著者
猪狩 賢蔵 鈴木 信也 関 博志 野村 嘉奈子 外園 弥生 吉田 蘭子 阪上 貴子 伊藤 智一 荒瀬 透 林 誠一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.179-184, 2021-04-10 (Released:2022-04-10)
参考文献数
11

Postoperative nausea and vomiting (PONV) are common and unpleasant postoperative complications. Although guidelines recommend preventative measures according to PONV risk, anesthesiologists do not always follow the guidelines. In this study, we investigated whether the pharmacists’ proposal of a PONV prevention method to anesthesiologists in accordance with the guidelines affected the decision-making of anesthesiologists and subsequent PONV development. Two hundred and five patients who underwent gynecological surgery at Keiyu Hospital were included in this study, and the number of preventative measures selected by an anesthesiologist and frequency of PONV complications before and after the pharmacists’ intervention were determined. After the intervention, the number of preventative measures implemented by the anesthesiologist increased in the PONV moderate- and high-risk groups (P < 0.01) and incidence of PONV in patients decreased [odds ratio 0.362 (95% confidence interval 0.174 - 0.726) (P < 0.01)]. It is the intention of anesthesiologists for pharmacists to evaluate PONV risk and propose preventative measures that comply with guidelines to anesthesiologists. The results of this study show that the proposal of pharmacists on PONV prophylaxis affects anesthesiologists’ decision-making and is effective in preventing PONV.
著者
伊藤 英之 鈴木 正貴 佐藤 凌太 杉本 伸一 関 博充
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.561-574, 2015-08-25 (Released:2015-09-17)
参考文献数
13
被引用文献数
5

This study is based on an Internet survey of prospective tourists visiting the Sanriku Geopark, which was conducted to understand their travel habits, impressions of the Sanriku coastal area, general awareness of the Geopark, and motivations for travelling. A principal component analysis (PCA) is also performed using a multivariate analysis technique to examine the characteristics of tourists and images of travel destinations they would want to visit in the future. The results demonstrate low awareness of the Sanriku Geopark, especially in metropolitan areas. The majority of respondents do not have a definitive image of the Geopark. The results also indicate that tourists visiting the Sanriku coast are primarily from neighboring prefectures, such as Miyagi and Aomori, as well as from the Tokyo metropolitan area. This suggests that increasing informational awareness of the Sanriku Geopark in these areas would be effective way for attracting more visitors. Regarding their travel habits, the respondents' answers indicate that they mostly go on two-day family trips in a private vehicle. In the majority of cases, their purpose for travelling is “to feel refreshed” or “to eat delicious food.” Based on these data, a PCA employing variance-covariance matrices reveals that tourists are basically seeking “extraordinary” and “healing” experiences from their travels. The principal component scores from the PCA are used and the average scores of each gender are calculated. A t-test reports no significant difference between genders with regard to seeking an “extraordinary” experience, but it identifies a trend among women of seeking “healing” experiences more actively than men (p < 0.10) at a level of 0.1%. On the other hand, regarding the tourists' impressions of the Sanriku coastal area, the results of the multivariate analysis suggest that prospective visitors tend to perceive the coastal area comprehensively in terms of both “nature and scenery” and “local area and culture” to the same degree as those who have previously visited the place. For the area to be resuscitated as a tourist destination, it is important to construct a regional brand and devise strategies that will lead to the region's rebirth as a top travel destination. This can be achieved by offering higher quality experiences and services without destroying the traditional image of the Sanriku coast.
