著者
谷口 知司 三宅 茜巳 興戸 律子 有薗 格
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.17-24, 2006-06-01 (Released:2017-05-19)

終戦直後文部省は,占領軍総司令部のもとで戦時下教育の一掃に力を注いでいた.占領軍総司令部は,アメリカの教育専門家をスタッフとしてその目的のために民間情報教育局(The Civil Information and Education Section:略称CIE)を置いた.木田先生は,昭和21年に文部省に入省された.この時期に若手文部官僚として教科書局調査課に在籍し,CIEスタッフとともに社会科特別教科書『民主主義(上)(下)』の編集に係わった.この教科書は昭和23年から24年にかけて発行され,昭和28年頃まで使われ,戦後の民主主義教育に大きな役割を果たした.本稿では,木田宏先生の二編のオーラルヒストリーをもとに,木田先生と教科書「民主主義(上)(下)」との係わりについて,執筆の経緯,教科書に漫画を掲載したこと,執筆者について,大江健三郎のこと,共産主義の取り扱いの各項目で考察した.
著者
山本 利一 山内 悠
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-26, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
10

2020年全面実施の小学校学習指導要領では,初等教育においてプログラミング学習が必修化される.プログラミング学習は,各教科の目的を達成する手段として効果的に活用される必要があり,それらの事例の蓄積が求められている.そこで本研究は,小学校第1学年の特別な教科「道徳」において,プログラミング学習の順次処理と「順番の大切さ」を組み合わせた指導過程を提案し,実践を通してその効果を検証することである.実践の結果,児童は,PETSを活用することでプログラミング(順次処理の学習)に積極的な取り組みを見せると共に,順番の大切さを学びとっていた.しかし,グループ活動は,グループにより活動の質が異なるため,教員の声かけや支援が大切であることも確認された.
著者
掘野 緑 市川 伸一 奈須 正裕
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.3-7, 1990-09-10 (Released:2017-06-15)
参考文献数
11
被引用文献数
10

自己学習力が強調される今日の教育において, 学習者自身のもつ「学習観」は極めて重要である. 現在の学校教育で形成されがちな学習観として, 失敗は悪いことであり, 正答さえ良ければ良いといった「結果主義」があげられよう. 本研究では, 「失敗に対する柔軟的態度」, 「思考過程の重視」という2つの側面に着目し, 基本的な学習観の尺度を作成した. さらに, 学業成績との関連について検討した結果を報告する.
著者
畑 佳明
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.10, pp.154-155, 1994-07-29

教育機関におけるUNIXワークステーションの導入が加速する中で、UNIXを活用した情報教育が思考錯誤しながらも増加している。中でもUNIXの基礎/コマンド/C言語やFORTRANの実行手順などの基本操作の教育に講師が一番手間がかかっており、多くの先生方からの対処策の相談を受けていた。これに対して現状の調査を数回に渡り実施した結果、以下の教材システムを提供することでの対処を行った。この教材システムの利用により、講師の負担が軽減されてUNIXを活用した教育への取り組が増加しているとの評価も増え始めている。今後も先生方のご意見を聞かせて頂き『使いたくなる実習教材』を提案していきたい。
著者
服部 晃
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.31-36, 2006-06-01

現在,わが国の地方教育行政は,政治的中立性と継続性・安定性を確保して地域住民の意向を反映するために,地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関である教育委員会により行われている.第二次世界大戦の終戦後に設置されたこの制度は,60年を経過して時代の進展と社会の変化から多くの課題を生み,その制度の在り方について様々な指摘を受けている.戦後の地方教育行政の組織について,設置当時の時代背景や経緯を昨日の出来事のように生々しく語られた「木田宏先生のオーラルヒストリー」から,地方教育行政の今日的課題に対する方策と,教育委員会制度の在り方を考える貴重な資料を,教育行政実践者の立場から提示する.
著者
加藤 尚吾 加藤 由樹 島峯 ゆり 柳沢 昌義
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.47-55, 2008-12-05
被引用文献数
3

本稿では,携帯メールコミュニケーションにおける顔文字の機能について,コミュニケーションの相手との親しさの程度による影響を調べるため,女子大学生32名を被験者にした実験を行った.結果から,親しい間柄に対して送信した携帯メールで顔文字を使用する場合,顔文字以外の文字数が減る傾向が示された.また,相手に謝罪する場面で親しい間柄に送信した携帯メールでは,親しくない間柄に比べて,言葉で表された謝罪が有意に少なく,顔文字が謝罪の言葉に代替される傾向(メール本文代替機能)が示唆された.更に,親しい間柄に送信した携帯メールでは,親しくない間柄に比べてより多くの種類の顔文字を使う傾向(感情表現機能)が見られた.
著者
水島 賢太郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.5, pp.7-10, 1989-08

