著者
後藤 和久
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.193-205, 2005-04-15
被引用文献数
2 1

今から約6500万年前の白亜紀/第三紀(K/T)境界に地球外天体が衝突したとする説は, その後のメキシコ・ユカタン半島における衝突クレーターの発見や衝撃変成石英などの衝突起源物質の発見により現在では広く認知されるようになり, この衝突こそがK/T境界の生物大量絶滅の原因だったのではないかと考えられている.ところが, この衝突はK/T境界より約30万年前に起き, K/T境界での生物大量絶滅とは無関係だったとする説が一部の研究グループから近年報告され, K/T境界での衝突を支持する研究者との間で論争となっている.そして, 衝突がK/T境界より約30万年前に起きたとする説に対して数多くの矛盾点が指摘され, この衝突はやはりK/T境界で起きた可能性が高いことが再確認されつつある.本論では, 地球外天体衝突とK/T境界の同時性をめぐる一連の論争を紹介し, この問題を検討する.
著者
高木 秀雄 曽田 祐介 吉村 浄治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.56, pp.213-220, 2000-03-15
被引用文献数
4

大野川層群霊山層中の花崗岩礫と, 朝地変成岩類分布域中の山中花崗閃緑岩のK-Ar年代を測定した.花崗岩礫4試料から得られたホルンブレンドと黒雲母のK-Ar年代は103〜108Maとよく一致した.一方, 山中花崗閃緑岩1試料について得られたK-Ar年代は, ホルンブレンドが103Ma, 黒雲母が104Ma, カリ長石が75.1Maとなった.霊山層中の花崗岩礫と山中花崗閃緑岩は年代的には一致するものの, 微量元素や帯磁率が異なる.しかしながら, 大野川層群の堆積物は北方から供給されたという報告があることから, 霊山層中の花崗岩礫の供給源が朝地地域周辺の花崗岩類から由来した可能性は高い.大野川層群が領家帯の和泉層群の西方延長に相当するのか, あるいは古領家帯の跡倉層-真穴層に対比されるかを明らかにするためには, 今後朝地変成岩類の帰属問題を解決する必要がある.
著者
稻垣 誠二
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.46, no.544, pp.35-36, 1939-01-20

該化石は岩手縣二戸郡金田一村湯田産で, その産出層位は大塚學士の下部門ノ澤層群である。標本の保存状態は比較的に良く, 2個體が重なり合つて産す。上部のものは腹部の形態から雌と確認されるが, 下部の性別は判然しない。兩標本とも同一種に屬し, 相模灣以南臺灣に到る本邦近海に産する Scylla serrata (FORSKAL)「ノコギリガザミ」に酷似して居る。亦甲殻の外形は Portunus trituberculatus (MIERS)「ガザミ」のそれにも似て居る。分類上重要な螯脚長節の前縁に於ける棘數が不明であるが, 種々の點より見て本化石標本を新種と認め, 之にScylla miocenica INAGAKI なる新名を與へた。
著者
吉田 武義 大口 健志 阿部 智彦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.263-308, 1995-11-30
被引用文献数
22