著者
柳澤 史人 財前 知典 小関 博久 金子 千秋 小谷 貴子 松田 俊彦 藤原 務 古嶋 美波 加藤 宗規
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3404, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】近年、肩回旋可動域を測定するpositionにおいて、肘関節90°屈曲位(以下1st)、肩関節90°外転・肘関節90°屈曲位(以下2nd)、肩関節・肘関節90°屈曲位(以下3rd)という言葉は定着してきている.しかし、関節可動域についての報告は散見されるものの、各positionにおいて発揮できる筋力について報告されているのは少ない.上記の3つのpositionでの内・外旋筋力を比較・検討したのでここに報告する.【方法】対象は肩関節疾患既往がなく、ヘルシンキ宣言に基づき研究内容を十分に説明し同意を得た健常成人17名(男性10名、女性7名、平均年齢24.5±7.5歳)である.肩関節1st・2nd・3rd positionにおける等尺性最大肩内旋・外旋筋力を検者の手掌に等尺性筋力測定器(アニマ社製μTasF-1)を装着した状態でmake testにて測定した.測定肢位は被検者を端坐位として肘を台上に置き、前腕回内外中間位・手指軽度屈曲位とした.検者は測定器を被検者の前腕遠位部にあてるとともに、対側の手で被検者の肘を固定することにより代償を最小限にして測定を行った.各検査とも検査時間は5秒間、30秒以上の休憩をおき2回ずつ行った.なお各positionの測定順はランダムに実施した.統計的手法としては、連続した2回のtest-retest再現性について級内相関係数(ICC(1,1))を用いて検討し、各positionの比較は2回の高値を採用して一元配置の分散分析と多重比較(Tukey HSD)を用いて検討した.統計はSPSS ver15用い、有意水準は1%以下とした.【結果】等尺性内外旋筋力平均値は、1回目・2回目の順に1st外旋6.29・6.72kg、1st内旋8.64・9.05kg、2nd外旋4.11・3.94kg、2nd内旋5.98・5.94kg、3rd外旋3.78・3.84kg、3rd内旋7.62・7.73kgであった.2回のテストにおけるICCは0.914~0.983であった.外旋は一元配置の分散分析に主効果を認め、多重比較では1st-2nd、1st-3rdで有意差を認め1stが高値を示したが、内旋では主効果を認めなかった.【考察】今回の結果、2回のtest-retestの再現性はいずれも高いことが示唆された.また、各positionでの比較では、内旋筋力にて有意な差は認められなかったが外旋筋力においては2nd・3rdと比較し、1stでの外旋筋力に高値を示すことが示唆された.しかし、今回の測定では外旋で差を呈した要因の特定は困難であり、今後は筋電図を用いた検討などを重ねていきたい.
著者
大屋 隆章 財前 知典 小関 博久 田中 亮 多米 一矢 樋口 亜紀 星 唯奈 三浦 俊英
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3400, 2009

【目的】臨床場面において、肩甲骨下制位により肩関節に疼痛を訴える患者を体幹からアプローチすることで、良好な結果が得られることを多く経験する.これらの経験から、今回は腹斜筋群を促通し、肩甲骨脊椎間距離(以下、SSD)に着目し、肩甲骨の位置関係に変化がみられるか検証した.<BR><BR>【方法】対象は、本研究の趣旨を理解し同意が得られた肩関節に疾患を有さない健常男性12名とした.対象の平均年齢は23.5±2.8歳であった.測定は安静坐位での肩甲骨位置と外腹斜筋促通後の位置変化をみた.SSDは坐位にて、肩甲骨脊椎-肩甲骨上角及び下角を結ぶ線をメジャーにて測定した.腹斜筋群の促通方法は背臥位にて、臀部にred cord社製エアスタビライザーを置き、下肢体幹を軽度回旋させ促通し、腹斜筋群の求心性収縮を目的とした.促通の際、上部体幹・肩甲骨の動きが出ないこと、また体幹側面の第5・6肋骨周囲で腹斜筋群の収縮を確認しながら促通を行った.<BR><BR>【結果】上角におけるSSD差は、腹斜筋群促通前と促通後において12名中7名が内方へ位置移動がみられたが0.20±0.63cm、2群間での有意差は認められなかった(p>0.05).下角におけるSSD差は、促通前に比べ促通後では12名中全被検者において内方への位置移動がみられ0.58±0.38cm、2群間に有意差が認められた(p<0.05).<BR><BR>【考察】本研究の結果から体幹筋である腹斜筋群の収縮によって、肩甲骨下角の内方移動がみられた.外腹斜筋と前鋸筋は解剖学上第5肋骨から第8肋骨までで強固に筋連結しているため、前鋸筋による肩甲骨を胸郭へ引きつけ作用が起こったと考える.しかし今回促通されたと考える第4肋骨から第9肋骨に起始する前鋸筋線維は肩甲骨下角に集中して停止しており、作用としては肩甲骨上方回旋である.肩甲骨が内転、下方回旋するには前鋸筋でも上位にある第1・2肋骨に付着する線維の作用が必要である.肩甲骨内転、下方回旋は前鋸筋作用ではなく、他の筋連結作用により起こったものと考えられ、前鋸筋は菱形筋とも筋連結しているため菱形筋作用により今回の結果である肩甲骨内転、下方回旋が起こったものと考える.体幹、肩甲骨周囲では多数の筋連結作用があり、今後は筋電図などで筋を区別し、関与する筋の検証をする必要がある.
