著者
實成 文彦
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.156-170, 2012-06-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
55
被引用文献数
2

我が国の公衆衛生学教育は,明治以後の近代化の過程では,新しい国づくりと共に行われた.第2次世界大戦後,アメリカから持ち込まれた公衆衛生と,新憲法の法体系に基づいた幅広い学問分野での公衆衛生学教育が行われたことは,わが国の公衆衛生の普及・発展に大きく貢献した.高度経済成長後は,規制緩和や地方分権の進行もあり,わが国の公衆衛生システムの基本構造はほぼ完成され,世界でも最高度の健康水準を達成した.しかしながら,残された課題と20世紀末からの日本社会の激変・流動化等から生じた諸問題もあり,公衆衛生学教育はより多要因で複雑系となった.21世紀においては,これまでの幅広い教育体制を維持しつつ,集学性の高い公衆衛生大学院等の発展を計り,時代の要請に応える必要がある.
著者
我妻 堯
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.169-172, 1994-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.290-291, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
3
被引用文献数
4
著者
山口 恒夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.161-167, 2007-06-25 (Released:2011-02-07)
被引用文献数
3

1) 現代は専門職観の大きな転換期である.それは, 「反省的実践家」という新しい専門職増によって特徴づけられる.2) 専門職の養成は, 3つのモデル (理念型) に分類できる.すなわち, 「徒弟修業的自己形成モデル」「技術的熟達者育成モデル」「反省的実践家モデル」である.3) 徒弟関係は, 「師」と「弟子」の関係に近代的な意味での教育的な関係が存在せず, 「同一化」と「模倣」による自己形成を原理としている.4) 現代社会における問題状況の複雑さ, 不安定さ, 固有性, 価値の対立は, 技術的合理性の限界を露呈し, 専門職は「問題」の明確化 (問題状況の物語化) という新たな課題を担うことになった.5)「反省的実践家」の特徴は「省察」にある.「省察・省察的であること」は, 問題状況に捲き込まれている専門職自身を含む当事者間の協働的関係の構築を目指し, 専門職が内属するコミュニティ在り方の問いなおしを目指す.
著者
山本 容子 室田 昌子 岩脇 陽子 滝下 幸栄 柴田 明美 原田 清美 松岡 知子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.491-495, 2015-12-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景 : 手指衛生は医療関連感染防止の最も重要な対策である. 看護師を対象に手指の汚染状況を可視化する手指衛生教育を実践し検討した. 方法 : 看護師29名にATP拭き取り検査及び蛍光塗料とブラックライトを併用した教育を実践し調査した. 結果 : 手指衛生が重要であるとの認識は, 教育後に有意に高くなった. また, 研修目標の到達度では, 約8割の看護師が「自分自身の手洗い方法についての振り返り」, 「手袋を外した後の手指衛生の必要性の理解」, 「自分自身の洗い残し部位の確認」ができたとしていた. 考察 : 本手指衛生教育は, 看護師の手指衛生に対する重要性の認識を高めることが示唆された.
著者
駒沢 伸泰 飯塚 徳重 筒井 秀作 川崎 富夫 杉原 勝子 松澤 佑次 門田 守人
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.193-198, 2003-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

現在, 日本の医学教育においては, 医学部の学生を低年次の間に何らかの形で患者と接触させ現実の医療現場を観察させるという早期臨床体験実習が行われ始めている. 高年次における臨床実習では, 医師の視点から見る医療現場という側面が強くなってしまうが, 医学的知識も少ない低年次においては, 医療現場を, 医療者でもなく患者でもない第三者の立場から観察することができる. 今回, われわれは全国数か所の大学の医学生にコミュニケーションを中心とした早期臨床体験実習に関するアンケートを行い, 医学生たちが実習で何を感じたかを調査した. また, 大阪大学で見られた実習後の学生達の自発的な探求活動についても報告する. 早期臨床体験実習は学生達に医療の現場のさまざまな側面を認識させ, 医療における問題意識を与えることができると言えるのではないだろうか.
著者
前田 正信 羽野 卓三
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.71-76, 2013-04-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

背景 : 本研究の目的は,医学部学生の生理学筆記試験の成績がどのように変化しているかを調べ,試験の成績が入学定員増とどのような関係であるか明らかにし,入学定員増後の医学部学生の試験の成績よりみた学力低下が実際に生じている根拠を与えることである.方法 : 医学部の入学定員増以前の学年,定員増以後の学年の生理学筆記試験の成績の平均値,標準偏差,平均値+標準偏差,平均値–標準偏差,学生数,不合格者数,学生数に対する不合格者の割合を調べた.結果 : 医学部学生の試験の成績は入学定員増以後に有意に低下していることが明らかとなった.考察 : 医学部学生の試験の成績よりみた学力低下は入学定員増が関与していると考えられる.
著者
日本医学教育学会 卒後・専門教育委員会 安井 浩樹 青松 棟吉 石原 慎 小西 靖彦 清水 貴子 高橋 弘明 高橋 誠 中川 晋 望月 篤
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.207-211, 2018-06-25 (Released:2019-05-23)
参考文献数
16