ソロバンを実用的レベルで取扱うには相当量の訓練が必要であり、電卓が一般化した今日、学校教育におけるソロバン教育は不必要であるという見方がある。この見方は、ソロバンを電卓と同種の計算道具であるという常識的見方に立つ限り的を得ている。しかし、ソロバンの主たる機能をメモリー(記憶装置)と見れば、コンピュータの概念およびプログラミング指導へのソロバン利用の可能性が生れ、最低限度のソロバンの学習は意味を持つ。本稿は、この立場からソロバンを用いたコンピュータ・リテラシィについて考察した。
著者
服部 晃 今津 孝次郎 滝村 一彦
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.23, pp.120-123, 2007-08-20

学校教育の成果は、児童生徒の教育に直接関わる教員の資質能力に負うところが極めて大きい。各自治体の教育委員会に設置されている教育センター等では、教員の資質能力の改善向上を図ることを第一義の目的として現職教育(研修)を実施している。研修内容や研修方法等については、時代の進展や社会の変化に応じて改善の努力が行われているが、依然として講義型のものが主流である。今回、岐阜県総合教育センターの高校及び特別支援学校の3年目研修において、プロジェクト法による現職教育を試行している。その経緯と手法・内容及び課題等について発表する。
著者
土生 真弘
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.266-267, 2006-08-26

2005年から「国連・持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」が開始した。ESDとは、持続可能な社会を構成する責任ある個人を育成する教育・学習活動であり、生涯学習の観点から地域全体を動員するものである。UNESCOの国際実施計画などが作成された一方で、ESDの概念や実践の困難さが指摘されている。本稿では、ESDがもたらす「教育」、及び国際協力・国際貢献の事業への関連、並びに情報通信技術(ICT)の応用の可能性について論じる。
著者
片山 章郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.13-20, 2002-02-28

学生の論理的文章作成能力が低下しているので,論理的文章の作成を早い時期から慣れさせる必要があると思った.そこで,1年前期に開講している「情報科学」で手書きによるレポートをほぼ毎週課し、添削して返却することにした.当初のレポートは文章や論理展開等にいろいろな問題があったが,添削する際に必ずほめるコメントをつけたり,課題に対する解説をしたりすることにより,文章が改善する点もあった.しかし,論理構成の向上は不十分であり,今後も新入生に論理的文章を作成させる必要があった.また,新入生の文章作成に対する意識も把握するために,最後の授業時にアンケート調査をした.その結果,新入生は論理的文章作成に慣れていなかったために,レポートに大きな負担感を持っていたことがわかった.ただし,レポート提出をよいことと思った新入生は,学習意欲が高まったり,文章作成の負担感が軽減したりしていた.
著者
山本 利一 田嶋 基史
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.16, pp.100-103, 2000-11-11

福井県立福井商業高等学校は,文部省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法の研究開発事業」により,1.5Mbpsの高速回線の利用が可能となった.しかし,その環境を有効に活用するための,校内設備やスキルを持ち合わせていなかった.そのため,NetDayにる校内LANの構築を地域ボランティアの協力のもとに行い,校内LANの環境を整えた.
著者
日高 義浩
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.31-40, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
10

本報は,アクティブ・ラーニングの手法の1つである協調学習「知識構成型ジグソー法」を用いた授業の実践事例である.知識構成型ジグソー法を取り入れた授業は,教科「工業」の科目「電子情報技術」において実施した.知識構成型ジグソー法を取り入れた授業終了後,生徒に質問紙調査を行い,その結果について分析を行った.その結果から,知識構成型ジグソー法を用いた授業の有用性ならびにその授業における課題について追究した.その結果,①エキスパート活動,ジグソー活動等を通じて生徒同士が教えあうことで責任感が身に付くと感じていること,②生徒同士で学びあうことが多くなるため,一緒に学習する生徒によって学習内容が変わってくると感じている生徒もいること,などを明確にした.
著者
佐藤,弘毅
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.12, 1996-08-08

今日, 高度情報通信社会の構築が進みつつあり, 一方で, 国民の文化志向の高まりが見られる。文化庁では, これらの現状を踏まえ, 文化に関する総合的な情報発信を行うための基盤整備として以下の3つのシステムから成る文化情報総合システムの整備を進めている。
著者
芦葉 浪久
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.3-27, 1989-01-30 (Released:2017-06-16)
参考文献数
11