著者
片山 一朗 横山 明子 松永 剛 横関 博雄 西岡 清
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, 1994

重症の顔面皮膚炎を持つアトピー性皮膚炎患者に対する脱ステロイド外用療法の評価を行った.対象は68名の入院患者とし,亜鉛華軟膏の面包帯療法,ないし白色ワセリン,白色ワセリン亜鉛華軟膏混合軟膏の単純塗布を主体とした治療を行った.3分の1の症例において退院後1年以上顔面の皮膚炎の再燃は見られれなかったが残り3分の2の症例においては一年以内に再燃する傾向が見られ,うち10名では増悪時ステロイドの外用が必要であった.この再燃率は顔面の皮膚炎の持続期間,顔面に対するステロイド軟膏の使用期間と比較的よく相関する傾向が見られたが,血清IgE値,使用ステロイド軟膏の強さ,入院期間との間には特に一定の傾向は見られなかった.今回の検討においては30歳以下の患者が9割以上を占め,その増悪因子も多様であった.なお入院時および経過中,9例に白内障の合併が見られた.
著者
小暮 哲夫 小川 彰 関 博文 吉本 高志 鈴木 二郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.394-401, 1985-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1

内頚動脈閉塞症急性期の臨床像とその予後を明らかにする目的で発症後24時間以内に収容された本症104例に対してCT・脳血管撮影を施行し, 2ヵ月間にわたり意識障害や運動障害の推移を中心に臨床経過の観察を行った.死亡例が5割, 社会復帰不能例が4割を占め, 社会復帰可能例が1割のみと, 本症の予後は不良であり, 過半数を占める塞栓症においてより顕著であった.入院時の意識状態や運動機能は予後とよく相関し, 多少とも意識障害を認めたり, 重力に抗する運動の不可能な例で社会復帰したものはまれであった.CT上のLDAの大きさも予後とよく相関し, 予後良好例は非出現例にほぼ限られ, 複数の脳主幹動脈に及ぶ出現例のほとんどが死亡していた.約半数を占める死亡例は高齢者に多く, その8割が第4病日をピークとする発症後早期の脳梗塞直接死亡例であり, 他の2割は合併症による間接死亡例に相当し, その死亡時期に一定の傾向は認められなかった.
著者
山際 清貴 小野 晋 島田 雅子 小関 博久
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100328, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】学生という立場から専門職業人への移行は、生涯のなかでも大きなライフイベントのひとつであるといえる。入職後、速やかに環境に順応し職場適応することは、理学療法士としての人生を円滑にスタートするための重要な要素であると考えられる。なお、組織への新規参入者のほとんどが、この職場適応の過程においてリアリティショック(RS)に直面することが報告されている。今回我々は、新人PTが直面するRSの要因とサポート状況および克服手段について調査を行い、円滑な職場適応の一助となり得る方策を見出すことを目的として検討を行った。【方法】対象は、2012年3月にA専門学校を卒業した66名(男性38名、女性28名、平均年齢25.1歳)とした。上記の66名に対して、電子メールにて無記名式のアンケートを送信し回答を得た。アンケートの構成は、性別と年齢の基本属性の他に「RSの有無」「RSを受けた内容」「RSを受けた時期」「RSを受けた際のサポート源の有無」「サポート源の役職」「サポートの手段」「RSへの立ち向かい方」についての7項目について調査した。このうち「RSを受けた内容」「サポートの手段」「RSへの立ち向かい方」に関しては自由記載にて回答を求め、類似した内容をKJ法にてカテゴリー化した。RSの定義は「新卒の専門職者が数年間の専門教育を受け実際に職場で仕事を始めるようになって、予期しなかった苦痛や不快さを伴うしばしば耐えがたい現実の場面に合ったときに感じる困惑の状態」とした。依頼文と共にアンケートの前文に記載し、十分にRSの定義を理解してから回答するように促した。【倫理的配慮、説明と同意】倫理的配慮として、回答は任意であり、取得したデータの取り扱いについては個人を特定しないことを明記した。また、個人情報の取り扱いに関しては十分な注意を払うこと、アンケートの返信をもって研究への同意を得たとみなす旨を記載した。【結果】アンケートの返信数は25名(男性17名、女性8名、平均年齢24.2歳、回収率37.9%)であり、回答に不備のあるものはなかった。入職してから現在までに「RSを受けた」と自覚した者は13名(52.0%)であり、「サポートしてくれた人物の有無」に関しては、12名(92.3%)が「いた」と回答した。