地域医療研修は2004年に卒後臨床研修制度が開始されて以来, 必修分野として現在に至っている. 研修の現場は, へき地や遠隔地の診療所から市街の保健所まで多岐におよんでいる. 地域医療研修を充実させ, よりよい研修医を育てるためには, プログラム責任者の役割が重要である. 震災被災地での地域医療研修や, 北海道と鹿児島の研修医の交換研修などユニークな研修も行われている. 充実した地域医療研修は, 地域でもとめられ世界的にも注目される, 持続可能で新しい日本の保健医療システムをつくるための人材育成に不可欠である.
著者
吉岡 泰夫 早野 恵子 徳田 安春 三浦 純一 本村 和久 相澤 正夫 田中 牧郎 宇佐美 まゆみ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.251-257, 2008-08-25 (Released:2010-10-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

患者医師間のラポールに基づく協力関係の構築や, 両者の情報共有による合意形成は, 適切なコミュニケーションを基盤として実現される. 安全で信頼される医療を実践するためにも, 医療コミュニケーションの適切化は不可欠である. この研究は, そのために効果的なポライトネス・ストラテジーを明らかにすることを目的とする.1) ポライトネス・ストラテジーとその効果について, 医療面接の談話分析により調査課題を抽出, 患者医師双方に対して面接調査, WEB調査を実施した. さらにWEB討論会で論点を明確化した.2) 敬称「さま」や多重謙譲などの過剰な敬語を, 患者は, 慇懃無礼で, 医師から心理的距離を置かれると感じている. ラポールに基づく協力関係の構築には逆効果と, 患者医師双方が意識している.3) 患者は医師に敬称「さん」や簡素な敬語の使用を期待している.それらには, 敬意を表すと同時に, 適度に心理的距離を縮める, ポジティブ/ネガティブ両面のポライトネス効果があるからである.4) 医師が, 患者の方言を理解し, 同じ方言を使うことは, 親近感を生み, 心理的距離を縮めるポジティブ・ポライトネス効果があり, 患者をリラックスさせ, 患者からの医療情報の収集を円滑にする.5) 称賛する, 楽観的に言うなどのポジティブ・ポライトネス・ストラテジーは, 患者の状況やその時のフェイス (親近欲求か不可侵欲求か) により成否は分かれるが, 成功すれば行動変容をもたらす.
著者
武田 裕子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.326-237, 2016-10-25 (Released:2017-08-10)
被引用文献数
1

医学教育の研究論文には, 研究に用いた概念的枠組み (conceptual framework) が不可欠である. しかし, "概念的枠組み (conceptual framework) " と聞いて説明できる医療者は少ないのではないだろうか. 本誌への論文投稿後, 査読者から様々な指摘がなされるが, 研究計画段階でこの "概念的枠組み" が意識されていたら, クリアできたと思えるものが多い. 医学教育における概念的枠組み (conceptual framework) について, Georges Bordageの論文は分かりやすく解説している. そのポイントを以下に紹介する.
著者
宮田 靖志
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.126-132, 2015-04-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
33

これまで様々な議論が重ねられてきたが, プロフェッショナリズムの定義は定まっていない. 定義の詳細な議論に終始することは妥当ではなく, プロフェッショナリズムは患者・社会からの信頼を得るためのものであるという基本的な概念を理解して, 実際に教育実践を行っていくことを優先すべきである. 実際の教育に際して重要なことは, 状況依存的なプロフェッショナリズムを考えること, 個人だけではなく社会との関係にも焦点を当てること, 専門家個人と専門職集団の両方の属性を考慮することである. 行動のリスト, コンピテンシーを挙げるような規範に基づく教育に重点を置くのではなく, 省察を中心に据えた教育を行い, プロフェッショナリズム教育がひいてはプロフェッショナル・アイデンティティ形成につながるようにすべきである.
著者
日高 優
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.43-51, 2015-02-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
24

背景 : 本研究では, 新人看護師が先輩看護師に求める関わりを測定する尺度を作成し, その実際と影響要因を検討することを目的とした.方法 : 先行研究を参考に尺度を作成し, 先輩看護師844名を対象に調査を行った.結果 : 作成された尺度は「新人理解行動」「関わり促進・雰囲気作り」「自身の感情コントロール」「ねぎらい」の4因子で構成されていた. 本調査では関わりを実施している先輩看護師が多かった. プリセプター経験とプリセプター研修受講経験は各因子への影響は異なり, 年齢と看護師経験年数は全ての因子でほぼ関連を認めなかった. 新人看護師が求める関わりは, 先輩看護師の基本属性に関係なく実施可能であると示唆された.