科学概念形成のための学習方法を確立するため、概念形成が困難な基本用語20を選定し、各用語ごとに15〜20の概念記述文を作成して、用語と概念の結びつきを、中・高生に質問紙法で調査し、概念の理解度と概念構造を分析した。概念理解度を示す相対選択率の学年による変化の違いによって、概念用語は3つに類型化できた。これまで各概念ごとに概念形成学習法を考えていたが、類型ごとに共通する方法をとることができることがわかった。次に、各用語ごとに概念記述文間の類似性の距離を測度としてφ係数を用いてクラスター分析をし、概念の樹形図を作って比較した結果、科学概念と日常概念が別のクラスターを形成するか否かで、概念形成学習の成果を比較できることがわかった。
著者
城間 由紀 谷 里佐 加治工 尚子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.29, pp.356-357, 2013

うちなーぐちの教材は、これまで、主として文字資料やビデオ映像で作られてきたが、教材として教師が必要に応じて各種資料が取り出せる多様性のある教材保存が望まれてきた。そこで、地域文化としての最も基礎的な教育資料として、多様な観点から教師、学習者が資料を活用できる方法の開発が必要である。今回、デジタルアーカイブを用いて、うちなーぐちの各種資料を保存し、広く教育利用が可能な方法を開発した。
著者
大城 真由美 我如古 梓 三宅 茜巳 仲本 實 後藤 忠彦
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.29, pp.460-461, 2013-11-09

戦後68年を経過し,沖縄戦の体験の継承が危惧されている。沖縄の学校では,慰霊の日に向けて沖縄戦から平和を考える取り組みを行っているが,戦争体験者が高齢化し語り手が減少していく中で,戦争体験者ではない教師がどう伝えていけばよいのかが課題となっている。そのため,小学校で活用できる沖縄戦についてのデジタルアーカイブ教材の開発を考えた。
著者
服部 晃
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3-14, 2009-12-18 (Released:2017-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
3

教員の資質能力の形成過程における養成段階と現職研修段階の接点として位置づく「法定研修」としての初任者研修は,教員の資質能力に関する様々な論議の歴史的な経緯の中で,その節目とも言える時期の1988(昭和63)年に制度化され,ちょうど20年が経過した.この間に,児童生徒及び学校を取り巻く教育環境は大きく変動し,とりわけ児童生徒の教育に直接携わる教員に対する議論は国民的な広がりとなった.1998(平成10)年頃から社会問題となったいわゆる「指導力不足教員」に端を発し,教員の現職教育(研修)の改善・強化の必然性が叫ばれて,2003(平成15)年には教職10年経験者研修が「法定研修」となり,さらに,2007(平成19)年には教育職員免許法及び教育公務員特例法が一部改正されて教員免許更新制が制定され,「指導が不適切な教員」に対する指導改善研修が「法定研修」となった.本論文は,教員の現職教育(研修)の原点ともいえる初任者研修について,(1)「法定研修」としての初任者研修の創設,(2)初任者研修の実施形態,(3)初任者研修の現状,(4)初任者研修の課題について論述し,さらに,(5)現職教育の在り方について追究するものである.
著者
高田 英一 大石 哲也 森 雅生 関 隆宏 小柏 香穂理 劉 沙紀
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.87-93, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
7

大学が近年の厳しい経営環境に対応するためには,ステークホルダーの支持を得る必要があり,そのためには,ステークホルダーによる認知の集積である「レピュテーション」を高め管理する取組である「レピュテーション・マネジメント」(reputation management)の取組を進める必要がある.また,その際には,大学のデータマネジメントを担当するIRの活用の取組が有効と考えられるが,いずれの取組の状況も明らかでない.このため,国立大学に対してこれらの取組の現状に関するアンケート調査を実施した.調査の結果から,レピュテーション・マネジメントの重要性が多くの大学で認識されるとともに,レピュテーション・マネジメントに関する取組が実施されていること,また,レピュテーション・マネジメントへのIRの活用の必要性が認識されている状況が明らかとなった.
著者
堀田 龍也
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.3-14, 2020 (Released:2020-05-31)
参考文献数
26

我が国の政府は,Society5.0(超スマート社会の実現)を目指し,少子高齢化を始めとする諸課題の解決にIoTやAIなどのテクノロジーの積極的な活用を位置づけている.このような社会に対応できる人材の育成が初等中等教育に期待され,学習指導要領においても情報活用能力の重点化を始めとする改善が進んでいる.しかしながらこれまでは,学校現場では情報化そのものが十分に進んでおらず,学習におけるICTの活用において国際的な遅れが指摘されている.本稿では,学校のICT環境整備の2020年前半現在の動向として,①GIGAスクール構想の推進,②PISA2018に見る読解力の低下,③小学校プログラミング教育の全面実施を取り上げ,学校現場における課題を共有し,実践的な解決に向かうための教育情報研究について本学会への期待を含めて議論する.