新生代東北本州弧における火山岩組成の時間的・空間的変遷を検討した結果, それらを供給した島弧下マントルウェッジには3種の起源マントル物質, (1) エンリッチした大陸性マントルリンスフェア, (2) 島弧性最上部マントルリソスフェア, (3) 枯渇した島弧性アセノスフェアが存在していたことが確認された。東北本州弧, 陸弧活動期(〜21 Ma)には, 大陸性マントルリンスフェアが特に背弧側マグマ起源マントルを構成しており, その上部の最上部マントルに地球化学的不均質性の著しい(島弧性)最上部マントルリンスフェアが分布していた。背弧海盆拡大に関連して, 背弧側深部に島弧性の枯渇したアセノスフェアが侵入し, 背弧側のマントル内温度が上昇した結果, 背弧側最上部マントルを構成していた島弧性マントルリソスフェアが溶融して, 火山弧を火山フロント側から背弧側へと横切る広域組成変化傾向が不明瞭となった。その後, 背弧側マントルの温度低下と, 火山フロント側最上部マントルの温度上昇が続き, 背弧側ではより深部に位置していた, 枯渇した島弧性スピネルカンラン岩質アセノスフェアに由来するマグマが分離上昇を始め, 火山フロント側ではよりエンリッチした斜長石を含むカンラン岩からなる, 最上部マントルリンスフェア由来の低アルカリソレアイトが分離上昇して, 第四紀火山活動を特徴づける組成の広域変化が形成された。第四紀における火山フロント側および背弧側マグマ起源マントルはそれぞれ, マントルウェッジ内で地震学的に認められる火山フロント側低速度域と背弧側低速度域に対応している。両者の間には組成不均質性があり, 中期中新世以降, 少なくとも同位体組成的には均質化していない。
著者
中澤 努 中里 裕臣 大嶋 秀明 堀内 誠示
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.49-63, 2009-02-15
被引用文献数
7

関東平野中央部,埼玉県越谷(こしがや)市大杉(おおすぎ)で掘削したGS-KS-1コアにおいて,層相,テフラ,花粉化石,珪藻化石の解析を基に,房総半島の上総-下総層群境界に相当する海洋酸素同位体ステージ(MIS)12層準の特定を試みた.検討の結果,掘削地点でのMIS12層準は,内湾相基底のベイラビンメント面に相当すると考えられ,河川チャネル成の粗粒堆積物は伴わないことが明らかになった.また,MIS 12層準直下の上総層群上部相当層は,下総層群と同様の陸成層と海成層の互層からなり,関東平野中央部では,房総半島の上総-下総層群境界に相当する層準の上下で,房総半島でみられるような層相の大きな違いはないことが明らかになった.
著者
小野 晃
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.19-25, 1985-01-15
被引用文献数
5 7
著者
徳橋 秀一 檀原 徹 岩野 英樹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.560-573, 2000-08-15
被引用文献数
8 19

房総半島中部に分布する安房層群上部の3累層(下位より, 天津層, 清澄層, 安野層)から, 8つの凝灰岩を選んでFT年代測定を行った.1)その結果, Am19 : 11.7±0.3Ma, Am40 : 8.5±0.5Ma, Am61 : 6.3±0.5Ma, Am78 (Oktuff) : 5.7±0.4Ma, Am94 : 5.2±0.3Ma(以上, 天津層), Ky21 (Hk tuff) : 4.5±0.2Ma(清澄層), An49 : 3.9±0.4Ma, An73 : 3.7±0.2Ma(以上, 安野層)の値を得た.これらの値は, 1990年に出されたIUGSサブコミッションの勧告に従った, 安房層群上部に属する凝灰岩についての初めての年代値である.2)今回得られた年代値とこれまでの放射年代値とを比較した場合, 従来のFT年代値よりはやや若い値を示すが, 極く最近報告されたK-Ar年代値とはよい一致を示す.3)浮遊性微化石の生層序年代値と比較した場合, 天津層中・下部と安野層の場合は比較的よい一致がみられるが, 天津層上部および清澄層の凝灰岩の場合には, FT年代値の方が有意に若い年代を示す.不一致の原因は今後の課題である.
著者
新正 裕尚 和田 穣隆 折橋 裕二 角井 朝昭 中井 俊一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.689-696, 2003-12-15
被引用文献数
6 10

奈良県吉野町樫尾の吉野川に沿って分布する玄武岩・流紋岩複合岩脈から約1m径の花こう岩質包有物を見出した.この包有物の起源を探るため全岩化学分析とレーザーアブレーションICP質量分析法によるジルコンのU-Pb年代測定を行った.その結果全岩化学組成は外帯花こう岩類の一員である大峯花こう岩質岩と類似すること,最も若い年代を示すジルコン群がら求めた花こう岩質岩の固結年代は13.2±1.0Maであることが判った.これらから中央構造線南方に中新世の花こう岩質岩の潜頭岩体が存在すると推定される.