著者
市原 寛 榊原 正幸 大野 一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.746-757, 2004-12-15
被引用文献数
1 1

四国北西部に存在する南北系の地形構造の一つ,松山平野"堀江低地"について,重力異常探査および既存のボーリング資料により検討を行った.ボーリング資料より,低地下に東落ちの基盤深度の不連続帯およびこれに向かって急傾斜する堆積層の地層境界面の存在が明らかになった.また,重力探査によると,明瞭な負のブーゲー異常帯が低地とほぼ平行に存在することが明らかになり,その西端部の急変帯は上記の基盤深度の不連続帯によることが解明された.これらのデータより,走向が北北西-南南東で,東落ちの堀江断層が低地下に伏在すると推定される.堀江断層は正断層成分を持ち,堀江低地下に堆積盆を形成しており,南方の中央構造線活断層系の分布域まで延長されると考えられる.堀江断層は,少なくとも更新世には活動していたと推定される.
著者
坂井 卓 岡田 博有
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.48, pp.7-28, 1997-06-30
被引用文献数
2

九州の中軸帯および黒瀬川構造帯には白亜紀堆積盆が広く発達する。その層序学的・堆積学的ならびに構造地質学的諸特徴には東アジアの活動的縁辺域で生じた白亜紀のテクトニクス変化が記録されている。黒瀬川構造帯の下部白亜紀系は断層規制を受けた堆積盆に形成され, 非海成〜浅海相ならびにタービダイト相からなる二つの異なるタイプのシークェンスが識別できる。これらは, 多くの不整合を伴って顕著な岩相変化を示す。このような堆積盆は, 分断された黒瀬川古陸上に形成された横ずれ構造盆にあたり, 白亜紀前期にカリフォルニア型のトランスフォーム縁辺が推定される。このことは黒瀬川構造帯の堆積盆が北北西-南南東の左横ずれ断層を伴うタンル-断層システムに属していたことを示唆する。一方, 中軸帯の後期白亜紀堆積盆は非海成〜浅海性相(御所浦・御船層群)と浅海〜タービダイト相(大野川・姫浦層群)の二つの異なるシークェンスからなる。前者は先白亜紀の構造に対し, オーバーラップの層序関係を示し, ベンチ状あるいは陸棚性前弧海盆に比較できる。後者は軸流運搬のタービダイト相が卓越し, 伸長性堆積盆を示す。堆積作用と変形スタイルの特徴から, 大野川, 姫浦層群はそれぞれ横ずれ構造盆, 断層規制を受けた陸棚盆に相当する。黒瀬川構造帯堆積盆の北方への顕著な堆積盆の移動は, 縫合性島弧地塊と前期白亜紀に隣接していたイザナギ・プレートの間のトランスフォーム過程に関連したと推定される。引き続く中軸帯の堆積盆のタイプの時空的変化は, 後期白亜紀のクラ, 太平洋プレートの収れん運動の変化に対応するだろう。
著者
釘宮 康郎 高須 晃
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.644-662, 2002-10-15
被引用文献数
9 39

地形が急峻なため十分な地質調査がなされていなかった四国中央部別子地域三波川変成帯中のテクトニック・ブロックである五良津西部岩体およびその周辺地域の詳細な地質調査を行い,地質図を作成した.五良津西部岩体は,構造的下位から上位へ,かんらん岩,単斜輝石角閃石岩,ざくろ石緑れん石角閃岩,ざくろ石白色雲母角閃岩,大理石,緑れん石石英岩および曹長石白色雲母石英片岩の7つの岩相に区分された.これらの岩相の変成岩の原岩は,それぞれ超苦鉄質岩,はんれい岩,塩基性火山砕屑岩,石灰岩,石灰岩の混ざった珪質堆積岩および泥質岩である.周囲の三波川結晶片岩の塩基性片岩が珪質片岩を伴うのに対して,五良津西部岩体は大理石に富む.これらの結果より,五良津西部岩体の原岩は,頂部に礁性石灰岩を伴う海山,海台あるいは島弧のような海洋プレート上の高まりであったと考えられる.
著者
鈴木 盛久 刑部 哲也
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.21, pp.37-49, 1982-04