その内訳は、プリセプターが9名(69.2%)、同期のスタッフが9名(69.2%)、プリセプター以外の上司が7名(53.8%)、同級生が5名(38.5%)、家族が2名(15.4%)、その他が2名(15.4%)、患者が1名(7.7%)であった。なお、「RSを受けた時期」は、4月が3名(23.0%)、5月と6月がそれぞれ5名(38.5%)であり、7月以降に受けた者はいなかった。「RSを受けた内容」に関しては25件のコードを抽出し、サブカテゴリー「知識の量(5)」「治療の技術(5)」「評価の技術(4)」を大カテゴリー[PTとしての資質]とし、同様に「第三者との関わり(5)」「コミュニケーション(2)」を[対人技能]、「多忙(3)」「給与の安さ(1)」を[職場環境]と命名し分類した。同様に、「RSに対するサポートの手段」に関しては21件のコードを抽出し、サブカテゴリー「一緒に患者を担当(8)」「フィードバック(5)」を大カテゴリー[実技面のサポート]とし、同様に「傾聴(6)」「声掛け(2)」を[心理面のサポート]と命名し、「RSの克服手段」に関しては15件のコードを抽出し、サブカテゴリー「文献学習(3)」「先輩PTへの相談(4)」を大カテゴリー[前向きな克服手段]とし、同様に「発想の転換(4)」「気分転換(2)」を[内的な変容]と命名し分類した。【考察】新人PTは、日々の業務の中で自身の知識の乏しさや技術の未熟さに代表されるようなPTとしての資質面に限らず、第三者との関わりの難しさや多忙であることなどにも戸惑いを感じ、高いストレス環境の下で業務を遂行していることが示唆された。新人看護師のサポート源としては、同僚、先輩看護師、上司・友人、家族が重要な役割を占めると報告されている。本研究においてもほぼ同様の傾向を示しており、入職後3ヵ月までの期間において、新人PTは個別指導を担当するプリセプターからの日常業務の進め方や理学療法の実践に必要な知識や技術についてのサポートを受ける機会が最も多いことが示唆された。これらは、入職したばかりで不慣れな環境に置かれた新人医療者にとっては、職種を問わずプリセプターの存在が最も身近で重要な存在であることを意味している。すなわち、新人PTが円滑に職場適応を果たすためには、当事者の努力のみならずプリセプターを主とした周囲のスタッフの教育力や支援の必要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】RSの存在や要因が明確になり、RSによる精神的健康の低下や早期離職などの予防策を立てる一助となり得ることは、新人PTと施設の双方において有益であると考えられる。
著者
関 博紀 梅澤 明日香 大里 玲奈 長田 怜也 小林 悠佳
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第69回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.258, 2022 (Released:2022-08-30)

本研究はMV独自の表現を確かめることを目的として、実際のMV60作品を対象に、楽曲と映像の組み合わせの特徴を、作品の長さ、登場人物、編集の3点に注目して分析した。その結果、MVには、作品の長さは楽曲の長さとほぼ合致すること、9割を超える作品で歌手が出演していること、多くの作品が100前後のカット数で成り立つことが分かった。また、各項目同士の関係から、作品の長さは楽曲の制約を強く受けること、MVにおいて歌手は9割を超える作品に出演しているものの、それだけでは成立しづらく、その他の演出が行われること、テンポとカット割については弱い正の相関があることが分かった。以上の結果を映像と楽曲の関係から考察した。
著者
川﨑 智子 平山 哲郎 多米 一矢 西田 直弥 小関 泰一 藤原 務 稲垣 郁哉 小関 博久 石田 行知 柿崎 藤泰
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0994, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】頚椎は胸郭上に位置しており,頚椎肢位や運動は胸郭のコンディションに依存する。特に胸郭は,前額面において左側方に偏位している割合が多いとの石塚ら2011)の報告があり,その要因から考えても頚椎肢位や運動に影響を及ぼすことが十分予測される。日常の臨床のなかで,胸郭の定型的な形状の定着により,頚椎肢位や運動のバリエーションの低下を引き起こす現象も多く観察している。そこで本研究では,頚椎側屈運動における水平面上の胸郭形状変化と左右座圧分布を観察するため,3次元動作解析装置と床反力計を用いて胸郭形状と頚椎運動の左右特性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,整形外科的疾患の既往がない健常成人男性10名(平均年齢27.7±3.6歳)とした。