかっていることを指摘した。また、その議論は「心」「道」「教」を軸として展開されていることを点検した。さらに契嵩の背景となっている思想について探究し、仏教については、一心法界や三界唯心を説く中唐の澄観・宗密系統の華厳教学の影響を受けていることを指摘した。これは五代の呉越の地域に天台宗とともに盛んであった仏教である。一方、儒教については、その根本的な思想を中庸・皇極などの中道と捉えているが、これは隋の王通『中説』、および、その阮逸註に依拠していることについて考察した。また当時湖州杭州一帯に広まっていた胡〓などの儒教が反映されている可能性を指摘したが、この儒教はやがて勃興する二程子の道学と関連する。後世の模範となった契嵩の護法論は、呉越の地域に継承されていた仏教と、同じくこの地域で胎動しつつあった儒教との出会いによって生まれたものと考えられる。
著者
長峯 岳司 永瀬 守 鈴木 一郎 中島 民雄 長峯 岳司
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

α型の燐酸三カルシウム(α-TCP)粉末は水との反応により、ハイドロキシアパタイト(HA)に転化し、常温で凝結硬化する事が知られている。この反応は酸の存在により促進するが、この凝結硬化のみでは硬化物は脆弱で人工骨としては利用し難い。私達は、この反応系に多糖体(デキストラン)を加える事により人工骨として十分な強度の硬化物を得るのに成功した。本材料はこの硬化の過程で形態付与が可能となり、付形成に優れているため、組織親和性も優れていれば臨床的な応用範囲はかなり広いものと考えられる。本研究では、この硬化物の組織反応について観察するとともにHA顆粒との複合剤としての利用も検討した。蒸留水とグルタール酸とデキストランを14:6:25の比率で混合し、これを多糖溶液とする。α-TCP粉末とこの多糖溶液を7:5の比率で混合し練和すると、2〜5分で硬く硬化する。この硬化の過程で形成を行う(TCPインプラント)。これを家兎の下顎骨外側の骨膜下に移植し1、2、4、12、24週後に屠殺し下顎骨を摘出、HE染色にて組織学的に生体反応を観察した。さらにこの材料とHA顆粒の複合材を家兎に同様に移植し、同様に組織反応を観察した(TCP-HAインプラント)。両者で活発な骨新生が観察され、グルタールや酸やデキストランによる阻害は殆ど観察されなかった。この材料は、人工骨として十分な強度を持ち、硬化の過程で形態付与が可能となり付形成に優れ、また本実験にて生体親和性も優れていることが観察され、いままで再建術等で用いられていたHA顆粒の欠点を補うものとして有用である事が確認された。
著者
黃 朝煌
出版者
新潟大学
巻号頁・発行日
2021

新大博(文)第14号
著者
片桐 昭彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、年代記(歴史上の出来事を年代順に記録した年表史料)から信頼できる記録を抽出し、15~17世紀の日本列島各地における地震および地震にともなう津波・山崩れなどの自然災害が発生した年月日および地域を確定する。そのため、日本の地方各地に残る年代記の原本調査や、多種多様な年代記のデータベースの構築を行うことにより、年代記の史料学的な検討・分析を行い、信頼できる記録を抽出する。そして、その記録にある歴史地震の情報を正確に読み解き、過去の地震・気象データとして地震学・気象学などの分野に提示していく。
著者
傳田 定平
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.1-4, 2008-01

麻酔科として日々の臨床業務に加え,インフォームドコンセントの充実,教育指導等,病院社会から多くのことが要求されるようになってきました.臨床業務量が増えていくなかで,それ以外の仕事量が確実に増えてきています.日本の麻酔科医師は着実に増加していると言われていますが,女性医師の問題,麻酔科業務の多様性から手術室における麻酔科医実働人数が増加してきません.特に新潟県の場合,人口比に占める麻酔科医師の割合が低レベルです.業務量の過多,社会や職場の無理解,人間関係,健康面等,いろいろな不満,不安を理由に麻酔科医師が病院を辞し,手術が充分できないことが社会問題となっています.病院を辞した麻酔科医は別の病院に勤務するか,どこの組織にも属さずフリーの麻酔科医として術中管理のみを出張で行っています.ただでさえ少ない人数の麻酔科医であるにもかかわらず,自分が病院を辞すことによりいかに大きな影響を社会に及ぼすかをよく考えて行動しなければならないと思います.われわれ麻酔科医はチーム医療を担う一員として信頼される医師,さらに,質の高い病院を築く構成員として努力していくことが使命であると考えます.
著者
児島 清秀 元木 悟
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アスパラガスではジベレリンの特にジベレリン1(GA1)の方が休眠打破の役割を持っているようである。ABAが休眠誘導の作用をしている根拠は本実験では得られなかったが、GA1を除いてもABA、ジャスモン酸(JA)、ジャスモン酸メチル(MeJA)、トランスゼアチン(Z)の4種類もの植物ホルモンが萌芽において最も高い濃度で存在していた。これは養分の転流や細胞分裂促進、頂芽優勢など、萌芽の急成長のために必要な機能を発現させるためだと考えられる。また、植物の変化が激しい部位で多種多量の植物ホルモンが作用しているとも言える。IAA、ABA、Z、ジベレリン4(GA4)がこれに該当するだろうと推察できた。
著者
管 虹
出版者
新潟大学
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.287-303, 2001-11

《山之音》是川端康成战后的第一部长篇小说,从各个角度论及此作品的先行研究达百余篇。论及本题的有四篇,或许因视角不同,此四篇均未深入到细部进行论证。本文着眼于作品中有关千年荷花的新闻报道的引用,由此发现了与作者、主人公、主题密切相关的很多重大问题。有关千年荷花的新闻报道,本文作者对《朝日新闻》进行了深入的调查,发现川端所引用的新闻报道与实际的新闻报道有着微妙的差别,尤其是川端将千年莲子发现的地点改写为"满洲",这与战争中川端的切身体验乃至战后川端的思想变化有着密切的关系。进而本文作者从川端的随笔中发现了战争中他曾两次出访"满洲",并对"满洲"有着深切的感情。这一事实与川端对战争的反思或许是他改写新闻报道的缘由吧。另外本文作者还发现新闻报道的两次插入时间与女主人公的妊娠时间恰巧吻合,川端正是巧妙地利用了荷花这一植物象征,来暗喻历尽战火的洗礼,女主人公生存与再生意识的复苏。
著者
小林 大地
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

「良薬は口に苦し」は孔子が残した言葉であり、古くから人々は苦い薬には良い治療効果があると信じてきた。一方、医療現場において患者は薬の苦味を不快に感じ、苦味が原因で患者が服薬を中断することがあり、近年の大きな問題の一つとされている。このため、苦味成分が治療に有効であることを科学的に証明し、社会的な理解を得ることは苦味による服薬の中断を予防することにつながる。本研究では苦味物質が抗炎症作用を有することを種々の苦味物質および、苦味受容体欠損細胞を用いて解析を行い、苦味による治療効果の可能性を追求する。