飛騨変成帯西部地域の岐阜県吉城郡月ケ瀬地域から含亜鉛スピネルを産する変成岩を見出し,それを記載した。本岩は,カリ長石+珪線石の組合わせで特徴づけられる泥質片麻岩中に10×15m程度のレンズ状岩体として出現する。本岩の鉱物組合わせは,ざくろ石・黒雲母・珪線石・カリ長石・石英・スピネル・石墨・チタン鉄鉱であり(タイプA),それらに斜長石が加わることもある(タイプB)。スピネルは,タイプAの岩石中のものではHe_<39.7-41.O> Ga_<52.3-540> Sp_<6.3-6.7>,タイプB中のものではHe_<60.0-61.7> Ga_<26.6-28.9> Sp_<10.8-11.7>の組成範囲を示す。全岩化学組成,鉱物組合わせ,構成鉱物の化学組成等の検討から,含亜鉛スピネルを産する岩石は,泥質岩或いはそれに関連した原岩から角閃岩相以上の変成条件下で生成されたものと結論づけられた。
著者
新井 健司 石井 久夫 伊藤 孝 内田 克 遠藤輝 岡部孝次 熊井 久雄 小菅 範昭 近藤 洋一 郷原 保真 酒井 潤一 斎藤 義則 塩野 敏昭 島田 安太郎 下野 正博 隅田 耕治 角谷 邦明 関口 尚志 田中 俊廣 趙 哲済 中西 一裕 中島 豊志 中村 由克 林田 守生 松本 俊幸 三谷 豊 柳沢 文孝 山本 裕之 吉野 博厚
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.93-102, 1977-02-21
被引用文献数
11

A wide-spread lake assumed to be larger than the recent Matsumoto Basin had existed in Early Pleistocene, and the Enrei Formation and its equivalent formations had been deposited in the lake. An extensively even erosion surface formed on the sediments in the latest Early Pleistocene is called the Ohmine geomorphologic surface. After the formation of the Ohmine surface, the recent mountainous areas such as the Northern Japan Alps, Mt. Hachibuse, Mt. Utsukushigahara and so on had been upheaved, while the Matsumoto Basin area had been depressed and the Nashinoki Gravel Formation, the upper Middle Pleistocene, had been deposited. The base of the Enrei Formation is 1,800 m above sea level in Mt. Hachibuse, while 700 m above sea level in the southern part of the Basin. The amount of upheaval of the mountainous areas can be estimated to be more than 1,000 m. The Matsumoto Basin area had been depressed again in the middle part of the Upper Pleistocene (about 40,000 years B. P.) and the Hata Gravel Formation had been deposited. The amount of depression may be estimated to be about 150 m in the eastern periphery of the middle part of the Basin.
著者
端山 好和 木崎 喜雄 青木 清 小林 摂子 戸谷 啓一郎 山下 昇
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.4, pp.61-82, 1969-01-31
被引用文献数
6

上越地方には, 変成岩および蛇紋岩の小岩体が各地に散在するが,その多くは,もと片状岩類だったものが白亜紀ないし第三紀の花崗岩の接触変成作用によってホルンヘルス化した複変成岩である。いっぽう, 谷川岳頂上のルーフペンダント, およびジュラ系(岩室層)ないし第三系(栗沢層)の礫岩に見出される結晶片岩礫には,藍閃片岩または藍閃片岩相地域に特徴的な変成岩が認められる。これらによって, 上越地方には, 少くもジュラ紀から中新世にかけて, 藍閃石型広域変成帯が実在したと推定され,現在はほとんど失なわれているが,これを上越変成帯と名付けた。さらに次の理由から,上越変成帯を,飛騨高原をとりまく結晶片岩帯の東方の延長と考えた。1)上越変成帯の東縁をなす片品構造帯は種々の点から飛騨外縁構造帯に類似する,2)結晶片岩の変成様式が両地域で共通する,3)変成作用の時期が同じ,4)両変成帯の外側に分布する非変成古生層(丹波帯と足尾帯)は連続している,5)両地域の地史がよく似ている。
著者
新野 弘
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.66, no.778, 1960-07-25