頚椎側屈運動における上下部胸郭前後径変化を観察するため,3次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。赤外線反射マーカー貼付位置は,頭部マーカーを前後左右の計4点,上下部胸郭マーカーをそれぞれ左右第3胸肋関節の中点と剣状突起(A点),A点を背面に投影した棘突起上の点(B点),A点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,各3点)の計16点とした。また,同時に座圧分布を床反力計(Zebris社製)を用いて計測した。測定肢位は上肢をscapular plane上で腋窩レベルまで挙上した安静座位とし,上肢の影響を最小限に,また肩甲帯や体幹による代償が生じないよう考慮した。測定課題は安静呼気位における頚椎最大右側屈,頚椎最大左側屈の2条件とした。メトロノームに合わせて3秒間で最終域に達するよう指示し,実施前に十分な練習を行った。得られた標点の位置データから上部胸郭前後径をB-C点間,下部胸郭前後径をA-C点間の距離としてそれぞれ算出した。また,左右座圧分布は得られた床反力データからそれぞれ相対値を算出した。統計処理は安静時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右比較,頚椎右側屈と左側屈時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右差の比較に対応のあるt検定を用いて検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS18J(SPSS社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。【結果】安静時,頚椎右側屈,左側屈において,上部胸郭前後径と座圧分布の左右における変化に一様の傾向が示された。上部胸郭前後径と座圧分布は,安静時において全例で右側と比較して左側が有意に大きかった(p<0.01,p<0.01)。また,その差は頚椎右側屈時において有意に減少し,左側屈時においては有意に増加した(p<0.01,p<0.01)。しかし,下部胸郭前後径は,安静時において全例で左側と比較して右側が有意に大きかったものの(p<0.05),頚椎側屈時においては有意差がみられなかった。なお,頚椎最大側屈角度には左右で有意な差がみられなかった。【考察】本研究の検討から,全例において胸郭は左側方偏位していることが安静時座圧分布より観察され,石塚ら2011)の報告と同様の特徴が示された。また,胸郭形状においても臨床で観察される定型的な非対称性がみられた。この特徴が定着した状態で頚椎側屈運動を行うと,頭部質量の側方移動にともない,右側屈時には上半身質量中心の正中化が生じ,左側屈時には左側方偏位の増大が生じることがわかった。また,上半身質量中心の左側方偏位は上部胸郭形状の非対称性を増加させるものと考えられる。これらのことから,上部胸郭の定型的な形状や側方偏位の定着は,頚椎肢位や運動の多様性に影響を及ぼすことが考えられる。また,その結果として生じる頚椎運動の左右特性にともない,上部胸郭形状に一様の変化をもたらすことが示唆された。上部胸郭の可動性低下や上半身重心のコントロール機能低下は,頚椎側屈運動の制限因子となることが考えられ,疼痛やメカニカルストレスの原因となることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の検討から,頚椎側屈運動における上部胸郭形状と座圧の変化には左右特性が存在することが示された。これは健常人においてもみられる特徴であり,ヒトに共通する形態や運動特性が存在することが考えられる。これらの強調や逆転は,整形外科疾患における病態や機能低下の一要因となることが考えられ,頚椎疾患をはじめとするあらゆる運動器疾患に対する理学療法に応用できるものと考えられる。
著者
多米 一矢 廣中 丈 小関 博久
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.265-268, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
12

〔目的〕安静座圧の偏りから右座圧群と左座圧群に分類し,座圧と体幹側屈動作の関係について検討した.〔対象と方法〕健常成人男性20名(各座圧群10名)とした.座圧は床反力計を用い,体幹角度をkinoveaにて計測した.上下部体幹側屈角度の比較と座圧と体幹側屈角度の関係性を検証した.〔結果〕左座圧群は,上下部左右体幹側屈角度に差を示した(p<0.05).右座圧群と下部体幹右側屈角度,上部体幹左側屈角度に有意な相関を示した(| r |=-0.7~-0.65).左座圧群は,上部体幹左右側屈角度に有意な相関を示した(| r |=-0.65~0.82).〔結語〕座圧側への体幹側屈動作では上部体幹,非座圧側への側屈動作では下部体幹が生じることが示唆された.